自分の住んでいる見馴れた街を歩く。

目をつぶっても歩けるぐらい、何度も歩いた道を歩く。

あの小道、あの公園、そこの店の角、あの裏通り・・・・・・・

どれも祥一郎がよく歩いた場所。

私が仕事帰りや出先からの帰りに、祥一郎が向こうから歩いてくる。

そして無言で笑い合いながらお互いの用事を済ませ、また同じ途を部屋まで帰る。

「何処行くのん?」

「ちょっと百円ショップまで。」

「何してるん?」

「煙草買いに行っとってん。」

「晩飯、またあそこの串カツにする?」

「またあ?きょうはチャーハンがええなあ。」

そんな何気ない会話が、堪らなく愛おしい。


けれどもこの街の何処を隅々まで探しても、もう祥一郎と偶然逢うことはない。

いや、この世界中の何処を探したって、祥一郎をこの街に引き戻すことはもうできない。

だって、祥一郎はもうこの世には居ないから・・・・・。


この街のあの通り、あの店の角、あの裏通りを歩く度、私はなんと嘘臭い街並みなんだろうと思うようになってしまった。

もう祥一郎が歩くことは無い場所が、現実にそこにあるのに現実のものではないような気がする不思議な感覚。

店で働く人も途を行き来する人も、それなりの人生の重みを背負って生きているはずなのに、まるで全てがハリボテで中身など無いように感じられる。

祥一郎と私の暮らしという劇が終って、まだステージのセットが片付けられていない・・・そんな感覚も覚える。

拠り所を失った私という人間、祥一郎という帰る場所を喪った私という人間が、ただそこを虚ろに歩いている。

嘘臭い人々の営みや街の喧騒の中を・・・・・。

わかっている・・・・・・そう思っているのは私だけということは。

それでも主人公だった私は抜けがらになり、もうひとりの主人公だった祥一郎はもうこの世から去った。

なのに何故まだ劇は続く?

お願いだから早く幕を下ろしてくれたらいいのに。


そしてきょうも、魚の腐ったような目をした私は何かを探すようにこのハリボテの街を行く。

よろけながら、倒れそうになりながら・・・・・・。


↓祥一郎の供養の為によろしくお願いします。
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