フライブルクから地球環境を考える〜村上 敦のエコ・エッセイ〜 

環境先端都市ドイツ・フライブルク市在住の環境ジャーナリスト村上敦(むらかみ あつし)が環境政策、エネルギー政策、都市計画、交通政策、など様々なジャンルの環境にまつわる話をお届けします。ご質問やお問い合わせ先:murakaatsushi@hotmail.com

再生可能エネルギー100%会議(その4)

そして、議論はもうひとつの将来的な取り組みである蓄電についてです。

ハ)優先順位では、ここまで並べた対策のうち、費用対効果の関連で一番優先度が低いものの、技術革新と大量普及のための対策が急がれるのが蓄電です。

ただし、蓄電と一言でいっても、種類は豊富にあります。まず最も簡単で安価な蓄電方法は、電力を重力エネルギーとして置き換える揚水発電施設についてです。ただし、高低差が少なく、雨量もそれほどなく、かつ自然環境と人間生活環境に多大な影響を与える大型の揚水発電所を、今後もバンバンと推進してゆくことは現実的ではありません。

揚水発電の可能性があるところで、かつ環境負荷の低いところは今後のドイツでも新設してゆく予定ですが、ポテンシャルを最大限に利用したとしても、期待されるほど大きな効果が出ないことも同時に学術的な調査で明らかになっています。小型のものの開発が進んだり、どれだけ有効にポテンシャルを活用してゆくのかは、まだまだ今後の課題と言えそうです。

そして次に蓄電のための技術として有望なものは、電力を圧力エネルギーに変換する圧縮空気式の蓄電方法です。ドイツには、岩塩や石炭の採掘跡地で、比較的密閉度が高い場所が多くあることから、その穴に、余剰電力によってコンプレッサーで空気を送り、圧を高めておいて、電力が必要なときは、その圧からの空気でタービンを動かして発電する方法です。

揚水発電所と同じようにすでに実用化されている技術で、費用対効果もますます高くなることが予想されていますが、そのドイツ国内でのポテンシャルは、今後の再生可能エネルギー発電の増加量と比較すると、わずかでしかなく、上記の揚水発電と同じように推進する価値はあるものの、決定的な切り札にはなりえません。

その次に考えられるのは、各種のバッテリーによる蓄電です。こちらについては、高価な技術であり、レアアースなどの資源的な問題も抱えている場合が多いので、分科会では、とりわけ家庭や建物、産業などの消費サイドではなく、系統の調整サイド(変圧施設や分電施設)で、もっとも有効なポイントにピンポイントで使用していゆくことの大切さが強調されました。もちろん、現在のドイツに登録してある4000万台を超える乗用車が電気自動車に置き換えられ、スマート化されれば蓄電量は膨大なものとなるわけですが、系統の安定性を活かすための有効な切り札には成り得ないことについても議論が進みました。

もちろん、今後の技術開発でどのようなタイプのバッテリーが、どれだけの価格で、どのような資源を利用して製造できるようになるのかの研究や動向などにもよりますが、今のところ、ドイツ政府のエネルギー戦略でも一番重要な蓄電先として考えられるようになったのは、以下の電力のガス化という取り組みです。

ソーラーガス、ウィンドガスという言葉がドイツのこの手の専門家の間では普通に使われる語句になっています。単純に説明すれば、余剰電力を使って水などを電気分解して人口の水素ガスを作り、そのままそれを利用するか(燃料電池や直接燃焼)、あるいはバイオマス、天然ガス発電施設からのCO2と合わせて人口メタンガスを作って、それを天然ガスのインフラ(貯蔵、パイプライン)に貯めておき、熱や電力供給の場面で、そのガスを利用するという仕組みです。

この方法にはいくつかの利点がありますが、まずは貯蔵のため、ガスから電気の変換のためのインフラはすでに社会にあり、その蓄電ポテンシャルは膨大で、上述した3つの蓄電方法とは比較にならないくらい潤沢にあること。そして、化石燃料からの脱却の場面では必ず必要になるが、同時にバイオマス資源には限度があることから、最も困難な課題を抱える自動車のエネルギー源の多様化の場面でもポジティブに働くこと(電気利用、水素利用、ガス利用の3通りに多様化する)、この2つが大きなものとしてまずは挙げられるでしょう。

