2008年11月19日

【ムルアカ ニッポンをきく】(23)加計学園理事長 加計孝太郎さん

■世のために危機管理学

 「ムルアカ にっぽんをきく」の今回のゲストは岡山理科大など全国に35校もの学校を経営している学校法人加計学園の加計孝太郎理事長。ムルアカ氏は対談のなかで、危機管理学部や生命科学部など時代を先取りする学部を作るなど、学校は教育の場であるとともに、まさに企業であると再認識させられた。

 ムルアカ氏 理事長は中国地方を中心に、幼稚園から大学までいくつもの学校を運営されており、先進的な取り組みでも知られています。今日はそうした取り組みについて話をうかがえればと思います。学園の簡単な歴史について教えてください
 加計孝太郎・加計学園理事長 広島の広島英数学館という予備校から始まったんです。戦争で出征した父(加計勉氏)が終戦で郷里に帰ると、原爆の被害を受けた広島は焦土と化していました。その後、広島文理科大学(現広島大学)を卒業すると、1955年に予備校を作りました。それを土台に62年、岡山県に岡山電機工業高校(現岡山理科大学附属高校)を開校。さらに大学の認可を得て、岡山理科大学ができました。それからは地域から申し出があって学校を作るケースが多かったですね。今は35校を運営しています。
 ムルアカ 長い歴史があり、地域からの要望も多いということですね。最近では2004年に千葉科学大学を銚子市に開校されています。その中に危機管理学部という異色の学部があります
 加計 米国のフィンドリー大学の理事をしているんです。見学するとここは、馬術学部などをもつユニークな大学で、その中に危機管理学部もありました。米同時中枢爆破テロ事件の6年前に作っていたんですね。テロ事件ではいち早く学生がボランティアとして現場に向かい、水や食糧をいち早く供給しました。日ごろから訓練していたんです。米政府もこれを高く評価しました。ちょうどそのころ、以前に岡山県副知事をしていた銚子市長から、高等教育機関を設置してほしいとの誘致に話があり、危機管理学部と薬学部を持つ千葉科学大学をつくりました。初年度は1次合格者の7割ぐらいの合格率で消防庁をはじめ、警察庁、防衛省などの公務員試験に合格しました。
 ムルアカ 危機管理分野はまだ研究が浅く、日本だけでなく、世界全体にとってこれからすごく大事ですね
 加計 千葉科学大学には薬学部も併設しています。薬学は鳥インフルエンザや新型肺炎(SARS)に関連していると同時に、危機管理も関係が深い。それらを日本の中に入らないようにすると同時に、日本の危機管理や薬学を学んだ人が世界で活躍するようになれば、世の中のためになるのでは。
 ムルアカ 前にテレビで「アクアバイオ」という、すごく面白い話題を取り上げていました。グループで研究しているそうですね
 加計 もともと岡山理科大学専門学校に「アクアリウム学科」をつくったことから研究が始まったんです。川が海に注ぐ場所、つまり河口には淡水魚と海水魚が共生してますが、同じ環境を(養殖のために)他の場所で再現できないかと思ったんですね。それで、海水魚と淡水魚が共生できる“好適環境水”を開発しまして、岡山駅に設置している水槽を見るとびっくりしますよ。タイと金魚がいっしょに泳いでいるんですから。試食会で養殖したタイやふぐを食べましたが(天然モノと)遜色(そんしょく)ないんです。しかも1・35倍の速さで成長するんです。将来的にはマグロまでいきたいということです。ダムなどで海魚を養殖できれば食糧問題の解決にも役立ちますから、すごく期待しています。
 ムルアカ 最近は食糧問題が深刻化する一方、食文化が多様化・グローバル化し、生魚を食べない国の人も食べるようになっています。すごく重要な研究ですね。ところで倉敷芸術大学といえば生命科学部という学部があり、受験倍率が高いとか
 加計 生命科学部では臨床検査技師、臨床工学技士、細胞検査士などの、救急救命士といった医療系の資格をはじめとするさまざまな資格を取得することができます。動物関係の研究にも取り組みたいと思って開設したんですが、これからは人と動物が共生しないといけませんし、重要性が高まると思います。将来的に獣医学部の設置を視野に入れた形で進めています。動物も人間も基本的なシステムは変わらないと思うんですよ。鳥インフルエンザ、BSEのように動物が原因で人が病気になるケースもありますからね。
 ムルアカ 医療関係者の充実にも役立つ
 加計 今の日本は人口が減少し、労働力も減りつつあるのに、医療分野では労働力確保が大変なんです。看護師や介護福祉士の育成が急務なのに、給料がすごく安い。特別養護老人ホームは順番待ちになっているにもかかわらず、世話する側の人材を育てようとする学校に入り手がいない。医療に限らず、さまざまな分野で学生が減っているし、海外から学生に来てもらい、日本で教育を受けてもらって、日本にとどまってもらえるといいと思うんですが。国のためにもなると思います。
 ムルアカ そうですね。教育は日本だけでなく、グローバルで考えないといけない
 加計 このあいだインドネシアから介護福祉士や看護師をめざして約200人の方々が日本に来ましたが、彼らは5年のうちに資格をとらないと帰国しないと、日本にとどまれない。欧米ではアジアの国々の資格をそのまま認めましょうというところまで来ているのに、日本では日本の資格を取得しないと認めないなど、対応が遅れています。
 ムルアカ 最後に35のも学校を運営するのは大変でしょうが、今後の抱負を教えてください
 加計 どんな学生にもいろいろな能力があり、それを最大限に引き延ばすことが使命だと思っています。これは建学の理念でもあります。その上で時代のニーズに合わせた運営をしていきたいですね。物理や数学といった基本的な学問分野をなくすことは考えられませんが、例えばその分野の定員80人を50人に減じ、その減じた30人を使って、新しい学部・学科の設置にチャレンジしていきたいですね。父いわく、いくら立派な先生がいても、研究の場がないとどうしようもない、と。それを提供するのが自分の役目だと言うんです。私も同感です。学生が個々の能力を伸ばせるような研究の場、施設を提供していきたいですね。(構成・井田通人)

【プロフィル】加計孝太郎
 かけ・こうたろう 立教大学文学部卒。1971年から学校法人加計学園の要職を歴任。現在、加計学園理事長・総長、広島加計学園長、米国フィンドリー大理事、日本私立大学協会理事、岡山県国際交流協会理事、岡山県郷土文化財団理事などを務める。57歳。広島県出身。

【会想録】たいへん心の大きい人
 加計さんは教育について全身全霊をかけて取り組んでおられます。加計さんと出会ったのは私がどん底の時、誰もが私に最も会いたくない時期でしたが、それでも私のことを快く理解してくれました。大変大きい心の持ち主です。これからグローバルの日本と世界の教育のためにともに将来を築いていきたいと願っております。

muluaka at 17:36│Comments(0)TrackBack(0)

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