ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦

環境先進都市ドイツ・フライブルク市在住のジャーナリスト村上敦(むらかみ あつし)が環境政策、エネルギー政策、都市計画、交通政策、など様々なジャンルの環境にまつわる話をお届けします。

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(おまけ2)

以下は2015年9月にFBにUPした投稿です。
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ドイツの再エネ推進の主要政策としては、
20148月にFITが終了し、現在はFIPに移行しています。2017年からはその一律FIPも終わらせ、FIP試算用の基準価格自体を入札制度によって確定することに移行することが独政府、並びにEUの目論見です。


そのため、野立てPV2015年から試験的なFIP試算用の基準価格の入札の試みが行われています。第一回は4月に、そして第二回が8月に行われました。

まず、
81日の連邦ネットワーク庁における野立てPVFIP入札には150MW出力がかけられました。参加したのは136件、設備容量では558MWということでした(このうち15件は条件不適格で入札から外されています)。
http://www.bundesnetzagentur.de/cln_1431/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2015/150806_PV-Ausschreibung.html?nn=265794


※政府側のコメントでは、本物の競争(原理)がここに来て現れはじめた、とありますが、そもそもこの入札にかけられた150MWという規模が小さすぎるわけで、この方式で政府の再エネ目標を2017年から入札にかけたとき、同じような競争が現れるかどうかの試金石とはなっていません。
 

最終的に、連邦ネットワーク庁が136件、それぞれの信憑性、妥当性などをチェックし、入札価格の低いものから33件、出力合計では159.7MWが落札されました。この入札情報の公開は813日に行われ、落札者は公表されます。ただし、価格の公表はその時点ではなされません。理由は、落札者との間で、実際にFIPを与えられた際に工事に取り掛かる、それを期限内に実現するかどうかの確認作業があり(もしその確約が取れないと、保留していた次点者に落札札が配分される)、かつ、FIP試算用の基準価格は落札したものの中から最も割高な価格ですべて統一されるからです。

http://www.bundesnetzagentur.de/cln_1431/SharedDocs/Pressemitteilungen/DE/2015/150813_PV-Ausschreibung_Zweite_Runde.html?nn=265794
 

そして入札から1か月後の92日に落札者の最終確定と統一落札FIP試算用の基準価格が公表されました。今回の入札では、落札価格(落札者の中で最も割高な価格)は8.49セント/kWhとなりました。


ようやく20148月にFITが終了した時点での野立てPVFIT価格8.92セント/kWhを下回りました。もし、それ以降に他の屋根置きPVFIP削減率を適用するなら、20158月には本来8.5セント/kWhを下回っていたはずですから、その水準に入札も追いついたという形になります。ということで、連邦ネットワーク庁も喜びのコメントを出しています。
 

ただし、不可思議なのは落札者の中で、最も低い入札価格を出したところは、1セント/kWhだったという事実です。つまり、建設許可さえ得れればFIPは必要なしという判断(?)のように見える入札者がいたわけです。


ただし、逆に言うと、他者はおそらく89セントで入札してくるので、かつ、最も割高な入札者のFIP試算用の基準価格ですべての落札者のFIPは確定するので、自身は確実に落札できるようにという目的だけで入札価格を提出したものがいたということです。しかも、もし、その確定した最も割高なFIPが、1セントで入札した落札者の提出しなかった内部での採算性が取れないと判断したなら、最終確認の段階で辞退できるという安全保険付きで。
 

こうした事態が支配的になると、入札制度自体が機能しなくなると考えるのは私だけでしょうか? それに関する議論は、政府からも、連邦ネットワーク庁からも、マスメディアからも聞こえてきません。

次回、12月の入札は、この点も注意して見てゆきたいと思います。

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そして、2016年1月のFBへの投稿です。
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昨年121日には、第三回の野立て太陽光発電のFIP基準価格の入札がドイツで行われました。

16日に連邦ネットワーク庁から公表されたので、紹介します。

http://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Downloads/DE/Sachgebiete/Energie/Unternehmen_Institutionen/ErneuerbareEnergien/PV-Freiflaechenanlagen/Gebotstermin_01_12_2015/finalesHintergrundpapier_01_12_2015.pdf?__blob=publicationFile&v=1

入札対象の容量は200MW出力、入札不落の最高上限額は11.09セント/kWhでした。ちなみに10MW以下が対象です。
 

入札参加事業件数は127件、562MW出力で、最低入札価格が0.09セント/kWh(ふざけています…)、最高価格が10.98セント/kWhでした。出力ごとに加重平均した入札価格は8.08セント。
 

落札者は43件、204MW出力で、0.098.00セント/kWhでした。したがって、落札者のうちの最高額で今回のFIP基準価格が確定することとなり、落札者は全員、8.00セント/kWhの市場売却平均価格+FIPを手にすることができ、2年以内に発電開始する必要があります。
 

前回8月の入札価格8.49セントよりも、下落したことから、ますますこの入札制度はうまく機能しはじめているという政治的なトーンがありますので、一応、20148月に、もし野立て太陽光のFITが廃止にならず、その時前後の下落率が継続したら?という想定で計算してみますね。

FIT20148月、野立てメガ=8.92セント/kWh

★それまでのように毎月1%の価格低下が図られたら?

