2009年11月11日

  クラブ・ヴォーバンの勉強会

10月27日と昨日の11月10日、仲間と一緒に立ち上げた社団法人クラブ・ヴォーバンの連続勉強会の第1回と2回を東京でこなしてきました。

http://www.club-vauban.net/

2020年に温室効果ガス25%マイナス(90年比)を実現するためにはなにができるのか、どんな政策がなければならないのか、様々な分野の方にお集まりいただき、ドイツの先進事例を紹介するとともに、参加者の方から意見をいただき、ディスカッションしました。

驚いたことは、参加者の方の想像力です。〈未来工房〉というワークショップの手法のごく一部を用いて、ディスカッションに望んだわけですが、本当に短い時間でしたが、多様な意見を聴くことができ、私自身も参考になりました。

この連続勉強会は、PJ25と名付けられて限定25名で、全5回を行なう予定にしています。次回の予定と内容は:

11月30日 18時〜 「ドイツの住宅に学べ! 日本の普通は世界で普通か?」

12月11日 18時〜 「断熱改修の定義と日本におけるインセンティブなどの制度設計」

1月26日 13時半〜 「低炭素住宅の新基準をつくろう!」

この5回を踏まえた後に、住宅建物づくりのクラブ・ヴォーバンの基準を策定し、日本に広く広めてゆきたいと思っています。ご関心のある方は、会員限定となりますが、入会にも余裕がまだありますので、上記のホームページにお問い合わせください。

また、大阪で、11月18日、18時半〜 「ドイツに学ぶ新エネ普及政策と固定買取制度」というシンポジウムも行ないます。

今月から太陽光発電の余剰電力の買取が2倍になりましたが、今後の政策はどうなるか、占ってゆきたいと思っていますので、ご興味のある方は以下のページをご覧ください:
http://www.club-vauban.net/200911061094do.html



murakamiatsushi at 08:05コメント(0)フライブルクまちづくり 
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2009年10月25日

  ドイツ、連立政権へ合意、人事は? 合意文章は?

総選挙から3週間、ようやく保保連合の連立政権の合意がなされました。

中身については、このブログの趣旨とはあまり関係がないので(エネルギー政策については、すでに書きました)、大臣の顔ぶれについて、少し報告しておきましょう。

環境に大きく関係する省庁は3つあります。

1.エネルギー消費では一番大きく効いてくるだろうところが、「交通・建設・都市の発展省(日本の国交省にあたる)」:CSU党のペーター・ラムザウアー氏。専門は経済です。
http://de.wikipedia.org/wiki/Peter_Ramsauer

2.原子力と再生可能エネルギーを除くエネルギー政策を担当するのが、「経済・技術省(日本の経済産業省にあたる)」:FDP党のライナー・ブリューデレ氏。専門は法学と国民経済学。
http://de.wikipedia.org/wiki/Rainer_Br%C3%BCderle

3.原子力と再生可能エネルギー、そしてその他の環境政策の担当が「環境・自然保護・原子力安全省」:CDU党のノルベルト・レットゲン氏。専門は法学で、弁護士でもあります。
http://de.wikipedia.org/wiki/Norbert_R%C3%B6ttgen


人事ということであるので、まだ何もはじまったわけではありません。

彼らの活躍に期待したいと思います。


そして、下記が連立政権の合意文章の草案です。日本では、ここまでの書面での合意=契約というスタイルが根付いていません。1時間で書けるような当たり障りのない各党のニュアンスをちょこっと乗っけた5ページ(!)の文章です。今検索しても、なかなか上位に出てこない・・・つまり有権者に常にチェックしてもらうためのものではないわけです:
http://www.dpj.or.jp/news/files/20090909goui.pdf


ドイツでの連立合意は完全なる「契約」です。合計130ページにもなる大作の文章を、各党が単語の一つ一つをチェックし、議論し、妥協して、草案を作ってゆくわけです。だから夜通しの交渉をしても3週間もかかるわけですね。

これをたたき台にして、10月末から新政権による政策が実行されてゆくわけですが、皆さんも一度、世界で一般的な連立政権の合意文章とはいかなるものか、眺めてみましょうね。
http://www.cdu.de/doc/pdfc/091024-koalitionsvertrag-cducsu-fdp.pdf

ちなみに、私は明日の飛行機の中で、読ませてもらおうと思っています。


明後日には日本です。講演頑張りますよ。
http://murakamiatsushi.de/article_021.html



murakamiatsushi at 02:18コメント(0)エコロジー政治 
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2009年10月20日

  人口減少について

なかなか更新できない日が続いていました。

理由は、今週日曜日から日本に発ち、10月27日を皮切りに、11月21日まで日本で講演を、結構、というか、かなり沢山させていただくからで、その準備で今もちょっとテンパッっているのです。

公開のものについては、私のHPにおよその予定がUPしてあります。まだ、詳細が決まらないところも一部ありますが・・・もし、ご興味があり、最寄で開催されるのでしたら、是非、お会いしましょう。

http://murakamiatsushi.de/article_021.html


さて、今回も数多くの場所で講演させていただいたり、コンサルティングさせていただいたりするわけですが、最近の環境保護、とりわけ私が得意としている分野、まちづくりや都市計画、エネルギーや気候温暖化の話となりますと、避けて通れないのが「人口減少」というテーマです。というか事実です。

遅すぎるような気もしますが、まあ、何はともあれ幸いなことに、最近では数多くの自治体や企業でも、この事実をようやく「やわらかく」は、認めはじめ、それに従った事業計画や計画策定をしはじめようとしています。

ただ、前例がないため、なかなかうまくいかないようです。

残念ながら、未だに「うちの自治体だけは企業誘致で人口増を」と、過去20年成果がないにもかかわらず、もがいているところも多いのですが、全体としては、まあ諦めの境地というか、それを少しずつでも受け入れはじめているのは、良い兆候です。

私がここで指摘するまでもなく、ほとんどすべての自治体で人口は減少局面に入ろうとしていますし、数多くの自治体ではすでにどっぷりと突入しています。加えて高齢化で、GDPも下がるでしょう。予算も減り続けるでしょう。そして、困ったことに日本全国のほとんどの企業も、売上げを下げるときが近づいています。

そうした局面で、何を持って環境保護とするのか、何を持ってまちづくりを行なうのか、そうした指針が欲しいと感じられている方々が大勢出てきました。

今回の一連の講演でも、その論点をドイツや欧州の事例を紹介しながら議論してみたいと思っています。


今から丁度10年前、ドイツでは緑の党が連立政権入りし、社会民主党と共同で「再生可能エネルギー法(電力の固定買取り制度:フィードインタリフ)」が作成されました。

それ以来、その原理こそが、縮み行く先進工業国(例えばドイツや日本)の環境と経済を活性化するものだと考え、以来、ドイツ人ジャーナリスト、フランツ・アルト博士の著書を翻訳したり、彼を日本に招聘し、大きな催しを企画したり、個人的にもその制度の紹介を全力をあげて行なってきました。

日本では11月に太陽光発電のみの余剰電力買取り制度が新しく変りますが、民主党政権下では、2年以内には改正がささやかれていますし、全面的なフィードインタリフの導入が実現するかもしれないという機運も高まってきています・・・

このテーマで今年仕上げた本も紹介しておきましょう。
http://www.eolways.jp/book/japanese_gnd/index.html


「資源とエネルギーにかかるコストを人の給料に」。縮小の社会の場面であればこそ、フィードインタリフやグリーン・ニューディールと呼ばれるソーシャル・エコロジー政策が必要とされています。

産業政策としての気候温暖化政策、雇用政策としての環境保護、わくわくするようなアイデアは沢山あります。

日本で皆さまとお会いできれば幸いです。



murakamiatsushi at 23:58コメント(0)エコロジー政治 
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2009年10月14日

  ヴォーバン住宅地

先週は、一週間まるまる、日本からの視察の受け入れに従事していました。

フライブルク市にあるヴォーバン住宅地の視察です。

ここ、ヴォーバンは、エコロジカルな都市計画、家作り、そして同時に高い暮らしの質と社会福祉性を実現した稀な事例で、日本からよりも、フランス、ドイツ、イタリア、そして中国と韓国といった国々から沢山の視察が訪れています。

人間のための道路

このヴォーバン住宅地で実現された「ソーシャル・エコロジー」というコンセプトに魅せられて、本を一冊書き上げてしまった私は、日本で「ソーシャル・エコロジー」コンセプトを広めている活動に従事しています。
http://murakamiatsushi.de/book.html

フライブルクのまちづくり

その活動も今年で5年になりますが、それが少しだけ形を持つようになってきました。日本で有志の方々と力を合せて「社団法人クラブ・ヴォーバン(略称CV)」を立ち上げることができたからです。

