2006年09月10日

【書評】 ALWAYS 三丁目の夕日

「意外と面白い」という評価を、複数の信頼できる人から聞いた、この映画。
 たしかに「意外と面白かった」

 私がこの手の作品に求めるのは、
「いいところと悪いところ、両方にスポットを当てていること」

 よくある、「現代の日本人が失ってしまったモノ」だけにスポットを当てて、現代日本よりもいいところだけを象徴的に映し、「昔は良かった・・」という感想しか持たせない映画は苦手です。

 この「三丁目の夕日」は、まさにそんな映画だと思ってたのですが・・・

 全体的に「いい話」の味付けはされているものの、
・切れる35歳
・借金のカタに身体を売る娼婦
・理不尽な捨て子
・集団就職
・大量消費社会の始まり
 結構、厳しい現実も出てきます。

「余裕・・・ないんだよな・・・」
 と、切れる35歳の大暴れが過ぎ去ったあとに、ぽつりとつぶやく文学崩れの言葉が、この辺を象徴しています。

 そんな中でも、その現実の中でたくましく、楽しく生きている姿を見るのはとても元気になります。


 見終わったあとに考えたのが、
「このころは、今よりちょっと世界が単純だったんだなあ・・・」
 ってことです。

 情報が少なく、開拓余地が多かったこの時代は、物事が比較的単純に判断され、その判断を疑う人が少なかった気がします。

 初めてやってきたテレビを、町の人全体で囲んで力道山を見る様子
 そこには、亀田兄弟の試合に疑惑を感じ、検証するような人は誰もいません

 働いて、働いて、新しいモノを買って、幸せになるというわかりやすい行動理念
「郵政民営化すれば景気は回復」と、わかりやすいスローガンに対して、「それって論理的根拠なくね?ちゅか、自民党に投票した奴わかってんの?」、なんて、立ち止まって考える人ような人はいません。

「ドメスティックバイオレンス」は「かんしゃく持ちのお父さん」
「ニート」は「ごくつぶし」
 現代の社会問題の深い闇は、町内会だけであっさり処理されています。


 今、テレビで宣伝されて、世論になって、広まって、飽きられるサイクルを見てると、現代の日本の多くの人にとって、処理しきれない量の情報が流れすぎているのかなあと思いました。

 亀田問題で、問題の本質は「亀田兄弟を祭りたてるための恣意的な操作」にあるのに、話が迷走して、亀田の態度にスポットがいってしまうように。

 そして、そういう人たちが処理できるちょうどいい量の情報が提供されていたのが、この映画の舞台である60年代なんではないかなと、思います。

「日本のヒーローは、頑張って悪い外国人を倒す」
「頑張れば、「三種の神器」が手に入る」


 とはいえ、21世紀は、社会がこれだけ複雑化しているからこそ、あの綿密な電車・地下鉄の運営があり、クーラーやらPCやらiPodやら壊れない車やらの便利なモノが生まれてきてます。

 見ず知らずの文化を振れて確かめたり、どうしようもなく綺麗な海で泳いだり、地球の裏側で起こってることを瞬時に知ることが出来ます。

 60年代の子供たちが21世紀を妄想していることから分かるように、「比較的単純」な世界にいる人たちも、こういう便利なモノは欲しくてたまらないし、我々も手放したくありません。


 この複雑な文化を維持したまま、大衆に届ける情報を単純かつ正確にする

 これが、これからの社会の目標だと思います。
 今は、確実に情報を単純化した上に、歪曲化して、騙してます。

 ジャングルでトロい動物が肉食獣に肉体的に瞬殺されるように、都会ではトロい人間が情報戦で食い物にされています。

 でも、せっかく賢く生まれてきた人間だから、食うか食われるかよりも、もうちょっとマイルドに、「かすめとる」くらいのレベルで抑止が働く社会になったら、おもしろいんだけどなあ と、思います。

 ってことで、私は今、マーケティングを勉強してみようかと思っています。


 なんて、ややこしいことを考える教材にもなりますが、純粋に「いい話」としても充分面白いです。

 なお、これを見て毒が足りないと思った人には、我が人生の師・西原りえぞおさんの「ぼくんち」を推薦します。

 この話、1960年代ではなく50年代の話なんですね。
 そして、50年代は、日本人の自殺率が一番高かった時代。

 この映画で表現されているよりも、もうちょっと複雑な時代だったのかもしれません。

 さて、 ここんとこ、話が重くなってきてるんで、次回から、軽いモロッコ編に戻ります。



mota2005 at 14:07コメント(2)トラックバック(0)書評  この記事をクリップ!

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コメント一覧

1. Posted by kiricocco   2006年09月11日 01:15
>「ドメスティックバイオレンス」は「かんしゃく持ちのお父さん」
>「ニート」は「ごくつぶし」
> 現代の社会問題の深い闇は、町内会だけであっさり処理されています。

おもしろい!
確かに最近のご時世はマスコミを中心に騒ぎ立てすぎな感じがする。
生きるのに精一杯やと、それどころじゃないってなるんやろうな。

現代が複雑なのか、平和すぎて難しく考えすぎてんのかは微妙な判断だなーー。と思った。
2. Posted by もりぞお   2006年09月11日 07:48
たしかに、何もなくても紙面を埋めなきゃいけない新聞と、時間を埋めなきゃいけないテレビが、わざわざ問題を作り出している気がしますね。

「人間は心に暇のある生き物、なんと素晴らしい!」って、ある生物が言ってました。
暇な時に難しく考えることが人間が人間である所以ならば、現代の方が、「人間が人間らしく生きている」時代なのかもしれません。

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