2015年12月12日(土)-13日(日)インゼミ

今年も慶應義塾大学の金子勝ゼミ、井手英策ゼミと3ゼミによるインゼミを開催いたしました。

日時:2015年12月12日(土)-13日(日)
場所:12月12日(土)13:00-18:00 京都大学吉田キャンパス法経本館 法経2番教室/
12月13日(日)9:00-12:00 京都大学吉田キャンパス法経東館 法経3番教室



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諸富ゼミの報告内容は下記になります。

2015年度 諸富ゼミ財政班 インゼミ論文
「京都市の新しい役割 〜特別自治市からみる大都市制度の在り方〜」
――目次――
*序章

*第1章 政令指定都市制度の現状と改革
1-1 指定都市制度の沿革と課題
1-2 指定都市制度の課題
1-2-1 指定都市・都道府県間での二重行政
1-2-2 大都市特例事務に必要な税制上の措置不足
1-3 大都市制度改革事例
1-3-1 カナダ・トロント市
1-3-2 大阪都構想
1-3-3 特別自治市構想
1-4 事例分析
*第2章 京都市の現状
2-1 京都市の概要
2-2 京都市の産業的特徴
2-3 京都市の財政状況
*第3章 政策提言
3—1 特別自治市のメリット
3-2 区の住民自治機能強化に向けた京都市版コミュニティカウンシルの提案
3-3 周辺自治体の行政サービスの低下について
3-3-1 事例分析
3-3-2 京都市版連携中枢都市圏構想の提言
3-4 産業投資の展望
3-4-1 産学官連携の強化によるイノベーション創出
3-4-2 観光産業への投資
*第4章 政策提案に関する試算
4-1 特別自治市導入後における重点的産業投資の予算の算出
4-1-1 京都市に集約される財源
4-1-2 京都府から京都市へ移譲される事務費用
4-1-3 製造業・観光業の重点投資の予算
4-2 観光投資がもたらす効果
4-3 まとめ
*終わりに
―――概要―――
現在、人口という観点からも、産業という観点からも東京一極集中が深刻な問題となっている。増田寛也氏による、いわゆる「増田レポート」によれば、2040年には全国で523の市町村が人口1万人を切るという予測がされている。
このような問題意識に対して日本全国の自治体では生き残りをかけた様々な対策が進められている。たとえば内子町や長浜の黒壁では地域が持っているストックを利用した、経済活性化を目標にするアプローチである。これとは別のアプローチが、大都市制度の見直しを行うという観点からのアプローチで、大阪都構想、横浜市が提唱する特別自治市構想などに代表される。
前者の経済活性化におけるアプローチは指導教員である諸富徹教授の「地域再生の新戦略」にエッセンスがちりばめられている。つまり、地域における文化的資源を再発見し、それらをできるだけ再使用するというものである。そのためにも以前までのような道路や水道への公共投資といった前時代的でその効果が弱まりつつある方針から転換し、地域の文化的資源の再発見や活用方法を見つけ出す人材を育成することへの投資を重視すべきだと述べている。しかし同著ではこのような方法は一定の小規模な地方自治体では成立するが、大都市ではまた異なった方法が必要であることも示されている。内子町での「合併する前の規模の方が運営はよかった」という意見が引用されていることが印象的である。
そこで私たちは、もう一つの「大都市が東京一極集中という困難に立ち向かうにはどうすればよいか」という問題について取り組むことにし、その答えの一つとして特別自治市構想を取り上げることにした。さらに、この制度を京都市へ適用する場合にはどのような改良が必要かということ、どの程度の経済波及効果が発生するかということを議論した。
第1章では、大都市、とりわけ政令指定都市制度がどのような沿革の元で成立し、どのような課題を持っているか、そして大都市制度の改革事例としてどのようなものがあるかを述べている。我々が論文の中で提唱する特別自治市構想とは、都道府県の持つ権限の一部を市に持たせて二重行政の解消や事務における煩雑さを解消していこうというものである。市の持つ権限を都道府県に担わせるという意味では正反対であるため、大阪都構想についての説明も載せ、第3章における特別自治市と都構想との比較をスムーズにできるようにした。更に、これも第3章であるが、政策提言の一つである「京都市版コミュニティカウンシル」についての説明について、モデルとなったカナダ・トロント市で採用されているコミュニティカウンシルについての説明も加えた。第2章では京都市の現状について、産業的特徴と財政状況という面から分析した。ここで分析したデータをもとに京都市へ特別自治市構想を導入する際のアレンジ点を作成した。第3章では政策提言を行う。特別自治市構想のメリットを改めて述べたうえで区の住民自治機能を強化するコミュニティカウンシルの導入、周辺自治体のサービス低下への対策、京都での産業投資とその効果をまとめた。第4章では特別自治市構想のもとで私たちがどのように産業投資を行うかを具体的に論じ、その産業投資が計量的にどのような効果を生み出すかを分析した。
また、この文章を執筆している最中には青森県で一月の有効求人倍率が1963年以来はじめて1倍を超えたというニュースを耳にした。地方から有望な人材が流出する東京一極集中に対する、小さいながらも大きな意味を持つ一歩となることを願ってやまない。


