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Photo : Official Site of the Houston Texans


日本時間3月10日 ( 金 ) 06:00をもってNFLのシーズンが2016年度から2017年度へと移行し、早くも約2週間が経とうとしています。
同時に解禁となったFA ( フリーエージェント ) 市場では今年も各チームが活発な動きを見せていますが、Texansはこの2週間をどのように過ごしたのか、ここで簡単に振り返ってみたいと思います。
記事が書くのが遅くなってしまったせいで話題に乗り遅れてしまっている感は否めませんが、その分この記事内では現時点での動きも踏まえたこれから先の展望についても深く掘り下げて行きたいと思います。

それでは実際に起きた動きについて一通り見て行きましょう。




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Photo : Brett Coomer - Houston Chronicle
1. QB Brock Osweilerを電撃トレード

昨年にDenver BroncosからFAとなりTexansとビッグディールを結んだQB Brock Osweiler。
しかし十分な実績を積んだわけでもないままに与えられたこの大きな契約はシーズンを通して悪目立ちしてしまい、自ら重い十字架を背負うことになる格好に。
そして昨シーズンの低パフォーマンスを見てチームはわずか1年の起用ながらOsweilerに見切りをつけ、FA解禁の鐘の音と共にCleveland Brownsへとトレードによって放出しました。
TexansはOsweilerと今年のドラフト6巡指名権、そして来年のドラフト2巡指名権をBrownsへ譲渡。
代わりにTexansはBrownsから今年の補償ドラフト4巡指名権を手にすることで"損切り"に成功しました。

このトレードはいくらOsweilerがバストだったとは言え、一見すると過剰な動きに見て取れるかもしれません。
しかし今回の動きの本質はトレードによってTexansが本来Osweilerへ支払うべき保証金をBrownsに肩代わりしてもらい、新たに10Mものキャップスペースを捻出することで様々なオプションを手に入れるところにあります。
つまりキャップスペースに大幅な空きを作ることで、再三話題に挙がっているQB Tony Romoの獲得に本腰を入れて動くことも可能となったわけです。

ちなみにサラリーの仕組みについて簡単に触れておきますと、Osweilerの今季のキャップヒットは19M、この内訳はベースサラリー16Mとすでに払い済みのサインボーナス3Mという組み合わせです。
そして保証されている今季のサラリーは試合に出ることで初めて得られるベースサラリーの16Mのみ、また翌年以降の保証額はゼロです。
そのためチームはOsweilerをトレードで放出し現行の契約内容をそのままトレード先のBrownsに引き継がせてしまえば、本来Texansが支払う予定だったこの16Mを全てBrowns側へ丸投げしてしまうことができるのです。

ただしすでにTexansはOsweilerとの契約時にサインボーナスを12M支払いましたが、このうち9Mがサラリーキャップ計算上ではまだ未計上分として残っています ( サインボーナスはサラリーキャップの計算上、最大5年で分割計上することが可能 ) 。
そのためもともとの19Mからデッドキャップとして残る9Mを差し引きすると、新たに10Mのキャップスペースが捻出できたというわけです。
なかなか文章だけで全てを説明するのは難しいのですが、いまいち理解できなかった方は下記にある契約内容の詳細をご参考ください。

またこのトレードによってBrownsは大きな負債を負うことになりますが、Brownsのサラリーキャップはむしろ大きく空き過ぎていてリーグの定めるサラリーキャップフロア ( 最低限選手に支払わなければならない下限 ) を下回る恐れがあるため、むしろ不必要に余ったキャップを消化しながら来年の2巡指名権を手にできたことに喜んでいます。
更にここからOsweilerを"転売"しようと試みているそうで、Brownsからしてみれば願ったり叶ったりのトレードとなったようです。
ちなみにBrownsのフロントはOsweiler自体にはあまり関心がなく、もしトレード先が見つからなければバックアップQBとして検討するか、そのままカットするつもりだそう。


Spotrac参照
Name / No.ContractSigning BonusAverage SalaryGuaranteedContract YearFree Agent
Brock Osweiler
#17
4年  72 M12 M18 M37 M2016年 UFA2020年 UFA
YearAgeBace SalarySigning BonusRoster BonusWorkout BonusCap HitDead Cap
2016254 M3 M5 M-12 M37 M
2017 26 16 M 3 M - - 19 M 25 M
20182718 M3 M--21 M6 M
20192813 M3 M4 M-20 M3 M
202029FA


