2006年05月12日

 産道を意識したような天井の低い布製トンネルを抜けると、「へその丘」と名付けられたコーナーにいたり、そこを中心に放射状に展示品が並べられていた。展示会場全体のデザインは統一感があって洗練されており、館蔵品を活用した値段の高くない特別展でも手は抜かないと言うことだろうか。
 「へその丘」には子どもの誕生に関わる資料が並べてあり、その回りにを巨大な暖簾状の布が円形に囲んでいる。この布には様々な文字によって名前がプリントされている。また、この暖簾の外周にはゆりかごを中心とした資料が棚上にオープン展示されている。
 資料の多くは木箱を2個重ねたような形状のケース、あるいは木箱状の覆いをした展示ケースに収納されている。これらのケース・覆いには低い位置に円形の「のぞき穴」や横方向・縦方向のスリットが穿たれており、そこから資料を見ることになる。さすがに一定の大きさの資料の場合は、展示場中心から見てケースの裏側にあたる部分が開放され、通常どおり資料を見ることができる。これらの「穴」・「スリット」は「子どもの視線でものを見る」、「ものを集中して見る」という目的の「展示実験」であることが木箱状ケースの外面に繰り返し表示されている。
 「のぞき穴」という手法が子どもの興味を引くという点に関しては同感なのだが、果たしてこれが「ものを集中して見る」ことに繋がるのだろうか。ちなみに穴の位置であるが仔虎にはちょうど良かったものの、仔龍には高すぎて「集中して見る」どころではなく、私にとっても眼鏡がぶつかるとか膝に負担の掛かる姿勢をとることになり集中できなかった。できれば、小さい子ども用に可動式の低いステップを会場各所に設置するとか、大人向けに展示ケースの開放部分を増やす(裏側:展示室壁側)等の措置を執るべきではなかったかと思う。「展示実験」というだけではなく、デザイン上の統一感を維持するために、資料を見るという基本的な行為に制限が加えられているような気がした。改めて博物館のHPを見てみると、私が見た状態でも当初よりのぞき穴が大きくされていた(改善されていた)らしい。
 展示場2階への階段は各段の長手に年ごとの名前番付が記され、踊り場部分の壁には、観覧者が名前とその命名の由来を記した「紙札」をくくりつける「名前の木」という観覧者参加のコーナーがあり、仔虎・仔龍の分も書いてみた。ただ、この膨大な「紙札」は展覧会終了後にどうなるのだろうか?。収蔵庫にそのまま眠り続けて未来の人類学会の分析に委ねられるのだろうか?
 2階展示室は「みんぱっく」の紹介、本展覧会担当研究員二人の部屋の実物大ジオラマ・博物館活動の紹介(ミュージアム・アイ)、「ものの広場2006」(ハンズオン展示と資料情報の表示を組み合わせたもの)、遊びを体験するコーナーなどがあった。個人的には「ものの広場」の復活が嬉しいのだが、デモの為か巨大な情報端末がひとつだけだった。端末は少し小さくして複数設置した方が観覧者にとってはよいのではないだろうか。ところで、旧「ものの広場」は現在企画展示スペースになっているのだが、新「ものの広場」はどこにできるのだろう(チケットブースと展示室の間、「みんぱく水族館」をやっていた場所か)。仔虎と仔龍は「ものの広場」と「変身コーナー」で大いに楽しんでいた。なお、ミュージアム・アイのコーナーは自然系博物館では見られる展示手法であるが、文化系博物館では珍しい試みではないかと思う。また、低価格の図録は情報量も多く、お買い得である。色々イベントのある日に来たので、子どもは楽しかったと思うが、展示そのものを見る時間がやや少なかったのが反省点だが、会期中に何回も訪問できるほどは近くもないので、仕方がない。

 観覧したのは「子供の日」で、特別展示棟地下や平常展示棟エントランスでは「みんぱくキッズフェスティバル」が開催されていた。「ボランティアメッセ」とか「ひとはくフェスティバル」等でもお馴染みの団体もあり、仔虎と仔龍は最近ご無沙汰している「いたこん」や「ひとはく」のブースに入り浸りで、「MIHO MUSEUM」のブースが覗けなかったのが残念である。

 会場で「仕事で来ていた」知り合いと会って少し立ち話をした。その時に思ったのだが、やはり「体験学習」の設計というのは一筋縄ではいかない。提供する側は知識の探求やより深い博物館活動への切っ掛けとして用意したつもりでも、そういった意図が「目の前の達成感」を越えて参加者に伝わる割合ってどれくらいなのだろうか。もっとも楽しい体験を通じてリピーターになってくれれば、意図が伝わる率も上がっていく可能性もあがるかもしれない。なお、知り合いの関わったブースは傍目には繁盛し、他のブースからも羨まれていたようだが、実際のところは一人あたりの所要時間が長いことから、60名限定だったようで、体験者の数という点では他のブースと変わらないか、少なかったのではないかというのが彼の評価であった。


(20:23)

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