2010年カンヌ国際広告祭のレポートを聞いた。
今年は、以前までのクリエイターたちの内輪のセレブパーティーから様相を一転、「本当に効果を生む広告プロモーションとは、そしてそこにおける広告会社の意義とは」というマジメでマットウなカンファレンスだったという。ソーシャルメディア=広告主と生活者が主導するコミュニケーションが台頭する中、広告業界の危機感を表した変化だろう。参加者は驚いたようだが、むしろ遅すぎたきらいもあるくらいだと思う。
毎年のことだが、受賞作を見るのは刺激になる。アイデアの引き出しが増える、というのもあるが、自分が面白いと思うクリエイティブの傾向が見えるのが、こうした一覧性のあるフェスティバルの利点だろう。
今年の受賞作の中で特に気に入ったのが下記。
ANDES TELETRANSPORTER
ビールを楽しむ男どものための、恋人や家族への「アリバイ工作マシーン」。実際にバーに設置して、ターゲットの共感を得てブランド認知を高めるとともに、お店での扱いを増やしてもらおうという仕掛けだ。
Volkswagen The Fun Theory
エコは大切だが、押しつけるものではない。フォルクスワーゲンらしい楽しさを加味すれば、人々はもっと積極的にエコに取り組むはず、という理論を実践する動画コンテンツ集。(下記はその一例)
Mars Messages
チョコレートのパッケージを無地にして、Marsブランドフォントのアルファベットシールを同封。ターゲットである大学生に、友達へのメッセージプラットフォームとしてチョコを使ってもらうという「味」な試み。

いずれも、思わずニヤリとしてしまうウィットに富んでいるのはもちろんのこと、下記のような共通点がある。
・Media Neutral:既存のメディアにとらわれず、メディアニュートラルに発想する
・Touch the Real:実際に触れられるものをリアルの世界に作り上げる
・Dive into Lives:生活者の日常に入り込み、複数のターゲットが体験をシェアできる
ただ、これらはあくまでも「ゲリラ・マーケティング」の域を出ない。局地的なWOW!は与えられても、実際のビジネスの観点から見れば効果は限定的だ。
より大きな効果を求めようとすれば、より大きな仕掛けがいる。そのためには人の心を動かす「ウィット以上の意義」が必要になる。それらを体現したのが、下の二つの受賞作だ。
Reply - Gatorade
15年前引き分けに終わった高校のフットボール名門対決。同じメンバーを集めた再試合を、ゲータレードの専門チームが徹底サポート。単なる余興ではなく、プライドをかけたガチンコ対決のために日夜トレーニングを積み重ねる。たかがおじさんのフットボール試合なのに、1万人分のチケットは90分で売り切れ、ゴールデンのナショナルテレビが放映することに。運動しなくなった30代に、青春時代の熱い思いを呼び起こす一大ムーブメントになったドキュメンタリー。
Nike Livestrong
癌の宣告を受けた、自転車ロードレースの英雄ランス・アームストロング。「勝てないかもしれないが、勇気を与えるために走る」とツール・ド・フランスへの復帰を決意した彼からインスパイヤされたメッセージを募集し、それをチョークボットでレース路面に吹き付ける。レース当日、人々のポジティブなメッセージで黄色く彩られた道を、選手たちが颯爽と駆け抜けていく。そこにあるのは、人生そのものが「Just do it.」とも言えるアームストロングへの尊敬と感謝だ。
仕組みから見れば、勝利の方程式は下記。
人々の心に響く普遍的な感動ストーリーをブランドと絡めて設計する
→WEB/ソーシャルメディアを使ってシェアする
→マス広告で一気に広げる
→リアルの世界に想いを体現する
→全国規模のメディア露出を獲得する
→WEB/ソーシャルを使って再体験させる
一番大切なのは、ソーシャルやインテグレーションといった仕組みではない。根幹をなすストーリー、以前から言っている「感動マグニチュード」を最大化するメッセージだ。
そこにおいて、ブランドは脇役でしかない。主人公は、人間だ。
ウィットは人の心を開き、リアルな体験はその心にメッセージを入り込ませることができる。しかし感動は、もうひとつ深いレイヤーで、人々の心と結びついてブランドを定着させる。それがマス広告を絡めてより多くの人に伝われば、その効果は絶大なものになる。
毎年、受賞作を見るたびに「あと少しであそこまで行ける」と思っていた。しかし今年は、自分たちの日常の仕事との隔たりに愕然とした。
おそらく、フォーマットに自由度があり、意思決定がシンプルだったネットの世界から、フォーマットが規定され、承認プロセスが複雑なマス広告に身を投じたという影響もあるだろう。今は販売に貢献しなければならない、長期的なブランディングなど考えている余裕はない、というのも真実だ。
しかしその中でもできることはあるはずだ。不毛なことも無駄撃ちも多いだろうけど、諦めずにがんばろう。
