注意

このブログは、韓国で研究者として働く一科学者が、時に、科学者として、一日本人として、国際結婚した一人の女性として、一人の母親として、様々な分野にわたる個人的に関心深い話題(生命科学、歴史、戦争、ニュース、世界情勢、韓国、日本、歴史、スピリチュアルなことなど)について語るブログです。ライブドアブログのランキングでは「日記」と「国際結婚」、人気ブログランキングでは「社会・政治問題」「韓国(海外生活・情報)」「国際恋愛・結婚」「生命科学」「スピリチュアル」のカテゴリーに登録されています。話題が多岐に広がりますので、それぞれのカテゴリーからやって来ても全然違うカテゴリーの話題である場合があります。特定のカテゴリーの記事をお読みになりたい場合は、関心のあるブログ記事カテゴリーを右に表示の「カテゴリー別アーカイブ」からお選びになってから、記事にお進みくださいませ。


 

皆さま、こんばんは。

今日も、このブログにお立ち寄りくださり、ありがとうございます。


今週は私たちサイエンティストにとっては、ノーベル賞ウィークで毎日ドキドキして発表を待っています。

と言っても、私の場合、自分の名前が呼ばれるかという高レベルなものではなく、私たちの知っている(使っている)技術や発明、また知っている研究者が呼ばれるかというレベルです。

今、日本は北朝鮮解散で総選挙に向けてバタバタしており、日本人の受賞者が出ていない今年のノーベル賞はそっちのけ~な雰囲気ですね。

今年2017年ノーベル賞を授与された「体内時計(サーカディアンリズム)の仕組み」(医学生理学賞)「重力波の発見測定」(物理学賞)「低温電子顕微鏡法(Cryo-EM)」(化学賞)の研究は、とても偉大です。

体内時計は、皆様も身近に感じられるのではないでしょうか。時差ボケでどうやって体内時計が調整されていくのか不思議に思ったこともあるでしょう。虫たちや植物たちも昼や夜、どうやって適応するのだろうと。

Cryo-EMは私たちもやってみたいと思っているのですが、なんしか韓国にはありません。イギリスや日本で知り合いの研究者がやっていて、とても羨ましく思っています。

どれもこれも、話を聞いてみれば、きっと目をキラキラ輝かせて食いつく子供達がいるかもしれないと思うんです。

しかし、日本人が受賞しないと、あまり騒ぎもしないというのは、まさに日本の科学への関心の低さを示している気がします。


私は、日本に一刻も早く帰国したいのもあって、日本の大学研究機関での公募を毎日チェックします。

最近、私の故郷奈良の大学で、助教授の公募が出ていたのですが、「任期五年、延長あり、最大で二〇二四年の三月末まで。」というもの。

助教授のポジションで最大で七年?時間のかかる研究に七年?七年で結果出せ、出してもそれ以降はどこか他で働いてください、お金ないんで、ってこと?

もうどうにかして欲しいですよこの任期付き。いつまで続けるんですか、こんなこと。

過去記事にも触れましたが、長い時間が必要なんですよ研究は。研究者は決して怠けているわけではありません。

ips細胞の山中先生、オートファジーの大隅先生も言及なさっています。じっくり腰を据えて研究に没頭する長期研究が必要だ、と。任期五年なんて立ち上げだけで軌道に乗ったと思ったら終わりですよ。馬鹿らしい。


今年の受賞者はアメリカが優勢です。なんでアメリカにはノーベル賞が多いのでしょうか。

簡単です。お金をバンバンあげて思い存分研究させてきたからですよ。だから研究者はアメリカへ行くし、アメリカで面白いアイデアが自由に生まれるわけです。

今年のノーベル賞有力候補と言われていた「CRISPR/Cas9遺伝子編集」の研究は、フランス人女性研究者によってなされましたが、フランスでは研究費がもらえずにアメリカに逃げたと言っても過言がない研究者らでした。それがアメリカでCRISPR/Cas9で大ブレイクしたわけです。多かれ少なかれ、この研究はノーベル賞を受賞します。

