AdAge:THE SISOMO OF KEVIN ROBERTS AT AD:TECH (Nov.8, 2005, 要登録)
ニューヨークで開催中のAd:Tech。残念ながらお金も時間もなくて行けない私のような人たちのために、AdAgeで講演のビデオを流している。今日はSaatchi & SaatchiのCEO、Kevin Robertsの講演。さすが代理店、美麗なマーケティングタームには事欠かない。

曰く、
・ストーン・エイジから進化してきた我々の時代は今、「スクリーン・エイジ」に突入した。キーワードは「シスモ(sisomo:sight/sound/motion)」。
・理性に訴えかける広告はトイレに金を流すのと同じ。求められているのは、エモーショナルな繋がりを生むためのビッグアイデアだ。
・理由を超えたロイヤリティを作り上げなければならない。
・ブランドは死んだ。「より白く、より簡単に、より強く」と言った言葉に消費者は飽き飽きしている。
・コミュニケーションをする時に唯一有効な質問は、「それをもう一回見たいかどうか」だ。

反論はいっぱいある。揚げ足を取るようだが、究極を言えばコミュニケーションは一発でメッセージを伝えられた方が良いし、こういう時代だからこそ、ブランドは大事なのだと思う。

ただ、「時代は「パーミション」から「アトラクション」へ」という表現には何となく納得。いや、セス・ゴーディンの「パーミション・マーケティング」だって、ちゃんと読めばパーミションを取得するのは最初のステップだと書いてある。その後のコミュニケーションの中で、それこそ「理由を超えたロイヤリティ」の究極の姿である医者と患者の関係を目指せと。

ところが、実際のマーケティングの現場はどうかというと、コミュニケーションのパーミションという第1段階を超えるともう押し売り。それはちょっと違うだろうと。
送り手と受け手の温度のすり合わせというか、もう少し相手の気持ちを慮ったコミュニケーションが必要なのは確かだ。

最近この手のプレゼンなどを見ていると、新しいターゲットや手法のタクティクスに走って長期的なビジョンが欠如しているような気がしてならない。そもそもブランディングって、「押し付けない、裏切らない、そしてたまに期待を超える何かでサプライズを与える」ことの積み重ね(点ではなく、志向性を持った塊)だと思う。もう一回見たいと思うCMを作るくらいでどうこうなる問題ではない。

そう言えば、この間Tom Petersのブログに、彼が泊まったフォーシーズンズホテルの話が出ていた。宿泊中、彼の誕生日のディナーと妻の見たいドラマの時間が重なってしまったので駄目もとでコンシェルジェに録画を頼んだら、快諾してくれた。ディナーを終え、部屋に帰ってみるとビデオデッキにはカセットがセットされ、ポストイットには「Happy Birthday! Push Start」の文字が。

多分、この話は彼の次の著作にも登場するんじゃないだろうか。結局ブランディングって、どんな時代になってもそんなに変わらないのだと思う。