同時に欠点もあります。小型の実験、実証の施設は建設が進むものの、大型の実用化までには数多くの技術開発が必要であり、同時に最初は費用がかかること。つまり今すぐの技術ではなく、10年ぐらいは時間がかかることです。また、効率の面でも議論があります。目指しているのは、電気→ガス→コージェネによる発電の場合、熱効率で30〜40%なので、60〜70%の電力はロスすることになります。

ただし、電気の発生するところからの観点では、バイオマス(+バイオマス由来の化石燃料も含む)は、太陽光エネルギーを自然が1%程度の効率でエネルギー化し、それを収穫、採掘し、輸送し、燃やすことで、電気となるためにはコージェネでの利用でも熱効率は0.5%程度にしかならないのに対して、PVでは15〜20%の効率で電気となり、それをガス化して、再度発電しても5〜8%の効率は保たれます。哲学的な話でもありますが、再生可能エネ100%の未来では、この源まで遡る効率を見直す議論も必要となってくるでしょう。

このソーラーガス、ウインドガスについては、フラウンホーファー研究所IWESのミヒャエル・シュテルナー博士がプレゼンしましたが、これまででもっとも蓄電に関する議論で、納得がゆくものでした。

上記の4種類の蓄電方法を他の対策(系統強化、ピークカットの捨電、系統負荷マネージメント)と併せて、またときには電気→電熱線での熱利用というケースも含めて、もっとも社会的に費用対効果が高く、環境負荷が小さなものをその時代ごとに選択してゆくという議論は、今後も永続的に続けられてゆくことでしょう。

1つだけ言えることは、系統安定化の対策は、安定化が不安定に脅かされるようになってからこそ、社会的な取り組みとしてはじまる技術や研究分野であることです。いまだに一方通行の系統という体制を維持している日本では、ドンドンとこうしたドイツやスペイン、そしてUSAでの取り組みとの差が開くことでしょう。また費用対効果で優れないHEMS頼みの消費サイドでの取り組みというツケは、将来的に必ず回ってきます。この点にも注意しながら、再生可能エネの取り組みは推進してゆく必要があることでしょう。

とまあ、もう一つの分科会での議論(熱分野のカスケード利用、自然エネ発熱、地域冷房、蓄熱)などについて、そしてSMA社での取り組みについては、後日、またブログで報告したいと思います。

再生可能エネルギー100%地域会議(その3)

それに続く優先順位として考えられているのが、需要側での電力消費量のマネージメントと蓄電です。

ロ)スマートグリッド
100%再生可能エネを目指す系統安定化対策の分科会では、スマートグリッドという言葉は忌み嫌われており、使わないことが専門家たちの口から出てきました。理由は定義が曖昧で、学術的に価値がなくとも行われているプロジェクトが沢山あるからということです。ということで、ドイツ語ではLastmanagement、系統負荷マネージメントという言葉で議論が進みました。

まずスマグリと聞いて、系統における状況をスマートメーターで感知し、各家庭に置かれた電気自動車における蓄電や家庭の電力機器がスマートメーターと連動して、系統の負荷を緩和するような物語を連想する方も多いと思います。もちろん、2050年や2100年の未来にはそうなっているかもしれませんが、今のドイツの問題を2020年とか、2030年に解決する方法ではないことは学術的に明らかだと専門家は言います。理由は技術的な問題ではなく、費用対効果の面で、全く割りに合わないからです。

今のドイツに必要なのは、コンビ発電所(太陽光、風力と連携、自動化したガスタービンやバイオマス発電)などの電力供給サイドでのスマート化と、変圧所などを基点とした系統自身の一方通行ではないスマート化(新しいアルゴリズムの開発など)、そしてドイツの電力消費量の8割近くを占める産業部門での、とりわけ電力→冷却部門での消費サイドのスマート化です。

分科会では、マティアス・ランゲ博士(energy&meteo systems)によって、バーチャル発電所のプレゼンが行われました。自治体や地域に存在する冷却施設(スーパーやロジスティックの拠点、倉庫など)と中・低電圧系統、再生可能エネルギー発電をスマート化するだけで、地域の系統負荷のピークカットがどのように行われるのか事前にシュミレーションでき、かつ実用化できるソフトについて説明があり、費用も安価で効果も大きいため、直ちに対策を始めるべきだとの議論がありました。
http://energymeteo.de/index.php