20148月→201512月=16か月

8.92×0.99167.60セント/kWh

はい、入札制度で太陽光が安価になった!とは、今の政府や連邦エネルギー省のように、お気軽に言えないとは僕は個人的には思います。


どちらにしても、日本のいまだに高いのは、お話にならないので、なんとかしなきゃならないんだろうけれど…

(終わり)
 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(おまけ1)

過去にFBで野立て太陽光発電の入札制度について、結果を交えて解説していますので、参考までに掲載しておきます。おまけということで。

 以下は、2015年5月にFBにUPした入札制度に関するコメントです。

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ドイツの再エネのFITは昨年の8月の再エネ法の改正でほぼ終了しました。で、ほとんどが経過措置としてのFIPになっているんですが、EUやドイツメルケル政権は、(再エネ推進のスピードを押さえるためとしか思えない)入札制度に移行したい思惑で動いています。


具体的にはドイツは
2017年に再エネ法を改正する際に、全面的に再エネは入札制度で管理するいわゆるクォーター制度へと移行する予定にしています。クォーター制度といえば、日本でも過去に失敗したRPS法など、イギリスなどを含め、世界各国で再エネ普及のスピードを殺し、再エネの価格を割高で留めておくことに成功してきた制度です。


で、
2017年再エネ法改正の本格採用の前に、このクォーター制度&入札を野立ての太陽光発電で試験的に導入してみようというのが、昨年の再エネ法の改正に盛り込まれ、細かな諸制度関連法がようやく今年の2月などに出揃いました。


予定では、
2015415日に150MW出力分、81日に150MW121日に200MW2016年は通年で400MW2017年は300MWが入札にかけられます。合計1.2GWですね。国のPV導入目標量は、20152017年まで毎年2.5GW、つまり3年間で7.5GWを目標にしています。つまり野立ては全体の16%に留め、残りは屋根にという計画です。


現実には
2014年のPV新設量は1.9GWと目標である2.5GWに全く届かず…過去に7GWを超える新設があった面影がないほど、ここ数年の再エネ法改正での太陽光殺しは成果を上げてきています。日本も今の「長期エネ需給」の流れだとそうなることでしょうね…


ということで、前置きが長くなりました。この投稿で何が言いたいのかというと、
415日のPV野立ての入札が終了し、一応の結果が出たので、それの報告ということです。

まずは、BDEWや連邦ネットワーク庁、与党政治家などの発言は、「入札に多くの方が参加した。本物の競争だ。入札制度は成功だ」という趣旨が流されていますが、数字を全く無視したおかしな発言です。


連邦ネットワーク庁のプレスリリースでは、以下の様な数字が掲げられています。

1.150MWの入札に、170もの入札者が参加した。

※だから競争が機能した成功という主張は理由になっていません。

2.そのうち、25の入札者の合計157MWのプロジェクトが落札した。

3.落札の平均設備規模は6.3MWで、平均落札額は9.17セント/kWhだった。

20147月時点でのFITでの野立てPV10MW以下)の価格は8.92セント/kWhでしたから、入札によって逆に割高になりました。現状のFIPの大型(屋根載せOR工場の敷地内の野立てなど)でも9.02セント。なお、今回の入札落札者は、落札から2年間以内の発電開始が義務付けられますが、もし去年の7月末までの制度が継続し、同じ削減率が継続されていたら、2年後の発電開始時点でのFIT8.5セントを下回っていました。この数字だけで、FIT負担を低減するという触れ込みの入札制度は完全に失敗しています。

4.170の入札者の中の最も割高な入札価格は11.29セント/kWhだった。

5.7名の個人の入札もあり、入札の多様性が示されたが、入札価格が高く落札されなかった。小規模の入札者も多数いた。

6.ある1つの企業は全体の入札枠の4割を落札した。

※だからこそ、小規模事業者には不利な制度だと、市民再エネ組合など草の根の力でドイツのエネルギーシフトを推進してきたステークホルダーは、入札制度に批判が殺到しているわけです。

ということで、なんだかなあ、というドイツの情報でした。
(続く)
 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その7)

入札でないと大手が食い込めないドイツの状況についてです。
ドイツにおいては、野立ての太陽光発電や風力発電、あるいは大型のバイオマス発電などを計画する際は、州の策定する地域計画(州によっては風力ではここへの記載が必要)、あるいは自治体の策定する土地利用計画に明示される必要があります。つまり、都市計画書類において、その場所にどんな再エネ利用がうたわれることがそもそもの前提となります。そしてこれらの都市計画手続きでは議会の過半数の賛成を必要とします。ですから、日本のような山を切り刻んでメガソーラーを開発するとか、地域の過半数が反対しているのに地主の許可のみで地域には似つかない大型のメガソーラーを建設するようなめちゃめちゃな状況にはドイツは当然陥っていないわけです。

例え話をしましょう。ある大手資本が風況の良い土地を探して、ある地域のエリアでウィンドパークを計画するとしましょう。すると、概略のプランを自治体に提出し、議会の過半数を得る工作=土地利用計画への記載をして、同時に、土地所有者との交渉と環境アセスメントを進める必要があります。しかし、ほとんどの地方議会では、地域に存在しない大手資本が自身の地域に巨額を投資して、おらが土地を使って、よそ者が利益を得ることに良い顔はしません。

