ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦

環境先進都市ドイツ・フライブルク市在住のジャーナリスト村上敦(むらかみ あつし)が環境政策、エネルギー政策、都市計画、交通政策、など様々なジャンルの環境にまつわる話をお届けします。

サルでもわかる仮想発電所(VPP)

副題:
変動性再エネ(VPP)には大規模な系統強化と火力のバックアップ、そしてバッテリーが必要と主張する方には、どんな新しい情報が足りないのか?

はい、予定通りとはいえ、今回の気候変動枠組条約締約国会議(COP23)は大きな盛り上がりも見せず終わりました。

で、その後、なんだか知りませんが、いきなり以下のようなニュースが連続してUPされました。
http://www.sankei.com/
http://jp.wsj.com/

どうもこうした文章を読んでみるに、こうした記事を書かれる方々は現在欧州で行われている大々的な電力需給構造の大転換について新しい情報、知識を得られてないように見受けられます。個別のこうした記事への反論についてはSNSなどですでに掲載されていますので、それは譲るとして、今回は「サルでもわかるVPP」と称して、少し新しい状況について取りまとめてみたいと思います。
※参考:http://www.bmwi-energiewende.de/EWD/Redaktion/Newsletter/2017/16/Meldung/direkt-erklaert.html


もし通常の消費者が新鮮な野菜を買い求めたいと思ったら、スーパーマーケットに行きます。ここでの野菜のほとんどは卸市場を通ったものが陳列されますが、JAが大量に農家から買い上げて卸している状況でもあり、基本的に農家はスーパーマーケットの売り方如何にかかわらず、(特殊な事情があって市場価格が大きく変動していない限り)生産した野菜をそのまま販売することになります。この(すべてJAに依存するような)農家は消費者に対しての直接的なマーケティングや小売りのための営業とは切り離されています。

はい、こんな状況がドイツでは長らく再生可能エネルギー電力の分野でも続けられてきました。
※厳密には異なるんですが、大雑把に言えばという意味で

1991年から「電力供給法」、および2000年からの「再エネ推進法」によって、(固定価格)買取制度(FIT)が導入されて以来、2012年に再エネ電力の「直売制度」が導入されるまでは、再エネ発電事業者は、自身で生産した電力を送電網を管理している電力系統事業者(TSO)に法律で定められた金額で、ほぼ全量、自動的に買い上げされてきたわけです。

TSOはその買い上げた電力をそのままスポット市場に卸し、買い上げた金額と販売できた金額の差を賦課金(サーチャージ)として電力消費者に電力消費量あたり均等に徴収するという仕組みであったわけです。

電力の流れ(その1)
再エネ発電事業者→(DNO)TSO→電力取引市場(スポット市場、EPEX)→BRP連携⇔電力小売り事業者→消費者


このFITでは、当時割高な再エネ電力を大量に普及させることによって安価にすることを目的としていましたから、太陽光発電の場合2004〜2014年の10年間、陸上風力発電の場合1998〜2008年の10年間の間で爆発的に価格は低下することになり、同時に技術的な信頼性も上昇し、その他の発電源と遜色ないレベルまで引き上げることができました。ということで、FIT助成の必要性が薄くなったドイツでは、段階的に2012年からFITを卒業してゆきます。つまり、JAによる買い上げと卸市場、そして小売りへといったような流通経路自体も変化することになったわけです。

もちろん野菜の場合、その他の流通経路が存在していることはご存知ですよね。農家自身が市場(マルシェ)や野菜ボックスなど宅配で直売する経路、あるいはレストランやスーパーなどに流通や卸を通さないで直接に販売する方法です。
※また生産者である農家も皆、スーパーマンではありませんから、この場合、いわゆる「産直事業者」が介入するケースも多いですね。

そう、ドイツの再エネは、2012年から段階的に(当初は自発的にインセンティブを与えて)、そして2016年からは一部の例外を除いてすべて義務(!)として直売されるようになっています(FITの卒業とFIPの開始)。
※この際、直接販売に突入する再エネ事業者には電力の安定供給を担うTSOの指示する形での遠隔制御機能を搭載している必要がある

その手法は次の2通りです。

1.再エネを発電する事業者は、その電力を(特別なものとして)販売している電力小売り事業者にそのままダイレクトに販売する。この相対取引においては、再エネ電力を購入した小売事業者は、バランシンググループを自社で設立しているか、あるいは他者との連携で(あるいは誰か胴元の下での)バランシンググループに加盟していることが条件づけられています。つまり、小売事業者はいわゆる「需給責任会社(BRP)」であるか、そこにサービスを委託している必要があります。なぜなら、電力は消費する量と発電する量が一致している必要があり、ほとんどすべての電力小売り事業者は、自身の直接仕入れのみで販売分の同時同量を達成することは困難で、少なくとも電力取引市場で仕入れの余剰分を販売したり、不足分を市場から購入する必要があり、その場合にはBRPを通して、15分同時同量という規定を守らなければならないからです。

電力の流れ(その2)
再エネ発電事業者→小売事業者⇔BRP連携→消費者
※FIPの枠組みからの離脱(少数派)


2.もう一つのルートは、相対での購入者が見つからない場合、あるいはそれよりも高額に販売できることを期待する場合、再エネを発電する事業者は、その電力を電力取引市場に販売することができます(FIPを期待するならスポット市場への全量販売が義務)。ただし、電力取引市場において電力を売り買いするためには、電力取引市場が指定する教育・トレーニングを受けており、パワートレーダーとしての資格を有している自らがBRPであることが求められるため、風車を1基所有している農家のおっさんが自身でその立場になることはほぼ100%不可能です。したがって、通常の場合、この資格を有するBRPに直接販売してもらうか、あるいはあるBRPに加盟しているアグリゲーター(直接販売事業者)に電力取引市場への直接販売を委託することになります。

電力の流れ(その3)
再エネ発電事業者→アグリゲーター⇔BRP連携(あるいは直接BRPに)→電力取引市場→BRP連携⇔電力小売り事業者→消費者
※FIPの枠組みを活用(大勢)


はい、電力の流れが(その1)から(その3)に変わったことによる破壊力が強烈なのにはお気づきしょうか?