日本では、どちらかといえばHEMSなど建物単体でのスマート化することばかりに注目がなされていますが、マクロ的、社会経済学的な視野では、日本の小型から推進をはじめたPVのケースと同じように、高い買い物を社会がしてしまうのではないかとの危惧が、この分科会を得て、ますます強まりました。

社会として、最小の費用で、最大の効果を生み出すためには、発送電分離や国有化の前に、そもそも系統についての情報の透明性を上げる取り組みがより大胆に推進される必要が日本にはあるとの確信もより強いものになりました。

今後、大きな規模でツールとして利用されてゆくバーチャル発電所などの動きには注目して行きたいです。

再生可能エネルギー100%地域会議(その2)

優先順位の高いものは2つあります。系統の強化と捨電です。

イ)系統の強化
いよいよここに来て、政治が動き、各種の系統強化に関する法律を策定したり、Dena(ドイツエネルギー機関)が専門家調査を行い高圧系統の強化、新設に関するロードマップを明示したり、連邦系統機関がその促進を指示したりと、系統の強化に関してはてんやわんやの状況です。
http://www.dena.de/
http://www.bundesnetzagentur.de/

ただし、2020/25年までに2000kmとも、3000kmともいわれる系統の新設、強化は進んでおらず、現在着工中の系統は80kmで10倍のスピードが必要であるという厳しい現実も分科会では報告されていました。もちろん各種のシナリオがあり、捨電、蓄電、スマグリの推進状況によっても、あるいは再生可能エネ発電側の技術革新によっても、系統強化の必要量は変わってきます。

どちらにしても、ドイツ政府が掲げる再生可能エネ電力の推進のロードマップ(2020年35%、2030年50%、2050年80%)を達成するためには、今以上に柔軟で、強化された系統が必要なのは議論をまたないところです。

ロ)現在、ドイツの太陽光発電は設置量が18GWを超え、夏期の日中のピーク時には10GWを超える発電出力が系統に表れます。休日の電力消費量が小さなときには、日中、独全体の系統に太陽光発電の電力が30%を超えるときも散見され、とりわけ設置が集中するバイエルン州の南部では、系統の電力が100%以上太陽光だけで埋まってしまうこともあります。風力については、これ以上に厳しい事情を抱えているため、これまでにも、太陽光発電と風力発電については、系統の安定を脅かす場合に、遠隔操作で系統運営事業者が両発電を部分的に切り離す、いわゆる発電をストップして捨電することが、再生可能エネルギー法(フィードインタリフ)の定めで認められていました。ただし、系統運営事業者は、発電をしなかった分の捨電量についても、再生可能エネ発電者に対して固定買取価格の補償をしています。

この類の取り決めが2012年に改正されるフィードインタリフ法では、さらに強化される見込みで、風力発電やメガソーラーだけではなく、30kW出力以上の太陽光発電についても系統切り離しの遠隔操作装置を設置することが義務となりますし、30kW出力以下のものでも、遠隔操作の設置か、インバータのMAX出力を設置PV最大出力の70%に制限して、ピークカットを行うことのどちらかを行うことを義務付けたりしています。

また、地域的な系統が100%以上再生可能エネ電力で満たされる場合には、捨電量の買取価格支払補償を取りやめることも方針として決まりました。


このように系統強化と捨電(ピークカット)については、政治的にもある一定の合意がなされ、実質的にも推進されることが決まっています。

再生可能エネルギー100%地域会議(その1)

先日、ツイッターでも記したように再生可能エネルギー100%地域というドイツ環境省がdeEnetというNGO組織に委託して行なっているプロジェクトの国家会議に出席してきまました。

ここでいうところの「100%地域」とは、単に自治体や広域地域でのエネルギー消費量を100%再生可能エネルギーでまかなっているところではありません。理由はそれぞれの自治体が置かれている前提条件が多様で、単に計算上のエネ収支を統計しても意味がないからです。例えば、人口数千人の山村にたまたま大手電力事業者の都合で大型水力発電所が設置されていると、それだけで輸出地域になりますし、風力の場合でも、投資家や大手資本が大きめのウィンドファームを設置すれば、それだけに100%地域になりますが、それにはあまり意味はないからです。
http://www.100-ee.de/

