司書教諭・茉莉の気紛れ書き

   ここでは、「児童書では物足りない、かと言って一般書は難しい」中学生のために、某中学校で司書教諭をしている私がおすすめ本を紹介します。

コンピューターってどんなしくみ?4

 将棋界で藤井聡太六段(←いつまで六段かわかりませんが・・・)の快進撃が続く中、彼が幼少期に夢中になったキュポロというスイス製の立体パズルの人気に火が付きました。確かに、空間認知力を鍛えてくれそうなフォルムです。私も購入を試みたのですが、予約すら受け付けてもらえない状況でした。

 そんなとき『コンピューターってどんなしくみ?』に出合い、運命を感じました。これは「子供の科学★ミライサイエンス」シリーズの一冊で、「子供の科学」と言えば、私が尊敬する森博嗣先生が小学3年生から愛読していた雑誌ではありませんか。さっそく読んでみました。


コンピューターってどんなしくみ?
  • 村井純_::_佐藤雅明
  • 誠文堂新光社
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書評


 黄色とオレンジという、なぜか食欲をそそる配色で、知りたがり屋のネズミのチュータと、博士のミライネコがコンピューターの仕組みからその未来まで、わかりやすく写真や図で解説してくれます。すべての漢字にふりがなが打たれており、こういう本を熱心に読む小学4年生がいれば、秀才への道は約束されたようなものです。

 ちなみに、機械オンチの私が興味深く読んだのは、「インターネットは動画がニガテ?」です。YouTubeの動画が時折フリーズしてしまう原因がなんとなくわかりました。パケットですよ、パケット。しかし、グーグルさんがストリーミングという方法を考案してくれたおかげで、あまりストレスを感じずに見られるわけですね。そして、二度目に見るときはスムーズにみられるのは、キャッシュのおかげ。物事の名前を知ると、一気に仕組みがわかったような気になりますね。

 子どもにこれを読ませた後、古くなったパソコンを一緒に分解したら楽しそう!そして、一緒にPlayStation VRをします。キュポロはないけれど、これだって十分な英才教育ではありませんか?

お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学5

 私たちの身の回りには、行動経済学の成果があふれています。例えば、公衆トイレの「いつもきれいにお使いいただいて、ありがとうございます」という言葉。いつのころからか、「トイレはきれいに使いましょう」ではなくなりました。「環境に小さな変化を加えることで、人々に最良の行動を促」す行動経済学の知恵が、トイレに生かされているのです。

 さて、そんな行動経済学を一般に広めたのが、ダン・アリエリー教授。今回は「NHK白熱教室」で放送されて話題となったアリエリー教授の講義を本にまとめた『お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学』を紹介します。


お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学
  • ダン・アリエリー
  • 早川書房
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 〈人間は不合理な存在〉
 二つのグループにワクチン接種の重要性を説明します。
Aグループ:説明だけ          → 3%の人が接種に行く。
Bグループ:説明 + 場所と日時  →26%の人が接種に行く。
こんな風に少し説明を付け加えるだけで、人々の行動は大きく変わります。

 〈ソーシャル・プルーフ 人間のもつ同調性〉
 通信販売で売り上げが倍増した言葉があります。
「オペレーターがお待ちしています。お電話ください」
          ↓
「電話がつながらない時はおかけ直しください」
どこが客を引き付けたのか、皆さんも想像してみてください。

 他にも「ダイエット」や「お金」、「仕事へのモチベーション」など、ためになる情報が満載です。この本を読んで、自分も他人もしっかりコントロールしてください。

イートン校の2羽のフクロウ3

 最近日本でもフクロウカフェが人気を博しています。かくいう私も、最近フクロウ動画を見て、「かわいい・・・、飼いたい・・・」という煩悩にまみれる日々。そんなとき、ジョナサン・フランクリン『イートン校の2羽のフクロウ』という本に出会って、手に取りました。


イートン校の2羽のフクロウ
  • ジョナサン・フランクリン
  • エクスナレッジ
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動物好きの少年・ジョナサンが、ひょんなことから2羽のモリフクロウを保護。イートン校の寄宿舎でともに生活をはじめるが、自由なフクロウたちは、規則や伝統にはおかまいなし。寄宿舎のジョナサンの部屋をめちゃくちゃにし、日常生活をかき乱し、ユニークな騒動を巻き起こしながら、学校中の人気者となっていく。