今年は、以前までのクリエイターたちの内輪のセレブパーティーから様相を一転、「本当に効果を生む広告プロモーションとは、そしてそこにおける広告会社の意義とは」というマジメでマットウなカンファレンスだったという。ソーシャルメディア=広告主と生活者が主導するコミュニケーションが台頭する中、広告業界の危機感を表した変化だろう。参加者は驚いたようだが、むしろ遅すぎたきらいもあるくらいだと思う。
毎年のことだが、受賞作を見るのは刺激になる。アイデアの引き出しが増える、というのもあるが、自分が面白いと思うクリエイティブの傾向が見えるのが、こうした一覧性のあるフェスティバルの利点だろう。
今年の受賞作の中で特に気に入ったのが下記。
ANDES TELETRANSPORTER
ビールを楽しむ男どものための、恋人や家族への「アリバイ工作マシーン」。実際にバーに設置して、ターゲットの共感を得てブランド認知を高めるとともに、お店での扱いを増やしてもらおうという仕掛けだ。
Volkswagen The Fun Theory
エコは大切だが、押しつけるものではない。フォルクスワーゲンらしい楽しさを加味すれば、人々はもっと積極的にエコに取り組むはず、という理論を実践する動画コンテンツ集。(下記はその一例)
Mars Messages
チョコレートのパッケージを無地にして、Marsブランドフォントのアルファベットシールを同封。ターゲットである大学生に、友達へのメッセージプラットフォームとしてチョコを使ってもらうという「味」な試み。

いずれも、思わずニヤリとしてしまうウィットに富んでいるのはもちろんのこと、下記のような共通点がある。
・Media Neutral:既存のメディアにとらわれず、メディアニュートラルに発想する
・Touch the Real:実際に触れられるものをリアルの世界に作り上げる
・Dive into Lives:生活者の日常に入り込み、複数のターゲットが体験をシェアできる
ただ、これらはあくまでも「ゲリラ・マーケティング」の域を出ない。局地的なWOW!は与えられても、実際のビジネスの観点から見れば効果は限定的だ。
より大きな効果を求めようとすれば、より大きな仕掛けがいる。そのためには人の心を動かす「ウィット以上の意義」が必要になる。それらを体現したのが、下の二つの受賞作だ。
Reply - Gatorade
15年前引き分けに終わった高校のフットボール名門対決。同じメンバーを集めた再試合を、ゲータレードの専門チームが徹底サポート。単なる余興ではなく、プライドをかけたガチンコ対決のために日夜トレーニングを積み重ねる。たかがおじさんのフットボール試合なのに、1万人分のチケットは90分で売り切れ、ゴールデンのナショナルテレビが放映することに。運動しなくなった30代に、青春時代の熱い思いを呼び起こす一大ムーブメントになったドキュメンタリー。
Nike Livestrong
癌の宣告を受けた、自転車ロードレースの英雄ランス・アームストロング。「勝てないかもしれないが、勇気を与えるために走る」とツール・ド・フランスへの復帰を決意した彼からインスパイヤされたメッセージを募集し、それをチョークボットでレース路面に吹き付ける。レース当日、人々のポジティブなメッセージで黄色く彩られた道を、選手たちが颯爽と駆け抜けていく。そこにあるのは、人生そのものが「Just do it.」とも言えるアームストロングへの尊敬と感謝だ。
仕組みから見れば、勝利の方程式は下記。
人々の心に響く普遍的な感動ストーリーをブランドと絡めて設計する
→WEB/ソーシャルメディアを使ってシェアする
→マス広告で一気に広げる
→リアルの世界に想いを体現する
→全国規模のメディア露出を獲得する
→WEB/ソーシャルを使って再体験させる
一番大切なのは、ソーシャルやインテグレーションといった仕組みではない。根幹をなすストーリー、以前から言っている「感動マグニチュード」を最大化するメッセージだ。
そこにおいて、ブランドは脇役でしかない。主人公は、人間だ。
ウィットは人の心を開き、リアルな体験はその心にメッセージを入り込ませることができる。しかし感動は、もうひとつ深いレイヤーで、人々の心と結びついてブランドを定着させる。それがマス広告を絡めてより多くの人に伝われば、その効果は絶大なものになる。
毎年、受賞作を見るたびに「あと少しであそこまで行ける」と思っていた。しかし今年は、自分たちの日常の仕事との隔たりに愕然とした。
おそらく、フォーマットに自由度があり、意思決定がシンプルだったネットの世界から、フォーマットが規定され、承認プロセスが複雑なマス広告に身を投じたという影響もあるだろう。今は販売に貢献しなければならない、長期的なブランディングなど考えている余裕はない、というのも真実だ。
しかしその中でもできることはあるはずだ。不毛なことも無駄撃ちも多いだろうけど、諦めずにがんばろう。