でもサルでは気が付かないと思いますので、ここでも詳しく解説しますね。

ドイツでは再エネ電力の中でも、太陽光発電、および風力発電が大々的に推進されてきましたし、今後もこの二つが電力市場を牽引してゆく予定です。これらの再エネは変動性再エネ(VRE)と呼ばれ、特徴は、燃料が無料で、発電原価が安価、温室効果とはほぼ無縁ですが、お天気任せで発電出力が天候によって左右されることです。ですから、もし無能なアグリゲーターに再エネ販売の委託を依頼すると、その他大勢の無能が同じようにするように、芸もなく、そのまま仕入れたものをBRPを通じて市場に全量を販売することになります。

例えばドイツが快晴で太陽光が強い際には、スポット市場には太陽光発電由来の電力が大量に出回り、豊作貧乏、つまり取引価格が下落した状況での販売することとなります。風力についても同じです。

しかし、アグリゲーターの中には次のように考える賢い人(サルではない!)が出現してきました。

もし、ドイツ全国各地の再エネ発電事業者の中から、地域に偏りがないようにバランスよく太陽光発電を買い上げ(全土で天候が同一になることは稀なので)、同時に、「補完効果」のある風力発電の買い上げ量も太陽光とのバランスを重視して、追加でバイオマス発電や水力発電などの調整が利く電源と、産業用の大型冷蔵・冷凍設備などの調整が利く電力消費者をうまくポートフォリオとしてまとめ上げ、それらをあたかも一つの大きな(需要に対応できるような)発電所として販売するなら、何か一つに偏って販売するアグリゲーターよりも、常に高い価格で電力取引市場で売りぬくことはできないか?
※太陽光と風力の補完効果とは、日中は日射があるが風が弱く、夜間は日射がないが風が強く、夏は日射大で風が小、冬は日射小で風が大、荒天時は日射が小で風が大、晴天時は日射が大で風が小などの通常の天候時には多くのケースでお互いに補完し合う関係にあること

はい、でこれらを実現するために、考え抜かれたポートフォリオとリアルタイムでの再エネ電力の情報収集端末・制御機能を整備し(VPPボックスの取り付け)、そして高度な天候予測情報を盛り込んだアルゴリズムを編み出したアグリゲーターのことをドイツでは仮想発電所(VPP)事業者と呼ぶことになります。

現在のドイツでこのVPP事業者は100を数えると言われています。

VREの発電事業者にしてみれば、市場でより高く売り抜いてくれるアグリゲーター(VPP)に直接販売の委託をより一層行うようになります。そうした人気のあるアグリゲーターはさらにポートフォリオの中身が充実し、より利益を稼ぐことができるようになり…
※FIP制度では、再エネ発電事業者が受けられる助成は、以前のFITでの固定買取に該当する価格(現在は入札で規定)から電力取引市場での平均取引価格を差し引いた残りの部分だけをプレミアムとして得ることができます。プレミアムは一定なので、市場で高く売りぬいた分だけより利益を最大化できる

VREが今後も継続的に増加すればするほど、彼らVPP事業者は、あの手、この手で、自身の仮想の発電所を柔軟的に運用する手法を市場原理によって編み出してゆくことでしょう。

そして、もし何らかの時点で、ネガワットを提供してくれたり、出力を上下制御してくれるバイオガス発電などよりも安価になるときが来れば、設備利用率を重視して、ある効果的な規模のバッテリーもVPPのポートフォリオに入れても良いだろう、という感じでの普及は吉です。

ということで、太陽光発電を設置したら、発電しないタイミングがあるので、その分をカバーする火力発電、あるいは太陽光を吸収できるような蓄電池の整備が必要だ、と古い古い考え方だけを一方的に述べる方々は、こんな新しい情報におそらく触れたことがない方です。もし触れているなら、柔軟性という用語や市場、BRP、VPPなどの用語、あるいは蓄電池についても上記のような文脈で登場しない方がおかしいわけですから(あるいは意図的?)

さあ皆さんもサルにならないように注意しましょうね。

ということで、この辺の新しい再エネビジネスについて、ポストFITというテーマで欧州在住の実力者(私だけが否実力者…)による共著を書きました。『100%再生可能!』シリーズの第三弾です。
https://www.amazon.co.jp

現在精力的に校正中で、来年2月には出版できる予定です。お楽しみに!

日本の衆議院選挙を振り返って(二大政党制という妄想と爆発的な死票が生じる選挙制度)

2017年10月には、日本において久しぶりに衆議院選挙に遭遇することになりました。

通常はドイツからネットでささっと結果を見るだけなんですが、今回は投票日(10/22)には台風の影響で翌日飛行機が飛ぶのかどうかジリジリしながら札幌のホテルでテレビ結果速報と討論番組を、その後も比較的時間に余裕があった際は、選挙関連の討論番組など、テレビというメディアで20年以上ぶりに選挙を眺めることになりました。

そこで、非常に違和感が大きかったのは、以下の2点です。

1.立候補者や当選者などから二大政党制を目指すなどのコメントが多かったこと

2.選挙制度そのものに対する批判的な意見が見られなかったこと



まず、1.については、往々にして立候補者側から「(欧米のような)政権交代可能な二大政党制を目指すために…」というニュアンスで語られることが多かったように思います。

で、欧米と言うからにはアメリカと(多くの)欧州の国々で二大政党制が根付いていないといけないと思うのですが・・・アメリカはさておき、欧州でいまだに二大政党制が機能している国ってあったっけ?、そんなのあるはずないでしょ、というところが突っ込みです。

EU加盟国で人口1000万人以上の11か国の各政党(一部会派・連合)の獲得議席配分を眺めてみると、以下のようになります。

・ドイツ連邦議会 (下院、人口8100万人)
キリスト同盟=35%、社会民主=22%、選択肢=13%、自由民主=11%、左派=10%、緑=9%

・フランス国民議会 (下院、人口6600万人、小選挙区&決選投票)
共和国前進=53%、共和=19%、民主運動=7%、社会=5%、その他=16%

・イタリア代議員 (下院、人口6100万人、第一得票連合には過半数の議席のボーナス、残りは比例で振り分け)
民主=46%、5つ星運動=17%、自由の人民=15%、左派・エコ=6%、市民の選択=6%、その他=10%

