総評 ■■■■■□□ 5
ナリオ ■■■■□□□ 4
登場人物  ■■■■□□□ 4
CG   ■■■■■■□ 6
音楽 ■■■■■■□ 6
声優 ■■■■■□□ 5
演出 ■■■■■■□ 6
2020-02-25 (4)
『Re:LieF~親愛なるあなたへ~』の正当続編として発売された本作品は『ミリャ失踪の謎』を含む幾つかの謎が詳しく解明されていき、美麗CG・御洒落BGMをバックに心地よい空間を楽しむことが出来る作品と言えるでしょう。『ビジュアルノベル形式』の作品方式を取ったと公式が推すように、やや斬新奇抜な演出方法が盛り込まれたりと、以前とはやや異なる短めな文章を並べたテキスト展開(詳しいことは後述)等々と、普段他の美少女ゲーム作品に触れているほど『驚き』を得ることのできる作品だと言っても差し支えないだろう。

しかしながら解決した謎とは対照的に、更に未解決の謎が覆いつくすように増えていき致命的に『風呂敷の畳み方が下手』というよりかはあまりにも『続編ありき』の作品にしてしまったのがややモヤモヤとした感情を抱かされてしまった。
2020-02-25 (12)
『星乃あやめが現実世界で自ら命を絶とうとした原因は?』『自殺したはずのあやめが何故トライメント計画に参加できたのか?』『君島翔が何故司の記憶と違わない内容の漫画をこの世に出したのか』『翔はどうしてうつ病になったのか?』『トライメント計画に参加する前のあやめと翔の接点は?』『ユウと翔の接点であったオンラインゲームとは?』『仮想現実から脱出しようと試み辿り着いた草原に何故あやめがいたのか?』等々、新たな未解決な謎はとどまることなく増えていき、しかもこれだけでまだ体感の三割くらいのしか挙げられてないと思う。勿論この先の続編で綺麗に回収されたならば手放しで喜び驚嘆してしまうだろうが果たしてその結末はいかに……?

良かったところ
1.突然饒舌になるミリャちゃん

2020-02-25 (6)
脳に深刻な障害を持つ全く喋らなかったミリャちゃんが、その本来の明るくお茶目な一面を存分に発揮しながら、主人公の司の隣に相応しい存在として遂に滅茶苦茶にお喋りし始める。確かに『Re:LieF』で日向子ちゃんが病院で療養中にミリャちゃんと一緒に過ごしたエピソードもありましたし、そりゃ冗談も上手くて人を惹きつけるようなトークが出来るとは思ってたけど。いや、本当無感情だと思ってた子が実はお喋りも上手くてちょっぴり照れ屋だったとか反則でしょ。主人公である司君の隣に相応しい女性はなんとなく箒木日向子ちゃんだと思っていたけれどその認識は改まった。ミリャちゃんこそが正妻じゃん…。

2020-02-25 (7)
『それとも、一緒に温泉入る?司くん♪』
って煽りながら言うミリャちゃんとかもう最高すぎて、エロゲ作品で販売し直して混浴させてくれよおおおおおおおおおおおおって思いにけり。この本編では『今ここで俺が感じているこの想いは、本物だ』と司君も述べていますしミリャちゃん一筋で生きて欲しいものです。

2.飛び出すような美麗CG

2020-02-25 (8)
よく発売前においてこの作品が槍玉に挙げられてしまった一つの原因として『CGの劣化』がある。いかにも同人ような塗りになってしまったあげくエロシーンなるものが存在しないというのは確かに不平を買っても致し方ないであろう。実際問題大きく違和は感じないものの『立ち絵は劣化』間違えなくしてる。ビジュアルノベルという形式媒体を最大限生かせるように30人を軽く超える登場人物を配置してしまった結果、個々人の見栄えはどことなし控えめになり、以前のような可愛い仕草あるポーズも減り棒立ちが主体になり画的な華やかさは失われてしまったところはあると思った。

しかしながらそうした不平を大きく黙らせる程度にはCG・背景の美しさはまさにアートの一言である。昨年の美少女ゲーム界隈でのデザイン王者は『さくら、もゆ。』『青い空のカミュ』あたりが挙げられるだろうが、それらに勝るとも劣らない出来である。一番の特徴は『立体感を持たせて独特に動くこと』であろうか。

