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『異邦人の拳』  山本茂著

戦前、戦後の混乱期に活躍した在日朝鮮人、秋村龍二と玄海男の物語。

秋村のことはまったく知りませんでした。

戦後の広島はそれこそ、仁義なき戦いの世界だったみたいで、秋村はそういった環境の中で頭角を現します。

かなりテクニシャンで優秀な選手だったみたい。

本人はギターと絵を描くことを愛する、内向的で物静かな青年だったようですが、唯一の肉親だった兄を突然の事件で亡くし、その仇をとり殺人事件を起こしてしまいます。

これら事件の関係者全員が在日同胞っていうのが、当時の状況をある意味ではよく表しているのかも。

しかし、事件を起こした当時の様々な状況を鑑み、秋山は執行猶予になります(!)。

ボクシングに復帰しますが、しばらくして布団の中で拳銃自殺。

自殺時の姿はトランクスを履いて、上半身裸という試合時を同じ姿だったそうです。


玄海男のことは別の本でも知ってましたが、戦前、アメリカで人気を得たボクサー。

アメリカではめちゃなスケジュールで試合しますが(当時は1週間で2試合とか普通だったらしい)、実は大幅に負け越しています。

それでも人気が高かかったのは、手数の多いファイトスタイルと、地元判定がかなり多く、勝っていた試合を負け試合にされていたからのようです。

アメリカでの勝率はよくありませんでしたが、対戦者のレベルがとてつもなく高い。

世界ランカーや世界挑戦経験者などなど。

こういった選手と互角以上に戦ったわけですから、その実力は確かなものだったんでしょうね。

でも、アメリカに結婚まで考えていた富豪の女性がいたのは知りませんでした。

その女性とは将来を誓うのですが、戦争勃発でその誓いは果たせないことに。

当時はこういった人、多かったんでしょうねぇ。


著者の山本茂は元ボクシングマガジンの編集長だけあって、ボクサーに注ぐ眼差しが優しい。

そして、ボクサーを尊敬しているのがよくわかります。

ボクシング本をたくさん書いているので、また別の本を読んでみようと思います。