当面の最終回。それに代わり明日以降別ブログで本場所レポートを書きますので、その中で今回取り上げた力士たちの取組も最低1回ずつくらいは書ければと思っています。
また、今回取り上げきれなかった力士たちの相撲もその中、あるいは来場所以降個別で取り上げていければと思っています。

ちなみに名古屋前に大きな区切りとして、初場所以降で「卒業」を果たした力士たちについては一言ずつ触れようと思っていますので、その時、一人でも多くの力士に「おめでとう」と言える事を楽しみにしています。

達綾哉 16歳 高田川部屋 初土俵:平成22年3月 出身地:石川県 身長:193センチ 体重:146キロ
中学生離れした圧倒的な体格と中学横綱のタイトルを引っさげ、昨年春場所初土俵を踏んだ怪童には入門前からマスコミも注目。その期待に応え、夏場所序ノ口に載って以降6勝、6勝、6勝、4勝であっという間に23年初場所を幕下目前の地位で迎えることとなる。

ざんばら髪の堂々とした体格、風貌とその出世スピードから、放送でその姿を見ると思わず学生相撲出身力士と見紛いそうになるが、まだ16歳とはつくづく末恐ろしい存在だ。

実際の取り組みを見たサンプルがまだまだ少ないだけに本格分析は後日となるが、押しても組んでも体格を利し前へ出る意識は確立されており、その意識は変わらず磨き続けたい。また、さすがにこのあたりの地位となれば相手も強く巧い。一筋縄に行かずともそれは当然のことだろう。ただそれでも持てるポテンシャルとスケールを思えば本人や周りが思う以上に早くに上がれる余地もあるだけに、経験を重ね総合力を高めていく中においても、そういう上へ行くんだという気持ちも常に持っていて欲しいところ。
とにかく今場所幕下目前でどれだけやれるかに大きな興味を持つだけに本場所レポートでその辺についても適時分析していきたい。

寺尾丸剛士 24歳 錣山部屋 初土俵:平成17年1月 出身地:広島県 身長:190センチ 体重:144キロ
こちらも達に劣らないスケールを持つ新年要注目力士だ。高卒世代で入門した当時から20キロ以上体重を増やしてきた分厚い体から重い突き押しと左四つから上手を引いての重厚な寄り身を発揮する。

三段目中位まで上げた19年11月から3場所連続全休の憂き目にあい、その後着実に番付を戻し幕下目前まで迫りながら、22年3月にも全休と怪我に泣き、資質を思えばここまで決して早い出世ではないものの5月の復帰以降は大勝ちを続け、去る九州場所で初の幕下入り。見事勝ち越して、新年を最高位となる幕下41枚目で迎える。

とにかくスケール溢れる体で思いっきりぶつかってから重い突きでそのまま決めるか、得意の四つに組み止めて圧力を掛けるか。なんにせよ積極的な取り口が漸く芽生えてきただけに部屋の兄弟子・豊真将ばりの愚直さと真摯な土俵態度をひたすら貫いて欲しい。豊真将以後の関取が待望される状況で近い地位で競う青狼、松本ともにさらなる飛躍を遂げる1年になるか。

慶孔晴 20歳 阿武松部屋 初土俵:平成20年1月 出身地:鹿児島県 身長:175センチ 体重:113キロ
スペックは全く違うが、トリッキーな身のこなしに思い切った技の仕掛け、気の強そうな風貌、時に強引・豪快な投げが尾を引き、故障の経験が少なくないあたりは十両・将司に似た雰囲気もある有望株。

高卒世代からの入門だけに小柄ながら、はじめて番付に載った20年3月には近大相撲部出身の誉富士を下すなど順調なスタート。しかし、好事魔多く20年7月から2場所を全休。出直しの11月に序二段優勝を飾るが、翌1月は再び全休と怪我に苦しむ時期が目立った。
ただ、3月に復帰して以降は順調な出世ぶりを見せ、22年7月には新幕下入り。11月には最高位でもスピードとキレ溢れる取り口が際立ち5勝をマーク。新年を幕下30枚目と自己最高位を更に大きく更新して迎える。

