🌹先に感想です🌹
『イノサン・ルージュ』、残り2話となりました。
さみしい(´;ω;`)
ていうか、最初の処刑シーンが迫真過ぎて、「えっ、計画失敗(((( ;゚д゚)))!?」みたいなかんじになりましたが、その後のシャルルアンリの回想を読んで・・・。
あああホッとした(´Д⊂)
これってちょっと早めのクリスマスプレゼントですね・・・。坂本先生ありがとうございます!思い出して辛い!ってならずに年を越せます(*'-'*)
しかも、最終回にロベスピエール!!まつりが来てくれそうな、よ・か・ん ❤
でもロベスピエールまつりが激しすぎるとサンソン家の皆の話が減るので少な目のでいいか、ていうか前回みたいにページ増やしてくれませんか坂本先生(・∀・)
いやもうこの時期は原稿上がってるか・・・。祈るしか出来ませんね(何を?)。
はーとにかく、安心して最終回迎えられるだけでもとても嬉しいです。
残された数少ない不満点を挙げるなら、シャルルアンリを男にしてくれた"おっぱいちゃん"ことデュバリー夫人と国王陛下の息子ルイシャルルくんがもう出てこないぽいとこですかね?
まあシャルル&マリー兄妹の話に比べれば些細な事ですが・・・。顛末見たかった。
坂本先生アレンジしまくりで良いので(*゚▽゚*)
最終回大予想!
ゼロちゃんが神クラス美少女に成長して眩しすぎて紙面がよく見えない(●´ω`●)
当たったら誰か何か下さいヾ(´ω`=´ω`)ノ なんつって(*´ -`)(´- `*)
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🌹『イノサン・ルージュ』、やっと読めました🌹
前回は、
死刑判決を受け監獄に収容されたマリージョセフを救い出す!兄のシャルルアンリ、夫のジャンルイ、従者のアンドレの三人は決意を固めます。その頃、マリージョセフはかつてのライバル"アンラジェのジャック"と再会していました。そしていよいよ処刑当日、ロベスピエール、サンジュスト、ダントンの目が光る中で"救出作戦"は成功するのでしょうか・・・。
・・・みたいなかんじでした。
今回は当然、コンシェルジュリ監獄中庭"マリージョセフ・サンソンの処刑"から開始です。
ギロチンの見事なまでに合理的な設計。
足元の跳ね板に受刑者を固定し、そのまま後ろに倒せばよいのです。そうすれば受刑者の首は刃が落ちる場所にあてがわれ、後はその首の上から固定する板の上半分をはめ込めば終了。
レバーを引けば刃が落ちて受刑者の首が切断されて処刑完了、です。
首を落とされるのが国王でも王妃でも、マリージョセフ・サンソンでも同じ事。しかし、今までギロチンで命を奪われた無数の人々とマリージョセフは決定的に違いました。
マリージョセフは断頭台に仰向けに寝かされていたのです。
上を向いてギロチン刑を受ける。
それはすなわち、自分の首を切断する刃が落ちてくるのを直視する、という事になります。
身分に関係なく、同じ痛みで、速やかに命を奪う。最も人道的な処刑器具だったはずのギロチンは、受刑者の体を半回転させるだけで、凄まじい恐怖を与える悪魔の機械に変わるのです。
マリージョセフ・サンソンに、最高の恐怖、最大の精神的苦痛を与えられる・・・!!