ということで、各種のインジケーター(各自治体の前提条件を加味した上での目標値の妥当性、コンセプトやビジョンの質、市民参加の度合い、政治的な決議、達成度などなど)を用いて、このような地域、自治体がドイツ全土に広がれば、自ずと、国家的に再生可能エネ100%が達成できるだろうという地域が、すでに74選定され(もちろん希望自治体だけ)、候補地域として39が選ばれています。今後、こうした意欲高い目標を上げ、かつ、実績も十分なところをネットワーク化し、より先進的な取り組みを促進し、技術的、政治的に解決しなければならないポイントの早急な改善を行い、短期間で目標達成するように、同時に、こうした先進的な取り組みが面状に広がることを意図して、このプロジェクトはあり、同時にここまで2年ごとにカッセルで大きな国家会議が行われているわけです。
http://www.100-ee-kongress.de/

さて、前置きはこれぐらいにして、いろいろお伝えしたいポイントを。私は2つの分科会に出席しましたが、その中であった興味深い報告についてです。

1.安定供給について:
ドイツでは2011年の上半期で、再生可能エネからの発電の割合がすでに電力供給の20%を超えました。しかも日本のように大型ダム式水力は地形上ほとんどなく、ライン川などの大河に設置された大型水力の割合は3%ですから、7.5%を供給する風力、3.5%を供給する太陽光の設置出力増加とともに、系統への負荷が増大し、ますます安定供給を続けることが難しくなっています。

ドイツ国内には総出力で160GW程度の発電施設がありますが、風力、太陽光、コージェネなどを除き、かつ各種の発電所の稼働率などを考慮すると、安定供給できるのは90〜100GWと言われており、この総出力と安定供給出力の差は、さらに風力、太陽光を設置すればするほど開いてゆきます(ちなみに平日ピーク時の独の電力消費は夏場で60〜70GW、冬場で70〜80GW程度)。もちろん、全土に分散して設置されている太陽光と風力からの発電量が日中のピーク時に同時にゼロになることはないのですが、それでも2020年に再生可能エネ35〜40%が実施されるロードマップを考慮した時、各種の系統負荷軽減の対策は、素早く実行する必要があります。

ということで、優先順位ごとに、この対策について、分科会の報告を交えて、少し詳しくこれを論じてみましょう。

深夜電力、オール電化の行き着く先

日本に出張中にドイツで興味深い出来事がありました。電力4大大手の一つ、EnBWがヒートポンプ、蓄熱暖房器用の電力料金を大幅に値上げするというニュースです。

これまでとりわけ電力大手においては、電力で暖房&給湯を行うことを促進するために(顧客の依存度の向上を図るために)、日本と同様に特別な電力料金制度を採用してきました。省エネ政令などでほとんどのケースで、深夜電力蓄熱暖房装置については、新設の制限や既設の取替え義務がありますが、最近はとりわけ電力式のヒートポンプを設置させるために、見かけ上、採算がとれるように、電力大手は、特別に安価な電力供給を行って来たわけです。

例を見ましょう。これまでEnBW社との契約で、ヒートポンプ式の給湯&床暖房システムを導入した場合、昼間は15.12セント/kWh、夜間は11.02セント/kWhで熱用の電力販売制度がありました。公正取引委員会の調査でも指摘されていますが、このどちらとも採算は取れていません。要するに、通常の電力料金を支払っている人から多めにとって、大量に電力を消費する人たちへ助成し、熱需要の増加、つまり電力会社への依存度を向上させるためにこうした電力制度を採用してきたわけです。

詳しく見てみましょう。夜間の電力の販売額11.02セントのうち、消費税+環境税+電力系統権利金+再生可能エネルギー促進のための上乗せ金+コージェネ促進のための上乗せ金で、およそ7.5セント必要になります。つまり原価3.5セントでEnBW社は電力を調達し、同時に系統に載せて送電する料金、販売・営業手数料などをやりくりしなければなりませんが、平均的にはそれぞれ深夜で調達コストが4セント、送電費用が3セント、販売・営業手数料で2セント必要になると言われていますから、ヒートポンプのための熱供給深夜電力では、販売すればするほど、毎キロワット時5〜6セントの赤字になっていたわけです。

脱原発の云々の前に、昨秋の段階からEnBWの株主は、この現状に大変不満を持っていたらしく(当然ですよね)、価格算定の見直しを始めていたのですが、最終的にこの夏から、ヒートポンプへの電力供給料金は、昼夜一律の17.16セント/kWhにするということです(一般電力価格はおよそ23セント/kWh)。これなら利益はほとんどないものの、コスト分は完全にカバーされます。