そのCV主催の視察・研修が先週行なわれたというわけです。

詳細は、CV代表で、今回の視察にも同行していただいた早田代表のレポートで更新しています。

私が一方的にお伝えするのではなく、日本サイドから見たヴォーバンについて、ソーシャル・エコロジーについて、もしご興味があれば以下のサイトを見ていただけると幸いです。

http://www.club-vauban.net/


murakamiatsushi at 00:50コメント(0)フライブルクエコロジー 
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2009年10月06日

  栗拾いと森、そして木

さて、先週の週末は、息子と一緒にフライブルク市の市有林で、景観林に指定されている森へ栗拾いに出かけました。

ドイツでは、〈森林法〉で、私有林や公有林であっても、市民が散策することを許していますし、それどころか、都市計画上で景観林や保養地区などに指定されている場所では、遊歩道の整備やベンチや標識の設置、遊歩道近くは混合林にし、市民の憩いの空間にするよう所有者に義務付けられています。

もちろん、こうしたことは、森林経営で利益が出る構造であるからこそ、可能となります。近代化、高効率化された儲けられる林業経営がなされているドイツならではなの規定なのです。

また、中世の時代に起源を持つ〈森林法〉では、森で生育される果実や木の実、キノコなどは、山の所有者が誰であれ、市民が採取してもよいことになっています。森は公共のものであるからです。

ただし、というか、もちろん、その程度は厳格に規制されており、基本的には「両手に収まる量」のみの採取であり、市民もこの程度を守っているようです。つまり、売るほど採ってはいけません。

日本のどこかで山菜やキノコ、たらの芽などが見つかると、根こそぎ採り尽くされてしまう、というような状況ではありません。もちろん、ドイツでもキノコは乱採取によって、場所によっては危機的な状況にあり、多くの場所では禁止措置が取られていますが・・・

というわけで、両手一杯の栗を目指して、混合林のポイントまでやってきました。栗の木は大木である必要はありませんが、日光を均一に沢山受けている木を探すのがポイントです。

栗拾い01


いつも質のよい栗が採取できる大きな栗の木の下には・・・ありました、ありました。山栗です。

でも、今年はいつもよりも小ぶりの栗ばかりで、皮むきに手がかかるなあというのが、私の感想です。しかし、息子は目の色を変えて、見事、大き目のものを見つけ、2人の両手一杯となる栗を採取することに成功です。

さて、森から帰るときには、ついつい、街路樹も気になります。近年の
フライブルク市では、マロニエに害虫が大量発生、このままでは、市内のマロニエの大木が衰弱してゆくと警告が鳴らされています。これも、温暖化の影響でしょうか。

しかし、私の大好きな「鈴かけの木:プラタナス」は、今年も見事な鈴をかけていました。

鈴かけの木


そして帰宅後、切り目を入れて、トースターで10分ぐらい弱火で焼きます。天津甘栗しか食べられたことのない方には、山栗は、びっくりするほど素朴な味です。苦味が少しあり、甘みはそれほど強くないのですが、なんともいえない秋の風味を味わうことができました。息子も満足して穏やかな日曜日を過ごすことができました。

栗拾い02



murakamiatsushi at 16:14コメント(0)フライブルクエコロジー 
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2009年10月02日

  宮崎駿氏のコメントに思う

ドイツの総選挙から3日がすぎました。日本の皆さんに何かを伝えなきゃと思いながら、ここ数日、各種の新聞をひっくり返して見ておりましたが、結局のところ、伝えるべきニュースはそれほど出てきません。

保守政党(CDU/CSU/FDP党)の勝利によって、ここフライブルク市があるバーデン・ヴュルテムべルク州の環境庁では、早速、今年と来年に廃炉になる予定の原子力発電所3基の延長計画を持ち出してきておりますし、メディアでも、あたかも脱・脱原発がはじまったかのような勢いで報道しています。どうやら電力業界は、あまりのうれしさに、選挙後、3日間もこらえられなかったようです。

連立の合意調整において、予想以上に選挙で強かったFDP党に対して、保守同盟といわれるCDU党、CSU党の不調和なども聞こえてきますし、大負けした社会民主党(SPD党)の党や会派の人事をめぐって、そして今後の左翼政党との協力関係について、はやくも数多くの風評とも言えるニュースが繰り出されています。

日本の今回の民主党政権のように、国民が何かを大きく期待して生まれたわけではないドイツの新政権・・・大連立政権の後の、消去法でもあった今回の選挙では、それほど大きなニュースがないまま、混沌として、政権樹立へと流れてゆくのだと思われます。

さて、そんな中で(どんな中だ?)、面白いインタビュー記事を見つけました。

http://www.asahi.com/national/update/1002/TKY200910010488.html

鞆の浦埋め立て差し止めについての宮崎駿氏のコメントで、その中で宮崎氏は「不便なことが、暮らしやすいことでもある」と語っています。もちろん、このケースでは「不便」という言葉の定義は、必ずしも「便利」の反対語ではないということに注意することが必要です。

うーん、このコメント、実にいいですね。私がもろもろと考え、日夜勉強・調査しているこれから先の先進工業国での交通システムとは、この「不便」というのがキーワードになっています。便利の反対ではない不便です。

この説明をしようと思いましたが、・・・力尽きています。今日は止めておきましょう。

できれば、皆さんに下記のホームページと、私と仲間が提唱している「クラブ・ヴォーバン」の「ソーシャル・エコロジー」というコンセプトを見ていただければと思います。

「ソーシャル・エコロジー」、これは便利で、不便な暮らしやすい社会を目指す新しい時代のキーワードなのです。
http://www.club-vauban.net/think.html


murakamiatsushi at 05:19コメント(0)政治まちづくり 
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2009年09月28日

  ドイツの総選挙を終えて

選挙パーティーから一夜明けました。

昨日の速報でもお知らせしたように、ドイツでは中道右派+中道左派の大連立から、右派2政党(CDU/CSU党+FDP党)への連立政権へと政権交代が行なわれることになります。

首相は引き続きキリスト教民主同盟のメルケル女史、彼女の勝利インタビューをみると、感情が先に来て、言葉足らずで、少し頼りない感じもしましたが、それだけ、この右派2党による連立を望み、苦しい選挙戦だったことの現われなのかも知れません。

驚いたのは大敗の敗者となった社会民主党のシュタインマイヤー首相候補(現、副首相件、外務大臣)の会見です。言い訳がましいところは少しもなく、穏やかに、かつ、野党に下っても彼の政党が目指した政策実現の挑戦を語るさまは、戦いに負けて大化けする要素を秘めているようにも感じました。

社会民主党はすでに11年間政権に就いています。その間には、本来の左派支持者の失望を買うような産業寄りの数多くの妥協案を通したことから、左派よりの市民は、Linke(左翼政党)とGruene(緑の党)に流れたことは明らかです。ここで、一度野党に下り、政党の原則を再び押し通すことで、いかに分散した左派を呼び戻せるのかどうかが、今後の2大政党の一翼を担う社会民主党の復活の鍵となることかと思います。

ただ、どちらにしても、ドイツでは2大政党制は終焉したと断言しても間違いありません。今後は5つの政党が票を割りつつ、どのような連立の可能性があるのかを探る時代へと変化しました。

今日から、連立政権への交渉会議が早速はじまります。公約であった減税の規模は? 金融危機対策は? 雇用対策は? というところが今回の総選挙の争点であり、気になるところですが、脱原発の期限延長はありか? 気候温暖化対策の進展は? などというエネルギー政策の部分でも大きな舵を切る可能性があり、興味深く観察してゆきたいと思います。

そうそう、今回の選挙では、質問に答えて、自身の考えに沿う政党を選び出せるインターネット・サービスが、とりわけ若者の間で活躍したようです。英語でも質問に答えられますので、もし興味のある方は以下のサイトでお楽しみください:

http://www.wahl-o-mat.de/bundestagswahl2009/main_app.php

murakamiatsushi at 15:54コメント(0)環境保護政治 
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  総選挙の速報です

ドイツでは日曜日、18時になりました。投票所は閉まり、出口調査からの予測数字の発表がはじまりました。

国営放送のARDの予測数字を紹介しておきましょう。

CDU・CSU党(キリスト教民主同盟:保守、中道右派)33.5%
FDP党(自由民主党:新自由主義、リベラル)15.0%
SPD党(社会民主党:中道左派)22.5%
Gruene(緑の党:環境保護、左派)10.5%
Linke(左翼等:左派)12.5%

ギリギリの数字ですが、超過議席を合せるとCDUとFDPの連立政権で決まりという形です。

投票率は、72.5%。戦後最低の投票率であり、大連立の後の争点の少なさが影響しているようです。



murakamiatsushi at 01:07コメント(0)政治 
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2009年09月27日