そこで、その自治体内や議会内では、「そんなに大手が進めたい好立地であるなら、地域の市民と企業が連携して、そのプランに便乗し、自分らで開発したほうが良いじゃないか」という意見が出てきます。つまり、唾を付けようとした途端、大手に頼ることなく、地域の草の根が自身でウィンドパークを建設してしまうことに最終的にはなる可能性があります。
あるいは、土地利用計画の修正を餌に、自治体は強気で大手と交渉を重ね、「市民を納得させるため=ときには反対運動が起きるぞという脅しも暗にあり」として、大手の出資割合を減らして、例えば過半数以下に抑え、地域の市民エネルギー組合などが決議権を持つように過半の資本を投入するような会社新設の交渉がはじまったりします。

ということで、これまでのドイツでは、大手で、ノウハウを持っているところでも、なかなか純粋に自身だけで(地域との資本連携なしで)ウィンドパークや大型メガソーラーなどの開発を単独で手掛けることができませんでした。それがドイツにおける再エネ=正義を支えていた大きな柱でもあります。


しかしここに、複雑でハードルの高い入札制度が導入されればどうなるでしょうか? まず、こうした市民出資の機運自体は抑制されます(どうせ、市民単独ではできないんだから、大手のうちが引き受けて、少なくとも賃借料ぐらいは地域に落ちるようにしますよ的な文句が出てくるでしょう)。日本ではごく普通に行われているように、地域外の資本が、地域に迷惑だけ押し付け(景観の変化、騒音、日照変化、ビオトープ・種の多様性変化)、地域に巨大な再エネを投資して、利益は別のところに持っていってしまうという社会に変わることを電力大手やデベ、保守政党などは待望していました。つまり、火力や原子力から再エネと技術は変化しても、それを供給する体制には変化を持ち込まないという既得権益層の強烈な既得権益の保護です。


この辺の機敏が分からないと、なぜ、世界中の成功モデルであった
(日本だけは例外ですが…)FITFIPを廃止するようなEUガイドラインの策定に、再エネを進めることを政治的な課題にしているドイツも乗ったのか、理解できないことになります(もちろんイギリスやフランスには、強烈な原子力ムラも存在し、再エネを押さえることが着眼という別の機敏もありますが)。

これってかなり複雑な事態なんです。私はエネ大手のロビーや再エネ推進の草の根側の出している専門誌やプレスリリースなどを継続して読み解いていますからある程度の内幕は分かりますが、一般のこの分野にそれほど認識が高くないドイツ人は、この辺の経緯など全く知らないでしょう。

ですから、ドイツのマスコミの一部や日本の
NHKのニュースにみられるように、「ドイツFIT廃止!入札へ!=電力の買い取りにかかる費用が電気料金に上乗せされて料金が高騰し、国民の間で制度の見直しを求める声が強まっていた」というそれらしい仕上がりのニュース記事が出来上がることとなります。


ということで、このブログで言いたいのは、
EUガイドライン策定、再エネ法2014年改正、2017年改正というのは、2000年からはじまり、現在に至るまでの再エネの推進状況にまずまず納得している大多数の国民が、再エネの推進というテーマに対する関心を失っている隙に(これはうまく行っているからこそ関心を失ったのと同時に、ギリシア金融危機、難民問題やISILEU離脱など他の巨大問題が山の様にドイツには押し寄せていて、常にトップニュースを占領し、再エネはニュースのテーマにならないということも関係しています)、2009年の総選挙で快勝した第二次メルケル政権とスクラムを組んだエネルギー関連大手、ロビーが着々と準備を進め、「市民による再エネ」という社会の変革を抑制するための布石を打ってきた集大成ということもできるでしょう。


とはいえ、最近の市民エネ組合の中でも元気なところは、大手デベなどに負けない資本力やノウハウをすでに身に着けていますから、一方的にひっくり返されるわけでもなさそうです。しかし、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電というのは、どれも土地の消費圧力が強くかかる発電源です。それは再エネのエネルギー密度が化石燃料やウランよりも低いという理由から来ることですが、再エネの社会に本格的に変貌するためには、これまでには想像もしていなかった量の土地を必要にすることになります。

日本のように消費量に対してわずか数パーセントの発電量の野立て太陽光発電の推進で、日本中の地方で、くまなく住民がネガティブな現状に苦しめられている、心を痛めているのと同じように、ドイツでも、地域の人が納得しない形で再エネの開発が行われる圧力が強くなることを私はとりわけ懸念しています。それは、中長期的な再エネの推進を阻む最大の障害であるからです。
これまでのドイツの再エネ推進の主役は、地域の住民であり、自身が消費者でありながら、発電者にもなったところに最大の快進撃の理由がありました。それが崩されると、再び元の位置に戻るまでに
10年近くはかかるのではないか、という懸念とともに、今回の再エネ法2017年改正を読み解きました。

(終わり)
 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その6)

…ということで、野立ての太陽光の入札制度はすでにはじまっていますが、同じような感じで、洋上風力、750kW以上の太陽光、150kW以上のバイオマスでも入札に切り替わります。

今回の改正の際にもっとも争点となったのは、「誰が落札者=再エネ事業者になってよいのか? なるべきなのか?」という命題についてであり、「再エネをそもそも進めるべきか?」あるいは「再エネは割高? 需給調整が機能しないか?」などという低レベルなところではありません。