話が少し逸れてしまったので戻しますが、このトレードによって得られる利点は大きく分けて3点です。
まず先ほども触れたようにキャップスペースが大きく空いたことによって、Dallas Cowboysから放出濃厚と見られるRomo獲得へ向けアグレッシブに動くことが可能となりました。
また最悪トレードでRomoをCowboysから獲得することになったとしても、現行の契約をそのまま引き継げるだけの余裕が生まれたことも非常に大きいでしょう。
むしろ今回のOsweilerのトレードを決行した最大の理由が"Romoの獲得を現実にする"ということでもありますので、ある意味ではそこまで成し得て初めて"成功"と言えるかもしれません。

ただし現状ではFAが解禁してもCowboysはRomoを放出せず、周囲の予想とは裏腹にRomoのキープを続けています。
あくまでもトレードによって相応の見返りを求めたいCowboys、それに対しTexans側は「いずれは放出せざるを得ないだろう」という考えから高い代償を払ったオファーを嫌い、ひたすら我慢比べを続け硬直している状態です。
また"ブラフ"であろうとは思いますが、場合によってはCowboysがここのまま来季もRomoをチームに留める可能性が僅かながらあるようで、必ずしもこのまま待ち続けることが正解とは言えなさそうです。
となるとチームとしてはまた別の手段で先発QB候補の獲得を検討する必要が出てくるのですが、その決断を最終的に下すとしたら恐らくドラフト2週間前辺りになるでしょう。
もしその辺りまでRomo獲得の算段がつかないようであれば、仮に今後Romoの獲得に成功しようがドラフトでQBを上位指名することが決定的になると予想されます。

第2の利点は、当然ながらキャップスペースが空けばWR DeAndre Hopkinsら主力選手たちとの契約延長を今季中に行うことができ、戦力放出を未然に防ぐことが期待できるということです。
また仮に空いたキャップスペースがそのまま余ったとしても、来季にドラフトで補強しきれないポジションをFAで埋めることが可能となりますので、トレードによって失った来年のドラフト2巡指名権を十分に補うことができるでしょう。

そして3点目は、明らかにチームの足を引っ張っている選手が一番高いサラリーを貰ってしまっている現状を粛清し、チームメイトが感じているであろう不公平感やチーム内の輪の乱れを除去することができたことです。
これはこれから先チームと長期契約を結ぶであろう選手たちとの過剰な高額契約を間接的に抑制する働きもあり、チーム内に独自に存在している"再契約の相場"の崩壊も防ぐことができただろうと思います。
つまり今回のトレード劇はロッカールームの雰囲気をこれ以上悪くしないためにも必須と言える動きであり、今オフにRomoがFA市場に出ようが出まいがやって然るべき措置だったのでしょう。
実際にチームはレギュラーシーズン最終週にQB Tom Savageが脳震盪で離脱しOsweilerが再びフィールドに立ったとき、もうこの時点で"何とかして放出しよう"とフロントは動き始めていたそうです。




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Photo : Official Site of the Houston Texans
2. CB A.J. Bouyeなど主力選手の放出

今オフでは再契約がマストと見られていたCB A.J. Bouyeをはじめ、OLB John Simon、S Quintin Demps、OG Oday Aboushi、S Don Jonesら5選手を失いました。
特にBouyeはまだ25歳と若いだけでなく、エリートどころかリーグ最高クラスのシャットダウンコーナーへと成長していただけに今回の放出には頭を抱えます。

BouyeとしてはUDFAでチームに加入するもCB Kevin Johnsonら1巡指名のCB陣に囲まれ、出場機会の不公平感に不満があったようです。
しかし契約最終年となった昨シーズン以前のBouyeは最前線でプレイできるレベルでなかったことは誰が見ても明らかで、むしろBouyeの成長を辛抱強く待ちながら、間もなく33歳になろうかというCB Jonnathan Josephの後継者候補として大事に育ててきました。
そうした育成プログラムを快く思えなかったのならそれは仕方のないことですが、チームとしては決してBouyeを軽視していたわけではなく、だからこそ今のBouyeがあることを理解してもらいたいところではあります。

ただBouyeとしてはチームに残りたい気持ちがなかったわけではなく、Josephにも相談し「自分のベストと思う決断をしろ」というアドバイスをもらっていたそうです。
その言葉をもらった上で下した判断である以上は、単により良い条件の契約が欲しかっただけの可能性もありますが、周りが思っている以上に根が深い問題だったのかもしれません。
いずれにしてもBouyeの下した判断の真相がはっきりと分からない以上は、チームもファンもBouyeの気持ちを最大限に尊重し受け止めるしかないでしょう。

