★今日一日記071002

昼過ぎにライカカメラの米山さんと大竹省二さんのアトリエにプリントチェックとネガを受け取りにお伺いする。今日の収穫は以前より噂に聞いていたデュポンの印画紙プリントを手に取って拝見出来た事。1950年代から1960年代に掛けてアービング・ペンが好んで使っていたのは聞いていた。確か記憶に間違いがなければ「Worlds in a Small Room」のプリントはこのデュポン印画紙でプリントしたもの。以前N.Y.のギャラリーで額裝されたプリントをガラス越しに見た事があるが、その黒の諧調が異様に綺麗だったのを今でも鮮烈に覚えている。今回初めて生の印画紙を触ってみる事が出来た。とにかく「厚い」。やはりプリントというものはこの手で触れて始めてその存在感が良ーくわかる。先達とお話し出来るチャンスにはこのような思わぬ出会いや体験談をお聞き出来る事。そこには単に昔を懐かしむと言うことではなく、現在のありようと未来へ向けてどうしたら良いのかと言う大きなヒントがあるように思える。


その後渋谷で写真家と待ち合わせ。1枚のホルダーの中に8x10インチフィルムを4枚張り付けられるように作られたフィルムホルダー(面積16x20インチ相当)を使って撮影した作品の現像&ベタを120枚程依頼される。問題は現像よりも乾燥です。というのも通常の撮影では写らないホルダーの溝の部分にも画像が写っているので乾燥時のフィルムクリップの跡をなるべく残さないようにしないとならないから。ベタも4枚の合わせ目をぴたりとしないと1枚の絵として成立しなくなるので気を使う所。限られた時間の中で如何に効率良く出来るか少し考えないといけません。

今週、今月、今年はゼラチンシルバー、プラチナ、ウェットコロジオンとアナログ中心のスケジュールで動いて行きます。

★大竹省二写真展・ライカ銀座店サロン

大竹省二さんの写真展「Timeless Photography」が10月19日より来年の1月20日までライカ銀座店サロンで開催されます。お生まれが1920年ですので現在87歳になられますが現在も現役でご活躍中です。

現在展示用のモノクロプリントを作成中です。打ち合わせを兼ねて何度か事務所にお邪魔してお話をお伺いする機会を持たせていただきました。プリント1点ずつ丁寧に撮影場所、日時、シャッターを押した瞬間の思いなどをお話しいただき大変参考になっています。

大竹省二さんと言えば誰でもすぐに女優やモデルの写真を思い浮かべますが、今回の写真展は海外に出かけられた際に35mmで撮影された純然たるスナップ写真で構成されています。面白い事に展示作品の中には大変珍しいハーフサイズのライカで撮影された写真も含まれています。

来週中には全てのプリントをアップさせないといけないのでチェック&プリントの日々が暫く続きます。

★大判プラチナプリントに向けて

大判プラチナプリントに使用する紙のテストを続けていました。

最初は市販の物を。そして最後には菅原さんが特注で作った大判の和紙までいろいろと。その結果、和紙ではなく所謂「洋紙」で行く事に決まりました。巾120cm x 長さ20mの市販のロール紙です。今回のプリントの最も大切な所は被写体の立体感を如何に表現するかと言う事です。和紙だとその表現が優しすぎてしまって、被写体の持つ「時を隔てて今ここにある」という存在感がいまいち希薄になってしまうような気がしています。

紙が決まって次は紫外線露光機です。110cmのブラックライトを約20〜25本繋げたビュアーのお化けのような物を制作予定です。それと平行して120cm x 150cmのプラチナ用拡大インクジェットネガを作成して行きます。それと乳剤の塗布方法やプリントの処理方法も考えてテストをしていかなくてはなりません。

全てが初めての事なので難問続出ですが、そこを一つづつクリアーしながらの作業は教わる事や予期せぬ発見があってプリンタ冥利に尽きる所でもあります。来月は御殿場の菅原さんのアトリエで合宿してのプリント作りが待ち構えています。サイズが大きいのでかかる経費や時間の事を考えると失敗は出来ません。11月の展示に向けて試行錯誤の楽しい毎日が続きます。

★今日一日記070905

引き続き大判プラチナプリント用の紙のテスト。幅が1m以上と言う制約の中でプラチナプリントに適している紙を探すのはかなりの手間ひまがかかります。しかしその分テストの過程で予期せぬ発見などがあって教わる部分も多くあります。サーフェス、色調、厚みなどを考慮しながら、これはという紙を見つけてはテストプリントの繰り返しです。お陰で紙屋さんとは随分仲良くなりました。多くの紙が中性紙なので(それらはプラチナプリント用に作られた紙ではないので)紙のphをプラチナプリント用(酸性)に作り替えなくてはなりません。テストを繰り返す中で今まであまり気にしないで使用していたプラチナ用の紙の安定度の素晴らしさをあらためて痛感しています。