そもそも、賦課金の高騰が問題であるなら、問題ないレベルまで賦課金が落とせるような計算で、固定買取価格、あるいはプレミアム計算のための指定価格
AWをもっと低減させればよいだけです。そのほうが、その価格でもやるとなった事業者は、法によって実現が確定するのでプロジェクトマネーの調達は安価になり、事業者もリスクが少ないことから、期待する利回りを最小化できます。落札することが不確定なリスクの高い入札事業では(とりわけ事前のアセスメントなどの費用を準備するなど事前投資が莫大なので)、競争による価格の低減効果よりも、マネー調達の利回りUP、そして事業リスクが上昇した分だけ利益率をよりUPして見積もるようになりますから、価格(再エネの事業者の利益を含んだ発電コスト)の上昇圧力のほうが強いことは証明されています(というか事業者の方であれば、直感でお分かりかと思います)。

 

例えば、2017年から始まる入札では2019年に発電予定の風力発電が、20年間の指定価格(AW)の落札不落価格は、7.0セント/kWh(標準風況地)ではじまります。しかし、環境アセスメントの手続きにすでに入っていて、2017〜2018年中に完成予定の風車は、最初の5年間が8.38セント/kWh、残りの15年間が4.66セント/kWh(標準風況地)でAWが指定されています(おまけに20174月から1.2%、その後も毎月約0.5%のAW価格の低減付きです!)。これは20年間の平均値で(8.38×5年+4.66×15年)÷20年=5.59セント/kWh(キロ7円以下!)です。

なぜ、わざわざ入札になるのに落札不落価格を現状の水準よりも
25%上乗せしなければならないのか、それは野立て太陽光発電のお試し入札の経緯を見ても、現状のFIP/FITよりも入札は安価になりにくいからです。この点、メディアがなんのメスも入れられないのは、おかしなことですが、2017年の入札の落札価格の平均値が出てみないことには何とも言えない、ということなのでしょう。

 

話を「誰が落札者=再エネ事業者になってよいのか? なるべきなのか?」という命題に戻します。前回の再エネ法2014改正のブログでも記しましたが、基本的には、メルケル政権、およびEUの主要国は、既存大手エネルギー事業者の保護、既得権益の保護を第一に念頭に置いて、これらの改正を行ってきました。
おそらくニュースなどでご存知のように、ドイツ最大の電力事業者
E.ONは、将来性がなく、赤字続きの既存エネ事業を新設会社Uniperに移して切り捨てた格好で、E.ON本体は需給調整サービスと再エネ事業に絞り込んで事業を行うようになりましたし、ドイツ第二の電力事業者RWEは、赤字に落ち込んだ本体から、将来の黒字化が期待できる需給調整サービスと再エネ事業分野を取りまとめ、新設した子会社のinnogyに移管して、ここに積極的に投資を絞り込んでゆく体制になりました(E.ONの逆バージョンで本体を切り捨て)。

つまり、新しい再エネ法
2017の改正には、こうした巨額の資本を扱える事業者が(かつ、入札手続きが複雑になればなるほど、供託金の金額が大きくなればなるほど、豊富な専門職員を抱え、資本がある大手には有利なので)、手ぐすねを引いて待ち構えているという市場の枠組みの変化が生じているからこそ、これまでのEUガイドラインの施行と2014年、2017年の再エネ法の改正という経緯があるわけです。

再エネの推進は市民によるものではなく、政府の計画通りに大手に引き受けてもらう、という体制にすることが最近のEUにおける主要な流れなわけです。

それではなぜ、入札制度でないと大手資本は再エネ事業に食い込んでいくことができないのでしょうか? その答えを知るためには、これまでのドイツの再エネの投資分の2分の3を大幅に超える割合が、地域の市民主体、地域の中小企業主体、地域の農村自治体が主体、あるいはそれらが複合した形での市民エネルギー組合、市民エネルギー企業による投資体制が実施し、再エネの推進をリードしてきた背景、大手の出番がない背景を知ることが必要です。

(続く)


ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その5)

「再エネ法」の2017年改正案については、20164月にはじめて法文の草案が開示され、その後、首相官邸、省庁、各種のステークホルダー、およびそれぞれの州政府で意見表明がなされ、修正、調整が続けられていました。そして法案が78日に国会(連邦下院)を通過しました。この再エネ法は連邦上院(州政府からの選出者による議会)を通過させる必要はありませんから、これでほぼ確定したということで、良いかと思います。
その中身ですが、ドイツ語であれば国会にかけた際に提出された連邦経済・エネルギー省作成のプレゼン資料が分かりやすいかと思います。

http://www.bmwi.de/BMWi/Redaktion/PDF/E/eeg-novelle-2017-eckpunkte-praesentation,property=pdf,bereich=bmwi2012,sprache=de,rwb=true.pdf

そして決議された法案です(前回の2014年改正200ページと同文のところは省略しても100ページ超の大著であり、普通の法律ではないです…ここまで例外措置を増やして、ドイツ政府は何考えているんだか。関連諸法の修正と法案の理由書=ドイツでは法案作成時に同時に作成する訴訟用の書類、法の根拠の文章との合算で400ページを超えますので、さすがにすぐには全部は読み切れません…)。

http://www.bmwi.de/BMWi/Redaktion/PDF/G/gesetzentwurf-ausschreibungen-erneuerbare-energien-aenderungen-eeg-2016,property=pdf,bereich=bmwi2012,sprache=de,rwb=true.pdf

 

この「再エネ法2017」改正法の目的は、国内電力総消費量(グロス)に対して、再エネ電力発電量の割合を2025年には4045%に、2035年には5560%に、そして2050年には最低80%以上にすることを目指すものです。加えて、電力以外のエネルギーも合わせた国内エネルギー総消費量(グロス)に対して、再エネによるエネルギー供給が18%以上になることも目的として併せて記載されています。