「素晴らしい!! 最高の演出だ!!」
ロベスピエールは思わず立ち上がり、スタンディングオベーション、拍手喝采を送ります。
「おいおいロベスピエール、流石にはしゃぎ過ぎだぞ?」
ダントンが苦言を呈する横で、サンジュストもこらえ切れずにクスクス笑いです。
処刑台の真正面で楽しみながらマリージョセフの死を待ちわびる革命三巨頭ですが、シャルルアンリはそちらを気にする余裕はありません。
心配そうに妹の顔を覗き込みます。
その顔には暴行を受けた傷と血の跡が生々しく残ってはいますが、表情は平静。完全な平静です。ただ静かに、これから落ちてくる刃を見つめています・・・。
シャルルアンリは耐え切れずに視線を移します。
ジャンルイは帽子のつばを押さえて顔を隠していました。その足元には素顔のゼロが寄り添っています。アンドレは目頭に指を当てて涙をこらえていました。
三人のその様子は誰の目にも処刑を躊躇っているようにしか見えません。
ダントンが立ち上がって一喝します。
「何をもたついている!? さっさとその女の首を落とせ!!」
ダントンに急かされ、最早シャルルアンリも腹を括るしかありません。
右手でギロチンのレバーを掴み、左手を真正面に突き出します。左手を振り下ろすのが合図。レバーを引いてギロチンの刃を落とすのです。
妹の表情が安らかである事が唯一の救い。それでもシャルルアンリは、その瞬間に目を開けている事は出来ませんでした。
目蓋を固く閉じて、歯を食いしばりました。
レバーが引かれ、滑車が回転し、刃を固定していたロープが解き放たれました。
真っ直ぐに滑り落ちてくる刃から、マリージョセフは目を逸らしません。一切表情を変える事無く、ロベスピエールが望むものを少しも与える事無く。
マリージョセフ・サンソンは刃を受け入れ、その首が切り離されます・・・。
兄に遺した"娘を頼む"という言葉。それが最期の言葉になると思われました。
しかし。
マリージョセフ・サンソンの首は落下しながら、探していたものを見つけました。マクシミリアン・ロベスピエール。その視線を捉えます。
その女は、首だけになったのに、ロベスピエールの両目を見つめて、再会を予告しました。
「また夢で逢おうぜ? ロベスピエール」
「・・・ううわああああ!!!」
大絶叫して、ロベスピエールは飛び起きます。愛する人の悲鳴を聞いたサンジュストが、すぐに寝室に飛び込んできました。
「どうされました、ロベスピエール様!?」
「あの女だ、マリージョセフ・サンソンが、また私の夢に、また現れたのだ!!」
「何をおっしゃるのです? 半年前、あの女の首が落ちるのを、コンシェルジュリ監獄の中庭で一緒に観たではありませんか??」
ご主人様の扱いは慣れたもの、と言わんばかりにサンジュストはあっという間に温かい飲み物を用意して、ロベスピエールに手渡そうとします。
「ただの夢、悪い夢です。この温かいショコラを飲めばすぐに落ち着きますよ?」
憔悴しきった表情、痩せて頬がこけたロベスピエールは、その言葉が耳に届かない様子。ベッドの上で毛布を握り締め膝を抱えて震えています・・・。
「いいや、あの女は生きている。あの女が本当に死んだと確かめるために墓地を探させたが、あの女の死体は無かった!あの女はまだ生きているんだ!!」
「死体が無かったのは野犬に食われたからでしょう。何の不思議もありませんよ?」
「・・・そうか、何という事だ。それならば、死体が墓地を抜け出して、私を殺すために夜な夜なパリの街を彷徨っているという事か。ああ、何と恐ろしい!!」
正気を失い取り乱すロベスピエールですが、サンジュストは優しく諭し続けます。
「大丈夫、そんな事はありませんよ? さあ、このショコラを飲んで」
「・・・ちょっと待て、サンジュスト。お前これに何を入れた?」
「はい? 温かいショコラだとさっきから申し上げて・・・」
「さっきからこれを無理矢理私に飲ませようとしているな、まさか、毒か!? 貴様、ダントンの次は私を殺すつもりなのかあ!?」
ロベスピエールはカップに入ったショコラをサンジュストに向けてぶちまけました・・・。
錯乱して暴れるロベスピエールをサンジュストは必死に抱き締めます。
「何をおっしゃるのです!ダントンはフランス東インド会社の資産を横領して若妻に貢いでいたから処刑したのです、私が何か企んだわけではありません!!」
「しかし、ダントンは、"次はお前だロベスピエール"と言ったのだ!!」
一瞬割り込んでくる、コミカルなイラスト。
ギロチンで首を切断されているのに、笑みを浮かべてウインクして舌を出す人物。革命時のフランスで描かれたようなタッチのその顔は、やはり"彼女"なのでしょうか?
