悪が懲らしめられ、正直者が幸せになる日本の昔話とは一味違うのが、このアンドルー・ラング『だいだいいろの童話集』である。これは世界各国の民話昔話をイギリスの学者アンドルー・ラングが収集したものである。

 「泥棒のピンケル」・・・親切に働き口を紹介してくれた魔法使いから、金のランタンやら金の角を持つヤギ、金のマントを盗んでまんまと王にまで上りつめるピンケル。恩を仇で返すとはまさにこのこと。「ああ、魔女さん。ぼくは大悪党だとも!」という捨て台詞つき。悪いことをしても幸せになれる昔話が多いのが気に食わない!
「三つの宝」も人を騙して手に入れた宝である国を乗っ取る青年の話。いいのか、それで!?

 「白い雌ジカ」に出てくる王子もひどい。美しいデジレ姫の肖像画を見た王子は、婚約者がいるにもかかわらず、「デジレ姫と結婚できなければ死ぬ」と駄々をこねる。婚約を破棄すれば戦争になるとわかっているのに。結婚が決まっても「3ヶ月も待つなんて死んでしまう」と駄々をこねる。しかも嫁いで来たのが不細工な娘だったので、城を勝手に飛び出すのだ。「なんて無責任な!」しかし、この王子は最後は幸せをつかみ、めでたし、めでたし・・・ちなみに不細工な娘は島流しに遭います。

 世の中の不条理を感じますね。やっぱり人間、美しさか財力、社会的な地位がないとダメってことがこの童話は言いたいわけです。(あとは知恵かな)けっこう突っ込みどころが満載の童話集で、道徳の教材にはなりそうにありませんが、ちょっとした毒を含んでいるところが最高に面白いです。

 「ふたつの小箱」「ベリャ・フロール姫」は正直で優しい者が報われる話なので、ほっとします。


だいだいいろの童話集
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書評/SF&ファンタジー