ウォルマート創業者の最期の言葉 （3187投稿）

実質、世界ナンバーワンの小売業と言えばアメリカの「ウォルマート」です。
売上高は既に40兆円を超え、約44兆円(2012年決算）の規模を誇ります。

今日はそんなウォルマートのことについて、昨年と一昨年にアメリカ視察の際に自身で訪れた経験も踏まえて書いてみます。

そのウォルマートのディスカウント戦略や組織作りは様々な企業の成功モデルとなっています。日本の「トライアル」はそのままウォルマートを店舗カラーも含めて模倣していたりします。

ただ、一般的に日本の小売業と比較した場合、競争によるコスト重視を掲げるアメリカの多くの小売業の印象はこうだ。

『セルフサービスで人件費を抑制しており、顧客サービスは皆無だ』と・・・。

しかし、このようなことがあることはあまり知られていません。
アメリカでウォルマートに行くと、確かに従業員の姿を売り場で見かけることは希です。日本の小売業と比べて従業員数は当然少ないのと同時に圧倒的に客数も少ない印象を受けます。それは客数が少なくとも店舗が成り立つようなＩＴも駆使したローコストオペレーションが徹底されているからにほかなりません。
さぞかし、ドライな雰囲気い満ちたお店なのだろう…と勝手な印象を持ちがちだ。”アメリカ人は謝らない”などというまことしやかな話も頭をよぎる。
そこで、現地のウォルマートに行くとこんな印象を同時に持つ。少ないながらもすれ違うお店のスタッフが明るく「ハ〜イ!」と気さくに声をかけてくる！日本と変わらないじゃないか!・・・

そう、ウォルマートには『10フィートラインルール』というものが存在する。
その内容は・・・
”10フィート【3.3メートル】以内にいるお客様に声を掛けられるよりも先に声を掛け何かお手伝いできることはないかと尋ねなければならない！”
それは、こういったことを意味するものだ。”顧客の皆さんに、まるで自分の家にいるような親近感を感じさせると同時に、必要に応じての支援提供のために、私たちが常に近くいるという事を感じてもらう”というお店のメッセージを伝えるということにほかならない。

日本の接客と全く異なるスタンスは声をかけて商品やサービスを押し付けて売り込もうとする目的とは明らかに異なるということ。お客の側から求められない限り余計な手出しや口出しはしない。無論、売り込みは論外。客が必要なことは、基本的に自分でＰＯＰ等の説明内容を確認したり、手元のＩＴ機器で情報を得たりして客自身の中でショッピングが完結するようになっている。だからそこみお店のスタッフが介入ることもないし、その必要性がない。至ってシンプルかつスマートな環境を提供してある。


また、ウォルマートでは入り口付近に「グリーター」と呼ばれるスタッフが配置されていることが多い。
グリーターとは店舗の入り口に配置された挨拶係である。来店して頂いた買い物客に、ショッピングカートを渡しながら挨拶をする。ここで買い物客は、自分がゲストとして扱われる事に満足する。グリーターは店内の案内、顧客の返品を手伝い、購入した商品を車まで運ぶ事もある。また、万引き防止の為レシートチェックなど店舗の顔として責任重大な仕事という位置付けだ。



日本からの先入観を持って現地を見ると非常にその差の大きさに驚かされる。ドライな印象とは全く異なる状況が現場にはある。中途半端な日本の上っ面の「顧客への感謝」という小売業のスタンスとは異なる。
「買い物してくれたことに感謝するだけでは不十分である。顧客を笑顔で迎え、買い物を手伝い、顧客が期待しているサービスを行うことは当然のことである。これを実行すれば、顧客は何度でも戻ってきてくれる」とサム・ウォルトンの言葉を地でいく内容だ。


こうしてみると、小売業のサービスの在り方は、日本では本質が理解されず、誤解されたままカタチにしてしまっている印象がある。
「セルフサービスは人件費削減のコスト対策」としてとらえられがちですが、実際には客が煩わしさなく気軽に自由に買い物ができる環境整備のためのベストサービスだという認識が正しいと思う。
改めてそのような考え方で我が社のサービス内容や小売業の在り方も将来を見据えて見直していかねばならないなと思います。


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『ウォルマートの10のルール』
ルール1　「あなたの事業に夢中になりなさい」
ルール2　「利益をすべての従業員と分かち合いなさい」
ルール3　「パートナーたちの意欲を引き出しなさい」
ルール4　「出来る限りパートナーたちと情報を共有しなさい」
ルール5　「誰かが会社のためになることをしたら、惜しみなく賞賛しなさい」
ルール6　「成功を祝い、失敗の中にユーモアを見つけなさい」
ルール7　「すべての従業員の意見に耳を傾けなさい」
ルール8　「お客の機体を超えなさい」
ルール9　「競争相手より経費を抑えなさい」
ルール10　「逆流に向かって進みなさい」
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日本の企業理念などとよく似ています。
何をどうしたらその実現の形がこうも変わるのだろうか?・・・そう感じます。
同じ言葉でも形にすると全く異なるものになったりします。



ウォルマートを知るには・・・この本はおススメです。
ウォルマートの創業者サム・ウォルトンの自伝的小説です。

私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ (講談社プラスアルファ文庫) [文庫]
著者：サム・ウォルトン
出版：講談社
(2002-11-20)



最後に、この本の巻末から引用させていただきます。

”第2の質問は、仮に私に50年前の若さがあれば、何を始めるか、というものだ。この質問に答えるのは難しい。はっきりはいえないが、内科を売ること、お客と直接かかわる小売レベルのことをやりたいのはたしかだ。多分、現在の小売業について勉強し、わずかな資金ででもできる最も有望なことを始めるだろう。専門店か、コンピュータに関わることか、カジュアルな「ギャップ」や「ボディ・ショップ」のようなものになるかもしれない。
いずれにしろ、もし今度、あなたの近所に、少し風変わりな店主が店を開いたら、覗いてみてほしい。何を提供しているか、お客への対応はどうか、もう一度行きたいかどうか、チェックしてほしい。なぜなら、あなたの評価がすべてなのだから。自由の国アメリカでは、店が成功するかどうかは、あなた次第、つまりすべてはお客にかかっている。”

こう締めくくられています。本質を突いた重い言葉です。

そしてこの本のあとがきには息子からの視点でこのように書かれています。

”父はその生涯の最後の2年間、骨癌の一種である多発性骨髄腫との厳しい戦いに直面した。病名を告げられた時点で父はどれがほぼ確実に死に至る病であることを認識していた。父は、それまでの人生で常にそうであったように、その試練にも真正面から楽観的かつ前向きに立ち向かった。　
〜中略〜　
（ホワイトハウスから文民としての最高栄誉である「自由勲章」をウォルマート本社の大講堂でブッシュ大統領より直接授与された日から）数日後、父はリトルロックのアーカンソー病院に入院した。人生最後の数週間ですら、彼はそれまでいつもやってきたことを楽しんでやった。家族以外で父が最後に話をしたのは、地元のウォルマートの店長だった。彼と父は、その週の店の営業成績などを語り合ったのである。そして、74歳の誕生日の数日後、自由勲章を受章して3週間もたたないうちに、父の癌との闘いは遂に終わりを告げた。4月5日のに日曜日の朝、父は穏やかに息を引き取った。これまでの人生と同様、じつに印象的な最後であった。私たちは決して父を忘れない。
ウォルマート・ストア取締役会会長　ロブ・ウォルトン”



人には「命数」というものがあるらしい。
ワタクシの命数はどれほど残されているのか？後悔しないよう、限りある日々を全力で、かつとても大切に過ごさないといけませんね。





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