2007年06月08日

 一ヶ月近く行われたリニューアルイベントも終了し、少し落ち着いたので館内を回ってみた。何かと問題のあった「貸し館」展示の幕が無事におりたことを良しとしたい。ただ、博物館自体も構成員である実行委員会が図録を発行し、作品の写真撮影を館員が行い、実行委員会経費として館が補助金を申請したイベントを「貸し館」事業と言えるのかどうかは普通に考えれば判りそうなものだ。そして、オープニングイベントが終わった時点でHPの更新が止まっているのも熱狂が去った後の脱力感を現しているのだろうか(もっとも我が社は新組織発足から2ヶ月経ってもHPは整理されていないし、モバイル版に至っては昨年度末から全く更新されていないので、偉そうなことは言えないのだが)。

 ロビーの床に印刷された兵庫県の航空写真、琵琶湖博物館の2番煎じで、しかも岡山市デジタルミュージアムのように航空写真の上に情報機器を走らせることで、地区の情報を確認できるような仕掛けもないのだが、ビジュアル面でのインパクトはある(我が社の展示部門担当者はリニューアル担当業者がアイデアを横流ししたといっているが、どっちにしてもオリジナリティに溢れたアイデアでもないし、業者はアイデアの遣い廻しで食っているのだから、あまりにもナイーブすぎる見解であろう。ただし、同じ行政体の博物館で、しかも同じ年度にオープンする館に対して同じアイデアを流用することについては業者自体の倫理とかコンサルタント能力の面で如何なものかという捉え方もできるが)。

 旧来は常設展示室の一部であった場所が、ギャラリーとされてしまったので、ギャラリーが未使用の場合は、有料スペースの導線が一方向に固定されてしまった。導線が循環ではなく、行き止まりが出来てしまった上、固定された導線は展示された資料の流れとは明らかに逆になっており、スムースな見学が妨げられている様に思える。また、ギャラリー・特別展示室は講演会なども開ける多目的スペースとも位置づけられているようだが、リニューアルイベントのスタート時のように、展示と講演会を無理して同時に行うのは健全なありようとも思えない。

 そして、展示スペース自体も大きく減じられ、少なくとも「ひょうごの歴史を一目で概観する」という構成ではなくなった。通史を止めたことを補完するための「ひょうごライブラリー」も後述のように現時点ではやや難ありと思われる。また、行き止まりのある導線も含め、通路が狭隘になった印象を持つ。エレベーターが1機増えたとはいえ、展示室に関してはバリアフリーから少し遠くなったように思える。

 ヴァーチャル歴史工房と名付けられたスクリーンでは「最新のシステムで城下町の様子」が学べるらしいのだが、番組に内包された知識量はかなりショボイ。また、姫路城および城下町をCGで作っているのだが、城下町の部分が同一パターンの組み合わせなので、同じ番組中で身分・職業によって居住区画が定まっていたという内容との間に整合性がないし、この程度の作り込みでは既に陳腐化している。それと、戦国時代の播磨の状況で「英賀城三木氏」が出てくるのだが、現在の知見では「英賀城」とか「城主」三木氏に?がついていて、「英賀寺内」と標記されることもままあるのだが、そのあたりはどうなのだろう?

 「ひょうごライブラリー」で播磨地方の文化財を検索してみた。項目はそれなりにあるように見えても、肝心の内容が伴っていない。開館後10年ほどは別として、近年は館の活動としての「文化財悉皆調査」を全く行っていないツケか、館自体に情報が蓄積されていないことが徒になっているようである。そのため、どうしても各市町のまとめた資料の丸写しにならざるを得ないのだろうが、どう考えても原資料には明記されていたであろう情報がライブラリーでは欠けているなど、学芸員の関与がほとんど無かった事を疑わざるを得ない出来映えである。

 歴史工房というハンズオン資料をおいたり、トピック展示をするスペースがあるのだが、スペースの性格や構造上、フロアスタッフの常駐が要求されると思うのだが、そういった措置は少なくともウィークデイには行われていないようだ。個人的には同一縮尺でかなりの数が作られている古代寺院の伽藍配置プレートを手に取ってみたかったのだが、スタッフがいない、鍵がかかっている、広げる場所が不明であるという三重苦状態で諦めざるを得なかった。

 レストラン・ショップの部分は、もしかしたらこのリニューアルで唯一まともに機能しているところかもしれない。ただ、リニューアル前の図録類はいったいどこで買えばいいのだろう?少なくとも、ミュージアムショップには置いていなかった。「友の会」会員の特典として図録類の割引販売が明記されているが、その際は送料を払って直接申し込むとか、館外に出て裏口に回って事務室で購入しなければならないのだろうか?(更に割引販売自体が今後はどうなるか判らないとの情報もあるが、少なくとも「過去から未来へ ひょうごのメッセージ」展の図録までは割引がないと詐欺であろう)。

 ともあれ、リニューアルを一通り見て、もしかしたらこの館の学芸員は自分の勤務先を愛していないだけではなく、個人的な興味を越えて、館を運営していこうという義務感みたいなものも消失しつつあるのではないかと思われた。


(07:00)

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