2010年05月31日

アフリカ最前線 31南アフリカ特別編・3 右肩上がりの「経済水準」と「対日感情」

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.06月号

 南アフリカ(南ア)には、南アフリカ航空や、ダイヤモンド産業のトップであるデビアス等、世界的に有名な大企業が多く、大きなビジネスの取引も盛んに行われています。
 近年、拡大しているのが自動車産業。南アは、道路網の発達や国内の中産階級の成長、近年の国内経済成長等を背景に、自動車需要が非常に伸びています。日本企業も、トヨタ自動車や日産自動車等が、進出しています。
 また、アフリカ諸国では、ボロボロの自動車が街中を走っている国が多い中、南アでは新車が数多く走っています。中型セダンの需要が一番多いですが、アフリカのサバンナを走るための四輪駆動車や、富裕層向けの高級車も人気があります。
日本車は大人気で、二〇〇七年時点でトヨタは、南ア自動車販売市場の二二・六%のシェアを占め、一九八〇年以来、二十八年連続シェアナンバーワンを維持しています。トヨタ子会社の南アフリカトヨタは、南アのダーバンで工場を操業、約一万人の地元従業員を雇用しており、「ダーバンといえばトヨタ」といわれるほど、地元に根づいた企業となっています。先日の「トヨタリコール問題」に関して、南アの知人は、「トヨタがいじめられた、という印象。日本車に対する信頼は変わらない」といっていました。
 日本企業以外にも、BMW、フォルクスワーゲン、フォードといった、世界の主要自動車メーカーが工場を経営しています。南アで製造された自動車や自動車関連の部品等は、国内だけではなく、世界中に輸出されています。二〇〇六年の自動車関連産業の南ア国内生産額は約二〇〇億ドルで、GDP(国内総生産)における比率は七・五%と、製造業で最大の分野でした。
 また、雇用の面でも、販売・サービスを含む自動車関連産業の就業者数は三十万人に達し、民間製造部門の二五%を占めています。このように、各国の自動車メーカーの南ア進出により、自動車製造の専門技術が広まり、雇用機会を創出しています。南ア政府は、経済の担い手として、大きな期待をしています。
 南ア国民の収入格差は、依然大きいままですが、中間層の経済水準が上がってきています。そのため、車や家電等の需要が、まだまだ増えていくと思います。日本企業も、どんどん南アに進出するべきだと思います。
 私は、これから南アで成功する業種は、ホテル経営だと思います。日本人のサービス精神は世界でもトップクラス。南アのホテルのサービスもよくなってきてはいますが、日本人の繊細さには、まだかないません。また、日本人観光客も増えているので、日本人スタッフのいる、日系のホテルは需要があると思います。
 また、建設業も上手くいく可能性が高いと思います。今回、サッカー・ワールドカップ(W杯)のための道路工事等のインフラ整備で、一部、W杯開催に間に合わないことが判明しました。主に中国の請け負い工事ですが、彼らは平気で完成を遅らせるので、政府もあきれています。南アの近隣諸国でも、同様のことが起こっています。その点、日本企業は工期をしっかり守り、品質も高い。こうした日本企業の優位性は、アフリカ諸国の注目を集めると思います。
 先日、在南アの日本政府関係者とお話しした際、「日本企業はもっとやれるはずですが、ハングリー精神が足りないのでは、と感じます。仕事の質は高いので、もっと成果を上げられると思います」と、仰っていました。