しかしそんなアメリカも、悲しいことに研究費削減が止まることありません。

今私たちが見ているノーベル賞は過去二十~三十年以上前の研究成果で、受賞された博士たちが若い時代二十代~四十代の時になさった研究でもあります。

この二、三十年の研究成果が評価される未来、徐々にノーベル賞受賞者が世界的に減っていき、日本はその中でもとりわけすごい勢いで減少していくことでしょう。

一体、研究者はどこへ行けばいいのでしょうね。


お金お金と言うといやらしいと思われるかもしれませんが、実際、研究費がないと研究は完全にストップです。私たちの給料でやっていけるものでもありません。なんども言いますが、実験に使う機器、試薬、消耗品、全てめちゃくちゃ高いんです。金がなくても工夫しろと言われても、どうしても必要な機器類など、手が届きませんよ。

どう頑張っても、抗体は50マイクロリットルで3~8万円はするし、この抗体でChIPシークエンスでもしたら、一瞬で無くなります。私たちもやりたい実験は山ほどありますが、なんしかお金がないのでできないのです。でも、論文を書いて、「あの実験しろ、この実験しろ」と言われれるわけですが、「金がないのでできません」とは言えないわけです。

このように、研究費が少ないとできる実験は限られ、少ない研究費でも当てるために無難な研究内容で申請するしかありません。斬新なアイデアではむしろお金がもらえないんですよ。本末転倒ですよね。 

ちなみに、私たちエリックラボは借金だらけです。

不当な理由でエリックへの外的資金が入らなかった昨年から、私の小さな研究費でやっていかねばなりませんでした。
しかし、大学から研究費をくれるどころか、努力してやっともらった研究費の三割を大学が吸い取り(このお金は巡り巡って、暇そうな文系教授の給料の一部になっています)、残りで研究を回していかねばなりません。
以前、少し触れたかもしれませんが、このなけなしの研究費の中から、私の給料と、学生たちへの給料(これは韓国のみの悪伝統)を支払っていますので、正味研究に使えるお金は、年間80万円くらいですよ。ありえます?こんなこと。それなのに大学は「論文出せ出せ」言ってくるわけです。

韓国のチュソク休日が終われば、ウェスタン解析に使うメンブレンを注文しますが、これも3万円以上します。払えねーし。でもなければ実験できませんし。付けで買うしかありません。80万円なんてあっという間に消えます。

これは決して韓国だからというものではないと思います。多かれ少なかれ日本のどこかの研究室で同じ状況の研究者がおられることと思います。

日本はそれでもどんどん研究費を減らしています。


約4ヶ月前の3月23日、有名な科学雑誌ネイチャーに日本の科学についての記事が載りました。それは、日本の科学停滞についての悲報です。とはいえ、私たち科学者たちは前からわかっていたことなんですけどね。

すぐにブログ記事にしたかったのですが、その頃、徐々に朝鮮半島状態が緊迫してきたので、なかなか取り上げることができませんでした。

まずは、このネイチャー記事が出た後、早速、毎日新聞が取り上げました。

http://mainichi.jp/articles/20170323/dde/007/040/019000c

コピペ

日本科学停滞、8%減 「政府の支出手控え、原因」 ネイチャー指摘

毎日新聞2017年3月23日 東京夕刊


英科学誌ネイチャーは23日、日本の著者による論文数が過去5年間で8%減少し、日本の科学研究は失速していると発表した。日本政府が研究開発への支出を手控えた状況が反映されたという。

 同誌は「日本は長年にわたり世界の第一線で活躍してきた。だが2001年以降、科学への投資が停滞し、高品質の研究を生み出す能力に悪影響が表れている」と指摘している。

 学術誌68誌に掲載された論文の著者が、どの国出身で、どんな研究機関に所属しているかをまとめたデータベースを調べた。12年から16年の5年間で、中国の論文数が48%、英国が17%伸びた一方、日本は8%減少した。米国も6%減った。研究開発への支出額は、ドイツや中国、韓国などが大幅に増やす中、日本は01年以降、ほぼ横ばいだった。

同誌は、16年にノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典・東京工業大栄誉教授の成果にも言及。若い研究者の待遇改善が重要だと指摘した。

コピペ終了


そのネイチャーの記事はこちらのリンクへ行っていただけると見ることができます。(注:英語です。)

http://www.nature.com/nature/journal/v543/n7646_supp/full/543S7a.html

http://www.nature.com/nature/journal/v543/n7646_supp/full/543S10a.html


簡単にいえば、年々、日本からの論文が減り、ネイチャーなどのレベルの高い科学雑誌への論文掲載も下がっているということです。全体的に見て、科学界における日本のシェアは右下がり。一方で、中国が急激に論文数もシェアも上げまくっています。