 この本を読んでフクロウを飼う決意がより強固になったかというと、逆です。やっぱり、飼うのは大変そう。部屋で放し飼いにすると、当然部屋の中でフンはするし、餌である鼠を解体し、内臓を出して、半分にしてフクロウに与えるジョナサンを尊敬はしますが、私にはできそうにありません。

 かわいいだけで、動物は飼えない。ジョナサンは野生に戻すところまで面倒を見ているのですから。覚悟ができるまではお預けですね。

ハイ・ライズ3

 J・G・バラードの中期の傑作『ハイ・ライズ』を読みました。あらすじを紹介します。

ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校まで備えたこの一個の世界は、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の上層部に階層化していた。全室が入居済みとなったある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。


 私も老後の住処は、こういうビルがいいな〜と想像したことがあります。吹雪の日でも、ビルから一歩も出ずに買い物をしたり、ジムで体を動かしたりできる駅前のマンション。歯医者もクリーニング店もあって、駅とは連絡通路でつながっているという、いたせり尽くせりの環境ですよね。しかし、自然の中で暮らして、日々のウォーキングは美しい景色を見ながら・・・という野望もあって、決めきれません。


ハイ・ライズ (創元SF文庫)
  • J・G・バラード
  • 東京創元社
  • 994円
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 さて、物語は高級高層住宅の中で進みます。ビルの入り口近くに駐車スペースを持っているのは上層に住む人々です。屋上を使うのも、高速エレベーターを使うのも彼らで、次第に彼らは特権階級のように振舞い、中層・下層に住む人々を軽蔑し始めます。

 そんな中で下層に住む人々も負けてはいません。ビルからビンを投げ捨てて、入り口付近に駐車してある高級車のフロントガラスを割ったり、高速エレベーターにゴミを撒いたり。そうすると高層の人々は下のプールまで下りてきて放尿するは、空調システムに犬の糞を投げ込むは、もはや手が付けられません。実業家や医者、テレビ関係者といった知的な人々の集まりであったはずが、知性のかけらもない泥仕合を演じるのです。

 口では大変なことになったと言いながらも、出ていく気配のない住人たちは、この野蛮な世界に興奮していたのだと思います。知的であっても退屈な生活から、野蛮でもエキサイティングな生活に次第に巻き込まれていく様は、半分信じられない、でもどこかわかる気もする、不思議な世界観です。

 強い男に支配されたがる女性、しかし、最後は女性たちで団結する様子にも共感しました。

3

 「アイスランド」と聞くと、火山によって作られた美しい自然と温泉が思い浮かびます。しかし、そこに住んでいる人のメンタリティって考えたことがありませんでした。



  • アーナルデュル・インドリダソン
  • 東京創元社
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書評


 アイスランド人の生活や考え方の一端がのぞけるのが、アーナルデュル・インドリダソンの『声』です。クリスマスシーズンに、あるホテルのドアマンが地下の自分の部屋で殺されました。事件を担当するのは、『湿地』『緑衣の女』でおなじみの犯罪捜査官エーレンデュルです。

 いつもながら、ミステリ以上にいろいろなところが気になりました。まず、一つ目は人の名前の特殊さです。主人公のエーレンデュルを筆頭に、同僚はエリンボルクとシグルデュル、被害者はクドロイグル、気になる恋のお相手にヴァルゲルデュル。男女の区別すらつきません・・・。

 また、登場人物の行動から、アイスランド人のメンタリティに不安を覚えます。捜査の陣頭指揮を執るエーレンデュルは、捜査中突然そのホテルに泊まると言い出し、みんなを困惑させます。そして、クリスマスビュッフェに並ぶ御馳走を盗み食いしてコック長に怒られたり、捜査中に関係者の唾液を採取しに来た女性を食事に誘ったりするなど、日本人からすると規範意識に乏しいところが・・・。でも、アイスランド人が皆こうというわけではありませんよね?

 暖房が壊れている寒い部屋をあてがわれ、幼いころに雪山で遭難したことを思い出す部分は、うまく構成されています。そして、3組の父子の関係を重層的に描き出して、家族のあり方を考えさせる部分も大変読みごたえがあります。軽薄さと重厚さが入り混じった、不思議な魅力のあるアイスランド・ミステリ。ぜひ、ご一読を。

 
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