・スペイン下院 (下院、人口4600万人)
国民=39%、社会労働=24%、ポデモス=20%、シウダダノス=9%、その他=8%

・ポーランド共和国下院(下院、人口3800万人)
法と正義=51%、市民プラットフォーム=30%、クキズ=9%、現代ポーランド=6%、その他=4%

・ルーマニア代議員 (下院、人口2000万人)
社会民主=47%、国民自由=21%、ルーマニア救出=9%、ハンガリー人民主=6%、自由民主=6%、人民運動=5%、その他=6%

・オランダ第二院 (下院、人口1700万人)
自由民主=22%、自由=13%、民主=13%、キリスト民主=13%、フルンリンクス=9%、社会=9%、労働=6%、その他=15%

・ベルギー代議員 (下院、人口1100万人)
新フラームス=22%、社会=15%、改革運動=13%、キリスト民主=12%、フラームス自由=9%、社会党別=9%、民主人道=6%、その他=14%

・ギリシア議会 (一院制、人口1100万人)
急進左派=48%、新民主=25%、黄金の夜明け=6%、民主連=6%、共産=5%、その他=10%

・チェコ代議員 (下院、人口1000万人)
社会民主=25%、ANO=24%、共産=17%、TOP=13%、市民民主=8%、直接民主=7%、キリスト民主=7%

・ポルトガル共和国議会(一院制、人口1000万人)
社会民主=39%、社会=37%、左翼=8%、民主社会=8%、共産=7%、その他=1%


ということで、そもそも(伝統的には過去に存在したような左派中道VS右派中道のような形で)二大政党制のようになっている国は皆無で、欧米とひとくくりにした時にそれを西側先進国、あるいは西洋社会という定義で見るなら、アメリカの下院の共和55%VS民主44%のような構図は、完全に例外といえます。

基本的には単独過半数などは稀ですし、国民の興味も多様化している社会を反映して小規模な政党も沢山選出されますから、選挙後には、連立政権を組んで過半数を得るために四苦八苦して政権を樹立するところがほとんどと言えますし、北欧やベネルクス諸国では過半数割れの少数与党での政権運営をしているところもあります。

また、フランスの前進、およびポーランドの法と正義、ルーマニアの社会民主、ギリシアの急進左派という4か国では、ほぼ過半数に達する第一政党が存在しますが、これらはどちらかというと伝統的というよりも、最近の時事問題的な事柄に起因するイレギュラーな事例と言えそうです。

例外としてイタリアの民主の場合は、イタリア特有の選挙制度によって、選挙戦を戦う連立・連合政党のうち、比例で最大得票率を得たところが一気に過半数の議席配分を得るという特殊性によって大きな議席配分を得ています。


したがって欧州での選挙結果などとの比較であれば、以下の日本のような議席配分を眺めた時、例えば何らかの時事的な社会を揺るがす大きな事柄が生じた際(例:国難w)のイレギュラー的な選挙であれば、アリという形なのではないかと思えます。
・日本 (下院)
自由民主=61%、立憲民主=12%、希望=11%、公明=6%、その他=10%

ただし、日本における問題は、国民の投票行動では、比例でこのような議席配分になるような投票をしたわけではないにもかかわらず、このような議席配分がなされてしまっているところでしょう。

・日本 (比例得票率)
自由民主=33%、立憲民主=20%、希望=17%、公明=13%、共産=8%、維新=6%、その他=3%

もし、上記のような比例に準じた議席配分であれば、自民・公明の議席では過半数に足りないため、維新を加えた連立にならざるを得なかったはずですし、2/3の議論云々というのは生まれようもない問題でした。

ということで、他国との比較ということを念頭に置くなら、比例で議席が決まらない選挙制度自体について、大いに議論が湧いても良いような気がします。しかし、2.のところで私が違和感を得たように、選挙前後に、選挙制度そのものについての議論を大いに取り上げたテレビ報道、討論番組というのは見かけませんでしたし、そのような議論が出なかったことについてかなり残念に思います。


ちなみに上記に掲げた欧州11か国の中で、比例、もしくは類似の比例方式により大部分の議席が配分されない国は(一部は選挙区制の影響も入るところもある)、フランスのみです。ただし、フランスは小選挙区制を採用していますが、一回目の投票で過半数を得られなかった場合(日本の自民のような得票数と獲得議席数に大幅な乖離が生じないように)、得票数上位二者で決選投票を行う方式になっています。

もちろんアメリカは小選挙区制ですし、EUを去ることになるイギリスも二大政党制(保守党49%VS労働党40%)&小選挙区制(ただし、死票が多いため国内における批判も多く、比例へとの議論もあり)を採用しています。

ということで、このポイントについては私は専門でもなんでもありませんが、記事として多少調べて残しておきたかったため記させていただきました。

※なお、今回の上記で取り扱った議席配分の割合(%)については、Wikipediaの日本語版(確認のためドイツ語版でもチェック)の各国の政治のところを出典として、四捨五入で表しています。そのため合計では100%にならないところ、その他の割合が多少異なっている可能性もあることをお断りしておきます。

太陽光発電入札で記念すべきポイントを通過

ドイツの太陽光発電のAWFIP制度のプレミアム算定のための指標価格)の20176月の入札結果が出てきました。

2017年からは屋根乗せも含めた750kWを超えるすべての太陽光発電(ただし10MW以上は適用外)の入札になってから2回目の入札です。

200MWの入札容量に対して、応札したのは646MWと入札が始まった初回を除く、過去最高の混雑ぶりです。


落札した32件のプロジェクトの平均落札価格は、なんと

5.66セント/kWh(約7円)!

とこれまでで最も低い金額となりました。
明らかに一般的な火力、原子力、そして風力発電よりも中型、大型の太陽光発電(巨大規模を除く)が安価になったという記念すべきポイントです。

ちなみに20175月に行われた第一回目の陸上風力の入札では平均落札価格が5.71セント/kWhと太陽光とデッドヒートを繰り広げています。変動性再エネ(VRE)の価格優位性にはもはや敵なしの状態です(もちろん、電力システムの柔軟性の向上が大前提ですが)。


PV
入札の落札後は発電開始最終期限が2年後まで、落札から発電開始が1.5年を超えると罰則があります。


ということで、村上インデックス(これまでのFIT/FIPでの買取価格と削減率をもし継続していたら、入札から1.5年後の発電開始までにいくらになったのか?)と比較して、入札制度の導入後、2年を経過して、はじめてそれを下回る価格が実現されました。

201707 PV入札

これによって一方では入札制度には一定の価格低下の促進効果があることが証明されましたが、

他方では、ここまで入札容量を絞っての実現ですから、なかなか厳しいものがあるなという印象です。

(政府目標の年間PV設置量2.5GWには過去3年間の設置量は1.5GW前後と全く到達していない…入札容量を倍増しないことには話が始まりません)


また、落札者はいつものように大手資本、大企業が多数派であり、再エネ推進のステークホルダーの多様性(とりわけ市民エネ組合の没落…)という観点では、相変わらず貧しい状態が続けられています。

https://www.bundesnetzagentur.de/DE/Sachgebiete/ElektrizitaetundGas/Unternehmen_Institutionen/ErneuerbareEnergien/Ausschreibungen/Solaranlagen/Gebotstermin_01_06_2017/gebotstermin_01_06_2017_node.html

「電力需給の見える化」によってどんな議論が始められるのか?

