司書教諭・茉莉の気紛れ書き

   ここでは、「児童書では物足りない、かと言って一般書は難しい」中学生のために、某中学校で司書教諭をしている私がおすすめ本を紹介します。

チェーン・ピープル5

 三崎亜記さんは『となり町戦争』からずっと、日常生活を思いもよらない視点で描く作家さんだというイメージがあります。今回の『チェーン・ピープル』は6つの連作短編小説で、善とも悪ともつかない様々な人々や考え方が出てきて、どれも刺激的で面白い。「The プロの作家の書く小説」という感じでした。


チェーン・ピープル
  • 三崎亜記
  • 幻冬舎
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書評


 まず、衝撃を受けたのは「正義の味方」。実際にウルトラマンとその敵が現れたら、私たちはどんな反応をするのか、という視点で話は進みます。あぶり出されたのは、身勝手な大衆の論理。こういう在りもしないことを真剣に考えて突き詰める面白さの感じられる小説でした。

 次は「似叙伝」。「自叙伝」は自分で書いた自分の伝記ですが、「似叙伝」は自分の理想の人生をプロのライターに書いてもらった‟似非自叙伝”のことです。自己満足のために自費出版するだけならよいのですが、それが本当のことだと周囲に誤解され、本人もそのようにふるまってしまったら・・・という設定でした。これも、「真実は一つではない」ということが、小説を通して伝わってきました。

 本の帯にある「言葉は変わる、時代とともに。真実は変わる、記憶とともに。」は、この本の本質を表しているように感じました。この本を真ん中に据えて、いろんな人と語り合いたくなる、そんな小説です。

日本国勢図会 2017/183

 社会科の先生に「毎年学校図書館に入れてほしい」と頼まれているのが、『日本国勢図会 』。教科書のデータは、毎年更新されるわけではないので、地理・公民の授業では必携らしいです。では、その最新版を見ていきましょう。


日本国勢図会 2017/18
  • 公益財団法人矢野恒太記念会
  • 矢野恒太記念会
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書評


 まず、はじめに目を引くのが「世界10大ニュース」(P9)。いったいだれがどのようにして決めているのか、詳細は不明ですが、日付順で書かれています。世界バージョンでは、サウジとイランの断交からスタートしていますが、オバマが前年に国交を回復したキューバを訪問したり、コロンビアで政府と革命軍の間に和平合意が成立したりと、世界情勢が目まぐるしく動いているさまが見て取れます。そんな中、日本の外務省の予算が削られていること(P355)に気づいてしまうのも、この資料の面白さですね。

 統計資料がメインであることはわかっているのですが、各章のはじまりにある文章も価値があります。例えば、「第1章 世界の国々」(P13)では、「トランプ氏は、2017年1月の就任演説で「アメリカ第一主義」の政策推進を宣言した。国際協力体制で取り組んできた諸課題よりも国益問題を優先すると明言し」というように、非常に簡潔な文章で世界情勢が解説されています。すべての章のこの部分を読むだけでも、大人としての一般教養はクリアでしょう。

 また、それに加えて、解説欄も36項目あります。「デジタルプラットフォーマーの競争優位への懸念」(P418)の項目は、私にとって新しい視点になりましたが、「プレミアムフライデー開始」(P281)なんていう項目は何年か後には、「載せる必要はなかったな・・・」と言われる項目になりそうな気もします。編集者の方の問題意識が見て取れるこの「解説欄」は、かなりおすすめです。

 この情報量で本体価格2685円は安すぎる!大人の教養としても、一度読んでみてほしいです。


人と植物の文化史ーくらしの植物苑がみせるもの−3

 「朝顔」といえば、大抵の人は育てたことがあるのではないでしょうか。小学1年生の時、小学校のベランダで、誰のつるが一番伸びているか、競い合っていたことを覚えています。そして、夏休みに入る前に、家に持って帰った地獄の道のりも・・・。「ちびまるこちゃん」の中でも、そして現在でもその教育活動は変わらず続いているようです。

 そんな朝顔と私たちの関係ですが、日本の伝統園芸として、とくに江戸時代に「変化朝顔」の栽培ブームが起きたようです。「変化朝顔」とは、朝顔の突然変異で、八重咲きや花弁が細かく切れたり、反り返ったりするなど、花形が変化したものです。私は『人と植物の文化史ーくらしの植物苑がみせるもの−』で初めて、その存在を知りました。「本当にこれが朝顔?」と不思議に思う形の花ばかりで、江戸時代の人がこれを作るのに夢中になったのがわかる気がします。


人と植物の文化史ーくらしの植物苑がみせるもの−
  • 青木隆浩_::_国立歴史民俗博物館
  • 古今書院
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書評