  ドイツの総選挙、議席配分の決定方法

さて、本日はドイツで連邦議会の総選挙が行なわれます。日本国籍である私には当然、投票権はないのですが、いろいろ楽しみながら一日を過ごしたいと思っています。

さて、日本ではあまり国民的な議論が活発でない議席配分の計算方法について、少し述べてみましょう。

欧州では、投票した1票が、いかに公平に民意を表すことができるのかについて、常に学術的にも、そして政治的にも修正の努力が行なわれています。完全なものは存在しないことは明らかなので(完全でありたいならば、議席数は投票者数分必要となります)、その完全性にいかに近づけるのかの努力をしているのです。

多数代表制では、死票が数多く発生してしまうため、比例代表制や、多数代表制との折衷方式を採用している国が数多くありますが、ドイツはその折衷案で議席が配分されます。総議席数の半分は、各州や地方自治体からの地域代表という形で多数代表を、残りの半数では比例代表として死票の行き過ぎなどを調整するというわけです。

小選挙区や拘束式などの細かなここの部分については、今回は詳しくは触れません。今回は比例代表の議席配分の計算方式について皆さんに少し考えていただきたいと思っています。

ドイツの比例代表分の議席配分については、古くは、日本が現在でも採用しているように「ドント方式」が使われていました。

こうした既存の計算方法については下記などを参考に、ご自分で調べてみてくださいね。面白いはずですから:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E4%BE%8B%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E5%88%B6

しかし、ドント方式は少数政党に分が悪く、大政党にとっては圧倒的に有利で、最悪のケースでは60%の得票で、議席全部を支配してしまうことも可能となるため、学識者は様々な配分手法を提唱し、各国で多様な改良案や新案が採用されています。

1987年からのドイツでは、ドイツ数学者ニーマイヤーがイギリスのヘアの法案を完成させた「ヘア/ニーマイヤー方式」を採用しています。しかし、この方式でも「アラバマ・パラドックス」が発生したり、今度は少数政党に有利すぎる結果が出る傾向があります。

そこで、議論を重ねたドイツでは、今回の総選挙ではじめて「サン=ラグ/シェーパース方式」が採用されることになりました。これは、北欧などで採用されているドント方式の改良系である「サン=ラグ方式」や、「修正サン=ラグ方式」とは全く異なります。

上述のいずれの手法も、インターネットで検索できますが、この新しい「サン=ラグ/シェーパース方式」については、日本語ではそれほど、というか全く情報がでていないので、ここで簡単に説明を加えましょう。

事例で紹介してみます。この事例はバーデン新聞、2009年9月26日付の掲載事例から転写しますね:

議席定数が8のケースで、有効投票数が17,500票、
A党:10,000票
B党: 6,000票
C党: 1,500票の得票をした場合です。

・ドント方式ではAが5議席、Bが3議席で、Cは議席獲得なしです。
・ヘア/ニーマイヤー方式では、Aが4議席、Bが3議席、Cは1議席ですが、この方式では「アラバマ・パラドックス」が発生します。

・サン=ラグ/シェーパース方式では、まず、仮の議席配分分母を次のように計算します:
有効投票数÷議席数=17,500÷8=2187.5

そして各党の得票数を分子に、この数字を分母にして、計算をして、小数点を四捨五入で丸め、仮の議席配分数を求めてみます:

A=10,000÷2187.5=4.57≒5議席
B= 6,000÷2187.5=2.74≒3議席
C= 1,500÷2187.5=0.69≒1議席

そこで、この総議席数をみると、定数よりも1つ多い、9議席であることが判明します。

ということで、仮の議席配分分母を徐々に大きくしていき、近似値法によって計算を行い、通常の四捨五入で総議席数が8になったときに、その分母の変更を終了することにします。最終的な解は:

A=10,000÷2227.0=4.49≒4議席
B= 6,000÷2227.0=2.69≒3議席
C= 1,500÷2227.0=0.67≒1議席

このように、この事例では、ヘア/ニーマイヤー方式と同じ解が得られましたが、この方式の利点は、「アラバマ・パラドックス」が発生せず、数多くの選挙結果でシュミレーションした結果、「ドント方式」よりも少数政党に有利ではあるものの、「ヘア/ニーマイヤー方式」よりは、小政党に有利過ぎない、中間的な値が得られることが確認されています。

また、最初の仮の解による総議席数が、定数よりも小さい場合には、この分母は当然のことながら小さくしてゆき、同じように解を求めてゆ
きます。

今回の総選挙からはドイツでは、「サン=ラグ/シェーパース方式」が採用されるようになりました。この方式は、すでに1980年に発案されており、ドイツ連邦議会に置かれる各種委員会の委員配分では使用されていました。各種のシュミレーションなどの検討の後で、公正性が向上することが確認され、「完全」に少しでも近づくことを期待して採用されることになったわけです。

日本の選挙制度は非常に未熟です(国政も、そして、とりわけ地方自治体の議会においても)。これまで自民党の一党支配であったことが大きく影響しているのでしょうが、「制度」というこの分野において、国民的な議論を行なうことが、これまで、それほどありませんでした。

政党に所属しない中立の研究者(ヒモなしの研究者、学識者)が、今回の民主党の過大な議席配分を分析したり、その他、地方自治体での議会選挙制度の惨状を観察したりして、新しい「より公平な」提案が数多くなされることを望みたいものですよね。


murakamiatsushi at 18:06コメント(0)政治 
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2009年09月24日

  IRENAとドイツ

IRENA(再生可能エネルギー機関)とは、ドイツのSPDの政治家でNGOユーロソーラー代表のヘルマン・シェーア氏が20年前から構想していた組織です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/IRENA
http://www.irena.org/

近年の再生可能エネルギー市場の拡大、そして気候温暖化対策からの再生可能エネルギー拡大の必要性を受けて、国際的な専門機関設立の声は大きくなり、ドイツ、北欧などのイニシアチブによって2009年1月に設立されました。日本も他の129カ国と並び憲章に署名しています。

IEA(国際エネルギー機関)、IAEA(国際原子力機関)と並んで、再生可能エネルギーに関する統計や情報を共有化し、技術移転や政策の知見などを加盟国に提供し、世界の再生可能エネルギーを普及・推進することが組織の目的とされています。

さて、今年の7月にはこの生まれたばかりのIRENAの本部をどこに置くのか、そしてその初期事務局長を誰にするのか、の重要な2つのポイントが議論され、投票されています。

結論から言うと、その本部は、アラブ首長国連邦のアブダビで建設中の都市「Masdar City」に、事務局長はフランスのエネルギー・環境相を務めたHelene Pelosse女史に決まっています。

さて、それを受けてドイツのメディアでは、Pelosse女史の「Kompetenz」に疑問を投げかける声も聞こえています。

先週はドイツ語の「Zivilcourage」に該当する訳語がないと話しました。この「Kompetenz」という単語も、通訳・翻訳者泣かせの言葉です。辞書では「専門能力、権限」などと訳され、英語の「Competence、Authority」に該当するとされていますが、ドイツでは付加価値を加えた場面で使われているため、単にこの場合、「専門能力」と訳してしまうことができません。

その該当する分野の専門知識を所有し、その分野に該当する職務を一括して担当する能力があり、かつ、それを担当する権限を持つ、あるいは持つことが可能である・・・というような能力と権限という2つの異なる概念が凝縮された意味合いで使われることが多くなっています。

したがって、今の総選挙戦でも、この立候補者は「○○分野でKompetenzを持つ」というような言い方をするほうが、「Faehigkeit(能力)」や「Sachverstand(専門知識/能力)」などという言葉よりも、より重いものとして響くことになります。

さて、話はそれてしまったのですが、Pelosse女史の「Kompetenz」についてです。彼女は、この再生可能エネルギーの分野にわずかの経験しかないこと(5年以下)、知識も見識もそれほど持たないこと、さらに大きな国際的な組織を率いた実績に乏しいこと(というより実績がないこと)、書き始めればきりがないほど彼女を選択する必要性が見られません。

他の立候補者、ギリシアのZervos氏(Global Wind Enegy Council代表)、スペインのJordana氏(スペイン再生可能エネルギーセンター代表)、デンマークのKoch氏(デンマークエネルギーエージェンシー代表)などとは、国際的な知名度からKompetenzにいたるまで比較するまでもありませんでした。

しかし、最終的にはPelosse女史は63票、スペインのJordana氏は60票で事務局長の座は彼女に決まりました。なぜでしょうか?