皆さん、一昨日に公開しました電力需給の見える化について、たくさんの方がご覧になられているようで、ありがとうございます。


電力需給の見える化サイト:

https://wellnesthome.jp/energy/


意図、背景説明のブログ:
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/52006449.html



すでに数千人の方が、全国それぞれの電力会社で、春夏秋冬で、どんな電力供給の姿になっているのか、確認されているようで、嬉しく思います。こうした方々が、数万人、数十万人になってゆき、多様な議論ができてくると、日本の将来の電源MIXに関する議論がより高い次元で進むのではないかと思っています。


さて、こうしたサイトをオープンして、見える化がはじまると、どんな考え方が生まれてくるのでしょうか?
ドイツをはじめとする欧州では一般的になっている新しい考え方について説明しましょう。


1.まずは変動性再エネ(太陽光と風力)の破壊力に驚くことになります。日本では2016年末までに、累積でドイツを追い越す43GWの太陽光発電を設置しましたが、とりわけ九州、四国に偏っているので、該当する電力会社の需給調整は、まだまだ変動性再エネの1年間を通じた発電「量」自体は大したことがないのに、なかなか大変な状況になってきています。

2.ただし、この太陽光と風力の優れているところは、(日本ではいまだに割高ですが)世界的にもっとも安価な電源になりつつあり、最大の利点は、分散型で、燃料を必要としないところです。

3.また、太陽光と風力は、多くのケースで、お互いに補完し合う関係にあることに気が付きます(晴天→風なし、荒天で風あり→太陽なし)。

4.そのため、ドイツなどの一般的な再エネ先進国では、電力システムにおける基幹電源を、この太陽光と風力に据えることにしています(両者の原則優先給電のルールなど)。

5.え、この両者はお天気任せなんで、基幹電源に向かないって?

でも、電力需要のほうも見てください。これだって、常に安定しているわけではなく、時間帯ごとに刻々と必要量が変化し、とりわけ同じ平日でも、温かい日と寒い日では、需要量が全く異なっていることにも気がつきますよね。

そう、皆さんが今、お部屋で電気をつけるのも消すのも、テレビをつけるのも、テレビを消すのも、お天気任せと同じぐらい、個々人の気分と行動任せなんです。

それにもかかわらず、例えば、皆さんが100人の友人と示し合わせて(電力会社には何も言わないで)、一斉にテレビを消しても電力システムはブラックアウトすることはないですよね?


電力システムは多くの一般の皆さんが思い込んでいるほど、度量の狭い敏感なシステムではありませんし(であれば、すでに1890年頃から欧州に広く出現していないでしょう)、そのために同期運転で周波数を整えるなどの予備力によって保険をかけ、そしてお天気予報の確度を高めて、電力需要を(過去の経験を生かして)常に予測しながら、水力・火力発電所の運転計画を立て、随時、出力を変動させたりしているわけです。


6.ということで、再エネ推進の第二段階になると、この不確定要素の高い事柄の2つである「電力需要」と「変動性再エネ」を組み合わせることを行います。

つまり、予測される電力需要から、予測される変動性再エネを差し引いたものを「残余需要」という概念にして、この残余需要を、残りの手段(×バックアップ、〇柔軟化対策=後述)で、どのように調整してゆくのか、考えることになります。
https://www.next-kraftwerke.de/wissen/strommarkt/residuallast


7.例えば、この見える化のサイトで、四国電力の201671日から1週間のデータを見てください。

系統連系をガンガン使って(関西電力に電気を送り)、需給バランスを調整している(電気が不足しがちな関電を助けている)努力がうかがえますよね。

四国電力 2016年7月 実績

この時点では、四国電力管内における太陽光発電の設置量が、1.5GW出力以下でした(年末までに1.9GW設置)。ただし、2017年現在、FITの申請で認定が出ている太陽光発電の量は、すでに2.9GW出力もあります。

もしも、この2.9GW出力が実際に作られてしまったら(累積で4.7GW)、夏場の多くの日中の時間帯で、太陽光発電だけで、四国電力の電力需要のほとんどを瞬間的には賄ってしまいます。

ですから、系統連系容量、揚水発電の容量をすべて使いきってしまっても、需給調整はかなり大変になることが予想されます。

それでは、太陽光発電はもう必要ないのでしょうか?


8.はい、一方では、電力システムが後述するような柔軟化されていない段階では、さすがにここまで太陽光発電だけを推進するのは効率が悪いでしょう。

電力システムのバランスを考慮して、より一層「風力発電」の推進をすることのほうが得策でしょうね。


しかし、他方では例えばすでに四国電力が新規では取りやめをしているように「安価な深夜電力」という料金制度を廃止する必要があります。

http://www.yonden.co.jp/kouri/menu/kojin/code_57.html

すでに日本中で普及している電気式給湯器(電気温水器とエコキュート)を深夜にお湯を沸かすのではなく、太陽光発電や風力発電で大量の電力が作られているタイミングを狙って動かすことは、非常に有効な「柔軟化対策」になります。


9.そして、こうした「残余需要」を調整するための「柔軟化対策」とは、エコキュートの運用方法を変えるだけではありません。

・大型のロジスティック倉庫などで利用される大型冷凍・冷蔵設備のDSMなど電力消費の大量な産業と連携しても良いでしょう(ドイツのインダストリー4.0にはこの視点が大きく含まれます)