ネイチャーがこれを取り上げるということは、つまり、「日本、なんとかしないといけませんよ。」という警告の意味でもあると思います。

しかし、これは日本に限られた話ではなく、アメリカもフランスも実は科学研究費を減らしています。政府は、これまでの科学の基礎研究に基づくサイエンスの発展による恩恵に暮らしながら、基礎研究の現状が全くわかっていない、と言わざるを得ません。

科学は放っておいても勝手に発展すると思ったら大間違いです。

時代が進むにつれて、実験も高度化し、論文一報書くために必要な実験結果の量は、甚だしく増えていて、コストも上がっている上、論文はなかなか通りません。「ある遺伝子の配列を決定しました。」だけで論文になっていた時代とはわけが違います。

次世代シークエンサーや、X線解析シンクロトロン、また物理学になると、私も見たことないようなでっかいマシーンが必要になってきます。

これまでの科学研究費で、同じだけ、いやそれ以上の論文数を出してくれ、というのは到底無理な話です。

さらに、科学研究費が抑えられると、科学界は世知辛い状態となり、競争心から論文をなかなか通さない状態となっています。
論文は、他のその道の専門家である研究者によって審査されます。この審査員は、すなわち、同じような研究分野のライバルであることが多いので、正直、論文を通したくありません。ライバルの論文を通せば、ライバルに研究費を取られ、自分が研究費をもらえなくなるかもしれませんから。

おそらく研究者なら誰もが経験したことがあるかもしれませんが、審査結果は、度々、実行不可能な無理難題を押し付けてきたりして、なかなか論文が受理されないこともあります。筋の通った言い分なら、黙って追加実験もしますが、ただのいちゃもんにしか思えないコメントもあって、本当に苦労します。

研究費がなくて困っている状況が平常化してしまうと、活気もなくなり、停滞してしまうのもおかしくありません。

この日本の科学停滞について、大阪大学の仲野徹先生が書かれた記事を見つけました。大変的を得た内容で簡潔に日本科学界の問題を提起しておられます。

日本の科学研究―地盤沈下は止められるのか

問題点を整理すると、
1、 科学研究費(特に基盤的経費)が少ない。
2、 競争的資金も少ない。
3、 研究の芽をつむ偏った研究費配分。(有名どころは研究費があっても、他には全く回ってこない。)
4、 ポスドク(博士研究員)を多く輩出したはいいが、アカデミアの常勤ポストがなく、ポスドクが溢れている。
5、 任期付採用制度という悪しき制度。
6、 その姿を見てきた学部生や院生たちが、博士号まで行こうとしない。(理系離れ)
7、 若手研究者の自立意欲が低い。
8、 大学教員の意識が低い。

全くもって同感です。
また、読者の方が教えてくださった最近の記事もこちらにリンクを貼らせていただきたいと思います。青山祐輔記者が、日本の研究低迷の問題点についてわかりやすくまとめてくださっています。

日本のアカデミズムは危機にあるのかーーノーベル賞受賞者も継承

今、科学者で、懸念しない人はいないと思います。私のような小さな研究室の研究者から、ノーベル賞受賞者まで、科学に関する懸念はどんどん大きくなるばかりです。


今日もお読みくださりありがとうございました。 

 


皆様のクリックが励みになっています。
本来の日本を取り戻すため、
清き水を流し続けましょう。


人気ブログランキングへ  
私の4コマ漫画ブログ「サイエンティストは魑魅魍魎」もよろしくお願いします!

 

「韓国に住んでいるのに韓国の悪口を言っている」と思う方がいるかもしれない。私の言葉をどうとるかは読者の皆様次第。私は、韓国という国の、そして韓国人の生の姿を現地から伝えている。そこに美しいものを見ればそのまま伝える。出来れば、美しいものにたくさん出会い、紹介したいところだ。日本にとっても、韓国にとっても、現実から目をそらさず向き合い学ぶことが必要だ。両国のためにも、私は生の姿を語り続ける。それがいかに耳が痛いことでも。これが私が韓国に住まわせていただいている私なりの韓国に対する恩返しでもある。