この舞台裏にはいろいろな話がありますが、「金と取引」で決まった話だと言い切れそうです。

本来であれば、冒頭で話したようにドイツのヘルマン・シェーア氏がこの代表選に出れば、それで決まった話だったのです。しかし、ドイツ環境省、外務省は、一回の任期で終る事務局長職よりも、継続的に設置される本部の設置を旧首都のボンへと持ち込むことのほうを重要視していました。シェーア氏が事務局長になれば、ボンの本部という話の可能性が減少します(こうしたケースではダブルドイツということはありえないのです)。

このIRENAは、設立から何からボンを中心に行なわれてきたので、その本部獲得を一番に考え、ドイツはシェーア氏を事務局長候補として送り出すことは控え、シェーア氏もこの取引に了承したと言われています。

本部をボンに、事務局長をスペインのJordana氏かデンマークのKoch氏で取りまとめる舞台裏の工作です。しかし、欧州の意思統一は、途中のフランスの抜け駆けで壊れることになります。Pelosse女史は当初はボンを本部に想定していたのですが、劣勢を跳ね返すために中東と取引する動きがありました。

その際には、5年間に渡り2,200万ドルを毎年出資し、職員の引越し費用や豪華な箱物を提供し、毎年5,000万ドルを途上国の再生可能エネルギープロジェクトに投資するというアラブ首長国連邦のお金も大きな役割となっています。

最終的には、アブダビで意思統一した連合が、その見返りにPelosse女史を選択することになり、それが最も多くの「数」となったわけです。

さて、このIRENA、まだ存在もしていない都市「Masdar City」で活動を開始することになります。また、事務局長も今後の動きがどうなるか未確定な人物です。一説では、再生可能エネルギー普及・推進というIRENAに対して、もっともその効力を「不能」にする選択だったと批判されています。

欧州の意思統一がならなかったことは、今後のIRENAの活動に大きな影を与えることは確実でしょうし、生みの親であるドイツが、何の役割も与えられないことは、大きな国益の損失であったことは確実なようです。



murakamiatsushi at 15:24コメント(0)エコロジー政治 
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2009年09月16日

  環境を離れて、悲しいニュース

今日は、少し環境を離れて、ドイツでの悲しい出来事を書きたいと思います。

いつもは、ドイツで行なわれている先進的な環境政策などを、手放しではないつもりですが、ポジティブな事例として書いています。

しかし、どこの国でも、同じように殺人事件があり、同じように凶悪な犯罪があり、どこの工業先進国でも同じように人間の心は荒廃しています。若者や子供たちは、そんな不安な社会の中で、成長を続けているのです。


先週の土曜日の午後、ミュンヘン市内の近距離鉄道の地下駅の中で、17、18歳の3人の若者グループが、より年齢の低い若者、というより13歳から15歳の子供グループ4人組みを恐喝していました。いわゆる力に任せたカツアゲというやつですね。

駅から逃れ、電車内に逃げ込むように駆け込んだ4人を、恐喝していた3人のうち、2人が追いかけました。

電車内でも執拗に金を要求する状況を目にした50歳の男性市民が、子供グループをかばおうとし、その若者2人に対し、やさしく声をかけました。事態がエスカレートしないような態度であり、その前に携帯で警察に連絡を入れていました。

子供4人に対して男性は、子供の下車する駅は手前であったものの、警察に連絡をいれたので、少し遠くの駅まで、男性と一緒に行動することを勧め、子供4人と男性はSollnという駅で下車しました。

カツアゲ(要求額は15ユーロ≒2000円だったそうです)に失敗した2人組は、その後を追い、逆恨みから男性に対して攻撃を加えます。最初は防御できていましたが、2人に押し倒され、地面に伏せたところに何度も蹴りが入りました。そして、間もなく男性は意識を失い、警察が到着したときには、ときすでに遅く、病院に運ばれましたが、すぐに死亡が確定されました。

犯人は逃走したものの、すぐに逮捕されています。


さて、この事件をニュースで見てから、今日まで3日間、私は物事に集中できない状態でいます。何から整理して、この事件を理解すればよいのか分からないからです。ですから、いつもの癖ですが、モノを書きながら、まとまりはつかないものの、整理をしてゆきたいと思います。

どこにでも起こる可能性のある低俗で卑劣な犯罪であり、その若者は失業状態、盗難やカツアゲで何度も警察のお世話になっているそうです。男性は、後の警察の発表でも、状況を悪化させるような行為(若者に対しての説教など)は一切認められず、模範的な、教科書通りの市民としての対応をしたそうです。

それでも、このケースでは、彼は命を失い、彼の家族は大切な人を亡くしてしまいました。

私はドイツに来るまで、もし自分がこうした事態に直面していたら、率先してこの男性が取ったような模範的な、市民としての行動を取れるような人間では全くありませんでした。

ただし、こちらで、様々な成熟した人びとと出会い、またドイツの徹底したナチスを再び生み出さないための教育を知り、そして、それを高いレベルで身につけた人びとと知り合うようになってから、少しは変ったと考えています。これまでも、外国人という立場でありながら、いろいろな場面で無視をしない、声をかける行動を取ってきました。

こうしたことがある程度(私は模範的ではもちろんありませんし、それを自慢したいわけでもないのです)できるようになったのは、子供を持ったことも大きかったと思います。子供たちに対しても、そうした人間になれるように心から願っていますし、「長いものには巻かれろ」「無視をしておけ」という生きやすい道ではなく、困難な道であっても、正義を歪めてはいけないということを第一に配慮してきたつもりです。

この事件を受けて、ドイツでは青少年の常習犯に対する刑法の強化や監視カメラの導入などが早くも議論されていますが、その前に考えるべきことが山積みされているように思います。

もし、自身や、子供たちが、同じような行為で、取り返しのつかない不利益を受けたとしたら、そう考えると、思いもまとまらないまま、このブログをここまで書きました。続けます。

一つだけ、こうした悲劇を変えられる可能性があります。それは、大勢がこの男性のような行動を取れるようになった世の中を作ることです。

今回も駅には15名前後の通行人がいたようです。数名は警察に電話し、そのうち何名かは大声で暴行行為への牽制を行なったそうです。ただし、15名がその男性のような行動を瞬時に取れれば、もちろん暴行行為は5分間程度だったようでかなり小さい可能性かも知れませんが、最悪の結果は避けられたのではないかとも思います。もちろん、その15名を責めるつもりなどありません。私自身、何もしない1人であったのかも知れません。

ドイツ語には、「Zivilcourage」という造語があります。ラテン語のCivilis(市民)とフランス語のCourage(勇気)を掛け合わせた言葉で、19世紀にプロイセンの首相ビスマルクが最初に使用したそうです。

日本語には、残念ながらこれに該当する概念の言葉がありません。

「理不尽な事柄に対して(自己の不利であっても)、自己と市民としての信念を主張する行動」

とでも、訳せばよいのでしょうか。その概念が成立し、それが市民に行き渡ったときはじめて、社会的な問題は解決されるはずです。


ミュンヘンのその駅には彼を想う場所が設けられ、埋葬の時には、ミュンヘン市内のすべてのバスや鉄道が一律に運行をストップし、彼への黙祷の時間が取られるそうです。

Zivilcourage。ツィヴィル・コゥラジェ。無いのは分かっていても、その訳語となる日本語を心の中で求めている自分がいました。



murakamiatsushi at 05:42コメント(0) 
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2009年09月14日

  ドイツの総選挙、TV対決の感想

このところ、ブログの更新に手が回っていませんでした。毎年9月は海外視察の多い時期で、連日朝から晩まで、フライブルク視察のお手伝いをしていました。

さて、朝晩の冷え込みも厳しくなり、最低気温は10度を下回ることも多くなったフライブルク市ですが、9月13日の日曜日の晩には、2大国民政党の党首による総選挙前の対決がありましたので、その状況や感想を少しお伝えしておきたいと思います。

まず、ドイツでは2009年の9月27日に総選挙があります。これは下院にあたる直接選挙で選ばれるドイツ連邦議会の選挙です。ちなみにドイツは連邦制を取っているため、上院にあたる連邦参議院は、州議会の割合とその州の人口規模に応じて、州から議員が送られるため、こちらの直接選挙はありません。

そしてドイツの現在の政権ですが、保守党であるキリスト教民主同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)との大連立で政権が運営されています。その政権を担う両方の党首、CDUのメルケル首相とSPDの外相シュタインマイヤー副首相が、今度の選挙でも首相候補者として立候補しており、今回のTV-Duellでも、この2人が論戦を繰り広げました。

現在までのところ世論調査(国営放送ZDF、9月11日調べ)ではCDU党は支持率を36%とし、連立政権を志向しているFDP党(新自由主義)14%と合わせて、過半数ギリギリといったところですが、過去数年間、数々の失策で主要支持層を他の左側政党に取られ続けているSPD党は支持率23%、緑の党と左翼党がそれぞれ11%と苦戦を強いられています。

SPD党は、連邦議会では左翼党との連立を組まないことを明言しているため、中央から左側の陣営での過半数は絶望的で、奇跡でも起こらない限り、SPD党が主体となって政権を構築することは難しいといったところが現状です。

ただし、これはあくまで世論調査の結果ですから、通常は投票率が80%
を超える総選挙の結果はどうなるか分かりません。

さて、今回のような総選挙前の首相候補者2名によるTV-Duellは、2002年、2005年と行なわれてきました。国営放送2社(ARDとZDF)、民放2社(SAT1とRTL)との協同番組で、それぞれの放送局の代表的なメインニュースキャスター、ジャーナリストを1名づつ選出し、4名で進行と司会をしながら、候補者2名に質問をぶつけてゆくという形式です。