困ってしまうのは、ヒートポンプ式の暖房&給湯を選択している家庭です。深夜電力式蓄熱暖房機の場合、こうしたリスクはドイツでは十分に社会に浸透していますし、よほど何らかの意図がない限り、すでに長らく新築で採択するケースは稀になっていますから社会的にインパクトはありませんが、電力式のヒートポンプは近年、新築の25%近くに設置されるようになっていますのでインパクトは強烈です。

昼夜の電力で13%、深夜の電力で56%の値上げが敢行されるわけですから、今後、暖冬が続くことを願うしか手はありません。EnBWに限らず、他の電力大手もそろそろ撒いてきた餌を回収し始めるということですから、電力式の熱供給システムを選択した人たちは、今後、ランニングコストの急騰で悩まされることになることでしょう。

日本でも、福島原発事故以降、オール電化、深夜電力制度については、すでに電力各社のビジネスモデルが破綻していますから、このようなことが現実にならないことを願うしか手はありません。

それでは、熱供給を電力&ヒートポンプではなく、高効率のガスで行っていればよかったのでしょうか? 答えはNOだと私は考えます。ドイツの場合、ここ10年で天然ガスの価格は2倍になっていますし、これは今後も北海油田の出来次第ですが、継続してコスト上昇してゆくと考えられるからです。

EUが2020年を目処に計画し、各国もそれに従って国内法を整備し始めているように、そもそも住宅の分野ではそれほど難しくないため、熱供給がほとんど必要ないレベルの躯体性能の建物を建てるべきであった(新築の場合)、既築であっても、暖房や給湯の機器に、あるいはランニングコストにお金をかけるのではなく、例えば金融危機対策でかなりの助成金がついていた時期に躯体性能を高める省エネリフォームを行うべきであったと総括することができるでしょう。

日本では、住宅や建物のランニングコストについては、躯体性能だけではなく、各種の機器の性能と使用状況(日本人特有の我慢も含めて)をすべてひっくるめて話しすることが多いようですが、まずはある一定レベルの優れた外皮の性能、躯体性能があり、その上で、余った予算で機器(ソーラーも含めて)を考慮するようにならないと、電力事業者や原油の取引価格に依存する今後数十年を送らなければならなくなります。

そのためにも、私たちは外皮の性能表示を統一した計算方式で表示することのできるエネルギーパス制度の普及を推進しています。こうした取り組みが私たちだけではなく、社会に広く普及され、この意図が多くの国民に理解されることを願って止みません。
http://energy-pass.jp/

ドイツと日本のフィードインタリフ

職業柄、私自身、言葉を多用していますし、沢山の言葉を読み込んでいます。その中でも、読んだり、聞いたりする受け身の言葉であると、6対4ぐらいの割合でドイツ語をインプットすることのほうが多いと思います。話したり、書いたりするアクティブな言語では、完全に日本語のほうが多いのですが、まあ、今回のブログは、そういうような前提でのお話です。

もちろん常にということではありませんし、何事にも例外はあります。ただし、言葉に触れたときに「カッコイイ」というか、美学的(Aesthetik)なものを感じることがドイツ語では多々あります。日本語の場合は、「ちょっといい話」的な言語という感覚が私にとっては強く、膝を打つような、背筋を電流が流れるようなカッコイイ言葉に出会う機会は残念がら稀でしかありません。もちろん、個人的、主観的な話なのですが。

さて、なんの話をしようとしているのかといえば、今回は法律のお話です。ドイツ語に触れたときにしびれるほどカッコイイと感じたのは、『Die Wuerde des Menschen ist unantasbar』からはじまるドイツの基本法(憲法)の第一条です。私の拙い翻訳能力でこの第一条を訳すとすれば:

「人間の尊厳に手を触れることはならない。これを尊び、護ることは、全国家権力の義務である」

となります。普通は以下のように訳されることが多いのですが・・・

「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、すべての国家権力の義務である」

http://www.bundestag.de/dokumente/rechtsgrundlagen/grundgesetz/gg_01.html

まあ、日本の憲法の第一条と比べるとカッコ良さが数段違うと感じるのは私だけではないはずですよね。

こんなことを書き始めたのには訳があります。ドイツの上院・下院は、再生可能エネルギー推進法、いわゆるフィードインタリフ、再生可能エネルギーからの電力の固定買取制度を7月上旬に改正しました(施行は来年1月1日)。略称で、FIT2012、あるいはEEG2012です。日本でも、おなじ方向性の法案が、菅首相が退陣をかけた法案の一つとして、今日のニュースでも取り扱われていますよね。ニュースによると、今国会での妥協の上での成立が、8月19日になると言われています。