 本書は朝顔だけでなく、桜草、菊、山茶花についても、日本人とその植物のかかわりが詳しく述べられています。図版が多く、目にも楽しい本です。私が特に印象に残ったのは、辻誠一郎さんが書かれた「桜を植える意味」です。春には桜の下でお花見をする「桜が大好きな日本人」ですが、「庭に桜を植える人はいない」と古くから言われているそうです。確かに、個人の庭先で咲いている桜は、あまり見たことがありません。そのわけは、・・・ぜひ本書で確かめてください。

Timjinの冒険 3

 『Timjinの冒険 機戮蓮¬嫺蓋いTimjinが盲目のご主人とともに、「タヒチ」「エジプト」「クレタ島」「」アメリカ西海岸・アラスカ」「ニュージーランド・ムルパラ」を旅したときの紀行文です。Timjinの視点で物語が進むため、景色や人に感動するたびに、それを「肌タッチ」でご主人に伝えている設定が新鮮でした。

 途中で旅の道連れ・マッチャンこと、広谷雅彦氏が登場します。彼は、本書で「ご主人の僕(しもべ)」だと紹介されていますが、この本の作者でもあるのですね。ここで、一つ疑問が浮かびました。Timjinのご主人って、架空の人物?前半のTimjinとご主人の二人旅も広谷雅彦氏が執筆しているんですよね?それとも、聞き書き?それにしては風景の描写が細かい、ご主人は目が不自由なのに。という、いまいち実話なのか、フィクションなのか、わからないまま話が進みました。


Timjinの冒険
  • 広谷雅彦
  • デザインエッグ社
  • 2225円
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書評


 旅の中で印象的なのは、現地の人との交流です。盲導犬を連れて旅するご主人が珍しいのか、心配してくれているのか、よくお家に招待されています。エジプトでは絵師さんのお宅、クレタ島ではあるお店の社長さんのお宅と、普通の人の旅ではありえない頻度でお呼ばれしているのです。これもご主人の人徳?

 私は自分自身が旅好きなので、「いいなぁ〜」とうらやましく思いながら、読んでいました。しかし、飛行機ではファーストクラスに乗ろうとしたり、高級ホテルに泊まったりと、私ではまねできないゴージャスな旅でした。

旧神郷エリシア (邪神王クトゥルー煌臨! )3

 「タイタス・クロウ・サーガ」最終巻『旧神郷エリシア (邪神王クトゥルー煌臨! ) 』を読了。このシリーズを読んだことがないのに、いきなり最終巻に手を出してしまい、少し混乱しました。今から読む皆さんには、是非1巻の『地を穿つ魔』か、中短編集の『タイタス・クロウの事件簿』から読むことをお勧めします。


旧神郷エリシア (邪神王クトゥルー煌臨! ) (創元推理文庫)
  • ブライアン・ラムレイ
  • 東京創元社
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書評


 ストーリーはよくわからないまま読み始めたものの、登場人物の魅力には、心を撃ち抜かれました。特に2
組のカップルがいいですね。

 まずは、前作で戦った風の邪神「イタカ」の娘アルマンドラと、地球(テキサス)出身のテレパス・シルバーハット夫妻から紹介しましょう。邪神に地球から連れ去られたシルバーハットが、惑星ボレアで父と戦っていたアルマンドラに加勢し、彼女が率いていた軍隊の将軍になったらしいのです。何だ、その運命的な出会いは。読んでみたいではないか!!

 アルマンドラは、神の血を引くだけあって、人間なのに人間離れした美貌らしく、神は真紅で瞳は碧、肌は雪のように白い美女。そして、いつシルバーハットが地球に帰ってしまうのか、心底おびえています。そんな彼女にシルバーハットは、「故郷はここだ。そしてわたしの人生はーきみだ。」というのです。「(地球には)きみに匹敵する女性もいないしね。あれほどの人口があっても、この世ならぬ美しさを誇りながら風に乗ることができ、稲妻さえ起こせる女など、一人もいやしないんだからな!」大好きな男性に、こんな風に「自慢の妻だ」と言ってもらえたら、最高の気分でしょうね。

 はじめは、特別な能力を持った地球男性が、別の惑星で大活躍し、超絶美人の奥方をもらうという男性にとって夢のファンタジーかと思いきや、ちょいちょい女性陣も満足させるように、男性陣が女性に向ける尊敬のまなざしも入ります。これは、男女ともに満足できる作品になっています。

 2組目はモリーンとド・マリニー。ウルタールに棲む猫たちは、特別な力を持っており、よい人間と悪い人間を見分けたり、真実を見抜いたりします。そんな猫たちが、モリーンの足元に集まって、彼女を敬うように見上げたり、満足げに鳴いたりする場面が心に残りました。このモリーンも前作で大変な目に合うところを、シルバーハットやド・マリニーに助けられているようで、ますます前作が気になります!

 とにかく、登場人物が魅力的すぎる「タイタス・クロウ・サーガ」、ぜひご一読ください。
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