ただし昨年のオフの時点でBouyeがチームの長期構想の中に"確実に"入っていたかと言うと微妙なところで、少なくとも昨年の段階ではBouye放出のパターンも想定していたはずです。
チームは1年平均12M相当の年俸でオファーしていたという話もあるものの、フランチャイズタグを貼ってまで引き留めようとはしませんでした。
それはつまり「妥当な額を出してもサインしないのであれば、過払いするよりも放出することで来年の補償指名権を優先する」ということとイコールだろうと思われます。
幸い今年のドラフトはCBが豊作とされる年であり、前向きに考えるのであればこれはRick Smith GMの中で想定内の事態と言え、失ったものを取り返すチャンスは十分にあるだろうと考えられます。

唯一想定外だったのは、Bouyeが同地区ライバルのJacksonville Jaguarsに1年平均13.5M、5年総額67.5Mで移籍したことでしょうか。
同地区内での移籍となるとなんだかTexansに対して恨みでもあるかのように捉われがちですが、AFC南地区のチームとは毎年2回試合していますので、Bouyeとしてはすでに嫌と言うほどスカウティングし尽くしたチームを今後も相手にできるわけです。
従ってBouyeにとってみればパフォーマンスを維持する上で非常に理に適った移籍であり、またJaguarsとしてもBouyeの起用方法に明確なイメージを持てるため、同地区内での移籍はチームと選手双方にとってこれ以上なく合理的なものなのです。
とは言え実際に同地区ライバルのチームへ移籍するとなるとなかなか勇気のいることで、これがBouyeにとっての"ベスト"と考えると少し複雑な気持ちではあり、あえて言うならば"想定内の想定外"でしょうか。

また同地区内での移籍が理に適っているということを裏付けるものとして、Simonもまた1年平均4.5M、3年総額13.5Mで同地区ライバルのIndianapolis Coltsへ移籍しました。
昨年のオフもC Jen JonesがTennessee Titansへ移籍しましたが、例え古巣への愛着があったとしてもフットボールをビジネスと割り切れば、選手にとってはこれが一番失敗のない新しいホームの見つけ方なのでしょう。
しかし以前にも"Simonの放出は恐らく既定路線だろう"ということは何回か触れてきたので私自身は覚悟していましたが、もしBouyeの放出がFA解禁前に確定的だと感じたのであればSimonをチームに留める努力はしても良かったのではないかと思います。
そういった意味では後手に回り、致命傷までとはいかなくとも痛い失敗だっただろうと言えます。

DempsやAboushi、Jonesに関しては、本人のパフォーマンス云々以上に人材管理の都合上、放出は止む無しです。
こればかりはSmithが悪いわけではなくそれこそ昨年から想定されていた動きであり、また幸いにもこの3人はデプス要員ではなく明確に役割を期待された移籍になります。
ですのでむしろ新天地で活躍することを素直に祈りましょう。




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3. K Nick Novakら3選手と再契約

今オフにおいて数少ない動きとなりますが、K Nick Novak、P Shane Lechler、そしてTE Ryan Griffinら3選手との再契約に成功しました。
昨季は引退の二文字がちらつくおじさん2人に大いに助けられましたが、思いのほかNovakとは1年1.15Mと破格とも言える額で再契約できました。

キッカーという仕事は語るまでもなくメンタルが問われるポジションですが、恐らく下手に移籍をして環境を変えてしまうよりもこのままチームに残った方が安定したプレイができるだろうと判断したのだと思います。
また移籍するとしても年齢を考えれば当然プレイオフコンテンダーのチームでプレイをしたいはずですから、必ずしも意中のチームから声が掛かるわけでもない現状を踏まえればNovakにとってこの選択がベストだったのでしょう。
チームとしても若手キッカーとポジション争いの末、最悪カットすることも容易な内容となっていますので、お互いにとってWin-Winの契約となりました。

そしてGriffinとの再契約はやはり3年9Mとバックアップクラスの契約に落ち着きましたが、恐らくGriffinとの再契約は今オフシーズンのBプランないしCプランに当たり、本来であれば予定にはなかった動きのはずです。
TEは今年のドラフトで最も層の厚いポジションの1つとされており、実際にチームはオフシーズンに入るなり手当たり次第にドラフト候補生と接触を図りました。
しかし後にも触れますが、FAではターゲットにしていたOTの補強に失敗し、TEにドラフト指名権を行使するだけの十分な余裕がなくなりました。
そのためチームはGriffinのキープへ方向転換し、代わりにOTをドラフト上位で指名する方針で固めたのだろうと考えられます。

Griffinとの再契約は現在考えられるオプションの中では最高の一手だったとは思いますが、それでもプランに破綻が出てしまった以上はどこかで取り返さなくてはならず、今年のドラフトで最も補強が難しいとされるOTをどう埋めるかが今季成功の鍵を握ることになるのは言うまでもありません。
逆にドラフトでもOTの補強に失敗すれば、今季は半分失敗に終わったと思うくらいで良いでしょう。




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Photo : Official Site of the Houston Texans
4. ドラフト戦略はどうなる?