・水力・火力・揚水などの既存発電源をより柔軟に扱えるようにしてもよいでしょう


・天気予報の精度を高め、電力システムに統合することも重要です


・電力市場の取引をもっと活性化してゆくと、需給調整の厳しくなる時に電力価格は高騰したり、急減したりといったスパイクを示すようになります。ですから、そこで利益を得られるのを目的に需要を作ったり、供給を抱えたりといったプレイヤーの進出を促すのも一手です(ドイツでは、こうしたアグリゲーター、パワートレーダーが仮想発電所VPPを運営するようになっています)


・電力系統の強化とより柔軟的な活用も非常に大切です

などなど。


もし、こうした考え方で電力システムを、変動性再エネと統合してゆくなら、「硬直的な運用しかできない、いわゆるベースロード電源」というのは、障害にしかなりません。

そうです、太陽光発電が尖って飛び出しているように見えるのは、柔軟性のない電源がまだシステムに存在していることの証明で、柔軟性を上げてゆくと、以下のドイツのようなシステムに徐々になってゆきます。
https://www.agora-energiewende.de/de/themen/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/


10.例えば、すでに一定の太陽光発電が過去5年間で普及してしまった四国電力においては、原発を再稼働することで、得られる電力システムにおける社会的な便益はかなり小さそうだ、とことに気がつきます(電力事業者としての短期的な金銭的な利益はあるのでしょうが、電力システムを取り囲む社会的な有用性はすでに小さいだろう)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170721/k10011067721000.html


同時に、FITを利用して年中同じ出力で発電を続ける稼働を前提とした大型木質バイオマス発電も単なる障害にしかならないでしょう。


三浦さまの7/14の投稿:

https://www.facebook.com/shuichi.miura.5


11.ということで、長くなりました。


この見える化のサイトは、201746月のデータが公表されたら、アップデートを行うのですが、その時に、表示されるグラフを「これまでの考え方→発電所の運用で設備利用率の高いものからの積み上げ式」と「新しい考え方→残余需要方式」を選択できたりするように配慮したいと思います。


お楽しみに。


追伸です。

12.太陽光発電にしても、風力発電にしても、1か所であまり巨大なものを設置したり、一つの場所に集中させてしまうと、電力システムは硬くなります。

せっかくの分散型(=発電量もすべてが一斉に偏るわけではない)の特性が台無しになるからです(柔軟化対策の規模だけではなく、その対応のスピードも必要以上の速度が必要になってしまいます)。


ですから、日本で散見されるように10MW出力を大きく超えるような大規模な太陽光発電は、柔軟な電力システムを目指すなら、推進するべきではないでしょうね。


とくに電力消費者の負担(賦課金)で運営されているFIT(再エネ電力の固定価格買取制度)では推進する意義がないと、欧州の知見は教えてくれます(例:ドイツのFITでは当初5MW出力を買取価格の上限に設定していました。途中、各種の発電源によって上限を取り除いたり、強化したりしていますが、太陽光発電では10MW出力のものは適用外に落ち着いています)。

電力需給実績の見える化について

皆さんは、「電力会社」「情報公開」と聞いて、どんな印象をお持ちでしょうか? 情報隠蔽? 資料請求に対する黒塗りの資料?

 

私の住むドイツの発電所を運営してる事業者は、電力取引市場の公正を担保するために、前日までには自身の発電所の発電計画を市場参加者に透明性高く報告しなければなりません。また、取引市場では、翌日の太陽光発電、風力発電の予測状況を公開することで、市場取引参加者に共通の透明性高い情報公開を担保し、インサイダー取引など公正取引を阻害する事柄を取り除く努力がなされています。

 

同時に、計画に対して、実質の発電状況もリアルタイムで公開されています。そんな各種の情報から、例えばソーラーエネルギーシステム研究では欧州最大規模のフラウンホーファー研究所ISE(ソーラーエネルギーシステム研究所)、あるいはドイツで最大規模のエネルギーシフトに関するシンクタンク、アゴラエネルギーヴェンデなどが、一般市民に向けて、広く、見やすい情報提供をすることで、電力事業にかかわる情報の公開の一翼を担っています。

 

エネジーチャート:

https://www.energy-charts.de/power.htm?source=all-sources&week=28&year=2017

アゴラメーター:

https://www.agora-energiewende.de/en/topics/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/

 

 

皆さんは、そんなドイツの情報を耳にすると、それに引き換え日本ではまったく電力の情報公開が行われていない、「けしからん!」と思ってはいないでしょうか?

 

はい、もちろん、ドイツのように日本ではリアルタイムの情報や各種の発電所一つ一つの情報については、まだ情報公開されていません。したがって、その批判は一方では当たっています。

 

しかし、他方では、すでに201641日から、すべての一般電気事業者(大手電力10社)においては、四半期ごとに(公表は数か月遅れですが…)、1時間ごとの各種の発電源の発電状況、揚水水力の使用状況、あるいは系統連携の使用状況などを情報公開する義務が課され、そのデータについてはネット上に公開されるようになっているんです。つまり、皆さんの手に届く範囲で、これまで歴史上入手不可能だった情報が、すでに十分に手に入るようになっているんですね。

 

ただし、残念ながら、この情報は単なる数字の羅列として公表されており、なかなか普通の人では理解できない状況が続けられていました。私個人としては、20173月に至るまで、そのうち再エネのステークホルダーや経産省、あるいは環境省などが見える化をするようになるに違いない、と考えていました。しかし、この春になっても、すでに201641日から2017331日までの1年分の情報が公開されるようになっても、「見える化」は行われることがありませんでした。

 

したがって、私たちは、建物の燃費性能の「見える化」では、すでに実績がある「一社日本エネルギーパス協会」と提携し、同時に、この事業のスポンサーとして、建物のエネルギー性能を見える化することでうまく他社と自身の建築の省エネ性能の差別化をしている「螢ΕД襯優好肇曄璽燹廚飽様蠅鬚垢觀舛如日本ではじめてと自負している電力の見える化を実現することが可能となりました。

https://wellnesthome.jp/energy/

 

本当にこの見える化ツール、優れものなので、皆さん、是非、このリンクをシェア、転送、コピーして世の中に広めてあげてください!

 

例えば、日本では20164月から20173月までの1年間においては、電力需要に対して、系統に流れ込んだ再エネ(自家消費分と揚水水力は含まない、水力、地熱、バイオマス、太陽光、風力の合計)は、13.8%になっています。多いと思いますか? それとも少ない?