生放送の90分間で、将棋のように時間配分されながら、両候補者は同じ時間だけ回答する権利が与えられています。候補者は、メモ用紙と筆記用具だけで、辛口のジャーナリストからの質問に答えながら、お互いの政党の政策の違いと特徴を際立たせ、自身の個人的な信頼度をUPさせられれば、勝利というスタイルになります。

これまでの各種の調査では、このTV-Duellは、投票行為に少しは影響するという結果が出ているため、候補者は自身のイメージを崩さないようにしながら(無粋な相手へのアタックや感情は、裏目に出ることも多々あります)、自身の政治家としてのモチベーションなども披露することとなります。

その雰囲気を知っていただくために、すべてドイツ語ですが、その映像を少し見ていただければ幸いです:
http://www.zdf.de/ZDFmediathek/content/9602?inPopup=true
(TV-Duell 2009 Merkel Steinmeyerをスタートしてください)

さて、内容についてですが、この2人は現在、大連立の首相と副首相という立場で協同で金融危機などの対策に当たってきたわけですが、お互いにある程度の信頼関係があります。したがって、DuellとDuettの差を出すためにも、司会進行のジャーナリストはかなりの苦労をしたようです。

質問の一番目が、シュタインマイヤー氏(SPD)に対して、「なぜ、今後の4年間において、首相はメルケル女史(CDU)ではいけないのか?」というものでした。これは、直接的には、非常に答えにくいようで、両者とも、これまでの大連立の成果とその際にそれぞれの政党が抱えた問題、そして新しい展開としての政策の違いを打ち出すだけで、それほど多くのものは得られません。

ただし、質問が政策の内容に移ってくると、徐々に政策の相違や思想が感じられ、私的には大変楽しく90分間を堪能できました。

争点をあげてゆきましょう:

1.金融危機の反省から
・CDU:国際的な金融市場のルール作りの強化と国際的に歩調を合わせた対応
・SPD:国内だけであっても、短期的な利益への過剰投資の抑制措置をより強化

2.大企業マネージャーの上昇を続けた超高給への対応:
・CDU:国際的なルール作り(フランス、イギリス、アメリカ)と同調し、給与にはある一定の制限を加える
・SPD:国内だけあっても、給与の制限と同時に、ボーナス(株式の配当など)も規制し、一定以上の場合には別枠の所得税などを検討する

3.エネルギー政策(原子力)
・CDU:再生可能エネルギーの推進を続けるが、2020年までの脱原発プログラムを撤回し、再生可能エネルギーが採算性を持つまでの間、つなぎの技術として、原子力をもうしばらくの間は容認(おそらく10年以下の期限での延長)
・SPD:2020年までの脱原発を維持し、上昇中の再生可能エネルギー推進の流れを妨げない。最終処分場の問題があるため、原発の容認は政治的に無責任

4.金融チェック機構
・CDU:銀行・金融機関が自らの失敗であるのに、自らの影響の大きさによって、国からの援助を強要するような状態を避けるため、チェック機能を強化するよう国際的な協調で取り組む
・SPD:これについても、CDU党よりはより強固な立場で、国内だけであっても強化を推進

5.経済対策
・CDU:「成長は雇用をもたらす」をフレーズに、まずは、所得税の低減によって可処分所得を上昇させ、内需を拡大すると同時に、研究開発の分野に投資し、輸出産業などの支援を継続。GDP年率1.5%前後の成長では雇用維持しか出来ないため、それ以上の成長を目指し、その後で、財政赤字は回収
・SPD:ここまで増加した財政赤字をこれ以上増加させないためにも、金融危機対策分の支出増は必要であったが、継続的な所得税の低減には反対。こうした所得税低減分を、将来の税所得の向上で取り戻そうとする経済政策モデルは実現の見込みがないと批判。雇用の最低賃金保証制度の導入などで低所得者を守りながら、税率は維持し、社会保障費の支出減を目指す

6.アフガニスタン派兵
・CDU、SPDとも、迅速な撤兵の約束はできないが、アフガニスタン政府に最終的には軍事力、警察力という内務権力の移行を早い段階で進め、次の4年間で撤兵のロードマップの作成を実現したい

というような感じで、これまでの選挙戦で繰り広げられていた内容と大きく変るところは見られませんでしたし、国民政党らしく、選挙前に有権者に餌をぶら下げるという感じもしないものでした。

だからこそ、物足りないという視聴者も多かったようですが、私は両者の声と言葉で、政策をおさらいする機会があったことに好感をもちました。

しかし、メルケル首相、物理学者で頭は切れるのでしょうが、誠実ではあっても、今回は演説はそれほどうまくない感じがしました。シュタインマイヤー外相の話術は、今回はなかなかのもので、好感度もUPしたようですし、TV-Duell後の世論調査でも31%対28%で、挑戦者である彼に、わずかな差ではあるものの一応の軍配は降りたようです。しかし、引き分けが40%といったところですから、このTV-Duellで決まらなかった勝敗は、9月27日に持ち越しとなるようです。



murakamiatsushi at 18:59コメント(0)政治エコロジー 
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2009年08月31日

  8月の終わりに、日本の選挙、ドイツの選挙

8月30日、ドイツでの現地時刻でお昼下がり、14時にもなりますと、日本での地滑り的な民主党勝利、そして政権交代確実というニュースがなされました。

事前の調査から、ほぼ交代するだろうと分かってはいたものの、4年前とは正反対の、ヒステリックなほどの得票差を見せ付けられると、政党政治ありきの成熟した間接民主主義体制がはたして日本に存在するのかどうか疑問にも思えてきます。今回は、それほど政権与党に対する市民の怒りが強かったのでしょう。投票率もほぼ70%と、感動さえ与えられました。

そんな思いに耽りながら、日曜日にもかかわらずある調査報告書の提出期限を目前にして泣く泣く執筆を続けていると、今度はドイツの選挙結果が明らかになりました。

9月27日には、ドイツでも総選挙が行なわれますが、その前哨戦として非常に国民的関心が高くなっている統一地方選(そんな言葉はドイツ語にあったかな???)です。

ザールラント、ザクセン、そしてチューリンゲン州の州議会選挙、加えてケルン市などの市長選です。

ここ数年の傾向として続いていましたが、今回の選挙でも明らかになったのは、2大政党制の完全な終結です。

(ご参考までに、下記は昨年のハンブルク市州の選挙のときに書いたコラムです)
http://www.eco-online.org/german-eco/2008/05/09-161108.php

国政においても、現在のドイツは保守政党(CDU党、メルケル首相)と社会民主党(SPD党、シュタインマイヤー外相)の2つの国民政党による大連立が行なわれていますが、今回の3つの州選挙の結果、ドイツすべての州において、単独政権を獲得している州が皆無となりました。つまり、保守政党も、社会民主党も、どちらも獲得議席割合を下げ続けているのです。

その代わり、新自由主義のリベラル政党(FDP)、緑の党(Gruenen)、さらに左党(Linke)という、これまでは5〜8%の支持率確保がやっとであった小政党が簡単に10%を大きく超えるようになりました。その結果を受けて、連立政権の樹立のオプションも多様になる一方で、安定政権のハードルも高くなっています。

とりわけ象徴的だったのが、チューリンゲン州での選挙結果です。これまで議席で過半数を確保していたCDU党が10%を超える支持率を低下させ31%、第2政党には旧東独の流れを汲むLinkeが27%、SPD党は18%、FDPが8%、緑の党が6%と続きます。

連立政権のオプションは以下のようになります。

ヴァリエーション1:CDU+FDP+Gruenen・・・各党の代表色(黒、黄色、緑)からジャマイカの国旗にたとえられ、ジャマイカ連立と呼ばれていますが、今回は緑の党が選挙戦でCDU党を完全批判していたため、おそらくこの連立は難しいでしょう。

ヴァリエーション2:CDU+SPDの大連立。すでに多くの地域では第3政党にまで落ち込んでしまったSPD党との大連立ですが、今回のSPDの選挙戦はCDUを政権から落とすことを目的にしていました。したがって、このヴァリエーションも現実の可能性は薄いと言わざるを得ません。

ヴァリエーション3:Linke+SPDの赤+赤の連立政権。政策の内容では似ているこの左側2党の連立政権の可能性がもっとも高くなります。ただし、この州のLinkeのラメロウ党首は旧東独のStasi(機密・監視機関であった国家保安省)がらみでスキャンダルを抱えており、国民政党であるSPDが州首相指名で彼に投票できるかどうかが焦点になります。総選挙前でもあり、国民感情を刺激する可能性のあるこの人事は、連立の可能性に大きな影を落としています。