ロベスピエールを小バカにするような顔・・・。
「奴はギロチン送りになる馬車の上から、私に向かって、確かにそう言ったのだ!!」
サンジュストはまるで介護するようにロベスピエールをなだめながら、決意を固めます。
「マリージョセフ・サンソンを処刑してからというもの、ロベスピエール様の精神は増々不安定になっていくばかりだ」
「ならば、より革命を推し進め、より革命を盤石にする。反革命分子を更に厳しく、容赦なく取り締まる。ロベスピエール様の心が平穏を取り戻すまで、止まるわけにはいかぬ・・・!」
恐怖政治の嵐がフランスに、パリに吹き荒れています。
処刑、処刑、処刑・・・。今日も革命広場で、ギロチン刑が執行されています。
処刑台の上で、シャルルアンリ・サンソンは無表情でレバーを引き続けます。落ちる首、首、首・・・。潔く死を受け入れる者、泣き叫ぶ者、身の潔白を主張する者・・・。
それらの無数の死を一番間近で目撃し続けても、シャルルアンリの顔は変わりません。
「4月は300人以上、5月は500人を超えた。はは、このペースだと6月は1000人に届くな」
「何も感じない。こんなに近くで他人の死を見ても、何も感じなくなってしまった」
「マリー、君がいなくなった世界は、まるで暗闇の中にいるようだ」
シャルルアンリは、半年前の出来事を回想します・・・。
「マリージョセフは自分が革命政府に使い捨てられる事を予測していた。
だから計画を立てていた。蝋人形職人のグロシュルツに自分そっくりの人形を作らせ、処刑の時にギロチンの跳ね板の後ろで自分と人形をすり替えさせたのだ。
計画は成功した。グロシュルツの作った人形は見事なものだった。中に仕込んであったブタの血も相まって、人形と分かっていても身震いした程だ」
「処刑されたのが人形とはいえ、ギロチンの刃に真正面から向き合うとは、実にマリージョセフらしい演出だった。おかげであっという間に噂が広まった。
ギロチンに立ち向かった女、"ギロチンマリー"。今でもパリはその噂で持ち切りさ」
「その後は遺体を検分するのを避けるために、可能な限り速やかに墓地に移動した。
用意してあった馬車の荷台の籠にマリージョセフを隠し、逃がした。その後従者のアンドレが合流して、二人は国外に去ったという。
今は海を渡り、遠くイギリスにいると聞いた。
・・・もう二度度会う事は無いだろう」
「最愛の妹よ。もう会えないのなら、あれが永遠の別れだったのなら、同じ事だ」
「あの日確かに私は、同胞マリージョセフ・サンソンを処刑したのだ」
人の死に接しても何も感じなくなったというシャルルアンリですが、マリージョセフの事を思い浮かべて、目に涙を浮かべます。
「マリー、君がいないと、私の儚い夢が手の平から零れ落ちていってしまうよ」
「まるで、砂のように」
1794年6月。国民公会の議会は紛糾していました。
悪名高いプレリアール法が成立しようとしていたのです。反革命分子は全て死刑、証拠は無くとも裁判官の心証で死刑。更に、反革命分子を告発するのは市民の義務、さもなくば・・・。
要するに、革命政府の敵とみなされれば、即死刑でギロチン送り。そういう法律です。
「刑罰が死刑しかないのは厳しすぎる!」
「疑わしき者は全てギロチンに送れという事か、フランスから人間がいなくなるぞ!」
反対者達の叫び、怒号が飛び交う中、法案は成立しました。その陰には、ロベスピエールの強力な後押しがありました。
「善徳無き恐怖は悪であり、恐怖無き善徳は無力なのだ・・・」
ロベスピエールは自分に言い聞かせるように呟きました。
パリの街に異様な光景が広がっていました。
壁という壁にビラが貼り付けられています。描かれているのはコミカルなイラスト。
ギロチンの刃で首を切断されても悪戯っぽい笑顔、ウインクして舌を出す人物。その髪型を見れば、それが誰なのかすぐに思い当たるはずです。
そして、文字がイラストの上と下に一行ずつ。
"ギロチンマリーは生きている!!"
"カムバック、パリ!!"