「アフリカ最前線」は今回で最終回です。
ご愛好頂き、ありがとうございました。次号から、各国駐日大使とムルアカ氏の対談を新連載します。


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2010年05月27日

アフリカ最前線 30南アフリカ特別編・2 800億をかけて再生した「空港」

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.05月号

 サッカー・ワールドカップ(W杯)が開催される今年、南アフリカ(南ア)政府は渡航者数一千万人以上を目標に揚げています。W杯の際、初めて南アを訪問する外国人も多いはず。その時、彼らの南アの第一印象は、入国の際の空港で決まるでしょう。第一印象は、今後の再訪問者数の増減に大きな影響を与えます。 
 鉄道網は発達していますが、長距離移動に使用する人はほとんどおらず、全体の35%の路線は運行していません。また、道路網も発達していますが、高速道路では制限速度を楽に越えるスピードが出る車が多いので、南アに慣れていないドライバーは危険です。南アでの国内長距離移動の手段は、航空機がメインです。しかし、南アにある十四の空港は、これまで、利用者からの評判があまりよくありませんでした。
 まず入国審査の際、長時間待つことが常識化していました。南ア国籍の人は五分程で入国できますが、外国人は二〜三時間並ぶことが普通でした。審査官が少ないことや、早く入国したい人が審査官に賄賂を渡すこともあり、審査官が意図的に混雑を誘発させることもあったそうです。そのため、空港の中はいつも大混雑で人ごみにまみれ、スリや置き引きも多かったようです。
 例えば、人が入国するより、荷物が先に飛行機から運び出され、ターンテーブルで回っている間に、置き引きに遭うことや、荷物の鍵がこじ開けられ、貴重品が盗まれる、という事件も度々起こりました。
 また、空港には荷物を運ぶポーターが大勢おり、彼らはチップで生活しているため、我先に荷物を運ぼうと集まってくるので、恐怖を感じる観光客も多かったと思います。
 このような状態に危惧を抱いた南ア政府は、空港の改修・改善に52億ランド(約八百億円)を投資し、急ピッチで進めました。
 改修後の空港は屋根が高くなり、空港内のしきりをなるべく排除したため、、開放感のある場所に変わりました。
 さらに、空港内の職員の業務を改善するために、民間の企業で空港職員の業務をチェックする体制をつくりました。空港派国が管理・運営しており、空港職員は全て公務員です。
 これまでは腐敗が進み、主に日本人や中国人を集中的に狙った「特別な検査」も行われたそうです。入国審査後に再度、手荷物検査を強制され、職員が難癖をつけ「少し金をくれれば、見逃してやる。」と賄賂を要求する犯罪が横行していたようです。理由も明かされずに、携帯電話や電化製品等を没収されることもあったそうです。
 ですが、民間企業がサービス体制をチェックし始めたことで、空港職員の犯罪もなくなり、日本の空港と変わらない対応を、受けることができるようになりました。
 セキュリティ面も強化され、空港内の防犯カメラを増設し、前号で触れたように、ポーターをなくしました。そのおかげで空港で多額の外貨交換をした観光客の後をつけ、強盗する事件が多かったのですが、その心配もないほど、安全になりました。
 南ア観光局のアジアパシフィックのリージョナルマネージャーであるブラッドリー・ブラウアー氏は「W杯はスポーツの大会にとどまらず、南アフリカの将来的発展に繋がる需要なイベントです。空港の改修、新設により、今後の南アフリカのビジネスや観光産業に大きな利益をもたらすと考えています。」と仰っていました。
 アフリカ諸国に勇気を与えるという面でも、W杯を成功させてもらいたいです。


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アフリカ最前線 29南アフリカ特別編・1 「W杯効果」で一時的には治安改善

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.04月号

 サッカーの南アフリカ・ワールドカップ(W杯)の開催が六月に迫ってきました。しかし、日本の多くのメディアは、南アフリカ(南ア)の治安不安を盛んに報じています。日本サッカー協会は、現地への女性記者の派遣を自粛するよう国内メディアに要請。外務省も、南アへの渡航に注意を喚起しています。現実はどうなのか。南アの最新情報を、三回連続でお伝えします。
 ※   ※   ※
 W杯決勝が行われる南ア最大の年・ヨハネスブルグ。世界で最も治安が悪い都市といわれてきましたが、W杯招致を機に、近年、防犯対策が急ピッチで進められました。
 代表的な事例は、二○〇八年十二月に完了した、市内全ての交差点への「ハイテク監視カメラ」の設置。監視カメラ映像は、ヨハネスブルク警察が二十四時間体制でチェックするだけではなく、全ての車両のナンバープレートを自動的に読み取り、盗難車かどうかをデータベースで自動照合します。警察官も約四万人増員しました。市内であれば通報から警察官が駆けつけるまで平均一分と日本を凌ぐレベルです。
 このように、ヨハネスブルク市内中心部であれば、治安は相当改善しています。基本的に、昼間に団体で行動し、黒人移住区等の危ない場所に近づきさえしなければ、渡航者が犯罪に巻き込まれる可能性は低いでしょう。
 また、南ア政府は積極的に雇用を創出し、犯罪仰止につなげています。
 たとえば、ポーターによる置き引きや、スリ等が頻発していたヨハネスブルグ国際空港。南ア政府は、空港内の治安改善を図るため、道路やスタジアム建設等、W杯関連の整備事業の作業員として、ポーターを雇用。これにより、空港にポーターがほとんどいなくなり、空港内の犯罪は激減しました。こうしたW杯関連の、一連の公共投資による雇用拡大が、南ア全体の犯罪数を減少させています。
 ですが、これは一時的な雇用に過ぎないのです。問題は、W杯後です。南ア政府は、01年度から防犯対策に多額の投資をしており、10年までに十五億ドルに達するといわれています。しかし、南ア警察の発表によると、06年度の「殺人件数」は19202件、08年度は18148件。約1000件減少したものの、日本の08年度の「殺人件数」1297件(警察庁「犯罪統計書」)と比べて、南アは日本の15倍。高い水準に張り付いたままです。
 南アで犯罪が多い原因の一つに、周辺諸国やアジア、中東から、大量に移民が流入していることが挙げられます。南アの人口約五千万人中、移民はジンバブエ人を中心に五百万人以上いるといわれ、そのほとんどが、低賃金で働いています。一方、移民に職を奪われた格好の、南アの貧困層の不満は拡大しており、移民排斥の動きが高まっています。暴動による死傷者も多数発生しており、かつてのアパルトヘイトに代わる差別画拡大しています。
 こうした「新たな差別」が、さらなる貧困層を生み、犯罪発生の悪循環が止まらないのです。
 南ア政府は、低所得者向けに仮設住宅を建設する等をしていますが、南アフリカの犯罪をさらに減らすには、義務教育の徹底も必要です。初等教育で、社会のルールや道徳を学ばせる。基本的なことすら学べない子どもが多いことが、犯罪数の多い原因だからです。雇用と教育の改善が、南アが喫緊に取り組むべき課題であると思います。