というように、どの連立も、多様な背景から決め手にかけます。これは、現在のドイツ各地で日常で見られるようになった光景で、将来的には、北欧のように少数派政権なども視野に入れなくてはならない時期に来ています。

このように、社会がグローバル化、多様化、そして2極化してゆくと、同時に少子高齢化が進むと、有権者の各層ごとの興味も複雑化し、結局は2大政党体制が終焉して、中・小政党の乱立という事態が進行してゆきます。これは、もちろん、政党政治が機能しているという前提で、日本の自民党と民主党のように、党内の支持基盤がまったくバラバラで、政策にも一貫性がない場合では発生する可能性は低いのですが・・・もしかしたら、今回の政権交代で、そうした政策を共にし、ある有権者層の興味を代表するような政党政治の体制へと変異してゆくのかもしれませんね。

どちらにしろ、その先には、こうした複雑系の政治体制が待ち受けているわけです。

さて、これまでとは趣旨の変った沢山の新政策を公約にしていた民主党政権の誕生です。今回こそは、任期の4年間を全うし(首相などの閣僚人事も含めて)、公約を実現し、そしてその結果を見ながら、4年後の総選挙にヒステリックではなく、冷静に望めるような社会、そして投票率が8割を越えるような成熟した民主主義の社会が実現することを願いたいと思います。


murakamiatsushi at 15:28コメント(0)政治 
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2009年08月26日

  フライブルクから衆院選を考える

2008年夏、衆議院選挙が間近に迫ってきました。

私も各党のマニフェストを比較し、コメントするように日本の環境NPOから依頼されたので、「エネルギー政策に限って」、コメント、考察をしています。

選挙の際の各党が提出するマニフェストは、パッケージ商品、あるいは抱き合わせ商品的なところがあり、一つの政策だけでは選べないのが難点ですが、それでも投票前に、情報を収集し、総合的な自身の意見の建設をしてゆくことは重要です。

投票まで残りの日数はあまりありませんが、一つの意見としてご覧いただければ幸いです。

http://www.eco-online.org/eol-focus/2009/08/post_3.php

それから、私の尊敬する上岡裕氏もコメントをしています。これもご参考まで:

http://www.eco-online.org/eol-focus/2009/08/post_4.php

さらに、今回の選挙は各組織が立候補者のエコチェックを行なっています。なかなか、エコだけでは投票を決めることはできないでしょうが、こちらも参考にしてみてください。
Make the Rule:
http://www.maketherule.jp/dr5/eco-check

WWFジャパン:
http://www.wwf.or.jp/activity/climate/news/2009/20090817.htm

さらに、この時期になって経済産業省は、自民党が策定している2020年までに2005年比で15%削減(1990年比8%削減)について、各世帯の費用負担の試算を発表しています。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090826AT3S2502F25082009.html

なんだか、費用負担が先にありきという感覚で、国民への負担を強調しいているところがなじめないですね。これまで国は、エネルギー政策(エネルギー庁は経済産業省の管轄です)において構造的な問題解決の提示を一切行なってきませんでした。つまり戦略的なエネルギー政策のシナリオを提示したり、議論したりはしなかったわけです。現状ありきの予測しか行なわず、すべてが後手に回ってしまった状況で、無理やり、エネルギー供給の形はそのままに、市民が利用する商品の高性能化だけで対策を行なおうとするから、世帯への負担という話が出てきてしまうのです。

どこから、どんなエネルギー源を、どれだけ輸入し、現在CO2排出量の大きな割合を占める「発電」をどのような形態で行なうのか、本当に原発を18基新設することがお買い得なのかどうか、現状ありきではなく、この議論が根本的に行なわれないと、上述の試算で示された商品の買い替えという負担とダブルパンチで、大多数にとって支払うことができる価格でのエネルギーの安定供給も、崩れてしまわないか心配になるところです。

褐炭をほぼ無尽蔵に所有するドイツでは、10年前の時点では、再生可能エネルギーは電力需要の4%足らず(ダム式水力発電がメインです)、エネルギー効率の高いコージェネの割合は10%程度しかありませんでした。

しかし、2020年までに再生可能エネルギー発電が30%、コージェネが25%と、電力需要は増加を続けるのにもかかわらず、その半分以上は環境にやさしく、雇用を促進し、ドイツの経済立地も強化するエネルギー供給の形へと邁進しています。現状の法的枠組みにおいては、この目標は達成されることでしょう。

産油国であるスウェーデンでは、2030年までに移動・輸送用のエネルギー源として、化石燃料をゼロにする法的パッケージを打ち出しています。2020年までに電力需要の50%は、再生可能エネルギーに切り替える目標です。

産油国であるデンマークの電力供給は、すでに6割がコージェネによる地域分散型の発電で、風力発電の割合も高いです。

非産油国・非ウラン資源国の日本は、いわゆるグリーンニューディールと呼ばれる政策を、本質的にはまだ何もはじめていません(一部、ハイブリッド車だけはそれに近い政策ですが・・・)。この選挙が契機となって、間接的なCO2ではない、エネルギー政策に関する議論がもっと活発になってくれることを期待したいですね。


murakamiatsushi at 15:10コメント(0)フライブルク政治 
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2009年08月24日

  緑のまち、フライブルクを自転車で

フライブルクの街並みをいつものように自転車で走っていると、ここ一ヶ月ほどは、悩ましい「衣替えの風景」についつい目が行きます。もちろん、綺麗なお姉さんが薄着で出歩いているのにも目は行くのですが、それ以上に気になってじっくりと見てしまうのが、下の写真のような悩ましいプラタナスの衣替えです。

プラタナス

自然って、本当にセクシーですね。と、そんなことを思うのは私だけかもしれませんが・・・

日本語では「鈴かけの木」とも呼ばれるこのプラタナス、
http://de.wikipedia.org/wiki/Platane

トチノ木(マロニエ)、
http://de.wikipedia.org/wiki/Rosskastanien

カエデ、
http://de.wikipedia.org/wiki/Spitz-Ahorn

そして菩提樹の木、
http://de.wikipedia.org/wiki/Linden_(Botanik)

と並ぶ街路樹の「王様」です。なんとなく、Wikiのアドレスをつけたくなりました。余談ですが、ドイツ語Wikiの植物の充実度にはいつも脱帽です。

フライブルク市には道の両側のプラタナスで緑のトンネルになっているアレー(Allee:並木道という和訳があるのですが、私にとっては並木道という感じではなく、やっぱりアレーと表現したくなります)がいたるところに沢山あり、初夏から秋までの自転車での移動をより楽しませてくれます。

アレー

そういえば、私はこのAllee(アレー)を自転車で飛ばしていると、ついつい「Allez Les Bleus」と繰り返し口ずさんでしまいます。98年、2002年のワールドカップのフランス代表の印象が強烈で・・・というよりも、フライブルクSCの伝説のゴールキーパーだったゴルツがブルーのユニホームを着ると(チームは赤なんですが・・・)、皆で大合唱がはじまったからです(皆ドイツ人なのになぜフランス語・・・)。懐かしいなあ・・・
http://www.scfreiburgtrikots.de/html/03_04.html

そうそう、このAllez Les Bleusの大合唱の発音を知らない人は、このトヨタのCMでも見て、参考にしてくださいね。外国人の発音特集で、笑えます。
http://www.youtube.com/watch?v=fQ0DpnGrimw

あれー・れ・ぶるっ♪


murakamiatsushi at 02:40コメント(0)フライブルクエコロジー 
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2009年08月22日

  異常気象と電気自動車

とにかく暑かった一週間がすぎました。フライブルク市では先日、8月20日に今年の夏最高の気温、37度超が記録されました。

丁度、その日には日本からの視察グループを受け入れており、一日中外を歩き回って先進住宅地などを視察したのですが、さすがの九州から来られた方々も、この暑さには悲鳴を上げておられました。

観測史上の最高記録を樹立した2003年の40.3度には及びませんでしたが、ここ最近、暑くなると簡単に35度をオーバーする傾向は、やはり温暖化の影響だと感じてしまいます。

温暖化の影響といえば、フライブルク市でも集中豪雨の頻度や度合いが増しています。今年も7月末〜8月初頭にかけて、何度となく市内で局地的なゲリラ降雨が観測され、床下浸水が報道され、下水道局は、これまで整備しきた雨水排水の設計は、もはや現状の集中豪雨には対応不可能であり、今後、この傾向が進展するならば、水害の増加は避けられないと悲観的なコメントを出しています。

地域的・局地的な温暖化シナリオでは、南ドイツのこの地方は、地中海沿岸の旱魃や北ドイツの水害多発の地域と比べてリスクは小さく、高地においては、これまでイタリア・スペインなどに流れていた観光客が、この地域、とりわけ黒い森の避暑地へと集まるため、経済的にはプラスになる可能性もあるとしています。しかし一方で、冬場、なかなか気温が下がらず、積雪量も減少しているため、その避暑地の前提である森林への打撃が大きく、同時に農業活動のリスクは増大することも報告されています。