さらに法律の原則は、〆謄┘妖杜呂鯏杜篭ゝ襯轡好謄爐謀合すること、∈謄┘妖杜呂鬚修里燭瓩膨樟椹埔譴波稜笋垢襪海函↓再エネ事業者の多様性は確保したまま、入札制度に移行すること(例外あり)、ず謄┘妖杜呂離灰好箸鯆祺爾気擦襪海函△4点が掲げられています。

※このの再エネ事業者の多様性のところで、いまだに各ステークホルダー、および州、自治体においては、批判が残っていますので、後述します。

 

そしてその法律目的を達成するために、陸上風力発電、洋上風力発電、太陽光発電、バイオマス発電の分野において、20171月からは入札によってプレミアム(計算の根拠となる金額)を確定することとしています。例外は、出力750kW以下の施設(例:屋根乗せの太陽光など)、バイオマス発電の場合だけは出力150kW以下の施設で、この例外措置における入札を経ないFIPFITによる発電量は、全体の2割程度になると想定されています。さらに入札開始当初からEU他国の事業者が参加できる入札枠は、最低5%確保されます(EUガイドラインの解釈によって)。

1.陸上風力については、

201720182019年の3年間は、2,800MW出力/年が入札にかけられ、2020年からは毎年2,900MW出力が入札にかけられます。これはリパワリングなどで廃止された陸上風力の出力分を差し引かない新設のみのグロスでの数値となります(当初は差し引きありのネットでの議論が続けられていましたが、最後は陸上風力抑制派が勝利した形です)。

・また、陸上風力のプレミアム計算の根拠となる指定価格AWの入札不落価格(最高値)は、標準風況地において201711日に7.0セント/kWhで始められます。また、20181月からは直近の過去3回の入札における落札者の中でもっとも高い入札価格を提示したものの金額を平均したものに、8%を加えた価格が入札不落価格となります。

・入札希望者には、自身の想定している風車建設位置の風況が、標準風況であれば入札額とプレミアム計算のための指定価格AWは同じになりますが、その場所が標準風況から30%悪ければ、AWは入札額の1.29倍となり、標準風況から50%良ければ、プレミアム支払額は入札額の0.79倍になるという標準風況への調整曲線が準備されています。この曲線を事前に考慮して、入札額を決定することになります。

・入札に参加するためには、連邦環境悪影響保護法(BImSchG)で規定される環境アセスメントを取得しなければなりません(ただし、合計6基、総出力18MWまでのウィンドパークで、10名以上の個人からなり、かつ、その計画地に居住する住民からなる市民エネルギー組合などでは、事前に取得する必要はない→事業者の多様性確保のため)。

・入札に参加するためには1kW出力あたり、30ユーロ(例:平均的な2MW出力の風力発電の場合、6万ユーロ≒720万円)を供託金(罰則金への保証金)として準備する必要があります(ただし、合計6基、総出力18MWまでのウィンドパークで、10名以上の個人からなり、かつ、その計画地に居住する住民からなる市民エネルギー組合などでは、この供託金は半額となり、落札したのち、2か月以内に残りの半額を拠出すること)。

・落札後から30か月以内に発電開始できない事業者は、その落札権利を失います。また、落札後、5%以上の落札出力を縮小したり、建設しなかったりする場合、落札後24か月を超えて発電開始される際は罰則金として10ユーロ/kW26か月後は罰則金として20ユーロ/kW28か月後は罰則金として30ユーロ/kWを系統運営事業者に支払うことが決められ、これは供託金から強制的に支払われます(ただし、合計6基、総出力18MWまでのウィンドパークで、10名以上の個人からなり、かつ、その計画地に居住する住民からなる市民エネルギー組合などでは、それぞれの期限を最大2年延長可能→環境アセスメントを後付けで取得するため)。

・ただし、入札・落札後の風車が発電開始するのは2019年以降になるため、すでにアセスなど手続きを進め、2018年末までに発電開始をする風力発電については、再エネ法2014の延長でAWが決まり、プレミアムを受け取ることになります。つまり入札による風車の発電開始は2019年からになるといえそうです。

 

ということで、おおよそこれで抜けはないかと思いますが…この作業、続けますか? 興味深いですか? ちょっと予想したより法案を調べて記すのに時間がかかりすぎるので、他の電源については端折ることにします。いつか時間があるときに、水力、地熱、バイオマス、洋上風力、太陽光については書きますね。ごめんなさい。

(続く)

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その4)

2014年の「EUガイドライン 」の策定について説明しますね。
 

EUには「欧州連合の機能に関する条約:Treaty on the Functioning of EU」が存在します。EUの憲法にしようと試みていますが、現状では、その実現はまあ困難な条約です。とりわけイギリスの脱退がありますから、ほぼ中期的には無理でしょう。
さて、この条約の中には加盟国政府による競争歪曲的政策を禁止するための目的で、第
107条に「特定の企業・商品に対する競争歪曲的補助の禁止(国家補助規制)」があります。この107条では1項で原則的に国家の補助・助成措置について禁止規制がなされ、例外は、EU域内市場において調和しうる場合のみとされています。また、2項ではこの域内市場で調和しうる部門とその内容を(社会福祉的な助成措置など)、3項では調和しうる可能性がある部門とその内容が記されています。