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2010年05月20日

アフリカ最前線 28アフリカの人々が信仰する「宗教の源」

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.03月号

 私は子どもの頃から、カトリック教徒として教育を受け、育ちました。アフリカではキリスト教、特に、カトリックを信仰している人が最も多く、次にプロテスタントが多くいます。北アフリカでは、イスラム教を信仰している国が多くあり、さらに、いまだ、伝統宗教が残っている地域も、わずかながら存在します。
 アフリカではもともと、太陽や山、サバンナや草木等に精霊が宿っていると考えられ、それぞれの精霊(=神様)と会話をしながら生活する「アニミズム」がありました。雨を降らせて欲しい時等、精霊にお願いし、雨が降ったら精霊に感謝するというように、アフリカの人々にはなくてはならないものでした。 しかし、十九世紀に入ってからは、ヨーロッパ諸国による植民地支配と同時に、キリスト教(カトリック)の教えが急速に広まり、そういった伝統宗教は排除されてしまいました。
 アフリカに布教したキリスト教は、ヨーロッパの国々がアフリカを支配するために用いたものです。学校と宗教を一体化させ、キリスト教の学校で勉強をさせれば、子どもは将来いい仕事に就ける、という計算された仕組みをつくったのです。また、キリスト教の洗礼は、新しい服を着せたり、パーティをする等、貧しい生活をしていたアフリカ人にとっては、文明的な憧れの象徴のようになりました。しかし、キリスト教を信じたアフリカの人々は、皮肉にも、支配者たちをも許すような教えでもって、マインドコントロールされてしまいました。そして、コンゴ民主共和国等の中央アフリカでは、その後、八〇%ほどの人がカトリックを信仰するようになりました。いまでは、アメリカのプロテスタントや、色々な新興宗教も広まったため、カトリック教徒は六〇%ほどになっています。
 このように、アフリカのキリスト教は、植民地支配によって広まりました。しかし、もともとの宗教は人を支える偉大な力を持っています。貧しい生活を強いられている人にとっては、心の依り所になりますし、分かち合い等の教えによって、助け合いながら苦境を乗り越えられるようになります。
 一方、健康で裕福な暮らしをしている人にとっては、神様は必要とされなくなります。しかし、どんな高い地位の人でも、辛い時や死の直前は神の存在を意識し、道徳的に物事を考えるようになるでしょう。先進国の裕福な人に多いのは、すべては、自分の力で手に入れたと、過信してしまうことです。
 しかし、人間は常に「生かされている」ことに感謝する心を持つべきです。ここ十年ほど、多くの日本人が忘れてしまっているようですが、自分は、神様や先祖によって生かされているということを、思い出してもらいたいのです。日頃から感謝の気持を持っていれば、お金や仕事がなくても、もっと恵まれない人を助けようという気持が湧いてくるはずです。
 宗教というと、異教徒の衝突や、一部の過激派によるテロ等を想像する人もいるかと思います。しかし、どの宗教も基本は、道徳的に大変素晴らしいものです。歴史を振り返っても、宗教はいつも一部の人たちによる、政治的な利権争いや金儲けの道具に使われたに過ぎません。
 一度、裸足で大地を踏みしめてみて下さい。人間が土と一体化し、自然の一部として生かされていることを感じられると思います。それこそが、アフリカの人々の心に宿る、宗教の基本的な考え方ですが、すべての人に共通する、とても大事なことなのです。


