先週の「報道ステーション」で、鹿児島県にある小さな村、柳谷(やねだん)が紹介されていました。この村は、最近、日本の地方で良く見られる過疎化と高齢化が進んだ村ですが、ある村民のリーダーのもとで、補助金に頼らずに、村の人たち総出で稼いだ資金により、住民の福祉向上を図っている様子が報じられていました。

ここの村では、土着菌で育てた芋焼酎「やねだん」を生産・販売しており、その売り上げ金は、村民みんなで話し合い、村民の安全確保や健康増進に役立てられていました。番組では、緊急連絡ブザー(高齢者が緊急時にボタンを押すと、市内の目立つところにあるブザーが緊急を知らせる装置)や公園の健康遊具、シルバーカー(老人用の手押し車)が売上金の活用例として紹介されていました。

高齢者が仕事をしながら地域に貢献し、補助金に頼らず、稼いだ売上金で自分たちの福祉向上を図る。この地域活性化モデルは、国内外から注目されているそうで、毎年海外20カ国を含む5,000人ほどが視察に訪れるそうです。

元銀行員である村民のリーダーは、非常に興味深い話をされていました。

「補助金は、使い道がこと細かく決められている。補助金をもらって、それをどう使うかという支出だけ考えていたら、良いアイデアは生まれない。」

「みんなで工夫をして、お金を稼ぎ、それをみんなでどう使うか考える。自分たちで汗水たらして稼いだ金なので、真剣に使い道を考えるし、無駄もない。」


いやあ、すばらしい考え方ですね。ホント、うならせられました。


仕事を通じて高齢者一人一人が役割を持ち、元気になり、その稼いだお金をみんなの福祉向上に活用し、また元気になる。素晴らしいサステナブルな地域活性化モデルだと思いませんか?


以前かじったモチベーション理論の中には、「面白いからやってみたい!」という自分の心の中から湧き上がる動機付け、「内発的動機付け」というものがありますが、この「やねだん」モデルには、この「内発的動機付け」を高める工夫が盛り込まれていると思います。

一般的には以下のような状況にあると、この「内発的動機付け」は高まると言われています。

①各人が「自分は重要な価値のある仕事をしているんだ!」と認識すること。(重要性)

②各人が「自分ならできるんだ!」と実感していること。(有能感)

③各人が「目標に向かって自分自身で創意工夫が出来るんだ!」という状況にあること。(自立性)

「やねだん」モデルでは、村民一人一人が地域の活性化に繋がる芋焼酎の生産活動を通じて「重要性」を認識し、さらにリーダーに励まされ、また体力にあった仕事が与えられることで「有能感」を感じ、稼いだお金の活用を創意工夫できることで「自立性」が高まる。

こういう「内発的動機付け」を高めるすべての要素が含まれていると思います。

私たちが世界各国で取り組んでいる国際協力活動の中にも、日本の地域社会の活性化に役立つ事例があるかと思います。私たちの活動は税金から成り立っており、当然、納税者の方々の理解なしには存続しえません。今、この日本社会では地域の活性化が大きな課題の一つになっていますが、こういう日本の地域活性化にも役立ちそうな途上国の事例を分かりやすくみんなに発信する、こういう取り組みも私たちの使命だと感じました。


Picture Sierra Leone 3812