それを比較するわけではないのですが、是非皆さまにドイツ版のフィードインタリフの第1条を知っていただきたいと思い、今回のブログ記事を書いています。いや、この文章も実にカッコイイんです。

さて、訳してみましょうか:
===============
第一条(1):法律の目的
この法律の目的は、とりわけ気候保護、環境保護への関心において、持続可能なエネルギー供給の発展を可能とし、長期的な外部コスト効果も考慮することによって国民経済の上での総コストを低減させ、化石エネルギー資源を節約し、再生可能エネルギーからの電力供給の技術をさらに発展させるためにある。

第一条(2):
上記(1)の目的を達成するため、この法律は電力供給における再生可能エネルギー電力の割合を少なくとも以下のように向上させることを目的とする:

1.遅くとも2020年までに35%
2.遅くとも2030年までに50%
3.遅くとも2040年までに65%、そして
4,遅くとも2050年までに80%

さらに、これらの電力量を電力供給システムに統合(インテグレート)する。
===============
http://www.erneuerbare-energien.de/files/pdfs/allgemein/application/pdf/eeg_2012_bf.pdf

うーん、ざっと日本語に直してみましたが、(1)の部分の文章のカッコ良さがあまり分からないですね。私の能力不足です。ただし、この目的数行を読んでいただければ、なんのためにこの法律がそもそも存在するのかが明確で、この法律で一体何をしなければならないのか、その結果何が実現されるのかが見えてきます。どれだけ時間をかけたのかは知りませんが、この表現を最終的にひねり出すために、官僚と政治家の方々は非常な苦労をしたことが良く伺えます。

ちなみに日本の法案は以下のとおりです(国会で修正されようとしている最終案についてはよく分かりませんが、この目的まではいじられないと思います):

=================
第一条:
この法律は、エネルギー源としての再生可能エネルギー源を利用することが、内外の経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの供給に係る環境への負荷の低減を図る上で重要となっていることに鑑み、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関し、その価格、期間等について特別の措置を講ずることにより、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用を促進し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
=================

言っている内容は同じようなニュアンスは漂っているのですが、ドイツのそれと比較すると、イマイチだと思いませんか?

ドイツでのそれは以下のことを言っています(後ろの○、×、?はそれぞれ日本の法案の目的にも含まれるかどうかを示したものです)。

1.気候保護、環境保護に貢献する(○)
2.エネルギー供給を持続可能にする(?)
3.外部コストも考慮することで、社会的な総コストを低減させる(×)
4.化石エネルギー資源を節約する(×)
5.技術革新をさらに進める(×)
6.そのための具体的な数値目標(×)
7.系統を含むシステムの安定供給(○)

もちろん、日本の法案で最も不満な点は、上記の6.であることは明確で、具体的な数値が載せられていないこと自体が論外なのですが、ドイツでは、再生可能エネルギーの「戦略的」な推進は、社会コストと低減させ、脱化石を可能とし、技術革新をも可能とするという理解が深いことが一目でわかります。

そもそも再生可能エネルギーを推進することで見かけ上のミクロでのコストが向上することを、社会としては投資とみなし、一定以上の効果が国民のために現れるからこそ3.4.5.を実現するためにこの法律はドイツでは20年続けられているわけです。そして、今後も続けられてゆくのですが、このへんがよく理解されているかどうかが、鍵となるように思います。

幸いにも、新聞報道によると、日本の法案は施行後、3年をめどに、大々的な見直しをするそうです。そのときまでに、多種多様な背景を持つ学術的な調査と分析がしっかり行われ、より専門性を高め、実効性を高めることを願ってやみません。法律が施行された時点で、関心が薄れ、劣悪な目標値を維持したRPSなどの悪夢を繰り返さないためにも、施行後こそ、国民が最大限の関心を持って議論を続けてゆくことが、生きた機能する法律として必要なことだと思います。