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アフリカ最前線 27命懸けで男女格差解消に挑むアフリカ人女性

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.02月号

 世界経済フォーラムが昨年十月二十一日に発表した、二〇〇九年の社会進出における性別格差の度合いを少ない順に評価した「男女格差指数」では、百三十四カ国中トップ10に、南アフリカ(六位)とレソト(十位)の二つのアフリカの国がランクインしました。ちなみに日本は七十五位で、先進七カ国中最下位でした。
 アフリカ諸国では、女性の社会進出が進み、企業の役員や官僚、大臣等に女性が多く見られます。多くの国では、内閣に女性問題担当の大臣を置いて、女性の自立を政策的に推進しています。
 自立が進むアフリカ女性を象徴する人物としては、コンゴのウィヴィンランドゥ元女性担当大臣が挙げられます。勉強家で、国際協力大臣から大統領候補にもなりました。彼女は大臣の時、軍の士気を高めるため、自ら銃を取り訓練に参加しました。その他、ノーベル平和賞を受賞したケニアのマータイ元副環境大臣。彼女は、独裁政権下にあったケニアにおいて、公然と政権を批判し、数度の逮捕と投獄を経験しています。それにも臆せず政治活動、環境保護運動を続け、〇四年度のノーベル平和賞を受賞しました。
 リベリアでは〇五年に、選挙により選出されたアフリカ初の女性大統領・サーリーフ氏が誕生しました。彼女は、ハーバード大学で経済学を学び、世界銀行のエコノミストや国連職員を経験した才女ですが、当時の独裁政権を批判したため、自宅監禁された経験があります。それでも、不屈の精神で大統領にまで上り詰めたため、「鉄の女」と呼ばれています。
 アフリカ人女性に共通するのは、ハングリー精神です。貧しさの中で、明日の生活をよりよくしようと頑張ってきた精神力がある。そのため、男女差別やセクハラに遭うと、誰かに助けてもらおうとするのではなく、自ら改善を訴えます。アフリカの一般女性が、もし電車等で痴漢に遭ったら、大声で周りの人々に訴え、自ら相手を攻撃し言い訳させない状態に追い込みます。痴漢した人は多くの人に顔を覚えられ、社会的に生活しづらくなる。また、ピグミー族は、夫婦喧嘩で奥さんが怒ると、家を壊して実家に帰ってしまいます。それほど怒っているんだ、と主張するのです。
 コンゴでは、ある村で自宅の近所で二回も浮気をした夫を、奥さんが近所の人々の見ている前で、棍棒で叩き殺したという事件がありました。もちろん、いけない行為ですが、アフリカ女性は、それほど自分にプライドを持っているともいえます。
 一方で、私が来日したばかりの一九八五年当時、日本人男性の女性への対応は驚くべきものでした。日本の友人の家で食事をした時のことです。奥さんが台所で料理をつくり次々と運んで、ある程度料理が並ぶと、奥さん抜きで食事を始めたのです。奥さんをまるでメイドのように扱っているようで、大変ショックを受けました。コンゴでは、料理が食卓に並んでも、家族が全員揃ってからでなければ、食事は始まらないのが普通です。
 女性の奥床しさや、「内助の功」といった日本人が美徳とする価値観は素晴らしい。ですが、日本の女性がより社会進出するためには、もっと強くならなくてはいけないと思います。会社や社会の中で不平等を感じたら、強く自己主張すべきです。また、女性の社会進出には、周囲の理解・協力も不可欠です。
 私感ですが、日本人女性は男性の傘の下にいる気がします。女性の社会進出や差別等を解消する鍵は、女性自身が握っています。