今日は第一候補の紙の酸浴(phを酸性にするために紙を酸の液に浸す事)をしました。この紙、昨日単純に水洗いしただけでもかなり良い結果だったので今日の酸浴で更に良い結果が出るのではないかと期待大です。プラチナプリント用のデジタルネガの作り方も少しづつですが向上していて黒のしまり、白の抜け具合がかなりイメージする方向に向かって来ているので、これからが本当の意味でプリンタにとっての醍醐味の部分です。

これらの多くは西丸さんご本人、あるいは西丸さんの主催するサイトを通して学ぶ部分が多いです。プラチナプリントを始めハンドコーティング(手塗り)で印画紙を作るところから始めるプリント法に興味のある方はサイトを訪れる事をお薦めします。

ところで懸案になっているJOBOの修理ですがパーツとセッティングを替えてやっていますが悪戦苦闘中です。先は見えて来ているのですがーーー。

西丸雅之さんが主催するサイト「The Alchemist's Place」




★今日一日記070904

昨日はP.G.I.で「八木清」さんの展覧会のオープニング。カラーのレーザープリント+プラチナプリントの展示。ひとときお邪魔する。

現在大型プラチナプリントの用紙をテストしているのだが、その過程で「紙」や「化学」について学ぶべき事が多くある事を思い知らされる。中学、高校と、まともに化学の授業を受けていたら当然理解出来ている事だと思うのだが、そこをすっ飛ばして来た自分にとって、この有様は恥ずかしい話であるが、ある意味新鮮で楽しいひとときでもある。

プラチナプリント用のインクジェットネガ作成、プリントの黒のトーンの調子の具合と白の抜け具合、などを1つずつクリアーしていく過程はデジタル+アナログ新旧取り混ぜて大変勉強になる。以下は参考になった紙のサイト「紙への道」と八木さんの写真展の案内。

「紙への道」

八木清「極北への旅 1994-2007」





★今日一日記070823

大型プラチナプリントに備えて用紙のサンプリングをお願いする。1100mm幅以上と言う制約がある中で、いかにグレードの高いプラチナ用のあるいはオルタナティブ用の用紙と出会えるかが勝負。今回は「和紙」も選択肢に入っているので、かなり多くの種類の用紙をテスト出来そう。紙の持っているグレードもさることながら、プリント表現として今までには無いイメージと出会える事に期待しながらの作業です。

★今日一日記070821

インターネットで検索したオルタナティブプロセス関係の資料を一気にプリントアウト。性分としてどうしても紙(物質)の状態にしておかないと安心出来ないのです。これは写真も同じ。写真の場合は特に「プリントして初めて写真となる」というイメージを強く持っているので最終的な表現は、やはりプリント(物質)です。

今回は特に「プラチナプリント」をメインにプリントアウト。検索しながらオルタナティブプロセスが想像以上に速いスピードで市民権を持ち始めている事を感じる。とにかくプリント可能なオルタナティブプロセスの種類とそれを表現媒体として使用する人達の数が数年前と比較して格段に増えている。そんな事を感じながら検索しているとついついプラチナ以外のプロセスにも引っかかってしまう。なかなか面白そうなプロセスが目白押しの感じ。きっとこれらのプロセスを自分の表現形態として必要としている人々がどこかにいるはず。菅原一剛さんと湿板写真の出会いのように、そこに必然があれば古いプロセスを用いながらもコンテンポラリーな今でしか出来ない新しい表現が生まれてくる可能性がすごくある事をあらためて実感する。プロセスとの出会い、人との出会い、それらが自分を育ててくれる。


「菅原一剛写真研究室」






★今日一日記070820

昨日は倉庫の整理。思いきってアナログダークルーム関係のファイルを50册程整理して破棄した。これで20世紀ともおさらばだ。中にはいずれ貴重な(多分)コレクターアイテムになるかも知れないカタログなどもあったけど私にはあまり関係ないので。でもまだ必要だと思われるファイルが50册程残っている。全てのデータはこの手のうちにと言いたいところだが最近物忘れが激しくなって来ているので消去してしまうには少し不安が。写真集もついでに整理。何回となく整理のふるいにかけられて来たので本当に必要なものだけが残っている。9月に交換留学生がイタリアから来るので狭い我が家を少しでも広くとレンタルルームを借りたので取り敢えず残ったファイルと写真集はレンタルルームにお引っ越し。積もりに積もった垢が剥がれていくようで気持ち良い感じ。でも少しだけ心のどこかにぽっかり穴が。デジタルはこの穴を埋めてくれるだろかーーー。

