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卒業式が行なわれました。
今年は、4人の卒業生が学び舎を後にします。
副将の中西譲仁くんは、産業社会学部キャリアデザイン学科の代表として、卒業証書を受け取りました。
平井由美・元マネージャー(昨年卒業)も、祝福に駆けつけてくれました。

   航海日誌  (修了記念誌『光と影』より)

実力が同じくらいの選手がいる場合、私は上級生を起用することにしている。経験とは、それほど貴重なものなのである。春季リーグ戦、4人の四年生を全試合に起用した。

私が監督へ就任したときに、時間を巻き戻してみよう。2年前の春に、私は本学に赴任してきた。新しく設置されたスポーツライフコースの教員としてである。航海の初日に野球部の部長に任命された。野球部員のゼミを担当(生活指導、学習指導)することと、公式戦を見守ることが、主な仕事であった。

ところが、春季リーグ戦を終えると監督の要請があり、しばらくは、その要請を断り続けた。あくまでも、本学には研究者として来たつもりだったのだから。私が監督になったら、部員が減ることも危惧された。監督としての仕事は、「立て直す」ということであった。けっきょく、教育者として、男として、監督を引き受けることにした。

チームを立て直すために、ルールを守れない者は、船から降りてもらうことにした。無断で練習を休む者、時間を守れない者、煙草を吸う者、授業をサボる者、練習態度の悪い者。すべて、チームを去ってもらうことにしたのである。


予想したとおり、部員や保護者から多くのクレームがあった。高校野球を指導していたときの半分の厳しさで接していたにもかかわらずである。だが、そんな暴風に屈することはなかった。「正しいことをしている」という信念が、揺れる船を支えていたのである。

4人の卒業生は、最後まで私を信じてついてきてくれた。周りがどんな勝手な行動をとろうとも、どんなわがままを言おうとも、決して船をぐらつかせようとはしなかったのである。そんな彼らを信じて、最後まで戦おうと決めた。船に踏みとどまり、嵐を乗り越えた経験に敬意を表したのである。彼らは、その気持ちにしっかりと応えてくれた。嵐を乗り越えた4人の前には、大きな青空が広がっていた。

真面目さは全国レベルの主将・大貫、優しさは全国レベルの榎坂、根性は全国レベルの國武、思いやりは全国レベルの中西、彼らの奮闘ぶりは、後輩たちの記憶にずっととどめられることであろう。みんな卒業おめでとう。


今わが船は、静かな海を走っている。新1,2年生には、嵐があったことさえ分からないほど、海は穏やかである。総監督が経験という名の羅針盤をもち、私が信念という名の舵を握り、清水新主将が正義感という名のオールをもって、船は確実に目的の島へと進んでいる。
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