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2010年05月19日

アフリカ最前線 26ナイジェリアの民主化に日本人の教え

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2010年.01月号

 アフリカには、軍人出身の大統領が多くいます。コンゴ民主共和国のカビラ大統領
や、ギニアのカマラ暫定大統領等、枚挙に暇がありません。また、軍の権力が強いの
もアフリカの国々の特徴です。
 なぜ、軍の力が強いのかといえば、これまでの歴史が関係しています。アフリカ諸
国では、民衆の暴動やクーデターによる政権交代等、数えきれない紛争がありました。
 今年三月には、マダガスカルでクーデターが起き、軍の支持を得た野党指導者ラジョ
エリナ氏が、大統領のラベロマナナ氏を退陣に追い込みました。その際、両氏の支持
者が激しく対立、暴動に発展し、百人以上が死亡しました。現在は、ラジョエリナ氏
が大統領に就任しています。この事件は、軍が大統領を失脚させたもので、ラジョエ
リナ氏は軍の傀儡に過ぎません。
 このような事態が度々起こるので、軍人の保護がなければ、政治も正常に運営でき
ないのです。結果、軍人の権力が強くなり、政治にも介入し、法律を決める際にも、
軍が関与する場合もあります。この悪循環が、アフリカ諸国の発展を阻害しているの
です。
 アフリカの多くの国では、軍人はアンタッチャブルな存在です。コンゴ民主共和国
では、かつて、大統領批判をしていたメディア協会の会長が、テレビの生放送出演中
に、攻撃されるという事件がありました。一命はとりとめましたが、大統領の命令だ
というのは暗黙の事実で、その事件以来、コンゴのメディアは大統領に批判的な報道
ができなくなりました。軍事力で国家の安定を保っている状態では、アフリカから軍
事クーデターや暴動、紛争はなくならないでしょう。
 また、武器を輸出している、諸外国の思惑も関係しています。武器ビジネスは、巨
大なビジネスです。二〇〇四年のイギリスの対アフリカ武器輸出額は、約一八億ドル
にも上ります。そして現在、アフリカに対する最大の武器輸出国である中国は、スー
ダンや南アフリカ、コンゴ等に武器をばら撒いています。彼らが武器を売れば売るほ
ど、紛争が増える。まさに「死の商人」といえるでしょう。
 一方で、安定した国もあります。ナイジェリアは、政治、経済、軍事のバランスが
とれた国です。アフリカ第一位の人口、OPEC(石油輸出国機構)第六位の原油生産量、
地域の紛争予防に対する貢献も国際的に評価されています。このナイジェリアの成功
には、実は日本が深く関わっているのです。
 ナイジェリアの前大統領、オバサンジョ氏は元軍人で、一九七九年に民政移管を成
し遂げた指導者です。ですが、ナイジェリアはその後、再び軍事政権に戻り、九五年、
オバサンジョ氏は軍事政権によって、クーデター未遂容疑で逮捕されました。
 彼が収監された刑務所に、日本のお坊さんが訪ねて来て、「心を入れ替えて、この
国の民主化を誓えば、助かるでしょう」と説いたのです。そして、別の軍事政権に代わり釈放された後、「もし、私が次の指導者になれば、この国を民主化する」と宣言したのです。
 その言葉は、多くの国民を虜にしました。そして、九九年、初の民主的選挙で、大
統領に選ばれたのです。オバサンジョ氏は、大統領になって最初に日本を訪れ、日本
の民主主義を見聞しました。そして、今日に至る、安定した国家運営の礎を築いたの
です。
 その他にも、南アフリカ、ボツワナ、タンザニア、ガーナ、モザンビーク等は、鈴
木宗男衆院議員が中心となって、日本が積極的に民主化を手伝った国です。いまも、
それらの国の多くは、安定した国家運営ができています。
 アフリカ諸国の民主化に、日本はもっと寄与して欲しい。それは、資源外交等、日
本経済にとって、必ずプラスになるはずです。


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アフリカ最前線 25「食糧ビジネス」で注目されるアフリカの課題

