リス

「光と鉱物と薬品が織り成す化学変化の贈り物」は写真を写真足らしめている大きな要素です。その一方でコンピュータで制御されたノズルから吹き出されるインクジェットプリントのクオリティーの進歩には目を見張るものがあります。今まで写真に関してアナログとデジタルは、どちらが優れているかと言う競争原理で語られてきました。しかしその決着はついたようです。


さてここからが本当の意味でのアナログ写真の秘かな愉しみの始まり始まりです。
暗室と言う非日常的な空間の中で、暗闇に包まれながら、五感を研ぎ澄まし、利便性や経済性に関係なく、ひたすら自分の思い描くイメージに向かって集中する。「光、水、鉱物、薬品」いにしえの錬金術師たちも使用したこれらの原材料を使って通常のモノクロプリントでは現すことのできない不思議なムードを醸し出す。そのようなプリントプロセスのひとつに「リスプリント」があります。

通常の約10倍近い露光を与えた印画紙を現像液に沈めて待つこと約10分。嵐の前の静けさから、やがて今まで反応しなかった印画紙の表面に像が少しずつその姿を現し始めます。そして一旦像が見え始めると銀の黒化現象は今までとはうってかわって猛烈な勢いで進行しはじめます。そして嵐のまっただ中、一瞬のタイミングを見計らって印画紙を現像液から引き出すのですが、このタイミングを見誤るとプリントはゴミ箱行きになってしまいます。プリントの生死をかけた一瞬の出来事。静と動、白から黒.その両極をこんなにドラマチックに見せてくれるプロセスはリスプリントの他には見当たりません。

カメラで時の流れを瞬間的に切り取るように、暗室作業も暗闇の中で繰り広げられる一瞬に懸けた瞬間芸なのだと言うことを「リスプリント」は強く実感させてくれます。


このリスプリントで作品を作り続けてきた写真家がいます。今回の掲載写真を撮影した萩原佳 氏です。銀塩モノクロプリントのクオリティーに並々ならぬ情熱を燃やす萩原氏にとってデジタルがアナログに及ぼす影響、すなわち銀塩感材が市場から姿を消しつつあること、は作家活動を続ける上で致命的でした。「自分のイメージ通りに表現できる印画紙が無くなった」そう言い残して彼はモノクロデジタルアーカイバルプリントの世界に入って行ったのでした。
http://artphoto-site.com/eien.html
http://artphoto-site.com/mini_monu.html




「リスプリント」

特徴;露光過多の印画紙を現像途中で引き上げるプリント方法
   使用する印画紙、露光量、現像時間の組み合わせによって色調、粒子などを大幅に   変化させることできる

 ネガ:通常のモノクロ&カラーフィルム(ネガでもポジでもお好みで)
現像液:リスフィルム用現像液(コダック/コダリススーパー、富士/ハイリソドール)
印画紙:多くの温黒調印画紙(イルフォード、フォルテ、ベルゲール、マコ、モーシュ)
    僅かな純黒調印画紙(オリエンタル、ケントメアー)
    限られたリス用印画紙(フォトスピード、モーシュ、マコ、)
露光量:通常の約5〜10倍
現像時間:約8〜15分
コントロール:露光量と現像時間の組み合わせでコントラストをコントロールする
       ハイライトは露光量、シャドウは現像で調整

参考資料
 WEB-SITE
  http://unblinkingeye.com/Articles/Lith2/lith2.html
  http://www.tokyo-photo.net/lith/index.html
  http://www.graltd.com/3layer/g_lith/1.htm
 出版物
  「The Master Photographer's Lith Printing Course : A Definitive Guide to   Creative Lith Printing」Tim Rudman
  「Commercial Photo series B&W プリント処理の実際」玄光社
  

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