恐怖政治に苦しみ、怯え、それでも何も出来ない人々。
彼等に革命政府やロベスピエールを直接批判する事は出来ません。反革命分子とみなされれば死刑、即ギロチン行きです。死にたくは無い、でもこのままで良い訳がない。
だから、"ギロチンマリー"に希望を託したのです。
"ギロチンマリー"は、恐怖政治に立ち向かうシンボルとなりました・・・。
そんなビラだらけの街角を通り過ぎる人影がありました。
見覚えのある姿、横顔、不敵な笑み。美しき男装の麗人。
帽子を目深に被って顔を隠していても、私達には誰なのか分かります。
「人の事を"死神"だの"呪われてる"だの、好き放題抜かして忌み嫌ってやがったくせに、テメエの都合が悪くなったら"戻ってきてくれ"、だと?」
「ったく、そいつはどうにも虫が良過ぎる話だぜ」
「・・・だがな、不思議なもんだ。悪い気はしねえ」
『イノサン・ルージュ』、残り2話となりました。
さみしい(´;ω;`)
ていうか、最初の処刑シーンが迫真過ぎて、「えっ、計画失敗(((( ;゚д゚)))!?」みたいなかんじになりましたが、その後のシャルルアンリの回想を読んで・・・。
あああホッとした(´Д⊂)
これってちょっと早めのクリスマスプレゼントですね・・・。坂本先生ありがとうございます!思い出して辛い!ってならずに年を越せます(*'-'*)
しかも、最終回にロベスピエール!!まつりが来てくれそうな、よ・か・ん ❤
でもロベスピエールまつりが激しすぎるとサンソン家の皆の話が減るので少な目のでいいか、ていうか前回みたいにページ増やしてくれませんか坂本先生(・∀・)
いやもうこの時期は原稿上がってるか・・・。祈るしか出来ませんね(何を?)。
はーとにかく、安心して最終回迎えられるだけでもとても嬉しいです。
残された数少ない不満点を挙げるなら、シャルルアンリを男にしてくれた"おっぱいちゃん"ことデュバリー夫人と国王陛下の息子ルイシャルルくんがもう出てこないぽいとこですかね?
まあシャルル&マリー兄妹の話に比べれば些細な事ですが・・・。顛末見たかった。
坂本先生アレンジしまくりで良いので(*゚▽゚*)
最終回大予想!
ゼロちゃんが神クラス美少女に成長して眩しすぎて紙面がよく見えない(●´ω`●)
当たったら誰か何か下さいヾ(´ω`=´ω`)ノ なんつって(*´ -`)(´- `*)
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前回は、
死刑判決を受け監獄に収容されたマリージョセフを救い出す!兄のシャルルアンリ、夫のジャンルイ、従者のアンドレの三人は決意を固めます。その頃、マリージョセフはかつてのライバル"アンラジェのジャック"と再会していました。そしていよいよ処刑当日、ロベスピエール、サンジュスト、ダントンの目が光る中で"救出作戦"は成功するのでしょうか・・・。
・・・みたいなかんじでした。
今回は当然、コンシェルジュリ監獄中庭"マリージョセフ・サンソンの処刑"から開始です。
ギロチンの見事なまでに合理的な設計。
足元の跳ね板に受刑者を固定し、そのまま後ろに倒せばよいのです。そうすれば受刑者の首は刃が落ちる場所にあてがわれ、後はその首の上から固定する板の上半分をはめ込めば終了。
レバーを引けば刃が落ちて受刑者の首が切断されて処刑完了、です。
首を落とされるのが国王でも王妃でも、マリージョセフ・サンソンでも同じ事。しかし、今までギロチンで命を奪われた無数の人々とマリージョセフは決定的に違いました。
マリージョセフは断頭台に仰向けに寝かされていたのです。
上を向いてギロチン刑を受ける。
それはすなわち、自分の首を切断する刃が落ちてくるのを直視する、という事になります。
身分に関係なく、同じ痛みで、速やかに命を奪う。最も人道的な処刑器具だったはずのギロチンは、受刑者の体を半回転させるだけで、凄まじい恐怖を与える悪魔の機械に変わるのです。
マリージョセフ・サンソンに、最高の恐怖、最大の精神的苦痛を与えられる・・・!!