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2009年.12月号

 国際連合食糧農業機関(FAO)の今年六月の発表では、「全世界の飢餓人口は、〇八年の九億六千三百万人から、〇九年中に十億二千万人にまで増える」と予測しました。このような状況の中で、世界各国がアフリカの広大な土地で食糧ビジネスを興すことに注目しています。
 大航海時代から第二次大戦終戦まで、およそ三百年以上も続いた植民地時代、アフリカの大地はヨーロッパの国々によって支配されました。宗主国はアフリカ人を奴隷にし、ココアやカカオ、パーム油等を生産、自国へ輸出していました。その後、列強の殖民支配が終わり、主な輸出品は鉱物資源に変わりました。そして、プランテーションから開放された農奴たちは、今度は欧米資本が経営する鉱山の労動者として駆り出され、その結果、多くの農地が放棄されました。〇二年のFAOの発表によると、アフリカの耕作可能な土地八億七〇〇haのうち、実際に耕作されるのは、わずか25%に過ぎません。
 そこに近年、アジアや中東の国々が目をつけたのです。ケニアでは〇八年十二月、カタール政府と土地のリース契約を締結。カタールから港や道路、鉄道等の建設に三五〇万ドルの投資を受けるかわりに、同国に約四万ヘクタールの土地を農作業用に貸し出すことをしたのです。また、中国の種子会社「ツォンチン・シード・コーポレーション」は〇八年五月、タンザニアから約三〇〇ヘクタールの土地を借り受けて、米を栽培することを発表しました。農作適地が豊富なアフリカに、食糧ビジネスが集まっているのです。しかし、「土地争奪戦」が無秩序に過熱すれば、新たな植民地争いになってしまう懸念があります。しかも、外国資本によって生産された農作物のほとんどは、輸出される可能性が高い。増産された食糧が、飢餓に苦しむアフリカの子供たち等にも回されるよう、配慮されるべきです。
 一方、土地政策で失敗し、危機に陥った国もあります。かつて農作物で外貨収入の約半数を占めていたジンバブエ(旧ローデシア)は、一九八〇年の独立時、支配階級だった白人たちと「政府が、白人農園主から、土地を市場価格で買い取る」という協定を結びました。政府は世界各国から融資をうけ、白人の農場を購入し、貧しい黒人に分配しました。
 その後、低下した政権の支持率を回復するために、ムガベ大統領が、「ファスト・トラック」政策を二〇〇〇年に開始。これは、白人所有の大農場を強制収用し、黒人農民に再分配するというものです。結果、白人の持っていた高い農業技術が失われ、生産効果が低下、食糧危機を引き起こしました。そして、この独裁的な政策により、国際援助の停止や国際的な信用低下に伴う資金流失に加え、干ばつによって食料不足が深刻化。ジンバブエは厳しい飢饉に苦しんでいます。
 今後、諸外国のアフリカ進出熱は、さらに、高まるでしょう。
 しかし、アフリカ諸国には、自国の発展を考えて諸外国と交渉できる人材に乏しい。リーダー育成が、アフリカの急務なのです。タンザニア、ボツワナ、モザンビーク等リーダーがしっかりしている国は、アフリカでも安定した発展を遂げています。モザンビークのチサノ元大統領は、一九九四年に大統領に就任すると、政情を安定させ、九〇年代後半から、毎年六%前後の経済成長を遂げました。
 世界で二番目に巨大な森林資源を有するアフリカ諸国は、経済、産業の発展だけではなく、環境保全についても責任を負わなくてはいけません。そのためにも、リーダー育成や、グリーンエネルギーの技術協力等で、日本を始めとする先進国の協力が、非常に重要なのです。

