20120314_旧田中家庭園川口市にある旧田中家住宅で開催中の「ガロン第2回 日本背景」展に行ってきた。

旧田中家住宅は、埼玉県川口市ににある大正末期から昭和初期にかけて建てられた国指定有形文化財の洋館である。最寄駅は埼玉高速鉄道川口元郷駅。
田中家は、江戸時代から川口で材木商、味噌醸造業を営むことで財を成した地元の名家である。家業のほかにも議員として政治にも携わったと資料にある。その住居として建てられたのがこの住宅で、川口市の文化財センターの分館として保存、および公開されている。
その旧田中家住宅で開催されているのが今回の美術展である。

ガロンメンバーとして、市川裕司、大浦雅臣、金子朋樹、佐藤裕一郎、松永龍太郎が出品し、ゲストに金理有、後藤雅樹、前川多仁、山本麻瑠絵を迎えている。
国道122号沿いにこんな洋館があったのか、と同行の川口市住民も驚く。入ってすぐにある券売機で入場券200円を購入。
いきなり、山本麻瑠絵の作品がある。昨年(2011年)に行った「所沢ビエンナーレ 引込線」で彼女の公開制作を目にした。公衆電話や消化器、飲料の自動販売機、扇風機といった身近な物を木彫りの作品にする。どちらかといえば粗い削りでゴツゴツとし、浮いてしまいそうなのに、ほの暗い室内にあると、そこにあるのが実に自然に感じられる。
階段の踊り場に消化器置き、板敷きの廊下の先に蚊取り線香、和室に扇風機。こういった演出は宝探しのようで楽しい。

1階、2階、3階の縦続きの階が違う同じ洋室に展示されていたのが市川裕司の作品である。
今日の一番の目当ては彼の作品である。日本画の画材にビニールやアクリル板といった異素材の組み合わせが興味深い。
1階は「円環12-1」という障子戸にアルミ箔や方解末を塗ったポリカーボネートをのせ、折り紙のように畳み込む形の作品。2階は「1923」。書斎の中央に椅子を置き、座面に正方形のアルミ箔を重ね重ねて箔押しした作品。3階は部屋いっぱいの大きな球状のポリ塩化ビニルのボールにアルミ箔をのせた(合成樹脂で?)「eschaton O」という作品。
展示のあり方、窓から差し込む光によるその視覚的効果をはじめ、どうやって制作したのだろうという目でもつい観てしまう。

前川多仁の作品は赤を多用するせいか、点数の多さのせいか、やけに意識に焼き付く。プリントとろうけつ染めのテキスタイル作品なのだが、その鮮やかな赤、線を描く黒、プリントされた動物や雛人形の図柄。そのバランスが強烈だ。作品のタイトルも「合体変身!(アシュラロボ)」「神様はミサイルに乗ってやってきたんだ」「覇王降臨!」「ザ・グレート・ベンケイ」とはしゃいでいるのか、破壊的なのか、その境界線を行き来しているような作品だった。恐らくコンピュータを使用しているであろう最新のプリントに、伝統の染色法であるろうけつ染めの組み合わせも時代をまたがっていておもしろい。それらのテキスタイルを寝具や掛軸、着物といった作品に仕上げている。2階の日当りのいい和室は彼の作品で埋め尽くされ、時間そのものが交差しているようだ。

紅梅、白梅が満開の池泉回遊式庭園を横切り、鯉が泳ぐ池を渡って、茶室へ移動する。枯山水、灯篭、手水鉢などが配置されている。この庭園は味噌醸造蔵の跡地に造られたとのこと。

茶室の軒下に金理有の作品が展示されており、見落としそうになる。「破顔鬼」。この「破顔」は何を意味するのだろう。顔を破る? 笑う? クワガタの角のような、サソリのハサミのような長い触角をしゃがんで見入る。
茶室の小さな入り口を頭を下げてくぐる。金理有の舌をぺろりと出した作品、金子朋樹のゆるく湾曲した画面の衝立てや屏風が並ぶ。どちらもこの茶室の空間に溶け込んでいる。

金理有の作品をはじめて観たのは2010年、銀座INAX内のギャラリーガレリアセラミカで開催された「金理有 -ceramics as new exoticism-」展である。焼き物なのに、金属的な輝きをもつ金理有の作品はそのギョロリとした目とともに印象的だった。

歴史的旧家に現代美術作品を展示するという組み合わせは結構あるが、今回の旧田中家住宅のように和洋折衷な空間を壊さず、むしろ活かしての展示は興味深かった。しっくりとしながらも、きちんと作品として成立している。
今冬は寒い日が続いたためなかなか春らしい花を目にしないうちに日ばかり過ぎてしまったが、ここの庭は今まさに紅梅、白梅、水仙、椿と花盛り。春の香りであふれている。

20120314_旧田中家3月18日までと会期はもうすぐ終わってしまうが、機会があれば是非足を運んで欲しい美術展だった。今なら合わせて、雛人形の展示もある。