司書教諭・茉莉の気紛れ書き

   ここでは、「児童書では物足りない、かと言って一般書は難しい」中学生のために、某中学校で司書教諭をしている私がおすすめ本を紹介します。

プロジェクションマッピング3

 詩人とは、私たちが普段目にする何気ない光景を、独自の感性で切り取って新しい見方を示してくれる人だと思います。そう考えた時、三葉かなえさんは間違いなく詩人ですね。

 
書斎の窓から
 今にも飛び立ちそうな
 半紙と風の
 つなぎ目を
 そっと分断した文鎮


 風にふわりと膨らんだ半紙を、慌てて文鎮で押さえつけているとき、半紙と風がつながったなんて考えたことなかったな・・・。そんな三葉かなえさんの完成がいっぱい詰まったのが、五行歌集『プロジェクションマッピング』です。


プロジェクションマッピング
  • 三葉かなえ
  • 市井社
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書評


 他にも心に残った詩を紹介します。

 
滝が
 一瞬で真っ白に
 凍ったのような
 身が出てきた
 おおきな蟹の足


 言われてみれば!冬になると、ニュースで凍った滝の映像が流れることがありますが、それと蟹の足をつなげたことはありませんでした。見た目はもちろんですが、どちらも冬の風物詩で、季節感も合っているところがなおいいですね。

 
足に咲いた花は
 日に日に色を変えてゆく
 雨の日に
 ぶつけてできた
 あじさい色のあざ


 雨の日にできたからこそ、あじさいの花を連想したのでしょうか。最後の一行を読んだときに、「それか!」と思わせる語順も見事ですね。これから、自分がこさえた打ち身を見るたびに、この歌を思い出しそうです。

基本の8着で人生が変わる大人着回し術4

 「何を着ていこうか、悩むのは時間の無駄だ」と考えた私は、五日間分の組み合わせを作って、クローゼットのハンガーにかけています。ジャケットもスカートも毎度、組み合わせは同じ。こうすると朝起きて、20分で家を出ることが出来るんですよね。

 しかし、一方で「おしゃれになりたい」という気持ちも捨てられないのです。そこで『基本の8着で人生が変わる大人着回し術』を読んでみました。


基本の8着で人生が変わる大人着回し術
  • akko3839
  • 幻冬舎
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書評


 まずは、著者のakkoさんのセンスに敬意を表します。とにかく、一着ずつはシンプルで、組み合わせだってシンプルなのに、すっごくおしゃれに見えちゃうんです。多分、色遣いを抑えていて、上質の素材のものを選んでいるからだと思うのですが。いや、あと一つ、akkoさんのスタイルのよさですね。これは外せない要素・・・。やはり、ダイエットしなければ・・・。

 そして、意外だったのは、自分の好きなスタイルがはっきりしたことです。akkoさんの提案はどれも「素敵!!」となってしまうのですが、「定番色を最高にセンスよく見せる6つのルール」の中で、「モード・グレー」「フェニミン・ベージュ」「きれい色ミックス」にはときめいたのに、「シンプル・モノトーン」「ホワイト&ホワイト」はピンと来なかったんですよね。自分の今後の服の購入方針が、ここで決まりました。

 私も頑張って、akkoさんのような素敵な40代を目指したいです。

J・G・バラード短編全集4 (下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件)5

 SF界の巨匠、J・G・バラードの短編全集が刊行されることになりました。「やった〜」と思うのと同時に、自分が読んだことのあるバラードは?と思って検索してみると、『人生の軌跡 J・G・バラード自伝』しか出てきませんでした。作品でなく自伝・・・。しかし、とんでもなくエキゾチックで刺激的な子供時代を、バラードは送っていたことを思い出しました。


J・G・バラード短編全集4 (下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件)
  • J・G・バラード
  • 東京創元社
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書評


 気を取り直して、『J・G・バラード短編全集4 (下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件』を読んでみました。一作ごとにタイプの違う作品が並び、現実にはないものも多いので、想像力が豊かでないと全く作品に入り込めない、読む人を選ぶ作品集でした。

 では、短編集恒例のベスト3を発表します。

第1位 「コーラルDの雲の彫刻師」
 タイトルからして魅力的で謎めいた言葉の連なりですよね!グライダーに乗って、雲の周りを飛び回り、沃化銀を垂らします。すると、バラードの作った世界では、雲をグライダーの羽で削って、雲の彫刻を作り上げることができるのです。砂漠にそびえる珊瑚(コーラル)の塔。そこからグライダーで飛び立ち、白く盛り上がった積雲を翼で切り裂くパイロットたち。ぜひ、新海誠監督に映画化してほしいものです。

第2位 「風にさよならをいおう」
 「トップレス・イン・ガザ」というブティックを経営するサムスンは、そこで活性織物を扱っています。活性織物(バイオ・ファブリック)とは、着る人の感情やその人に体験に合わせて形や色を変える衣服のことです。この画期的な衣服の発明者であるカイザーは謎の死を遂げています。活性織物というアイデアの素晴らしさもさることながら、その特性が事件の重要なカギを握ることになる物語の構成も秀逸です。

