昨日は今月になってNo1のお天気、女房殿は実家の「バアちゃんデー」
に参加するため、朝9時には車で家を出た。
今日は車がない、だからといってこんな日に家でごろごろするのは・・・
よし決めたあ、今日は歩こう。
ただし、本日は少し趣向を変えて、バスで久留米駅まで進出して、
そこから歩いて引き返し、いつものスパリゾートで温泉浴することに、
概略3時間もあれば十分と見積った。

10時に家を出て近くのバス停に着いたら、時刻表を間違えていたのか
12、3分の間が出来てしまった。
こういう場合、歩き慣れてる仙人は、よし行けるところまで歩こう、
結局3つ先のバス停まで歩いた。
そのバス停は仙人が通った中学の正門の直ぐ前にあり、そこには
黒い毛糸の帽子を被った婆ちゃんがひとりバスを待っていた。
バスが来るまでのちょっとの間の退屈凌ぎに
「お婆ちゃん この辺りに昔お店屋さんがあった筈だけど
 知ってますか?」
「ああそりゃあ こん家たい」
と目の前の家を指差した。
「ああたは ここのもんじゃなかごたるばってん生まれはどちらで
 あんなさるの?」
と逆に質問されたので、自分はひとつ隣の集落の出身であること、
今は廃校になったこの中学を卒業し、以後は何十年も故郷を離れて
いたことを30秒程度で話した。

「ところであたしゃ幾つに見えますかの?」
と突然話題を変えて来たのでちょっと戸惑ったが、直感的に80
ちょっと前ぐらいと思った、だがそこはそれ老いたりとはいえ
相手が女であることに若干配慮しつつ、
「うーーん、75か6じゃなかですか?」
「ぞうたんのごつ ああた あたしゃ88ですばい」
いや、これを聞いて正直驚いた。

よし、こっちも話題を変えてやろう、
「お婆ちゃんはなかなかの美人だから、若い頃は周りの男性が
 黙っておかなかったでしょうね」
「・・・・」
「言い寄って来た男が二人も三人もおったとじゃないですか?」
「んまあっ ああた そげん昔の話しば・・・昔のこつは忘れて
 しまいましたばい」
「そうですかあ、わたしは昔のこともよく覚えていますがねぇ」
「ん、・・・まあそりゃ・・・おらんこつもなかったばってんかのう・・・」
よし、あと少し・・・、
というときにバスがやって来た。
やっと犯人が自供を始める気持になってたのに、もおっ。

バスが停まると、婆ちゃんは平気でひょいひょいとバスの
タラップを上り、車内も全く危なげなくスタスタと歩いて
前方のシルバーシートにトンと掛けた。

婆ちゃんは西鉄久留米駅で降車するとき、ちらっと後ろを振り返り、
仙人の顔を見付けると「ほんならのう」と言いながら降りて行った。


88になっても人間は簡単に枯れるものじゃなかねぇ、
誰にもそれぞれに青春時代はあったのだ。

 (昭和20年代のものだと記されていた)
20年代の女性







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2011.11.30     晩秋の仙人の庭5