迅速な温暖化防止対策と同時に、すでに温暖化が発生した際のリスクを低減させる対策の実施においても、待ったなしの状況が迫っているといえるでしょう。

さて、そんな記録的猛暑の中で迎えた8月19日、ドイツ政府は10カ年計画である「国家電気自動車発展計画」を可決しました。計画の全文は、ドイツ語になりますが以下のサイトからダウンロードできます:
http://www.bmvbs.de/-,302.1091796/Nationaler-Entwicklungsplan-El.htm

具体的には、電気自動車、およびプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の技術開発と普及を推し進めることの計画は、2030年前後には、新車販売の半分以上は電気自動車、およびプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)になると予測、その際にドイツメーカーが遅れを取らないためにも、バッテリーの開発や研究者の育成を推進し、充電ステーションなどのインフラ整備を行い、2020年までに100万台、2030年までに500万台を超える電気自動車とPHEVの普及を目指すことになっています。

この「国家電気自動車発展計画」は、その策定の前提になっているのが2008年策定の「気候温暖化対策パッケージ」です。
http://murakamiatsushi.de/article_014.html#1

電気自動車ありきの計画ではなく、国のエネルギー供給の場面で(と、それは同時に温暖化対策を意味しますが)、その他のエネルギー政策と構造的に結び付けられながら計画されているのが特徴です。

とりわけ、電力供給の場面では、2020年には自然エネルギーの割合が30%、地域分散型のコージェネの割合が25%へと急増する中で(原子力はゼロになる予定です)、安定的に電力を蓄えておくシステムの一環として、電気自動車の推進が必要とされています。

ですから、日本のように「長期エネルギー需給見通し」以外にはエネルギーにかかわる政治的なシナリオを持たず(これは自民党・公明党の政権が行ってきた結果です)、そのシナリオでは、新エネの割合が2020年までにわずか2%、原子力発電所の新設を9〜18基も見込んでいる状況での電気自動車の推進とは、質的にも、意味合いが異なるのが特徴です。

とはいえ、ドイツの電気自動車の推進も手放しで喜べるものではありません。金融危機を受けて発動された「出血大サービス・財政支出」の中では、持続可能な交通に対して5億ユーロの支出が認められていますが(2009、2010年度で消化予定)、そのうち1.2億ユーロがこの電気自動車にかかわるプロジェクト(充電ポストの設置やパイロットプロジェクト的な電気自動車の導入、研究開発の支援など)で使われています。

しかし、その予算の受け取り先は、金融危機からの影響で自らの力で研究開発費の捻出に苦しむ自動車メーカー、そして補助金の常に受け取り先であり続ける電力事業者など、バラマキと評されてもおかしくない内容となっています。

まあ、それは世界各国、どこの国でも同じような現状なので、諦めの境地ではありますが・・・

このブログ記事で皆さんに伝えたかったのは一点だけです。当たり前のことですが、電気自動車といえども燃料となる電気が必要となります。ですから、そうした車単体で物事を考えるのではなく、電気の供給というより大きな視点で、こうしたニュースを読み解いていただければ幸いです。マスメディアは、小さな視点でしか報道しませんからねえ・・・

新聞社の良く使うテクニックに以下のような表現があります:

『・・・走行中に排ガスとCO2が出ないという意味は大きく、地球温暖化防止の決定打としての役割が期待される・・・(朝日新聞2009年8月12日付、「普及なるか電気自動車」)』

「走行中に」と断わることで、エネルギー政策全体へは全く言及しなくともよい記事づくりです(ちなみに新聞の広告提供企業のうち最も大きなもののうちのひとつが、電力事業者であり、また自動車メーカーです)。

これは水素燃料電池車の場合も同じですが、このようにハードの単体のことだけを取り上げる「木を見て山を見ず」の傾向ではなく、そろそろ「山を見る」議論が欲しいですね。

昨日、36度を超える連日の猛暑記録から1日空けた、8月21日の最低気温は14度でした。さすがに、これが普通になってしまうと体壊します。体ですでに温暖化の怖さを感じているのがドイツ国民であるとも伝えておきましょう。

※もちろん、これらの事柄すべてが温暖化の影響であるとは断言できませんし、「気候」という以上、30年前後の平均値を取らないことには、学術的にも温暖化の影響であるとはいえません。ですから、フライブルク市の地元新聞も、気象の専門家のコメントを載せるなどしてバランスをとっています。しかし、実体験では、もはや「温暖化」の影響以外ではないという感覚が市民を覆っていることも、付け加えておきたいと思います。


murakamiatsushi at 16:45コメント(0)フライブルクエコロジー 
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2009年08月19日

  スクラップ補助金の憂鬱

金融危機を受けて世界各国がはじめた緊急財政支出。その中でも世界的で大きく報道されたり、注目されているのが、古い自動車をスクラップにし、高燃費の新車を購入する際に支払われる「スクラップ補助金」です。

先日も、アメリカではスクラップ補助金開始後、1週間もたたないうちに財源が使い尽くされたと報道されていました。

ドイツでは今年1月中旬に500億ユーロ(7兆円)という途方もない数字の緊急景気対策が可決され、順次施行されていますが、その中でもスクラップ補助金は一つの目玉商品であり、当初は総額15億ユーロの財源で補助をはじめるように決議されました。

しかし、国からもらえるものであれば、皆出来る限りもらおうとするものです。2月からの補助金の開始後、わずか1ヶ月余りでこの財源の大半は申請され、ヒステリックな駆け込み的な申請が相次ぎました。マスメディアもこの現象を面白がり、さらに火に油を注いだことで、今年9月の総選挙への対応も頭にあるためか、政府は、即時に財源を50億ユーロへと拡大することに決めました。金融危機対策の総額の一割を、約200万台分の車の買い替え促進に利用したわけです。

ドイツに登録されている乗用車数は4100万台ですから、5%の買い替えを短期間で政治的に後押しようという壮大な試みです。
http://www.jama.or.jp/world/world/index.html

さて、昨日付けの新聞記事では、その補助金も9割以上が使い果たされ、現状の申請のスピードでは、9月の総選挙まではもたないだろうと報道されました。約半年で、この200万台分の買い替えが行なわれた計算です。

このスクラップ補助金は、別名で、「環境プレミアム」と呼ばれています。燃費の悪い中古車を一掃し、高燃費の新車を推進したことから政府は、「スクラップ・プレミアム」という名前よりも「環境プレミアム」を多用しています。

しかし、果たしてこの50億ユーロ(7000億円)とお金は、効果的な環境保護を推進するために使われたといえるのでしょうか? 私は各種の理由から、ある一定の効果はあったものの、別の選択肢もあったはずだと考えていますが、ここではこの話はこれ以上進めないことにします。

ここでの一番の注目点は、エコノミカルな視点であって、エコロジカルなことはあくまでオマケであったからです。

さて、この補助金が呼び水となって、ドイツ産業界は再び上昇する、あるいは極端な景気低下を避けられたという結論が出るのでしょうか? それは今のところ誰にも分かっていません。「この補助金は、まさに国民経済学を学ぶ学生の理想的な演習対象である」とフライブルクの地元紙バーデン新聞は報じていますが、明確な効果が推し量られるのはこれからといえそうです。

しかし、不穏な意見も経済界には多いようです。それは、補助金によって潜在的なここ数年の需要を先食いしてしまったため(今年の新車販売台数は昨年比の2割強の増加)、今秋からの補助金が切れてからの時期は、ドイツ自動車産業は、これまで以上の大打撃を受けるだろうとの予測があります。専門家によると、2010年度は100万台以上の需要の減少が見込まれているそうです。

さらに、中古車市場や自動車修理関連の業界も大打撃を受けたため、自動車工場では補助金の恩恵でなんとか雇用の大喪失が避けられらたものの、地域の中小では大きな規模で雇用が消滅したという報道もあります。

いずれにしろ、この事象は簡単に次の一言で取りまとめられます。

→すでに長年、自動車産業は「過剰生産」の構造から抜け出せておらず、崩壊の危機はプログラムされていた。そして、それは誰でも知っていたし、分かっていた。いわゆる「うすうす」感じでいた。

→ただしアメリカのバブルで業界や国、世界がそのことから目をそらし続けた。

→この金融危機という大きな教訓でも、各種のバラマキ的な国の支援によって、「過剰生産」という状況は本質的には変化しなかった。場当たり的な生産・在庫調整が行なわれ、経済の枠組みはそのまま残された。

→次の業界危機は、プログラムされている。これも、皆「うすうす」感じているはずだ。

はい、こんな正直でない世の中の事柄は、他の分野でも、環境保護の分野でも、そしてとりわけエネルギーの分野でも、山ほどあります。

「うすうす」感じているが、そこから目をそらすことって、すごく多いですよね。そんな本質をズバッと言い切れるジャーナリストとして、私の尊敬するフランツ・アルト博士がおります。そんなレベルではとてもないわけですが、その辺を目指して活動してゆきたいと思う今日この頃でした。