小さな体で実にいやらしくトリッキーな身のこなしで相手の中に入ったり、横から崩していく取り口は魅力的だが、無理な態勢からの投げや足技なども散見され故障の懸念は絶えないだけに、これから体格面においてさほど大きなスケールアップも目指せないゆえ、今後はひとつの目標として元小結海鵬のような曲者ぶりは維持しつつも彼で言う左下手からの揺さぶりが如き「これ」と胸を晴れる自分優位の型を確立させていって欲しい。
さすがに今年中に幕下上位〜関取へと言うには体の軽さでもう暫く掛かると予想されるものの、変則派ながら攻める気持ちを忘れないメンタリティーも含め今後が楽しみな存在であることは間違いない。

荒鷲毅 24歳 花籠部屋 初土俵:平成14年11月 出身地:モンゴルウランバートル 身長:185センチ 体重123キロ
モンゴル出身力士で、当初は四股名に名残が残るように荒磯部屋所属。のち荒磯部屋の閉鎖に伴い花籠部屋へと転籍した。彼もまた怪我に泣き続けたこれまでの土俵人生だが、腐らずに番付を戻しいよいよ関取を間近に望む地位へと登ってきた。

彼に降りかかった災厄といえば何と言っても肩の脱臼ぐせで、長く慢性的な不安を抱えていたが、幕下22枚目まで上げた19年7月からは遂に戦線離脱を余儀なくされた。結局その年一杯を全休。この時期の彼といえば肩口の痛々しいサポーターの印象が極めて強くモンゴル出身力士らしい粘り強く食い下がっていく取り口にも精彩を欠く場所が続いていた。
しかし、序二段まで番付を下げて復帰した20年1月以降は復調。番付を着実に戻すにつれて、いつの間にか肩のサポーターは姿を消していた。22年は本格的に幕下上位へ参戦。7月以降3場所連続勝ち越しで23年初場所は東幕下6枚目。苦労人の紡いできた努力がこれから実りを時を迎えていくのか、勝負の1年となる。

取り口の理想としては低く踏み込み前廻しを掴んでの速攻、あるいはしぶとく下がっての捻りなどモンゴル出身力士の常道的内容。上位躍進を果たした22年は故障の状態も上向き、思うような内容もかなり増えてきたように思う。
ただ、体格のある四つ相撲力士や重い突きを繰り出す力士にはまだまだ体の軽さが否めない敗戦も多く、これまたモンゴル出身力士らしい手繰りや取ったりで勝機を伺う内容も少なくない。こればかりは蒼国来、白馬のように軽量ながらも出来る限り厚みを増し、相手の圧力をしかと受け止めることが必要。今年はそういう相手との対戦にもしっかりと注目していきたい。


誉富士歓之 25歳 伊勢ヶ濱部屋 初土俵:平成20年1月 出身地:青森県 身長:179センチ 体重157キロ
達以外は一応怪我に泣いてきた力士というコンセプトで並べた今回の特集。ということは近大相撲部から入門し2場所連続各段優勝を果たすなど順調な出世を遂げてきたこの力士も例外ではない。21年5月には眼窩底骨折、その後幕下下位に低迷しながら22年序盤は5勝、6勝と復調。自己最高位12枚目まで番付を上げたが、5月に負け越し。そして7月前に今度は肩を痛め再度の全休を余儀なくされた。

しかし、相次ぐ押し相撲力士にとっては恐怖を避け得ない故障に泣きながら、力強く踏み込み幕内・豊響バリのゴツイ身体で重厚な攻めを貫く姿勢は折れず、復帰後の秋・九州と連続勝ち越し。23年初場所は37枚目からもう1度幕下上位、そして十両を目指し勇ましく戦い抜く覚悟だ。
同期の深尾は先場所十両へ。近大の1年後輩で部屋の弟弟子でもある宝富士も先に十両昇進を決め、誰より悔しい気持ちを抱えるのは本人だろう。故障に負けず何とか活路を開いていけるような力戦奮闘ぶりに期待したい。

本当に「強い」と思える力強さ、馬力に満ちた押し相撲力士だけに個人的に特に愛着のない伊勢ヶ濱部屋の力士ながらも粘り強く応援している存在。頑張って欲しいという思いは切実だし、なんとか悲願を掴んで欲しい。

以上で18力士。ひとまずこれくらいで十分でしょう。全部読んでくれた方はありがとうございました。