 20160504 九州電力需給実績

数年前までは日本の発電では、水力9%とその他の再エネ2%程度の合計でおよそ11%だったのですが、20177月の今の時点では再エネの割合は16%程度まで成長しています(2017年の予測値、自家消費分なども含む)。過去5年間で5%も上昇しているわけですから、政府が2030年に目標としている2224%(あと68%の上昇)という目標は、低いような気がしませんか?

 

しかし、上記の見える化のツールを使って、201654日の九州電力の電力需給状況を確認してみてください。この日は、GWによって会社はお休み。電力の需要が低いタイミングで快晴だったので、午前11時には太陽光発電だけで61%以上の電力を発電するようになっていますし、その他の再エネを合計すると77%程度にまで発電するようになっています。九州電力では20164月から20173月までの1年間における太陽光発電の発電量割合は8.2%に過ぎませんが、瞬間的には61%を、もし20175月のデータが公表されてきたなら、それ以上の出力を発電するようなタイミングもできてしまうわけです。

 

九州電力はこうした状況に対して、太陽光発電の出力抑制をかけると公表しています。

http://www.kyuden.co.jp/press_h160721-1.html

 

そういった状況であれば、変動性再エネといわれる太陽光発電、風力発電はこれ以上必要ないのでしょうか? それとも、再エネを入れにくくしている一定出力で発電を続けるのみの柔軟性のない原子力発電や、最近申請や建設がラッシュの木質バイオマス発電が必要ないのでしょうか?

 

これらについては、回答をここで急いで出すつもりはありません。このテーマについては、国民的な議論が必要になるのです。

 

そんなきっかけになるべく、情報の見える化を整備しましたので、それぞれの電力事業者において、それぞれの時間帯、日時において、発電状況がどうなのか、電池といわれる揚水水力発電の使用状況はどうなのか、他社との系統連携がどうなのか、つぶさに観察してみてください。そして皆さんの周りの方と議論してみてください。

 

その先には、きっと、将来のエネルギーMIX、電源MIXについて、これまでよりも、より一段高いところからの「意見」が待っているはずです。

 

ドイツの新築における新しいエネルギー源とセクターカップリング

中期的にはもともと予想されていなかった人口増加(南欧州からの大量の移住)、そして都市集中化、および経済活動の偏在化(南強・学園都市強)、出生率の上昇などの理由によって、2012〜14年ごろから急速に需要が増大し、2015年には大きな社会問題にまで表面化したドイツの新築需要の増大ですが、

各自治体の精力的な都市計画上の努力と市場によって、2016年の新築申請は32.9万戸までに上昇しました。


新築戸数が10年前の1.5〜2倍近くに大きくなったことで、省エネ改修のスピードが低下し続けているのは(建築市場がこちらに労力を割けず)、別の大きな問題としてあるのですが…


ただし、住宅総数の4150万戸からみると、新築はまだまだ小さな割合でしかありませんし、今後もこの新築30万戸レベルが持続的に続けられるとはあまり考えられていません。

その最大の理由は、現在のドイツの人口増加の一番の理由となっている南欧州からの優秀な若者の移民という玉も、少子化が急速に進むギリシャやスペイン、ポルトガルなどではそもそも尽きようとしていますので、持ってあと10年というところ。


基本は、ストックの改修と価値を持ったままの中古住宅の流通が、今後も建築、不動産市場の中心です。

さて、今回は、これらの住宅におけるエネルギー源(主に給湯&暖房)について。

ドイツのストックにおいては、
・49.4%が天然ガス(その多くが潜熱回収型)
・26.3%がオイルボイラー(ドイツは灯油ではなく軽油)
・13.7%が地域熱供給
・6.1%がバイオマスなどその他(一部、ブリケットなど)
・2.7%が電気生炊き(別荘など年中使わないところ、他のエネルギー源確保が困難なところのみ残されている)
・1.8%がヒートポンプ(多くが地熱利用で電気式)

という形で熱源が使用されています(ここまで正確に統計が取られているのは素晴らしい!)。


ただし、2016年の新築においては、
・44.4%が天然ガス(すべて潜熱回収)
・23.8%が地域熱供給(凄いですね!)
・23.4%がヒートポンプ(地熱主体)
・5.3%がバイオマス(木質)
・0.9%が電気生炊き(別荘など)
・0.7%がオイルボイラー(軽油・潜熱改修)
・1.5%がその他

という形に変化しています。(ほぼ例外措置であるバイオマス、電気生炊きを除いて)、オイルボイラーは市場からほぼ消滅したことが分かります。

https://www.bdew.de/internet.nsf/id/DE_Heizkostenvergleich

基本的には、ドイツで2010年に策定されたエネルギーシフトのシナリオでは、熱セクターでは、熱消費の総量を迅速に減らし、再エネ由来の総量を上昇させることで、再エネ割合の持続的な上昇を目論んでいました。


ただし、すでに数年後には再エネ由来の要であるバイオマス資源量がこれ以上増大させられないことが露見し、(人口増加などの予定外もあって)熱消費量の総量についても、削減され続けてはいるものの、思うような削減スピードにはなっていません。

というところで2015年ごろから出てきたセクターカップリングのコンセプト(電力・熱・交通の3つのセクター)。

これは、

1)予想以上のスピードで上昇している電力セクターの再エネ由来電力を、高効率なヒートポンプで熱セクターで活用すること、そして、

2)地域熱供給をさらに強化し、ヒートセンターにおいて、パワートゥーヒート(余剰電力を熱として巨大な蓄熱タンクに溜める)や各種の大型再エネ熱源、あるいは天然ガスコジェネなどを電力と熱と一体で供給運用し、それをIoT、VPPなどでつなぐことで電力系統の運用を柔軟化して、上記の電力セクターにおける変動性再エネ割合増加による影響を受け止める

という形の取り組みが進められています。

※ただし、ドイツの全戸がヒートポンプになることはありえません。そうすると、そもそも厳寒期の電力需要がフランスや日本などの「オール電化」された社会のようにいびつなピークを表し、年間で平均的な需要を作り出せないことから、その分、設備利用率の低い多大な容量の電力系統やネットワーク、柔軟度を準備することになりますので。
 