2015年度諸富ゼミ環境班 インゼミ論文
「中山間地域農業の再生―兵庫県養父市の事例から―」

−目次−
序章 
第1章 中山間地域とは
   第1節 中山間地域の抱える問題と可能性
   第2節 中山間地域農業の問題
第2章 問題解決のための方法比較
   第1節 集落営農の設立
   第2節 新規就農者の増加
   第3節 企業参入
   第4節 中山間地域の問題意識から見た有効性比較
第3章 現在の政策
   第1節 これまでの農業への企業参入
   第2節 農地バンク
   第3節 直接支払い制度
第4章 中山間地域から見た現政策の問題点
   第1節 大規模化志向
   第2節 リース方式 
   第3節 農地を提供する際の不安
   第4節 不在地主地の問題
   第5節 直接支払い制度の問題
第5章 事例分析(兵庫県養父市)
   第1節 養父市に着目した理由
   第2節 養父市の取り組み
   第3節 国家戦略特区
   第4節 各企業へのヒアリング
   第5節 ヒアリングまとめ
第6章 政策提言
   第1節 農地マーケット
   第2節 売買を一般化
   第3節 市町村が新たな役割を担う
   第4節 市町村に農地委譲の権限を移す
第7章 妥当性の検証
   第1節 企業側で企業参入に対する意欲・積極性を検証する
   第2節 市町村側で企業参入に対する意欲・積極性を検証する
   第3節 耕作放棄地を減らすインセンティブが高い市町村と周辺農家
   第4節 直接支払い制度よりも農地マーケットを希望するインセンティブ
終章
参考文献・参考URL

—概要—

 現在日本では農業の衰退が進んでいる。特に中山間地域農業の衰退は顕著で、農業従事者の減少・高齢化、耕作放棄地問題、収益性の低下など、ここには日本農業の問題が凝縮されていると言える。現在TPPの本格導入を見据え、日本農業を強化するために様々な政策が行われているが、その恩恵は十分に中山間地域まで及んでいるとはいえない。農業は単に食料を供給するだけでなく、環境的・文化的に非常に大きな価値をもち、日本農業のなかでも大きな役割を果たす中山間地域農業の衰退防止は大きな課題である。
 これまでの中山間地域農業は国による直接支払い制度が一定の成果を上げてきたので、かろうじて危機的な状態を免れてきた。だが、急速な少子高齢化の影響を考えると、保護的な支援策には限界があると思われる。そうした中、我々は中山間地域でありながら積極的に農業への企業参入を行い、農業の再生を行っている兵庫県養父市に着目した。実際にヒアリング調査を行い自治体の取り組み、参入した企業の展望を知ることができた。特に、農業の持続可能性を高める取り組みとして、一般的に言われている大規模集約化、効率化とは異なる現場の声を聞けたことが大きな収穫であった。
 本稿では、現在進められている農地バンクなどの諸政策が中山間地域農業に適していないという問題点を指摘したうえで、中山間地域農業を再生させる手段として企業参入が有効であることを明らかにした。通常、農業への企業参入と言えば、大企業や外資系企業が中心になると考えられているが、中山間地域農業に必要な企業参入は、養父市の事例を参考にすれば、地域と密接なつながりがあり、地域の発展がその企業の発展にも結び付くような、比較的中小規模の企業である。そのような企業は、農地で農産物を作るだけでなく、それと自らの加工技術を組み合わせて付加価値の高い商品を生み出す六次産業化の担い手となることが期待される。
 そこで我々は、中山間地域農業への企業参入を促進するために、農地バンクを改良した、農地マーケットという新しい仕組みを政策提言とした。農地マーケットでは、企業の投資意欲を高めるために、農地バンクの農地の貸借り中心から、農地取得を基本としている。この仕組みでは、農地を提供する農家と農地を取得する企業以外に、市町村の役割が重要である。市町村がより大きな役割を果たすことで、地域独自の農業を育成でき、六次産業化がより進められると考えられる。また、現在の地方創生に向けた取り組みを行っている中山間地域の自治体に有効な施策である。このような政策提言により、地元とつながりながら参入した企業が継続的に経営していける環境を作り出せると考える。
 なお、この政策提言の妥当性を確かめるために、本稿では各主体に関する資料を提示しながら、検証を行った。