うちのニンゲン・キング(息子)が生後11ヶ月を迎えようとしている。若干低体重で生まれたその身体は約4倍にパンプアップし、ハイハイとつかまり立ちで家中を縦横無尽に移動し、箱に入ったものは全てノールックで後方へ投げ飛ばし、目につくものは全てお口へ放り込む。嬌声を上げ、手を打ち鳴らし、自らを鼓舞する。まさにキングだ。
 希望を言えば、何でも彼の思い通りにさせてあげたい。極力親によるストレスがかからない状態をキープし、その中で降りかかる失敗や逆境は経験した上で乗り越えてほしい。でも現実はそうはいかない。油を使って調理しているときはキッチンに入ってほしくないし、コンセントをペロペロしてほしくない。カッターナイフは遠ざけたいし、パソコンによだれは垂らさないでほしい。スマホをはちゃめちゃに操作しないでほしいし、ゴミ箱に顔を突っ込まないでほしい。そんなことを言い始めたらこの世は危険がいっぱいなわけで、彼が触っていい(ガジガジしていい)ものなんて数えるほどしかない。しかし、彼が触ったりガジガジしたいのは「私が手にしている何か」なのであって、彼が触ることを許されたそれではない。結果、あれはダメ、これもダメの連続で、私というストレスを抱えたキングはがんじがらめなのである。そして、私は私で理想と現実とのギャップに途方に暮れるのである。

 そんな問題を見事に解決した(と思しき)施設が舞台となっている『PLEASE PLEASE EVERYONE』。子育てに必要なのは「環境」なのだ、と論理的に育児を整理する。そして実の親が子供にとって良くないと判断し、子供にとって目下「最大の環境」である親を排除する。じゃあ「愛」は必要ないのか!? 感情ほど非合理的なものはない! そもそも「愛」ってなんだ! みたいなことが叫ばれるのかどうかは定かではないのだけれど、そんなことが題材となった近未来SF作品なのだ。
 それは今の私にとっても一大関心事なのだけれど、そんな内容とは別にこのお芝居のシステムにも目を向けていただきたい。「トリコ・A × サファリ・P」と銘打って行われる今作は、トリコの持つ社会性・ドラマ性とサファリの持つ身体性・構造性を融合して、新しい風合いの作品を創作しようという試みなのだ。
 脚本家・山口茜さんの紡ぎ出すドラマを振付家・ダンサーである足立七瀬さんのお力をお借りして抽象的に抽出し、作曲家・増田真結さんの現代音楽と掛け合わせる。今回どこまで行けるかはわからないけれど、ゆくゆくはドラマ演劇のようでもあるし、ダンス作品にも見えるし、パフォーマーの一挙手一投足が現代音楽の一部になっている、すなわち音楽ライブとも言える、そんな作品を目指したい。出演者も各部署を統括するアーティストもどんどん増やして、大掛かりな作品にしていきたい。その第一歩となる今作に大きな期待を寄せている。私自身、出演者であり、主催者であり、演出部でもあるので、成功のための尽力を厭わない。我々の小さくも大きな一歩を応援してください。



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トリコ・A × サファリ・P vol.1
『PLEASE PLEASE EVERYONE』

作・演出:山口茜
振付:足立七瀬
作曲:増田真結・山口茜


   ウソでもいいから
   ひとつになりたい


出演:大原めい、山地美子、高杉征司、芦谷康介、達矢、
   佐々木ヤス子、中筋和調、岡田菜見、しんえな、
   福間歩、南岐佐



日時

2021年 12月 1日(水) 〜 9日(木) 全13ステージ



会場


THEATRE E9 KYOTO
〒601-8013 京都市南区東九条南河原町9-1
[TEL]075-661-2515(10:00-18:00)
[MAIL]info@askyoto.or.jp



チケット


前売・当日 一般 3,500円

       U30 2,500円
       U20 1,000円
      小学生以下無料
      未就学児入場不可

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クレジット


京都芸術センター制作支援事業

提携:THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
   独立行政法人日本芸術文化振興会
主催:合同会社stamp