2006年07月29日

くちのかたち

餌付けは魚飼育の醍醐味だし、苦労だし、最初の難関である。しかし難易度は魚によってめちゃめちゃ違うし、魚の生態を考えればアクロバティックともいえる餌付けに成功するケースもある。ものの本によれば「ポリプ食は難しい」だの「ヨコエビしか食べない」だの書いてあるが、思うに「食べたくないものを無理に食べさせる」行為をするから話がややこしいのであろう。ポリプ食と最初からわかっているなら、サンゴを餌にすりゃいいじゃんか!(極端だが)
それよりも実は、「食べにくいものを食べさせる」ことのほうが難しいのではないかと思うのだ。動物は生態系位置に従い、高度に体の器官を発達させている。その場所で得やすい食べ物を食べやすく進化してるのだ。端的に言えば「くちのかたち」がそうなっているから、それを食べる、というものだ。そこで、「くちのかたち」別に我が家の住人たちを見てみよう。

ネオンのくちネオンテンジクダイは、生活の仕方を見てもプランクトンフィーダーだろうなとひと目でわかる。浮いている細かい餌をちくちくと食べるので、コペポーダがあれば何の心配もない。体が小さいからと言っても、さすがはマウスブリーダーだけのことはあって、自分の体長の3分の1くらいあるようなブラインでも丸呑みしてしまうから驚きだ。いまではコペよりブラインのほうが全然お気に入りである。

キャンディのくちオレンジストライプのくちご存知キャンディは動物食で、ハンターだ。目もデカイし口もデカイ。瞬間的に反応してアッという間に飲み込んでしまう。
近縁のオレンジストライプも同じで、彼らに「餌付け」という行為はいらない。嗜好性さえ合えば、与えれば即食べる。食べるというより条件反射で餌らしきものに飛び掛り、飲み込んでしまうような感じだ。逆に、いつでも餌は食べるので、餌さえ食べれば調子がよいというものではない、ということも学んだ。

ココスのくち2ケントロの中でもクシピポプス属、そしてクシピポの中でもココスやレンテンなどが属するグループは、オールマイティである。上クチビルのほうがやや出っ張っていて基質(岩など)の上の苔や海綿をついばむのも得意だし、浮き餌を丸呑みするのも得意だ。どっちもいけるだけに嗜好性も幅広い。そして、餌をやればやるだけ果てしなく食べようとする姿勢は飼育者を安心させてくれる。本人にはいい迷惑かもしれないが、数日家を空けるときなど、出かける前にシコタマ食べさせておくことができるので、精神衛生上もありがたい。

シマヤッコのくち2目下最大の課題であるシマヤッコはパラケントロ属らしく小さなかわいいクチバシを持っている。これは飲み込むより齧るタイプの口で、飲み込みが下手だがら浮き餌に弱い。しかも藻食性とくれば難しいに決まっているが、以外にフレークを好むことがわかった。ちょっと見た目が海藻に見えたのかもしれない。
そうそう、それと「決して一度にたくさん食べない」ということも特筆すべきかもしれない。いつでも食べられる苔が主食だからか、あるいは集中的に食べ過ぎて餌場を壊してしまわないための配慮(?)からか。なので、1時間おきに少しづつ、みたいな餌の与え方をする必要があるので、非常にヘビーである。これも「一度にたくさん食べる訓練」をしてもらうしかないと思われる。

キイロサンゴハゼのくち2カニハゼのくちキイロサンゴハゼに代表されるコバンハゼの類は一見餌が難しそうであったが、瞬時に餌に反応するところや正面に口があるところから見て、実は浮き餌に強く餌付きやすい。一方でカニハゼなどのベントス食性ハゼは難しい。そもそも砂から餌を漉しとるのが商売で、浮いている餌を食べる必然性もないし、流れる餌を追いかける遊泳力もない。しかし十分餌付くと、下手は下手なりに待ち伏せして、デカイ口を大きくあけて、ひと呑みにするようになる。口の大きさだけが幸いした感じだ。

マンダリンのくち2我がアクアリウムの奇跡はマンダリンである。何しろ岩の上をズリズリ這ってヨコエビなどを見つけて食べるため、泳ぎより匍匐が得意だし口のかたちもストローのようにピンポイントで見つけたものを至近距離からついばむようになっている。その彼に浮いているブラインを食べろというのも酷い話だが、ウチでは「小甲殻類=嗜好性あり」というただその一点でブラインに強引に餌付いた。しかし、あまりにも食べるのは下手で、ガラスを利用して高い位置まで這い上がる訓練や、流れる餌をホバリングして追いかける訓練、そして何ども失敗してもくじけずに挑戦する根性を身に着けて、ようやくブラインで太れるくらいになったのだ。

以上、くちのかたちに適合しない餌(=浮き餌)を人間が無理やり与えるので、魚たちは天から与えられた特殊能力を使えず、訓練によって不慣れな餌を食べている。ほんとうは元の食性から考えた栄養価を意識し、できれば得意な形状にした餌を与えてやりたいものだが、とはいえ訓練の力は恐ろしく、今も我が家のマンダリンは胸鰭のホバリングにより水槽の中層あたりをうろうろしている。自然界なら一発で捕食者に襲われるところだろうが・・・


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この記事へのコメント
森蔵さん、はじめまして!
以前から勝手にリンク張らせていただいてましたm(__)m

餌付けの記事といい、先日のトサカと白点病の記事といい、とっても参考になります。これからも更新楽しみにしてますね。

よろしくお願いします!
Posted by ぴょんた at 2006年07月29日 17:52
ども、森蔵です。コメント有難うゴザイマス。<b>ぴょんたさん</b>もエーハイムの水槽なんですね。僕は同じくエーハイムの30cmのものです。安いし軽いし♪
Posted by 森蔵 at 2006年07月30日 09:40