「素晴らしい!! 最高の演出だ!!」
ロベスピエールは思わず立ち上がり、スタンディングオベーション、拍手喝采を送ります。
「おいおいロベスピエール、流石にはしゃぎ過ぎだぞ?」
ダントンが苦言を呈する横で、サンジュストもこらえ切れずにクスクス笑いです。
処刑台の真正面で楽しみながらマリージョセフの死を待ちわびる革命三巨頭ですが、シャルルアンリはそちらを気にする余裕はありません。
心配そうに妹の顔を覗き込みます。
その顔には暴行を受けた傷と血の跡が生々しく残ってはいますが、表情は平静。完全な平静です。ただ静かに、これから落ちてくる刃を見つめています・・・。
シャルルアンリは耐え切れずに視線を移します。
ジャンルイは帽子のつばを押さえて顔を隠していました。その足元には素顔のゼロが寄り添っています。アンドレは目頭に指を当てて涙をこらえていました。
三人のその様子は誰の目にも処刑を躊躇っているようにしか見えません。
ダントンが立ち上がって一喝します。
「何をもたついている!? さっさとその女の首を落とせ!!」
ダントンに急かされ、最早シャルルアンリも腹を括るしかありません。
右手でギロチンのレバーを掴み、左手を真正面に突き出します。左手を振り下ろすのが合図。レバーを引いてギロチンの刃を落とすのです。
妹の表情が安らかである事が唯一の救い。それでもシャルルアンリは、その瞬間に目を開けている事は出来ませんでした。
目蓋を固く閉じて、歯を食いしばりました。
レバーが引かれ、滑車が回転し、刃を固定していたロープが解き放たれました。
真っ直ぐに滑り落ちてくる刃から、マリージョセフは目を逸らしません。一切表情を変える事無く、ロベスピエールが望むものを少しも与える事無く。
マリージョセフ・サンソンは刃を受け入れ、その首が切り離されます・・・。
兄に遺した"娘を頼む"という言葉。それが最期の言葉になると思われました。
しかし。
マリージョセフ・サンソンの首は落下しながら、探していたものを見つけました。マクシミリアン・ロベスピエール。その視線を捉えます。
その女は、首だけになったのに、ロベスピエールの両目を見つめて、再会を予告しました。
「また夢で逢おうぜ? ロベスピエール」
「・・・ううわああああ!!!」
大絶叫して、ロベスピエールは飛び起きます。愛する人の悲鳴を聞いたサンジュストが、すぐに寝室に飛び込んできました。
「どうされました、ロベスピエール様!?」
「あの女だ、マリージョセフ・サンソンが、また私の夢に、また現れたのだ!!」
「何をおっしゃるのです? 半年前、あの女の首が落ちるのを、コンシェルジュリ監獄の中庭で一緒に観たではありませんか??」
ご主人様の扱いは慣れたもの、と言わんばかりにサンジュストはあっという間に温かい飲み物を用意して、ロベスピエールに手渡そうとします。
「ただの夢、悪い夢です。この温かいショコラを飲めばすぐに落ち着きますよ?」
憔悴しきった表情、痩せて頬がこけたロベスピエールは、その言葉が耳に届かない様子。ベッドの上で毛布を握り締め膝を抱えて震えています・・・。
「いいや、あの女は生きている。あの女が本当に死んだと確かめるために墓地を探させたが、あの女の死体は無かった!あの女はまだ生きているんだ!!」
「死体が無かったのは野犬に食われたからでしょう。何の不思議もありませんよ?」
「・・・そうか、何という事だ。それならば、死体が墓地を抜け出して、私を殺すために夜な夜なパリの街を彷徨っているという事か。ああ、何と恐ろしい!!」
正気を失い取り乱すロベスピエールですが、サンジュストは優しく諭し続けます。
「大丈夫、そんな事はありませんよ? さあ、このショコラを飲んで」
「・・・ちょっと待て、サンジュスト。お前これに何を入れた?」
「はい? 温かいショコラだとさっきから申し上げて・・・」
「さっきからこれを無理矢理私に飲ませようとしているな、まさか、毒か!? 貴様、ダントンの次は私を殺すつもりなのかあ!?」
ロベスピエールはカップに入ったショコラをサンジュストに向けてぶちまけました・・・。
錯乱して暴れるロベスピエールをサンジュストは必死に抱き締めます。
「何をおっしゃるのです!ダントンはフランス東インド会社の資産を横領して若妻に貢いでいたから処刑したのです、私が何か企んだわけではありません!!」
「しかし、ダントンは、"次はお前だロベスピエール"と言ったのだ!!」
一瞬割り込んでくる、コミカルなイラスト。
ギロチンで首を切断されているのに、笑みを浮かべてウインクして舌を出す人物。革命時のフランスで描かれたようなタッチのその顔は、やはり"彼女"なのでしょうか?