FITによって再生可能エネルギー電力に対して助成措置、促進措置を実施することは、過去にはこの第1073項の解釈でこれまでは説明されてきました。ただし、既存エネルギー事業者の積極的なロビー活動が功を奏し、再生可能エネルギーのみ特別扱いする内容を排除する目的で、かつEU気候変動対策目標値を同時にクリアするための苦肉策として、この第1073項について、20144月には特別なルールとして「20142020年の環境・エネルギー関連の国家補助金に関するガイドライン(2014/C/200/01)」が施行されました。

これにより遅くとも2017年には再生可能エネルギーの推進助成策は、^貮瑤龍チ茲ほとんど存在しない部門と、⊃篆覆想定通り進まないケース、そして入札をすることでより高額になるケース、い気蕕飽貭蟲模以下の小施設を例外として除き1MW出力以下などに該当する小規模の再エネにはDe-minimisルールを適用し、FIT継続も可能)、残りはすべてEU内に開かれた「入札制度」にすることになりました。つまり、再エネのFITも原則禁止となり、前述のFIPによって他の既存発電事業者と同じように再生可能エネルギー発電者自体も電力販売に責任を持つことになったパラダイムシフトも、このガイドラインに依るものです。

 

ということで、このEUガイドライン策定については、フランス、イギリスだけではなく、ドイツ・メルケル政権は強力に推進していましたから(当時のEU委員会のエネルギー委員長はドイツの保守党から選出されたゴリゴリのエネルギー・電力大手を支持層に持ついわゆる族議員のエッティンガー)、それに事前対応する意味で、まずは第一弾として2014年の改正があったわけです(FITFIP、野立て太陽光発電に限ってのお試しでの入札制度の導入)。

そして、2017年の「再生可能エネルギー法」の改正によって、このEUガイドラインを完全にクリアすることになりました。
今更、このガイドラインについてどうこう言うつもりはありませんが、ドイツは制度変更でもかろうじて政策目標値をギリギリで継続的に達成してゆく可能性は高いと思いますが(市民の監視圧力が強いので)、他の
EU加盟国で、それほど再エネが伸びていない国、例えばフランスなどでは、再エネの推進はより困難になることが予測されています。さらに、フランスではすでに入札制度が導入されていますが、政策目標値に達成した実績はこれまでのところありません。また、入札で価格が安価になるという短絡的な考えは持たないほうが良いでしょう。

このぐらい背景と経緯について記せばよいでしょうか。それでは、肝心の2017改正の中身について記してゆきます。

(続く)

 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その3)

はい、そして今回の「再生可能エネルギー法(201711日施行)」の改正についてです。先にも記しましたように、紆余曲折の結果、201678日にドイツの国会を通過しました。NHKさんによると、今回の国会通過のニュースも、やはり「ドイツ!固定価格買取制度の廃止と入札制度の導入!」というトーンに持ってゆきたいようですね。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160708/k10010588181000.html


まあ、このニュースを作成する方々も専門ではないのでしょうから、目くじらを立てても仕方がないんですが、
2014年にすでに原則として固定価格買取制度(FIT)は終了し、フィードインプレミアム(FIP)に変更されていますので、この点が抜け落ちていると、意味が通じなくなります。また、以下の一文は完全な間違いですね。どこから持ってきたんだろう? いい加減なWEBニュース版のDer Spiegelとかかな?

「…しかし、電力の買い取りにかかる費用が電気料金に上乗せされて料金が高騰し、国民の間で制度の見直しを求める声が強まっていました」


制度の見直しを誘導したのは、既存エネルギー大手のロビーとメルケル政権であり、これは
EUによって2014年にすでに決められたことなので、賦課金の上昇で国民の批判の声が強まって今回の改正につながったわけではありません。NHKEUガイドライン知っているのかな?

また、本当に賦課金を安くということであれば、すでに価格低下がなされた陸上風力と太陽光こそ地産地消的な形で設置を伸ばすべきで、大手企業&大資本による割高で北ドイツにしか資源のない洋上風力と割高で南北間の大容量直流電力系統のセットの建設を伸ばすべきではありません。

 

それでは、順に説明しましょう。まず、過去の改正である2014年改正が持つ意味、つまりドイツがFITではなくて、FIPにしたところについて分かりやすくするために、まずは原理原則について記します。

FITの重要なポイント:

)[Г把蟲舛靴榛得顕椎愁┘優襯ー由来の電力の優先接続と、優先利用

△修療杜呂蓮電力系統事業者が法律で定められた価格で買い取り(例えば20年間にわたって固定価格で)

その電力は、電力系統事業者がそのままEEPX(電力取引スポット市場)に全量販売

づ杜老賄事業者が購入した価格と販売した価格の差額分を、電力消費者に転嫁(サーチャージ、賦課金)

FIPの重要なポイント

,脇韻検

△砲弔い討蓮電力系統事業者が自動的に買取するのではなく、再生可能エネルギー発電者が自身で販売先を開拓・契約し、あるいはスポット市場に自ら販売することが必要(第三者に委託することも可)。ここが最大のポイント。

0柄阿慮把蟆然覆乏催するマーケットプレミアム(MP)算出のための指定価格(AW)から、決められた平均化の計算式で算出されたEEPX(欧州電力スポット市場)の平均販売価格(MW)の差額を、再エネ発電事業者にマーケットプレミアム(MP)として支払い。

MPAW-MW
参考: http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51857155.html

ぅ廛譽潺▲犹拱分を、電力消費者に転嫁(サーチャージ、賦課金)

 