ですから、まだまだ安価で、手軽な天然ガスボイラーを追い落とす勢いで、1)のヒートポンプと2)の地域熱供給が実際に急増しているのを確認できてよかったです。

ただし、民生家庭用はボリュームゾーンではないですから、これが大勢であるわけではないこともご理解ください(日本の方はこれを誤解されているケースが多いので)。あくまで民生業務、産業などの大規模設備・消費場所が主戦場です。

40歳前後でピークになるドイツの上級管理職の給与

ドイツの上級管理職層の平均年収について。

40歳前後からの男女差が大きく離れてゆくのにも驚きますが(男のほうが無能なのに…)、

男性の40歳で平均11万ユーロ(約1300万円)というのは良い線ですね。
http://www.faz.net/aktuell/beruf-chance/recht-und-gehalt/studium-vs-ausbildung-ab-wann-gleicht-sich-das-gehalt-an-14919170/infografik-14916665.html

とはいえ、再分配を強く取る社会のドイツでは、40%は所得税と社会福祉負担費で普通は持っていかれますので、手取りは800万円以下が通常でしょう。


日本式と大きく異なるのは、45歳を境にして給与の上昇が止まることではないでしょうか。


専門職の平均所得でも45歳がピークになるようです。
http://www.faz.net/aktuell/beruf-chance/recht-und-gehalt/studium-vs-ausbildung-ab-wann-gleicht-sich-das-gehalt-an-14919170/infografik-14916629.html


例外はなんでもあるでしょうが、平均して、客観的な能力(=報酬)から見ると、そのほうがまともな社会だと個人的に思います。
 

老害が若者を食いものにしている社会に未来はありませんから。

ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか

ブログでお伝えすることが遅れましたが、エネルギーと同じようなコンセプトで(kWh=¥)、都市計画、交通を違う方向に整備するために舵を切り、地域経済を活性化させることはできないか模索した本(km=¥)を記しました。
WP_20170314_07_59_51_11 Pro

https://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AF%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E8%BF%91%E8%B7%9D%E9%9B%A2%E7%A7%BB%E5%8B%95%E3%81%8C%E5%9C%B0%E6%96%B9%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%82%92%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B-%E6%9D%91%E4%B8%8A-%E6%95%A6/dp/4761526394/ref=pd_sim_14_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=BKTV0S7842TAVW4SQJ4Q
 

ドイツの都市計画の基礎の基礎「ショートウェイシティ」について説明し、そして交通対策でまちを活性化する方策について論じています。

まちを活かすには、日本でのコンパクトシティ、立地適正化計画のような面=線引きでの取り組みではなく(もちろん大型商業施設の再開発でもなく)、ドイツのように面を意識した上で個々の建物ごとのミクロでの取り組みを積み上げて行く必要があります。


この本で試みたことは、都市計画の方針と交通政策について、これまでのまちづくり本にはない切り口で、とりわけ小規模都市、人口少数の農村も念頭においたことです。また、ウーバーX的なるもの、完全自動運転車など新しいテーマについての論考も含めています。


最終的なタイトルは出版社が会議で決めたわけですが、私個人的に内容的に即したタイトルをつけるなら、

『ドイツにはコンパクトシティという言葉すらないのに、なぜまちがコンパクトにまとまり、活気があるのか? 〜交通から考えるドイツのショートウェイシティ、移動距離の短いまち 〜交通手段を変更して、地域において経済的な付加価値の創造を行う、すなわちkm=¥のコンセプトとは!』

というものです。

もしよろしければ、お読みいただけると幸いです!
 

ドイツ『建物エネルギー法』の2017年中の成立断念

さて、すごく残念なんですが、メルケル率いるCDU/CSU党は、基本的に、これ以上の気候保護に邁進するつもりがないことを、決定的に、明確にしました。
http://www.tagesspiegel.de/wirtschaft/energiepolitik-koalition-laesst-gebaeudeenergiegesetz-scheitern/19594854.html


ゴリゴリ保守の立場からエネルギー政策を語るDena(ドイツエネルギー機関)まで残念がっている…
https://www.dena.de/newsroom/meldungen/2017/gescheitertes-gebaeudeenergiegesetz/


本来は、2017年の秋の総選挙前に、つまり夏休みが始まる前までに、これまでのドイツにおける建物の省エネ性能&再エネ性能を決める『省エネ法』『省エネ政令』『再エネ熱法』の3つの法律を取りまとめ、新しい法律として『建物エネルギー法』を決議し、施行する必要がありました。


これはEU指令(EPBD)による国内法を整備するもので、策定が急がれる背景には、2019年1月1日から公共建物については『ゼロエネルギー建物(超低エネルギー建物)』の新築が義務化されるからです(法律施行後に、はじめて2019年以降の公共建物の新築の構想をはじめられるわけなので、時間的な猶予が必要です)。ちなみに公共以外のすべての建物は2021年1月1日からゼロエネルギー建物が義務化されます。
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02460002.pdf


国内法の整備では、そもそもの『ゼロエネルギー建物(超低エネルギー建物)』とは何ぞやという定義をする必要があります。

EU令では「建物に必要なゼロに近い、またはきわめて僅かな量のエネルギーは、その大部分を、オンサイト、または近隣で生産される再生可能エネルギーにより賄われるものとする」と記してあるだけなので、

★何をもって「きわめて僅かなエネルギー消費量」として、
★何をもって「それを可能とする建物の性能」とするのか、
各国ごとの気象条件や建物の仕様に置き換えて、それを定義する必要があるわけです。


そこで、このドイツにおいては、この新法『建物エネルギー法』を策定し、これまでによる政治的な議論と専門家・ステークホルダーの意見を含めた環境・建設・原子力安全省による草案では、現行の省エネ政令で示す最低限のミニマムスタンダードから45%省エネを厳格化した建物(KfW55)を『ゼロエネルギー建物』と定義づけることに取りまとめられており、

この内容については、各種のエネルギー関連、建築、不動産関連のステークホルダーも、驚くべきことに産業団体であるBDIですら一定の理解を示しており、素早くこれを法制化することで、投資行動や経済的な枠組みが確定されることが市場から望まれていました。
※フランクフルト、フライブルク、ハイデルベルクなどの省エネ建築の盛んな自治体ではすでに数年前からこの水準を自治体内の建築基準としていますから、それほど驚くべき技術水準ではありません。
 