第3位 「希望の海、復讐の帆」
 金色の砂の海を、ヨットを操って砂鱏狩りに出ていたロバート。あるとき、頭上に現れた白鱏を撃ち落としたはよいものの、その鱏の最後の羽ばたきで頭を強打されてしまいます。何時間かして、彼はホープ・キューナードという謎めいた美女に救出されます。砂漠の中、砂礁脈が糸杉並木のように周囲を取り囲む彼女の別荘に招待された彼は、そこで過ごすうち、彼女が誰かを探していることに気づきます。この話に出てくる魅力的な小道具は、「自動肖像画」。顔料を選択すると、あとは感光性の絵の具が露出された対象のイメージを勝手に生み出すという優れもの。一見写真のようですが、毎日2〜3時間モデルを務めると、徐々に対象の本質を理解し、カンヴァスに映し出すところが大きな違いで、この仕掛けも物語の中で十分生きています。

 以上、たった三作しか紹介していませんが、それでもバラードのすごさは伝わったのではないでしょうか。私も全五巻、揃えたくなってしまいました。

月の部屋で会いましょう4

 私くらい本を読んでいると、どれを読んでも「その発想の驚かされる」なんてことはないのですが、この『月の部屋で会いましょう』では、驚かされました。人の想像力を超えた物語を紡ぐことが出来る男、レイ・ヴクサヴィッチ・・・。


月の部屋で会いましょう (創元SF文庫)
  • レイ・ヴクサヴィッチ
  • 東京創元社
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書評


驚異度 第1位 「母さんの小さな友だち」
 外見がふっくらとしてきて、知性が衰えてきた母親を見たら、あなたはどう思いますか。「ああ、母も年を取ったな〜」というところでしょうか。しかし、ここに出てくる子供たちは違います。母親はナノテクノロジーを牽引する博士として、ナノピープルのコロニーを体内に取り込んだころから変わり出したのです。それを、ナノピープルによる策略だと見抜いた子供たち。問い詰めると、

「だけど、私たちの立場に立ってみて、バリー。あなたの世界が足に板をはめて、時速六十マイルで雪山を滑りおりるとしたら、それを許しておく?」

 確かに・・・。でも、だからといって宿主の知性を奪い、ゆっくりとしか動くことのできないおばあちゃんにされたら、たまったもんじゃありません。さて、子どもたちは母親の体内からナノピープルを追い出すことができるのか。両者の駆け引きも見物です。

驚異度 第2位 「派手なズボン」
 草原で椅子に腰かけ、フルートとチェロを弾く男女。素敵なピクニックだ!と思いきや、演奏している女性の鼻が落ちた。男性の顔もずり落ちていく。二人の周りには血と肉片が・・・。二人の悲しみとあきらめ、互いへの少しの思いやりが伝わってくる良作です。

驚異度 そんなに でも好き 「彗星なし」
 彗星が衝突するときに、ある男が家族を守ろうと取った手段。それは紙袋を被ることだった!論理的には正しいことを言っているんだけど、誰からも共感されずに煙たがられる男の人って、ときどきいますよね。「ま、そりゃ離婚されるわ」と誰もが納得してしまう珍品。

 このように、ある意味星新一を凌駕する作品たちがずらりと34作も収められた本書。ぜひ、お見逃しなく!

もうひとつの〈夜と霧〉4

 ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』と言えば、言わずと知れた名作ですね。では、『もうひとつの〈夜と霧〉』とは、いったいどういう本なのか。期待して読み始めました。

 

 スピノザ:議事録係ベネディクトゥス・デ・スピノザ・・・・・・。
ソクラテス:正確な時間も書いておかなけゃ(「おかなけりゃ」では?)いけ
       ませんよ。
   カント:待った!意義あり。どういう意味ですか、正確な時間というの
       は?それで何を指しているのですか?ナチスドイツによって広
       まった中欧標準時ですか?グリニッジ標準時ですか?夏時間
       のことですか?


 「なんだ、これ。」というのは正直な感想でした。本書の第1部には、『夜と霧』の9か月後に完成した思想劇『ビルケンヴァルトの共時空間ーある哲学者会議』が収められているのですが、これが抽象的で難解。どうやら3人の哲学者が、ビルケンヴァルト強制収容所の様子をうかがいながら、天上で会議をしているという設定のようです。

 いや、設定自体はいいですよね。あの不条理な現実を、大哲学者たる3人はどう分析するのか、大変興味深いところです。しかし、いかんせんその情報を受け取る側の私の脳みそに問題が。結局何が伝えたかったのかよくわかりませんでした。何度も読み返したのですが・・・。『夜と霧』はあんなに読みやすいのになあ。


もうひとつの〈夜と霧〉
  • ヴィクトール・E・フランクル
  • ミネルヴァ書房
Amazonで購入
書評


 くじけそうになった時、第2部「フランクルの思想を読み解く」が始まりました。これがわかりやすい!!広岡義之先生によると、「フランクルは哲学者たちの口を借りて現代社会の問題を暗に批判している」ということです。また、先生は『夜と霧』についても解説を加えてくださっています。フランクルがスピノザの『エチカ』の一部、「苦悩という情動は、それについて明晰判明に表象したとたん、苦悩であることをやめる」を引用したことに触れています。

 先生の解説の中で私が一番納得できたのは、フランクルが考えた「めざすべき人間」についてです。ヒトラーの「政治はどんなトリックも許される一種の遊戯である」という言葉に反発し、カントの「人間はいかなる状況下にあっても、けっして単なる手段になるものではない」と重ねて、自分の考えを述べているそうです。「自分が他人を手段として利用すれば、他人も自分を手段として支配しその結果、人間の間には果てしなき戦いが生じることになる」・・・心に響きました。どんな人でもある人の目的のために利用されることはあってはならない、そう思います。
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