★今日一日記070730

あっという間に7月も終わり。

昨日は日本の元首相の大全紙プラチナプリント。ゼラチンシルバープリントと比較して、これが同じネガからのプリントかと思われるほど表情が柔和になっていきます。印画プロセスが違うと顔つきまで違って見えてくる不思議。長い間見続けていても疲れない、飽きない、嫌にならないのがプラチナプリントの大きな魅力のひとつということをあらためて実感。

そして今日はJOBOの修理をお願いに猪股さんの事務所にお邪魔する。お忙しい中ちょっとだけデジタルネガについてお聞きする。さすが研究熱心な猪股さん、かなりグレードの高いステージでテスト中の感じ。大いに刺激を受けて帰路に。こういう仲間がいる事はすごく大切なこと。

昨日から今日にかけて、自分の中で良い方向でアナログとデジタルの間の距離感というか境界線が無くなってきていることを感じた一日。
というかまわりではそんなことを言っている暇はないくらい「アナログ+デジタル」がすごいスピードで融合して新しいものを作り出し始めている。

★「ライカ プレミアムプリント」

昨年の4月ライカ銀座店のオープンと共に始まった、ライカならではのモノクロプリントサービス「プレミアムプリント」も1年以上が経過しました。その間多くの方々とプリント作りを通して楽しいひとときを過ごさせていただいています。

そして改めて感じることはコミュニケーションの大切さです。作者のイメージするプリントに仕上がるかどうかはまさにここ一点にあると言っても過言ではないのです。その為にプリントのカウンセリングを通して一見写真とは関係ないことを色々とお聞きしたかも知れませんが、これらはすべて目指すプリント作りのために必要なことでした。
幸いなことにライカプレミアムプリントではこれらのことが上手く機能して、結果プリントの仕上がりに関して多くのお客様に喜んでいただいています。このことは私自身、ある意味プリントをご覧頂いたときの皆様の喜ぶ表情に接したくてこの仕事を続けてきたところもあって大変嬉しいところです。

「私の写真じゃないみたい」開口一番プリントをご覧になったときに皆さんが口にする言葉です。でも通常の仕上がりのネガからでしたらプレミアムプリントで提供させていただいているグレードのプリントは出来るはずなのです。アナログ感材が減少して行く中で、現行の「フィルム」「印画紙」「薬品」の言わば三位一体で作り出す「化学変化の贈り物」である印画紙プリントは20世紀を代表する写真プロセスです。21世紀に入りデジタルの時代になっても、いやなったからこそ、その「物としての存在感」やその輝きは失うどころかますます増してきています。

ところで2年目に入ったプレミアムプリントは新しいサービスをはじめています。それは写真の歴史の中でもその印画法として際立った美しさを持つ「プラチナプリント」のラボサービスです。実際に金属のプラチナを使用するためプラチナプリントはその印画の美しさだけではなく耐久性にも大変すぐれています。人生の節目節目に訪れる貴重なシャッターチャンスをこのプラチナならではのプリントにして、残していく意味は想像以上に大きいです。そのことは時間の経過と共に実感されるはずです。

プラチナプリントは、手塗りで紙に刷毛でプラチナを含んだ感光剤を塗布して、印画紙を自分でる作るところから始まります。感度が低いので通常の写真のように引き伸ばしが出来ません。従ってすべてコンタクトプリント(密着焼き、ベタ焼き)になります。ということは希望する写真の大きさのネガをプラチナ用ネガとして作り直す必要があるということです。しかしこのようにして手間ひまかけて作り出されるプラチナプリントには手づくり感から生まれる独特の品の良さと相まって、いつまで眺めていても飽きが来ないのです。というかずっと長く見続けていたいと思わせるアウラをもっています。最終的な仕上がりには少し違いがありますが、オリジナルソースとしてカラー・モノクロそれぞれの、ネガフィルム、、ポジフィルム、プリント、デジタルデータからのプリントが可能です。ライカ銀座店2階のライカサロンでは皆様にご覧頂けるように見本用のプラチナプリントをご用意しています。百聞は一見に如かずです。是非お訪ね下さい。またプラチナプリントに関する詳細はライカ銀座店「プレミアムプリント」までお問い合わせ下さい。

以上お伝えします。書いているうちにプレミアムプリントに携わっている関係上、何かライカの宣伝マンのような口調と言うか書き方になってしまいましたが、本当はそんなことではないんです。実際の思いは、いつでもどこでも存在感あるプリントを作りたくて目指しているだけなんですがーーー。

「ライカ/プレミアムプリントサービス」
過去の記事
  • ライブドアブログ