しかし、連立パートナーの社会民主党、および環境・建設大臣のヘンドリクスによる交渉もむなしく、CDU/CSU党は「この基準では厳しすぎて経済性が担保できない」として、連立政権委員会でこれ以上の審議を続けることを拒否、この法案は一旦廃案となって、夏休み前に国会に提出される可能性は潰されました。


これによって秋の総選挙の後にこのテーマは再び議論されることになりますが(すぐにはこの法案に取り掛かることは困難であり、おそらく来年の夏休み前に再度、法案の提出が間に合うかどうか分からないタイミングとなりそう)、そもそも2019年1月1日からのEU令をドイツが順守することもほぼ絶望的になりました。


なにやってんだか…


先ほどのブログ記事では、2020年のドイツの温室効果ガスの排出量の削減目標の達成は絶望的と書きましたが、こうしたCDU/CSU党のサポタージュのため、その後の気候保護やエネルギーシフトの目標自体にも悲観的にならざるを得ません。


日本ではメルケルや政権党であるCDU/CSU党自体がエネルギーシフトを牽引しているという誤った(?)評価をする方もいるようなので、私個人の意見では「彼らが妨害しまくっているにも関わらず、市民と市場がそれをけん引している」ことを改めて強調したいと思います。
 

この辺の背景は、以下の私と同僚で行った訳書がお勧めです。メルケル自身、エネルギーシフトに関心はほどんとないのがよくわかります。
http://amzn.to/2nEm4Dw

2016年のドイツの温室効果ガス排出量

ドイツの2016年の温室効果ガスの排出量が、ひっそりと連邦環境庁のHPにアップされました。
https://www.umweltbundesamt.de/themen/klima-energie/treibhausgas-emissionen
(下のほうの経年変化のグラフです)

緑の党の委託によるarepoコンサルトのレポートも興味深いかと。
http://www.baerbel-hoehn.de/fileadmin/media/MdB/baerbelhoehn_de/www_baerbelhoehn_de/THG-Kurzstudie_2016.pdf

そして、AGBEのエネルギー統計でも2016年の詳細なものが上がってきています。
http://www.ag-energiebilanzen.de/22-0-Pressedienst.html

ということで、2016年のデータがぞろぞろと上がってきているので、少し総括してみましょう。

2010年にドイツ政府が打ち出した「エネルギーシフト」という試みは、

『現在、ここ5年間、統計上は停滞している(エネルギーセクター部門、業界の変化は、革命といえるほど劇的に進んでいるにもかかわらず…)』

と表現するのがぴったりなように思います。


2010年の時点で9.42億トンだったCO2排出量を2020年までに7.51億トンまでに削減するという意欲高い目標は、例外なしで、毎年2%ずつの削減を継続的に続けてゆかなくては達成できません。

しかし、2012年からドイツでは、
〃从儚萋阿一大活性化(産業でも、製造でも、輸出でも、EUで1人勝ち)、
交通(とりわけ貨物輸送)総量も増加、
人口の増加(とりわけ南欧州から若者、高学歴層が大量流入)、
という社会背景によって、CO2排出量は削減の足踏み状態であり、2016年には9.06億トンと3年連続で前年並みにとどまりました。

これで2020年目標の達成がほぼ不可能であることが確定してしまいました(経済の崩壊でもない限り、人口が増加を続けているのに、今後4年間、毎年4%以上の削減というのは実現不可能です)。

もちろん、1990年の12.51億トンを持ちだせば、すでに2016年までに28%の削減を達成しているとも言えますが、これを可能にしたのは、旧東ドイツの非効率な経済体制を西ドイツの投資によって大改造したこと、加えて、日本と同じようにグローバル化によって低付加価値の工業製品の生産地が他国に流出したことによる恩恵の割合も大きいです。

しかし、エネルギー源の内訳を見ると、方向性としては、石炭・褐炭の消費量が減少し続け、天然ガスや再生可能エネルギーに置き換わってきているのも事実です。全然、悪くない方向の発展があります。


ただし、全体のパイがなかなか小さくならない。


日本のように人口が縮小し、毎年輸出を減らし、名目GDPもすり減らしているような国ならともかく、毎年記録的な好景気を続け、輸出も記録更新、財政も黒字になるなど、ありえない経済状況の現在のドイツでは、「総量」を表す統計だけを見ていると見落としてしまうものがあるのかもしれません。

しかし、新興国も同じように人口増、経済発展をしている上で、パリ協定では徐々に縛りをかけてゆこうとしているわけであり、ドイツだけが例外とするわけにもゆきません。


エネルギーセクターの中の世界は、毎年のように破壊的なイノヴェーションが生まれ、業界は激しく変化しています。

それらの成果が数年後に「総量」のほうにも、大きく影響してくるのでしょうか? その結論を出すのはまだ時期が早いのかも知れませんが、楽しみな未来ではあります。


そして同時に、メルケル率いるドイツ政府にはこの時点で、もう一度謙虚になっていただき(無理かなあ…)、

〆謄┘揚電の推進にブレーキをかけ続ける政策を直ちに取り止め(とりわけ市民発電に対するブレーキがひどい…)、

△海譴泙任曚箸鵑豹覆泙覆った電気自動車の大々的な普及促進と、HVさえ搭載していない通常のガソリン・ディーゼル車、とりわけ大型車に対するいよいよの阻害・罰則措置などの対策をして、アウトバーンにも面状に時速制限を設け、

新築ばかりに労力が奪われている建築市場において、もう一度省エネ改修事業を2005〜2010年の頃のように一大推進を支援する、

というエネルギーシフトの基本のキホンである3本柱を地道にサポートする政策を打ち出していただくことを期待したいと思います。

エネルギー政策については、世界の新興国のお手本でありえる工業国、大国は、ドイツしかないと思うので。

上記について理解を深めたい方は、以下のレポートをどうぞ:
https://www.club-vauban.net/2015/10/06/2050%E5%B9%B4-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F%E3%82%9244-%E5%89%8A%E6%B8%9B%E3%81%B8-%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%82%92%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E6%8E%A1%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E5%90%8C%E6%A7%98%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C/

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ドイツ在住の環境分野のジャーナリスト、村上敦です。2012年秋に本を出しました。『キロワットアワー・イズ・マネー』。よろしくお願いします。http://t.co/0ojypWDT
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