ロベスピエールを小バカにするような顔・・・。
「奴はギロチン送りになる馬車の上から、私に向かって、確かにそう言ったのだ!!」
サンジュストはまるで介護するようにロベスピエールをなだめながら、決意を固めます。
「マリージョセフ・サンソンを処刑してからというもの、ロベスピエール様の精神は増々不安定になっていくばかりだ」
「ならば、より革命を推し進め、より革命を盤石にする。反革命分子を更に厳しく、容赦なく取り締まる。ロベスピエール様の心が平穏を取り戻すまで、止まるわけにはいかぬ・・・!」
恐怖政治の嵐がフランスに、パリに吹き荒れています。
処刑、処刑、処刑・・・。今日も革命広場で、ギロチン刑が執行されています。
処刑台の上で、シャルルアンリ・サンソンは無表情でレバーを引き続けます。落ちる首、首、首・・・。潔く死を受け入れる者、泣き叫ぶ者、身の潔白を主張する者・・・。
それらの無数の死を一番間近で目撃し続けても、シャルルアンリの顔は変わりません。
「4月は300人以上、5月は500人を超えた。はは、このペースだと6月は1000人に届くな」
「何も感じない。こんなに近くで他人の死を見ても、何も感じなくなってしまった」
「マリー、君がいなくなった世界は、まるで暗闇の中にいるようだ」
シャルルアンリは、半年前の出来事を回想します・・・。
「マリージョセフは自分が革命政府に使い捨てられる事を予測していた。
だから計画を立てていた。蝋人形職人のグロシュルツに自分そっくりの人形を作らせ、処刑の時にギロチンの跳ね板の後ろで自分と人形をすり替えさせたのだ。
計画は成功した。グロシュルツの作った人形は見事なものだった。中に仕込んであったブタの血も相まって、人形と分かっていても身震いした程だ」
「処刑されたのが人形とはいえ、ギロチンの刃に真正面から向き合うとは、実にマリージョセフらしい演出だった。おかげであっという間に噂が広まった。
ギロチンに立ち向かった女、"ギロチンマリー"。今でもパリはその噂で持ち切りさ」
「その後は遺体を検分するのを避けるために、可能な限り速やかに墓地に移動した。
用意してあった馬車の荷台の籠にマリージョセフを隠し、逃がした。その後従者のアンドレが合流して、二人は国外に去ったという。
今は海を渡り、遠くイギリスにいると聞いた。
・・・もう二度度会う事は無いだろう」
「最愛の妹よ。もう会えないのなら、あれが永遠の別れだったのなら、同じ事だ」
「あの日確かに私は、同胞マリージョセフ・サンソンを処刑したのだ」
人の死に接しても何も感じなくなったというシャルルアンリですが、マリージョセフの事を思い浮かべて、目に涙を浮かべます。
「マリー、君がいないと、私の儚い夢が手の平から零れ落ちていってしまうよ」
「まるで、砂のように」
1794年6月。国民公会の議会は紛糾していました。
悪名高いプレリアール法が成立しようとしていたのです。反革命分子は全て死刑、証拠は無くとも裁判官の心証で死刑。更に、反革命分子を告発するのは市民の義務、さもなくば・・・。
要するに、革命政府の敵とみなされれば、即死刑でギロチン送り。そういう法律です。
「刑罰が死刑しかないのは厳しすぎる!」
「疑わしき者は全てギロチンに送れという事か、フランスから人間がいなくなるぞ!」
反対者達の叫び、怒号が飛び交う中、法案は成立しました。その陰には、ロベスピエールの強力な後押しがありました。
「善徳無き恐怖は悪であり、恐怖無き善徳は無力なのだ・・・」
ロベスピエールは自分に言い聞かせるように呟きました。
パリの街に異様な光景が広がっていました。
壁という壁にビラが貼り付けられています。描かれているのはコミカルなイラスト。
ギロチンの刃で首を切断されても悪戯っぽい笑顔、ウインクして舌を出す人物。その髪型を見れば、それが誰なのかすぐに思い当たるはずです。
そして、文字がイラストの上と下に一行ずつ。
"ギロチンマリーは生きている!!"
"カムバック、パリ!!"
恐怖政治に苦しみ、怯え、それでも何も出来ない人々。
彼等に革命政府やロベスピエールを直接批判する事は出来ません。反革命分子とみなされれば死刑、即ギロチン行きです。死にたくは無い、でもこのままで良い訳がない。
だから、"ギロチンマリー"に希望を託したのです。
"ギロチンマリー"は、恐怖政治に立ち向かうシンボルとなりました・・・。
そんなビラだらけの街角を通り過ぎる人影がありました。
見覚えのある姿、横顔、不敵な笑み。美しき男装の麗人。
帽子を目深に被って顔を隠していても、私達には誰なのか分かります。
「人の事を"死神"だの"呪われてる"だの、好き放題抜かして忌み嫌ってやがったくせに、テメエの都合が悪くなったら"戻ってきてくれ"、だと?」
「ったく、そいつはどうにも虫が良過ぎる話だぜ」
「・・・だがな、不思議なもんだ。悪い気はしねえ」