グレイヴディッガー

「疾走感」。この小説を一言で表現するとすれば、この言葉がしっくり来る。警察、謎の集団、そして異形の殺人者に追われる小悪党が、ひたすら逃げる。命が惜しいのではない。他人の命を救うため、そして自分の人生をリセットするために。そして、その中で徐々に明らかになってくる追跡者たちの正体とは。

陰惨な連続殺人の描写と好対照をなすのが、主人公と登場人物たちの軽妙なやり取りだ。例えば、鼻歌を歌いながら逃げる主人公が、ユニゾンで歌いながら現れた追跡者に対して発する一言。

「誰だ。ダークダックスか?」

一部、動機や設定に無理があるが、それでも最後まで一気に読み進めてしまうのはこのあたりのテンポの良さにあるのかもしれない。高野和明の著作は、すでに「13階段」で映画化されているが、本作も映像化のイメージが沸きやすい。あるいは、最初からそのあたりを見越した作りになっているのでは、と深読みしたくなるほどだ。

異形の殺人者の姿をスクリーンで見られる日も近いかもしれない。