※この「うすうす」という表現は、村上龍氏のコラムからの引用です。本質を一言で突いた表現として、私の最近のお気に入りとなっています。


murakamiatsushi at 16:41コメント(0)政治エコロジー 
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2009年08月16日

  まちづくりと環境保護、そして温暖化対策

最近、日本からの問い合わせの中で、「実行力を持ったドイツの、あるいはフライブルクの温暖化対策が知りたい」という質問が多くなりました。

これまでの日本では、国や自治体の温暖化対策というと啓発、教育、広報、自主努力などなど、実行力や強制力がなく、成果が上がらず、かつ責任の所在も問われない、さらに工程表もなきに等しいものばかりでしたから、このような趣旨の問い合わせが増えたことを、喜んでいます(少し気付くのが遅すぎた感もあるのですが・・・)。

ご存知のように日本では温暖化対策は、進んでいません。京都議定書の達成は絶望的ですし、経済成長(というかGDP成長)と歩みを合わせた、時にはそれを超えた温室効果ガスの排出量を記録しています。

もちろん、ドイツに有利な基準年度の話など、各国にはそれぞれの事情がありますから、数字だけを比較してもあまり意味がないのですが、減少傾向にすら突入していない現状には危機を覚えます。もちろん、2008年、2009年度は、金融危機からはじまる製造業の不振と景気後退で、一定の範囲で温室効果ガスの排出量は減るのでしょうが・・・それにしても、日本の統計発表の遅いのにも嫌気が差しますね。


さて、今回は、そんな「実行力」のお話です。とりわけ日本においては、民生部門からの排出量に歯止めがかかっていませんが、これは都市計画やまちづくりなど、都市基盤の整備の方向性を高度成長期から依然として変えてこなかったのが大きな理由だと私は考えています。こうした考察が日本では少ないのが気になりますが、極論すれば、エコノミカルでエコロジカルな理由から、15〜20年前から郊外戸建て住宅地開発を禁止にするべきだったのです。

そこで、論文を書きました。結構、面白い内容になっていると思いますので、是非ご一読ください。
http://www.jiam.jp/journal/index.html

http://www.jiam.jp/journal/pdf/v64/tokushu_04.pdf


フライブルク市など先進都市で行なわれているこうした都市基盤整備の方向性が、日本の都市でも行なわれるようになると、まずは増加傾向の歯止めがかかると思われます。削減は、その増加傾向に歯止めがかけられてはじめて、追加で行なえる措置だと思います(コージェネや自然エネの推進などで)。

2009年夏の衆議院選挙の各党のマニフェストを見ると、最大でも一定量の効果しか上がらない「追加措置」、(−もちろんこれは増加傾向に打ちけされることになります―)に対して、各党はすべてであるかのように期待しています。まあ、これについては、別の機会に記してみましょう。


murakamiatsushi at 15:24コメント(0)フライブルクまちづくり 
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2009年08月13日

  どこまで伸びる! ソーラービジネス

世界中で太陽光発電の設置量や生産量が増加しており、市場がどんどんと大きくなってきたソーラービジネスですが、今日、我が家のポストに投函されたDMには驚きました。私が愛読している太陽光発電の専門誌『Photon』からのDMです。
http://www.photon.de/

なんと、Photon誌を定期購読していて、自宅の屋根の上に太陽光発電を設置している人は、Photon誌が、その発電量を常時、見張ってくれるというのです。

仕組みを簡単に説明しましょう。Photon誌は、今や大きなコンツェルン体制になってきており、コンサルティング事業やマーケティング事業、研究事業などをはじめていますが、発電量をコントロールするサービスを開始しました。
https://photon-control.net/index.htm

具体的には、太陽光で発電された電気はドイツの場合、全量系統に売電されますが、その売電用メーターのところに、Photon社提供のデータ通信機を取り付けます(定期購読者には無料で提供!!!単体購入は240ユーロ也:19%消費税込み)。

そこで拾われたデータは、Photon社によって設置されたサーバーに蓄積され、人工衛星からの各地区ごとの日射量データと照合されます。

設置者は、自宅のパソコンなどでそのデータを閲覧できたり、定期的にメールで成果報告を行なってくれますが、重要なのはそんなチェックを個人で行わなくとも、日射量との関係で、発電量が著しく減少している場合、あるいは発電が停止した場合は、ただちにサーバーから設置者に連絡が入るという優れものです。そしてそのメールは、設置工事を担当した電気屋さんにも同時に送られ、修理や点検が迅速に行われるという仕掛けです。

そして、このサービスを雑誌を定期購読している限りは、無料で提供するという太っ腹です。もちろん、太陽光発電の月刊専門誌「Photon」は、一冊4.2ユーロ(年間契約の場合12冊で44ユーロ)でこれまで売られてきた通りの価格です。

なんとも大胆なサービスをおっぱじめたものです。

こうした常時監視のシステムは、ドイツでも、おそらく日本でも、商業用や大型の太陽光発電ではすでにあるのですが、小さな家庭用の部門でははじめてであると思います(ドイツのソーラーワールド社など、メーカーが提供しているものでは、すでにありますが、まだまだ大々的とはいえませんし、サービスだけに限定した事業は他には思いつきません)。

日本でも今年に入ってシャープも、同じようなサービスを提供していますが、月産700台予想と大々的とはいえない規模ですし、なんといってもハードがお高い(10万円オーバー也)。監視サービスの価格は下記の記事などでは、いくらかかるのか分かりませんが、携帯やテレビなど、いろいろな装置で表示できるという私に言わせれば、「玩具を作りすぎた」感があります。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090210/biz0902102245015-n1.htm

日本の場合、往々にして、なぜソーラーの発電量を表示するだけなのに、悪趣味でキッチュなアニメーションがいるのか? グラフと数字だけでよいではないか! といったところが私の常日頃からの私見ですが、これはこのブログ記事の趣旨ではありません。

このPhoton Control。サイトを見ると世界規模ではじまる事業なようです。今後も楽しみな業界ですね・・・数年前、まだ世界でこんなに爆発的にソーラー市場が伸びる前にこのPhoton誌から日本向け取材要因として雇用の申し入れがあったのですが、受けとけばよかったかな・・・



murakamiatsushi at 12:53コメント(5)エコロジー環境保護 
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2009年08月11日

  インターソーラー、ソーラーメッセ

フライブルク市が資本を出している市立企業の「フライブルク経済・ツーリズム・メッセ社(FWTM社)」が好調です。

http://www.fwtm.freiburg.de/servlet/PB/menu/1144782/index.html

金融危機もなんのその、2008年は史上最高の収益と売上高を記録したと報告がありました。

FWTM社は、フライブルク市内の観光産業や経済界を束ねたり、国際会議やメッセなど、大きな催しを企画したり、実行している従業員数で100名ほどの企業です。売上高1880万ユーロ(≒26億円)は、20万人という中規模都市のこうした観光・メッセ部隊にしては上出来です。

Intersolar

これまでは1000万ユーロ程度の売り上げで事業を行っていたのですが、ここ数年規模が急増しています。それはなぜでしょうか?

理由は、ソーラーメッセの輸出です。フライブルク市では古くからドイツ、および欧州で最大規模の「インターソーラー」というソーラーメッセを行っていました。しかし、世界中でのソーラーブームによってフライブルク市のメッセ会場が手狭になったこともあり、メッセはミュンヘン市のメッセ会場で一昨年から行われています:Intersolar
http://www.intersolar.de/index.php?id=intersolar&no_cache=1&L=0

でも、転んでもそのままでは起きなかったのが、FWTM社のすごいところです。このミュンヘンでのIntersolarの共同主催者として、フライブルクで培ったノウハウの提供を行う事業を開始したのです。通常、こうした自治体企業が市外で大きく活動をすることは稀なことですが、ミュンヘンのみならず、フライブルク市のネットワークとノウハウで、アメリカ、サンフランシスコでもIntersolarを開始しています。
http://www.intersolar.de/index.php?id=10&L=0

このソーラーメッセのノウハウの提供という事業、今後はアメリカの他都市や中国、インドにも進出の兆しがあると代表は語っています。

1986年、チェルノブイリ事故を経て、同年中に市内の原発電力依存からの脱却を目指すエネルギー政策を打ち出したフライブルク市。それ以来、一貫して、省エネ、コージェネ、自然エネルギーの推進の3本柱で、他都市よりも先駆けた政策を行い、数多くのパイロットプロジェクトを市は実施してきました。

その果実を、経済危機の年、20年以上も後の2008年になって収穫し始めているのです。新しい事業分野では、「ノウハウ」というものが売り物になります。その好例として今回は、FWTM社を紹介しました。



murakamiatsushi at 14:37コメント(0)フライブルクエコロジー 
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村上 敦
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