日本郵政に関する郵政改革法案について、政府内で意見の統一をみず、鳩山首相は全閣僚が参加する閣僚懇談会で調整する事としたようです。

最終的な法案はまだですが、郵政改革法案について、今日は書く事にしました。
既に報道も行われた内容も含んでいますので「そんな事知っているよ」という事があるかも知れませんが、ご容赦下さい。

政治家や経済学者の議論を見ていると、日本郵政の問題が、過疎地において不便になったか否かに視点があり、郵政改革の目的が忘れられているような気がします。

そもそも、郵政改革、民営化の目的は、
  1. 政府の信用を背景として集めた郵便貯金や簡易保険の掛金が、財政投融資として日本道路公団を初めとする特殊法人に貸し出されていましたが、借りる側にとってみれば、容易に資金が確保できる事となっていたため、コスト削減の意識を希薄にしてきた。
    この結果として、道路建設を初めとする無駄な公共投資を資金面で支える事になっていた。
    これを改めるため、資金の出口として公共事業の見直しと、入り口としての貯金事業と保険事業の見直しを行う。
  2. 政府保証のある郵便貯金や簡易保険が民間の競合他社との競争において、アンフェアであり、民間の活力を削ぐ形となっていたものを改める。
  3. 郵政事業の効率を高め、郵便のユニバーサルサービスに掛かる費用を削減し、国民負担を減らす。
等があるように思います。

郵政民営化反対論者が唱える、「民営化後に郵便局が多く閉鎖され減った」は事実ではありませんし、「郵便局まで行かなくても、配達員に貯金を下ろしてお金を届けてもらう事が出来なくなった」というのは、そもそも服務規程違反であり、郵政民営化の影の部分であるとは言えないと考えます。
確かに、集配回数が減ったという事はあり、民営化によりサービスが低下した、という意見もあると思いますが、これについてはその部分を改めれば良い話であり、郵政民営化自体を、あるいは根本的な部分を見直す程の重要な事項では無いと思います。

今回の郵政改革法案においては、ゆうちょ銀行の預金限度額を1000万円から2000万円の2倍へ引き上げる(同じく、かんぽ生命の上限は1300万円から2500万円へ引き上げ)事が、検討されています。
しかし、この政策には疑問であり、経済に多大な影響を与えると思います。

現在、政府が日本郵政の株を100%保有しており、ゆうちょ銀行は日本郵政の100%子会社です。また、今回の郵政改革法案においても、当面は政府が株を保有し、その後、株を売却する際にも、株主総会の特別決議を拒否できる1/3以上の株を保持し続ける事が検討されています。
このため、ゆうちょ銀行の預金に対し実質的には政府保証が付く事になります(政府が経営に関与している以上、破綻時に政府保障を行わない事は難しい)。

一方、民間の金融機関の預金で保護されるのは1000万円(正確には、元本1000万年+利子)までとなっています(例外:決済用普通預金は全額保障されます。但し利子は付きません。)。これでは、ゆうちょ銀行の方が安全・安心と言う事になります。
このため、経営基盤の弱い、地方銀行、信金、信組などから、ゆうちょ銀行に預金が流出する可能性が高くなります。
信金や信組は、地方に根ざした金融機関であり、中小企業への貸し出しを主として行っていますが、この預金流出により、地方中小企業への貸し出しが困難になることが予想されます。
こういった事態になれば、地方経済にとっては打撃であり、混乱は必死の状態となります。
また、地方銀行、信金、信組の破綻処理を行うために、税金の投入が必要となることも予想されます。

逆に、ゆうちょ銀行の預金残高が増えた場合、これまでと同じように、運用先があるわけではなく、国債を購入することに終わりそうです。
これでは、民間の資金を吸い上げるだけで、世の中のお金の流れに悪影響を与え、経済に打撃を与えると考えられます。
また、ゆうちょ銀行自身が貸し出しを行う事も想定されますが、ゆうちょ銀行に貸し出しのノウハウ(与信や債権回収、など)がある訳ではなく、下手をすれば、新銀行東京のような状態となり、税金で後始末をする羽目になることも考えられます。
世間では、ゆうちょ銀行が集めた資金に、信金や信組がもつ融資ノウハウを合体する、という考え方もあるようですが、信金や信組単独でも可能な貸し出し業務にゆうちょ銀行を噛ませる必要は無いと思います。ゆうちょ銀行+信金や信組、の場合、当然、手数料が増加するなるため、預金者や借主への負担が大きくなります。

また、ゆうちょ銀行が国債を今以上に購入する事は、事業費用削減の意欲を失わせ、無駄な公共事業等の、無駄なお金の使い方が復活する危険性があると思います。

今回の郵政改革法案を見ていると、民主党の3大ばら撒き施策である、
  1. 子ども手当
  2. 高校授業料無償化
  3. 農家の個別所得保障制度
について、来年の参議院選挙目当てであることは明らかですが、郵政問題も国民新党の選挙対策である、との色が濃く見えています。(ご存知の通り、郵政は国民新党の有力は支持母体(唯一のといっても良い、と個人的には考えますが)です)

これ以外にも、非正規雇用者10万人の正社員化(年間3000億円の負担増)や、郵政グループ間の取引の税金免除(年間500億円)や法人税免除(年間数千億円)、など実質的な税金投入による、国民の負担増も検討されているようです。
これらについては、また機会があれば書いてみたいと思います。