2020-02-25
2020-02-25 (1)
この作中の同じCG二枚を比較してみよう。カメラワークが引いていき時間経過とともに一枚絵の全体が表示されていくありふれた技法のひとつですね。しかしながら彼女のコートのボタンに注視してみて欲しい。あれ……?なんかボタンが見えてるCGと隠れてるCGがある…?心なしかキャラクターの配置も異なる…?あれ、時間がたっていくたびになんか人が動いてる!なんかすごい!!!!!!歪んで見える!これ以外にも驚きのある演出はまずまずあるのでその目で確かめて欲しい。
2020-02-25 (2)
背景もなんとなく登場する世界を間違えているというか、キングダムハーツで登場するような場違い感がある非現実的な美しさが神々しくて堪りませんね。朝日が昇るだけの差分一つにとっても先ほどまで星が輝いていた落ち着きのある夜が、周囲の風景が一変するように感じてしまいますしその作り込みには驚かざるを得ません。


3.個性ある登場人物
2020-02-25 (9)
本作品は先述したように登場人物の多さが特徴的であり、各々にトライメント計画に参加しようと思っただけあってそれなりの過去を抱えている。それ故だろうか独自の人生観を持っており、本筋のシナリオとはあまり関連性は見受けられないのだが、そうした人生の歩みから形成されていった独自の考え方には思わず聞き入ってしまった。

ミリャちゃんの『私が良くして頑張る姿を見せれば、相対的に人々を悲しませるだけの結果しか生まなくて』という脳の病気で半ば植物人間状態の彼女の為に人生をささげる父に対して抱く、底知れない罪悪感を独白する場面は本当に痛ましく思えます。前作にもありましたがミリャちゃんがお話できるようになりさらに悲痛さが増したような気がします。『試してみるんだ、もう一度』が前作のキャッチコピーだとはいえますが、『試してみる』すらできない環境にある人はどうすればいいのか?というのはこの作品のテーマの一つにあると思いました。

2020-02-25 (5)
例えば日向子ちゃんのエピソードかかな。前作では『脳の病気』が主であり本作も『うつ病』『解離性同一性障害』という単語が出てくるほど生鮮的にやられてしまう社会情勢を反映して内容にはなってはいます。しかしながら今作では追加して『ペースメーカー』『車椅子』という肉体的に不利な側面を持つ参加者が複数おりました。やや勘ぐりいるところはあるかもしれませんが日向子ちゃんの自殺の一端として、家族の死によるショック以外に『ピアノのペダル踏めなくなったことおり表現の本質へ辿りつく術を失ってしまった』というのもあるのではないかなと思っています。
2020-02-25 (3)
彼女はピアニストとして大成し、技術的な側面を学びつくしたためコンクールで勝利する術を理解してしまい、ピアノに対し絶望してしまいます。『生きる意味の感じられない人生。それが嫌なら、表現の本質へたどり着いて探求を終わらせるか、人生を終わらせるしかない』と独り言ち思い悩みます。自由な表現を失った結果生まれてしまった、期待に押しつぶされるだけの額面通りの演奏。彼女はピアノから一時期離れて就職の意を歩み始めるが、そんな矢先に交通事故で両足の感覚両親を失ってしまう。そんな頼る人が欠けてしまった絶望感は勿論彼女の胸中を占めてはいると思いますが、ピアノから離れてしまいいつかはなんとなく極められると感じていた『表現の本質』が叶えられる術が無くなったと思い。最終的に自殺という道を選んだのかな…と想像してしまいます。こうした『試してみるんだ、もう一度』が出来ない環境にいる人がどう立ち直っていくのかが見ものでした。こうした重い過去がまた続編で一人、また一人と語られていくのが楽しみでなりません。

悪かったところ
ビジュアルノベル

2020-02-25 (10)
本作品では『美少女ゲーム』と『ビジュアルノベル』の差異というのが非常に露骨に表れていると感じました。例えば本作品ではノベルと謳うだけあって読みやすさを突き詰めた結一行程度の台詞、なんなら五文字程度の台詞が相応にあります。これにより内容にやや淡白な印象は受けましたが完結的にお話が進み前作よりかは取っつきやすく感じました。また『ヒロインの性的な描写』は露骨に減りましたし代わりに『キャラクター数を増やす』ことで人と人との複雑な関係性がより露になった気がします。

2020-02-25 (11)
しかしながら本作品は『Re:LieF』を触っていなくても辛うじて楽しむことはできるとは思いますが、前作で重大に秘匿していたことがあっさり語られたりと新規層にはややハードルは高いのも事実でありマーケティングな面で誰を対象にしているかが大きく疑問符を浮かべてしまうところでした。前作のファンなら熱狂的な方はいるとは思いますがエロがないから興味なしと断じる方はいると思いますし幾分購入したいと感じる方は減るでしょう。新規層は先述の通り。海外の方にしても海外版『Re;LieF』が無いのにどうやって楽しむ?という話でしょう。そういった意味で久方ぶりの新作ではありますが若干方向性がわからないところは感じました。『エロゲを作り直すことを試してみるんだ、もう一度』