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2009年11月11日

アフリカ最前線 24世論に「監視」されているアフリカの裁判

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2009年.11月号

 日本では、裁判員制度による裁判が始まりました。アフリカ諸国には裁判員制度こそありませんが、裁判制度がある程度成熟している国では、世論が裁判にとても敏感です。国民は、大きな裁判の行方を常に注目し、日常会話の中でも、よく裁判を話題にしています。
 また、世論が裁判に大きく影響するのも特徴です。国民は裁判の過程や結果に納得がいかないと、抗議運動やデモを行います。それを無視して、裁判を進めると、暴動等の大問題に発展してしまう。裁判官たちは非常に緊張感を持って、裁判に臨んでいます。
 例えば、1977年9月13日のコンゴ民主共和国のグンズ元首相の裁判です。グンズ元首相は、反政府ゲリラと通じていたという罪で、起訴されました。この裁判は国民の関心が高く、審理の模様は全てテレビで生中継されました。国民はこの中継を見て、「どう考えても起訴はおかしい」と、各地で抗議運動を起こしました。ですが、その声を無視し、死刑判決が出てしまったため、国民の抗議運動がさらに激しくなったのです。
 この抗議運動の高まりに、危険性を感じたアメリカ政府が、裁判を再チェックしたところ、一部の権力者が、当時大きな影響力を持っていたグンズ元首相を、陥れようとしていたことが発覚しました。そして、アメリカ政府がコンゴ政府に裁判結果を是正するよう厳しく抗議し、グンズ元首相は処刑される寸前で救出されました。その後、グンズ元首相は、アメリカのコンゴ大使に任命されました。
  また77年に、コンゴ初代大統領のマリアン・ングアビ大統領が暗殺された際の裁判は、半年以上続いたのですが、これも全てテレビの生中継で放送されました。国民が裁判を見たいと強く要望して、生中継が決定したのです。このように、アフリカでは、世論の関心が非常に高いのです。
 アフリカ諸国には、多くの国で死刑制度が残っています。一般的に、死刑に対する抵抗感はあまりないからです。殺人の現行犯等、100%その人が犯人だとわかっているものに関しては、「死刑は当たり前だ」とさえ思っています。むしろ処刑される前に、誰かに殺される可能性すらあります。
 かつて、マサイ族の女性をレイプ、殺害した外国人にマサイ族が報復、その外国人を殺害するという事件がありました。日本でも強姦殺人は死刑があり得る重罪ですが、初犯であれば、有期刑ですむ可能性があります。
 しかし、マサイ族を襲った外国人が、日本のように生きて刑務所に送られれば、マサイ族は到底、納得しなかったでしょう。おそらく、暴動が起きたと思います。ちなみに、マサイ族は殺害するだけでは鎮まらず、怒りのあまり、その外国人を食人してしまったことも付け加えておきます。
 裁判には、殺人等の重大事件への抑止力もなければいけない。ですが、無期懲役になっても、数十年で社会復帰できるなら、犯罪を抑止することができるでしょうか。殺人のような犯罪の抑止には、厳しい法的対応が不可欠だと思います。
 また、国民にもっと裁判の情報を流すべきだと思います。テレビ中継等を入れて、被害者と加害者、両方の意見を、何のフィルターも通さず国民に提供する。そうすれば、国民も公平な判断ができ、もっと裁判に興味が持てると思いますし、裁判官への監視にもなると思います。

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アフリカ最前線 23「一票」が極めて重いアフリカの選挙

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2009年.10月号

 本誌執筆時点では、日本の総選挙は行われていませんが、アフリカでも、多くの国で選挙が行われるようになってきました。ですが、アフリカでは軍の力が強い国が多く、政府に反抗すると殺される危険があり、多くの場合、民主国家でも容易に国民の意思が選挙結果に反映されないのが実状です。
 例えば、トーゴやカメルーンでは、投票の際に、現政権への賛成票しか国民に渡されない。そして、投票所では軍人が見張っており、有無をいわさない形で、現政権が継続してきました。選挙が意味をなしていないのです。その他にも、買収や票の水増し等の不正による「結果の決まっている選挙」が多いのも事実です。
 そうしたところに、先進国の思惑も加わっています。例えば、コンゴ民主共和国のカビラ大統領。彼は学校に通ったことがなく、民主主義のリテラシー(知識)がありません。なぜ、そんな人物が大統領になれたのか。先進国にとって、武器取引や資源交渉等がやりやすい人物だからです。カビラ大統領や政府の役人たちも、先進国のいうことに従っていれば、不正蓄財や身の安全の保障等、手厚い庇護が先進国から受けられるからです。当然、カビラ政権に対する国内の不満が高いのですが、政権側は軍を増強し、徹底的に国民を締め付け、圧政を敷いています。独裁以外の何ものでもない。軍の力を弱めなければ民主主義の道はないと考えます。
 同一政権が長く続くのは独裁と同じ。いろんな所で、嘘やでたらめがまかり通ってしまう恐ろしさがあるからです。先日、モザンビークのチサノ元大統領とお話をする機会がありました。「独裁を防ぐために、大統領任期は3期12年までにすべき」と言明し、長期政権の国を危惧されていました。例えば、エジプトのムバラク大統領は30年近く在任しており、私から見れば独裁国家です。一人の人間が強大な権力を持ち続けることほど、危険なことはない。どんなに優秀な指導者でも、一定の在任期間が過ぎれば交代させることが重要です。
 アフリカで民意が反映された選挙としては、2002年のケニア共和国の大統領選挙があります。ケニアは独立以来、ケニア・アフリカ人国民同盟の一党独裁体制が敷かれていましたが、「あなたの一票でケニアが変わります」というスローガンで、選挙が実施され、一党独裁が崩れました。投票所が少なかったこともあり、投票が終わるまで3日間かかりましたが、混乱や暴動もなく、平和裡に終わりました。
 その他、アフリカの中でも民主的で平和な選挙が行われるのは、タンザニアやボツワナ、南アフリカ等です。そういう国々は有権者が候補者を見る目も厳しい。自分たちの未来をよくしてくれる候補者を選ぼうと、政治への関心が非常に高い。
 先日行われた南アフリカ大統領選挙では、初の黒人大統領のマンデラ氏が当選して以来、政権与党だったアフリカ民族会議に野党勢力が肉薄し、次回選挙では政権交代の可能性も噂されています。汚職や不正が多いアフリカでは、国民が政治を監視しようという意識が強く、当然、政治家には「いい政治をしなければ政権の座から落とされる」という危機感があります。
 日本よりもアフリカの方が、「一票の重み」「民主主義の貴重さ」を、より真剣に考えてきたのは事実。日本に見習うべきことが多いアフリカですが、この点だけは、胸を張ることができます。

