2021年11月04日

時代を超えて愛される、西洋歴史ロマンの名作中の名作

中学生の頃、友人のクラスの学級文庫に、愛蔵版の「ベルサイユのばら」がありました。
 
ベルサイユのばら 愛蔵版(第1巻) (Chuko★comics)
池田 理代子
中央公論新社
1987-03-28

 

そのせいか、当時そのクラスの女子には熱狂的なベルばらファンが数人いて、ベルばらの話で盛り上がっていたのですが…
 
その時は、特に興味も無く、勝手に耳に入って来る彼女たちの話を、聞くともなしに聞きながら「昔のマンガなのに、そんなに面白いのかな…?」などと思っていました。
 
ところが社会人になってから、偶然、ベルサイユのばら(文庫版)を全巻まとめて入手する機会があり…
 
読んでみて、衝撃を受けました。
 
そして、中学時代の彼女たちが「何故そこまでベルばらにハマっていたか」、その理由を理解したのでした。
 
絵柄は、さすがに数十年前の漫画だけあり、現在の漫画と比べると違和感があります。
 
しかし不思議と「違和感はあるけど、嫌いじゃない」のです。
 
むしろ、読み進めて慣れてくると、それが逆に良くなってくるのです。
 
しかも、まだデジタルはおろか、スクリーントーンですらロクに無さそうな時代であるがゆえに「こんな細かな模様を手作業で!どれだけ時間がかかったんだろう!? しかも、美しい!」と、画面を彩る技術に圧倒されます。
 
ヴェルサイユ宮の豪華絢爛ぶりはもちろん、マリー・アントワネットをはじめとする女性陣のまとうドレスも、フリルのひとつひとつが華麗で可憐で、見ているだけで楽しくなります。
 
魅力は絵だけではありません。
 
ストーリーの虚実入り交じり具合――特に、史実の取り込み方が抜群に巧みで、歴史好きでも唸ってしまうのです。
 
たとえば、ストーリー全体を通して重要な役割を担う登場人物「ロザリー」。
 
実は、実際の歴史で、マリー・アントワネットの最期の日々に寄り添っていた女性の名も「ロザリー」なのです。
 
その他、マリー・アントワネットの名を騙った「首飾り事件」、結婚式での不吉な予兆、異国の貴族青年フェルゼン、マリー・アントワネット最後の手紙etc…細部まで史実が取り入れられており、フランス史への興味が掻き立てられます。
 
その一方で、男装の麗人オスカルという「フィクション」を、物語の主軸に据え、しかもそれをノンフィクションな部分に見事に絡め、ほとんど違和感を感じさせることなく、ひとつのダイナミックなストーリーに仕上げています。
 
そして、史実が元であるがゆえに、余計にいろいろ考えさせられる、歴史の悲劇人間ドラマ…。
 
「『パンが無ければお菓子を食べればいい』は、実際はマリー・アントワネットの言葉ではなかった」というのは、既に結構知られていることですが…
 
彼女は存命中から、様々なネガティブキャンペーンで負のイメージを背負わされてきた人物です。
 
しかし、この作品の中での彼女は、「軽率で無知ではあったものの、ただひたすら懸命に、幸せになろうと生きてきただけの女性」として描かれています。
 
勉強が嫌いだったこと、退屈を恐れ、自分の心の安らぎのために散財をしまくったという彼女の負の側面も、この作品ではきっちり描いています。
 
しかし、その裏にあった彼女の寂しさや苦しみ、周囲との軋轢、そして様々な人々を惹きつけてやまない無邪気な愛らしさや高貴さを描くことで、マイナス面をも上回る、彼女の「魅力」を描き出しているのです。
 
むしろ、そんなマイナスな面が描かれていることにより「人間くささ」が出て、親しみが増します。
 
(しかし、結局はそんな負の側面が、彼女を追いつめていくわけですが…。)
 
そして、そんな失敗や欠点があるからこそ際立つ、彼女が時折見せる凛とした立ち居振る舞いと、革命後の苦難にあっての劇的な人間的成長…。
 
しかし、そんな「成長」を遂げた時にはもう、全てが遅いという、運命の非情さ…。
 
そして、オスカルとアンドレの切ない恋愛模様…。
 
(特にアンドレは、報われるまでが長く、報われてからは「あっと言う間」なのが…。)
 
時代の流れにより、登場人物たちがそれぞれ道を違えていく様も、切なくてなりません。
 
ストーリー自体がドラマチックですし、西洋史を学ぶ上でも役立つので、「昔の漫画だから」と食わず嫌い(ならぬ読まず嫌い)せず、是非多くの方に読んでもらいたい作品です。
 




 

 
<愛蔵版一覧>
 
ベルサイユのばら 愛蔵版(第1巻) (Chuko★comics)
池田 理代子
中央公論新社
1987-03-28

 
ベルサイユのばら 愛蔵版(第2巻) (Chuko★comics)
池田 理代子
中央公論新社
1987-04-28

 
ベルサイユのばら 愛蔵版(外伝) (Chuko★comics)
池田 理代子
中央公論新社
1990-02-01

 
<文庫版>

 

 
<Kindle版>
 
ベルサイユのばら(1)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(2)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(3)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(4)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(5)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(6)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(7)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(8)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 
ベルサイユのばら(9)
池田理代子
フェアベル
2013-10-01

 


    このエントリーをはてなブックマークに追加
mtsugomori at 20:09少女マンガ | 世界史
記事検索
プロフィール

mtsugomori

管理人サイト紹介
オリジナル・ファンタジー小説サイト「言ノ葉ノ森」
banner
カテゴリー
記事検索
アクセスカウンター
  • 累計:

  • ライブドアブログ