まずチーム最大のニーズはQB、OT、そしてCBやS、更にはNTやLBと時間が経つにつれ穴が増えるばかりです。
特にドラフトでは最も層が薄いとされるOTをFAで補強しようとしましたが、やはり2017年モックドラフト Vol.2 - 前編 -でも触れたOT Ricky Wagner ( 現DET ) を素直に狙いに行ったものの獲得に失敗、またセカンドターゲットになっていたOT Mike Remmers ( 現MIN ) も逃してしまいました。
今年のFAは昨年からオーバーペイが多発するようになったためか、今までは薄給とされていたRTでさえも1年平均年俸9Mを提示されるなどこれまでの相場が一気に崩れ、チームとしては"読み違えた"恰好となります。
FAが解禁してから最初の数日間は非常にバブリーなニュースが飛び交い、むしろタンパリング期間 ( 予備交渉期間 ) に多少なりとも高く積んでいたチームが今や逃げ切り勝ちという状態で、本来であれば先発としてギリギリのレベルの選手でさえも1年平均10M越えの契約を果たしているのが現状です ( 相場を崩す最大の要因となったのがOsweilerの契約であることはヒミツ ) 。

となると、本来であれば少しでもニーズを潰してからドラフトへ望むのがベストでしたが、今年に関してはやり方を逆にするしかありません。
つまりドラフトで獲りたい選手をバリューピック重視で指名し、残ったポジションをベテランとのミニマム契約で埋めるなり、他チームからカットされた選手をウェーバークレームなどを駆使して拾うしかないでしょう。
そのためドラフトまでの期間はFAで大なり小なり動くことはまず考えられず、ドラフトのオプションを増やすためのスカウティングの時間に全てを費やすことになると思われます。

また多少流動的になるとは言えど、どのラウンドでどのポジションを指名すべきかポイントとなるところはあります。
まず上位指名権でドラフトすべきなのは、先発クラスが不在のQBやOT、SもしくはCBでしょう。
今のところチームはOTとの面会機会を多く設けていますが、これから先は恐らくドラフト上位指名クラスのCBやSとの面会も増えて行くはずで、当然ながらQBとの接触機会もどんどん目立つようになるでしょう。

そしてチームはエースランナーのRB Lamar Millerの負担軽減をすべくRBの補強も視野に入れているようです。
今年のドラフトではRBも比較的豊作と見られますが、チームがもしバックアップクラスではなくMillerとプレイタイムをシェアできるレベルのRBを欲しているならば、2つあるうちの4巡指名権のどちらかを必ずRBの指名に使うはずです。

また意外にもチームはWRとのワークアウトを積極的に行っていますが、基本的にはドラフトするとしても7巡、それ以上の指名権を使うとしたらWR Jalean StrongやWR Kieth Mumpheryをトレードで放出した場合に限られるでしょう。
実際にチームはCowboysにRomoとのトレードの材料としてStrongの名前を挙げたそうで、もしかしたらドラフト指名巡位を上げるためにStrongをドラフト当日にトレードするなんてこともあるかもしれません。
特に今年のドラフトはWR不作とされる年になりますので、Strongの持つマーケットバリューは馬鹿にできないでしょう。




ということで今オフここまでの流れと、おおよその動きの予想についてまとめてみました。
特にFAでは昨年が大きく動いただけにコントラストの差にストレスを感じますが、Texansとしてはある意味これが例年通りの動きですので、何も焦る必要はないと思います。
ましてや先発QBが誰になるかも分からないままドラフト当日を迎えるようであれば、今年は少なくともプレイオフを目指しながらも"勝負を仕掛ける年"ではなくなりますので、今オフの動きはドラフトやUDFAなど全ての動きを絡めて総合的に良し悪しを判断するのが妥当ではないかと考えます。
もうしばらく我慢は続きますが、今のところはチームを信じて待ちましょう。

まただいぶ予定が狂ってしまいましたが、次回はようやく今年一発目の「ドラフト候補生まとめ」の記事をあげる予定です。
記事は今週中にはあげられるかと思いますのでしばし待たれよ。


2017.3.23

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