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2009年10月28日

アフリカ最前線 22貧困が招いた爆発的なエイズ拡大

■リベラルタイム出版社「リベラルタイム」2009年.09月号

 エイズはアフリカの大きな問題です。全世界で約三千六百万人のエイズ患者がおり、このうち約七〇%がアフリカ人といわれています。中でもボツワナにアフリカ全体の三六%、ジンバブエやレソト、南アフリカ近隣に二五%、ケニアで一七%の患者がいると推定されています。日本も先進国の中で、唯一感染が拡大しているといわれています。世界的にエイズへの危機感が非常に鈍くなっています。エイズの怖さを忘れているように感じます。
 先進国では、エイズ検査があちこちで行われていますが、アフリカでは、検査を行うことは非常に困難です。検査キットが限られた場所しかなく、あったとしても、検査費用がなかなか払えないので、貧しい大部分の人は検査を受けられない。検査を受けず、エイズと気づいていない患者が多いので、潜在的な患者数はさらに多いと思います。
 アフリカで集中的にエイズが、蔓延しているのは、貧困が原因と言えます。日本等の先進国では、エイズのような感染症の拡大を防ぐため、使い捨ての注射針を使うことが常識ですが、貧しいアフリカの国々では、使い捨ての注射針は普及していません。医療費を安くするため、注射針は使い回しが当たり前です。しかも、使用した注射針を消毒する滅菌装置も満足に普及していない。そのため、エイズに感染した血液は、皮肉なことに、医療行為である注射を通じて次々と感染していくのです。
 献血等で感染するケースも多いです。貧しい人たちの間では、献血した際に貰えるバナナやミルクを目当てに献血する人たちが多い。しかし、エイズの感染に気づかず、献血し、血液のチェックも曖昧なので、その血を輸血し感染したり、または、献血の注射針を使い回して、感染すること等もあるようです。
 アフリカの人たちも注射針が危険であることはわかっています。ボツワナである女性に会いました。その女性の赤ちゃんがエイズに感染したそうです。なぜ、赤ちゃんなのに感染したのか、と尋ねました。ある時、赤ちゃんが高熱を出し、一刻も早く病院で点滴を受けなくてはいけない、危険な状態になったそうです。
しかし、田舎の病院では、点滴の針を何度も使い回すのが普通です。そのためその女性は、「子どもが高熱で死んでいくのをただ見守るか」、「エイズに感染するリスクを負って点滴を使うか」の二者択一を迫られました。結果、運悪く、赤ちゃんはエイズに感染してしまったそうです。
その女性に「あなただったらどうしますか」と聞かれたのですが、何も答えられませんでした。
 エイズ感染拡大の抑制のためには、一人一人がエイズへの意識を高めることが、一番効果的だと思います。全世界の国々がメディア等を通じて、もっと啓蒙活動を行うことが必要です。また、もっと簡単に、安く、個人でできる検査キット等の開発に費用をかけるべきです。エイズ感染者は圧倒的に二十代、三十代が多く、働き盛りの若者たちが倒れてしまっては、産業や経済の停滞を招くだけでなく、国が成り立たない。
 各国政府の対アフリカ医療援助のあり方も見直す時期だと思います。これまでの援助は、末端の人々まで届いていない。民間団体等が行っている援助は、末端の人々へ直接援助しているので、わずかな費用で効果的な支援ができている。高価なCTスキャンを一台送るより、使い捨ての注射針を何千本送る方が、現地の人たちにとって、より生きた支援になると思います。

※月刊リベラルタイム http://www.l-time.com/