ということで、ここでどんなパラダイムシフトが行われたのかというと、これまで再エネ発電者は、発電だけに注力すればよかったのですが(買取は自動的)、2014年以降は、発電した自身の電力に責任を持ち、自身で販売までしなければならなくなった点です。これは、再生可能エネルギー電力が量の拡大とともに発電原価も減少し、徐々にその環境価値と合わせて市場において競争力を持つようになったことから、再エネ電力だけが、他の電源と比較して特別に優遇されることを許さなくなった政治的な枠組み変化の結果です。

もちろん、再エネ電力は特別なものであることから、優遇措置を続け、固定買取価格の設定をより急速に下落させるという政治的な判断もあったのでしょうが(私自身は、前回にも記したように、そのほうが国民にとって総合的には安価にエネルギーシフトが実施できたと今でも考えていますが)、ドイツでなく、EUでそのように決まってしまったわけです(NHKさん、ドイツ国民の声で決めたわけではなく、EUによる指令です!)。ということで、そのように取り決められた「EUガイドライン」について少し、説明しておきます。

(続く)

 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その2)

※このページは飛ばしていただいても構いません。


それでは説明をと思うのですが、まず、このブログ記事を理解していただくためには、これまでのドイツの「再生可能エネルギー法」の経緯を予備知識として知っていただいたほうが良いと思います。ということで、時間的に余裕のある方は、国立国会図書館によるドイツの「再生可能エネルギー法」、およびその前の「電力供給法」の日本語への翻訳文、解説を読んでいただければ幸いです。リンクを記しますね。

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1991年施行「電力供給法」:再生可能エネルギーからの電力を規定価格で電力事業者に優先的に買い取ることを定めた法律。規定価格は、小口の電力販売平均価格の7590%で設定(例:風力/太陽光発電8ユーロセント/kWh、水力・バイオマス発電7ユーロセント/kWh

2000年施行「再生可能エネルギー法」とそれに続く、改正群

1991年の「電力供給法」、2000年の新法、2004年の改正については、国立国会図書館の「ドイツの再生可能エネルギー法(2005年、渡邉斉志)」には法律の概要と経緯、2004年改正法文の翻訳などが紹介:http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/225/022506.pdf

2009年の改正については、国立国会図書館の「ドイツのエネルギー及び気候変動対策立法 (2)2009年、山口和人)」には法律の概要と経緯、2009年改正法文の翻訳などが紹介:
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/241/024105.pdf

2010年の一部改正(太陽光発電の取り扱い)については、国立国会図書館の「再生可能エネルギー法の改正(2010年、渡辺富久子)」には法律の概要と経緯が紹介:
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02450206.pdf

2012年の改正については、国立国会図書館の「ドイツの 2012 年再生可能エネルギー法(2012年、渡辺富久子)」には法律の概要と経緯、2012年改正法文の翻訳などが紹介:
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3497220_po_02520007.pdf?contentNo=1&alternativeNo

2012年の一部改正(太陽光発電の取り扱い)については、国立国会図書館の「太陽光発電の促進を見直す再生可能エネルギー法改正へ(2012年、渡辺富久子)」には法律の概要と経緯などが紹介:
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3491894_po_02510206.pdf?contentNo=1&alternativeNo

2014年の改正については、国立国会図書館の「ドイツにおける 2014 年再生可能エネルギー法の制定(2014年、渡辺富久子)」には法律の概要と経緯、2014年改正法文の翻訳などが紹介:
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8841951_po_02620005.pdf?contentNo=1

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この国立国会図書館の翻訳文には、経緯や背景なども説明され、翻訳文も非常に優れています。私のブログの様に偏見と個人的な意見にまみれていませんし。とはいえ、この分野の専門でもない方には、量も膨大になりますし、ドイツの法律の翻訳を読んでもいまいちピンと来ないでしょうから、「再生可能エネルギー法=FIT」についての流れを把握するために、以下の在日ドイツ大使館のHPを、

http://www.japan.diplo.de/Vertretung/japan/ja/07-umwelt-und-energie/071-energie/201401DE__EnergyShiftHistory.html#topic14

そして最後のFIT法改正となった2012年の「再生可能エネルギー法=FIT」について、以下のドレスデン情報ファイルさんの取りまとめを、

http://www.de-info.net/kiso/eeg.html

そして、その予備知識の上で、2014年改正の「再生可能エネルギー法=FITFIP+一部入札」については、以下の私のブログ記事をお読みいただけると、これからの議論が分かりやすくなるかと思います。

http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51856426.html

(続く)

 

ドイツ「再エネ法(以前のFIT)」の2017年改正について(その1)

はい、久しぶりの更新ですが、今回のブログは長くなりそうな予感です。ドイツの再生可能エネルギー(電力)の推進について、興味のある方に情報提供したいと思いますので、お時間のある方は、お付き合いいただければと思います。


先日、20166月初頭に、NHKで以下のようなタイトルのニュースが流れました。

「独、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を廃止へ」

※リンク先は時間が経過したのですでに消されてしまっています。


それを受けていろいろな方から質問を受けましたので、それについてFBでちょっと斜めにコメントしたところ、反応も大きかったです。

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610日のタイムライン:

すごいなあ、NHKの手にかかると、ドイツで現在法律改正の草案が公表され、審議をしている「再エネ法」について、こんな表現になるんだ。

NHKニュースからの引用:「固定価格買取制度」について、原則、来年から廃止する方針を決めました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160609/k10010550621000.html

事実と異なる点:

1.小型屋根置き太陽光など、小規模のものについては、FIT/FIP/自家消費などの混合モデルは継続…(屋根置きPVの場合、2010年前後からすでに、いわゆる純粋な全量買取はドイツにはなくなっています)

2.NHKの言うところの「原則」の部分にあたる中・大規模な風力、太陽光は、すでに2014年に固定買い取り制度(FIT)からプレミアム授与制度(FIP)に移行済み(系統事業者は買い取ってくれないので、自身で販売先を見つける必要あり。で、一定のプレミアムがもらえる)。で、今回の改正では、そのプレミアム設定を入札制度へ移行(ただし、野立てPVについては、2014年からすでに入札制度導入済み)。

また、これは、EU指令に基づくもので、ドイツはそれに従っているだけ。

3.バイオマス、水力、地熱などは入札制度には移行しない。

これらの複雑な制度改正を、一口で、「原則FIT廃止」と言いきってしまえる報道機関って、ある意味すごいですね。

正確な改正の内容と背景を知りたい方は、7月に入って時間ができたら、EU指令の内容も併せて、こんな感じでブログにまとめますので、もう少しお待ち下さいね。

http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51856426.html

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また、ネットを漁ると、このニュースを受けて、見当違いな発言をされているブログなども多々あります…どうして経緯と背景、そして法律の中身を知らないのに、「ドイツ&FITは失敗」という結論を引き出せるのか本当に不思議ですね。


ということで、FBでの約束でもありますし、ちょうど、先週の金曜日、
201678日に法案も議会を通過したので、この「再生可能エネルギー法」の改正について記してみることにします。

(続く)
 

ドイツのエネルギーシフトを日本に当てはめてみたら?

ドイツでは2015年7月の現在でも、エネルギーヴェンデ(エネルギーシフト)は、進展を続けています。
 
当然、他の先進工業国でもこれだけのスケールで実施している前例がない戦略、政策であり、ドイツ国内にも様々なステークホルダーがいますから、問題がまったくなく、快調に邁進しているのか、と問われれば、直進する道ではなく、山あり谷ありの茨道で、走りながら考え、一時は停止し、またスタートし、ということで順風満帆ではありません。ただし、毎年、毎月、毎日、少なからずも定めた目標(2050年のビジョン)にだけは向かって少しづつでも進んでいる、進歩していると評価することがいえるでしょう。
 
日本では、これらについては一方で礼賛する勢力があり、他方でそれに対して反論する、というか全く評価しない勢力がありと、なかなか真実が伝わっていない様子であることは、私のような仕事をしていると、ダイレクトに感じます。
 
例えば、バブル気味だった太陽光発電の普及について、徐々にブレーキをかけておくべきだったのに、政治的にいろいろな関心で、その対応が遅れ、ドタバタし、結局は一旦仕切りなおしでストップさせなければならなくなったことを捉えて、「ドイツのエネルギーシフトは頓挫した(失敗した)」というような声を上げている人、団体も数多くありましたし、そうした事象にはできるだけ触れないで、進展の目覚ましいところだけをいいコト取りして、「ドイツは素晴らしい」と持ち上げる人、団体もあります。
 
当然、こうした前例がない試みは世界中からの関心を集めており、で、あればこそ、そこには様々な思惑、視点、立場、考えによって、様々な評価が下されるのは当然です。また、こうした大きな関心が集まる事柄に対して、一つの意見しか出ないのでは、健全でも何でもありません。
 
でもね、もうちょっとエネルギーシフトの全貌を知った上で、細々した事象について語ろうよ、という自分がいます。大切な「森」のほうについては情報共有や理解が進まないまま、日々の細々とした「木」のほうばかりに議論が集中しているような気になるんです。
 
ということで、今回、ドイツの各種のエネルギーシフトにおける目標値、そして現状と出発点を整理し、同時に、本筋の対策の意味、意義について、エネルギーフロー図、つまり一次エネルギー供給と最終エネルギー消費の観点から、何のためにそのような試みをしているのかわかりやすい形でレポートしてみよう、と思い立ちました。同時に、そのドイツでの本筋の取組みを、もし、日本のエネルギー供給、消費の状態に代入してみると、何が見えてくるのか? そんな試みをレポートの中では取りまとめて見ました。
 
基本的には、ドイツは2050年までに、一次エネ供給量を半減し、化石・原子力に頼らない社会をわずか3つの対策(電力の再エネ化、自動車交通のEV化、建物の高断熱化、高気密化)で実施することができますし、その方向で進展しています。日本に当てはめてみると、4つの対策(電力の再エネ化、自動車交通のEV化、建物の高断熱化、高気密化、そして給湯エネの省エネ化・再エネ化)が必要になることも明らかになりました。
 
15ページの計算式の多いレポートになってしまいましたが、使っている計算は足し算、掛け算のみです。
 
ご興味のある方は、多少の時間を投資して、レポートを読み解いていただければ幸いに思います。
※なお、このレポートは私の個人的な見解です。文中に使用しているエネルギーフロー図は、ドイツ経済・エネルギー省の「エネルギーデータ」、日本のエネ庁発行の「エネルギー白書」から出典を明示した形で掲載しています。
Twitter プロフィール
ドイツ在住の環境分野のジャーナリスト、村上敦です。2012年秋に本を出しました。『キロワットアワー・イズ・マネー』。よろしくお願いします。http://t.co/0ojypWDT
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