ということで、8月19日以降も、注意深く観察してゆきたいと思います。

独の脱原発は仏に依存? 修正について

先日記載したブログに対して、礼儀をわきまえない豚亀さんという方がコメントされたのですが、一部、私の記載ミスもありましたので、コメントの中で、訂正、解説しておきました。

ドイツの急速な脱原発は、フランスに依存か? (その1)

ご興味のある方はどうぞ。

FITについて

裏情報では、価格についても、期間についても、いろいろ調整がなされているようですが、取り急ぎ、表に出ている現在、いろいろ話題となっている日本版FITについて、情報を取りまとめ、問題を提議しておきました。

ご参考まで:
エコロジーオンライン・ニュース/ブログ
「FITは本当に有効なのか?」
http://www.eco-online.org/2011/06/16/%E8%8F%85%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%8C%E5%BC%B7%E5%8A%9B%E3%81%AB%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86-%EF%BD%86%EF%BD%89%EF%BD%94-%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E8%89%AF%E3%81%84%E3%81%AE/

脱原発、ドイツ政府の対応は?

昨日のブログでは、ドイツの脱原発の流れについて説明しました。一応、客観的な事実と数字を使ったものです。

今日のブログは、毎日ドイツの新聞各紙をななめ読みしているという前提での私の主観ですから、まあ参考になる人に、参考になればと思います。ですから、あんまり真剣に取られて、噛み付いてこないでくださいね。

さて、昨日のブログでは、これまでのドイツの脱原発の流れをおおよそ理解している人で、ドイツの脱原発に興味があれば、以下のような疑問を持つはずだということを書きました:

「ドイツ市民は一刻も早い脱原発を訴え続け、その力に政府は屈服する形で脱原発期限の短縮を余儀なくされましたが(トリガーはもちろん福島原発事故)、ドイツ政府の反応はどうですか?」

段階を追って取りまとめてみると、まず、福島原発事故直後、メルケル政権は、

1.ドイツで稼動している17基の原発の福島原発事故を踏まえての安全確認→具体的には原子炉安全委員会に報告書を作成させることを指示

2.安全性が低いと批判にさらされている1980年以前に建設された原発の3ヶ月間の即時停止(このモラトリアムの期間中に今後の原子力政策の進路を決める)

3.学術、政治、教会、経済など各分野の権威ある人物を17名人選し(反原発と原発容認がほぼ同数になるように)、倫理委員会を招集して、ドイツでの原子力政策の今後の行く末を結果オープンで議論し、報告書を作成することを指示→上記の原子炉安全委員会の報告書と合わせて、これを政府の議論のたたき台とする

という矢継ぎ早の対策を打ち出しました。傍から見ると模範的な危機管理だったと言えると思います。

しかし、8割のドイツ国民、そしてメディアでの支配的な見方では・・・

1.今後、連続する州議会選挙の選挙対策であり、3ヶ月のモラトリアムを超えれば、うやむやにするつもり

2.世論を意識して手を打っただけで、昨秋からの脱原発延長という自らの政策の責任については、何もコメントなしで評価できない

3.脱原発!脱原発! そんなことよりも、早く10年以内に脱原発すると決めろ

というようなもので、とりわけ1.の意見は大きく、その後の一連の州議会選挙では政府は惨敗、政府や首相の支持率は急落し、緑の党は躍進、保守政党の牙城であったBW州において緑の党の州知事が出現するという反応となりました。

そして、原子炉安全委員会からの報告書、倫理委員会の報告書が5月末までに上がってきます。しかし報告書の内容を読まずして、その前の時点からすでに政権内では10年を目処に脱原発というラインでの調整が行われます。

一応公式の脱原発が政府で決まったのが6月初頭です。どのようなラインであったのかというと:

1.1980年以前に稼動を開始した7基の原発の即時廃炉(故障ばかりで現在は稼動していない1基のポンコツ原発を含めると合計8基)

2.ただし、そのうち1基は2012年末までは、電力危機の際に立ち上げることができるようにスタンバイ待機(解体作業に入らない)

3.2021年に残りの原発9基を廃炉(ただし、そのうち2基は2022年末までは、電力危機の際に立ち上げることができるようにスタンバイ待機(解体作業に入らない))

4.2022年末の期日で、完全なる脱原発を達成

というものでした。それに対する、国民8割とメディアの反応は:

1.アホか、2021年に一斉に止めたら、やばいだろ。順次、段階的に廃炉にせよ(政府は4大電力事業者に対し、できるかぎり、ぎりぎりまで発電をさせることで、妥協案であることを示したかった→訴訟による脅しの危険性もあるため)。

2.そのスタンバイというのが曲者。結局、電力大手4社は、電力危機を自作自演して、うやむやのうちに原発なしでは危ないという世論に持ってゆくのではないか

3.世論を意識して手を打っただけで、昨秋からの脱原発延長という自らの政策の責任については、何もコメントなしで評価できない

4.脱原発!脱原発! 確実に10年以内に脱原発すると決めろ

という感覚でしょうか。そして、政府、首相の支持率は回復することはありませんでした。

さらにドイツは連邦制で、原子力発電所の許認可は州に権限がありますから、政府は自らの政策を州大臣と協議しなければなりません。そこで変更されたポイントが:

1.当たり前の話ですが、2021年に一斉に廃炉ではなく、建設時期に応じて、段階的に順次脱原発にする

2.しかし、スタンバイの話は死守することができました

このように政策がぶれ続けたことも致命的ですが、与党内でも立場によって様々で、今回の政府の決めた脱原発路線は、「4大電力事業者からの訴訟、損害賠償請求となることを危惧する」という脅しの理論や、「緑の党の真似事をしても、所詮オリジナルにはかなわない。なぜ保守党が一貫してきた、原子力=経済性という立場を貫かないのか」というお金の理論をコメントし、政府を批判する与党議員も出てきています。

そして6月9日、メルケル首相は今回の脱原発路線を国会に提出し、その中で、「昨秋の自らの政策は、福島原発事故という事実によって前提が異なることを(つまり誤りであったことを)自身で理解した」という完全なる敗北宣言をするまでに至っています。

それを受けて、野党である社会民主党、緑の党からは、

1.結局のところ政府の今回の政策は、私たちが2000年に打ちたてた政策と同じではないか。オリジナルの政策のような言い回しをするな

2.これまで保守政党が一貫して行ってきた「反原発活動家=極左→放水車と機動隊で排除」という歴史的な事実に対して、謝罪し、彼らの主張が正当であったことを認めろ

という反論がありましたが、結局は、野党である彼らが訴え続けていたことを、そのまま採択したことには変わりないので、今回の原子力法の改正については、苦々しい思いで一杯だが、賛成せざるを得ないという奇妙な立場にも立たされています。また、政府は、この意見に対して、

1.2000年の原子力法での取り組みは、理想だけを掲げ、経済的な実効性がない政策であり、私たちの今回の取り組みは、実効性があるものであるから、同一の政策としてみなされては困る

というものです。そう、脱原発10年以内は、福島事故の直後から、すべての政党で前提となったことであります。それを実行してゆく道筋が大切なことであり、今月一杯をかけて、今後、国会では脱原発10年以内を実現するための関連法案の改正8つ(合計7000ページに及ぶそうです)を審議してゆくことになります。その中には、再生可能エネ電力の固定買取制度(FIT)の2012年改正も含まれていますから、私は、どちらかといえば、省エネ、コージェネの推進、そして再生可能エネルギーの推進に関わる法案の行方を追ってみたいと思います。

ということで、ある程度、冒頭の回答になったでしょうか?

ドイツの脱原発政策について

最近、テレビやWEB、新聞、ラジオからなどの問い合わせが多いのですが、その理由はひとえにドイツ政府が脱原発政策を採択したというニュースを受けてのものだと考えられます。

その際に、勉強不足のメディアの方々は、私に対する質問をこう唱えています:

「ドイツ政府は脱原発を決めましたが、それに対する市民の反応はどうですか?」

この質問には誤りが1点、そして間抜けすぎて笑えないポイントが1点あります。

1.ドイツ政府は、2000年に電力事業者との協議の末、契約書を交わし、その後、2002年には原子力法を改正する形で、すでに脱原発を決めています。このときの脱原発期限は2021〜23年。この時間的に開きがあるのは、原子力法では、稼動している原発の残り発電を許可する量を取り決めたので、原発の稼働率によって廃炉される日時が前後するからです。ということで、脱原発の採択は、今から10年以上前に決まっており、今の政府が脱原発を決めたというのは誤りです。

ややこしいのは、その後、2009年の総選挙で過半数を獲得した保保連立政権がこの原子力法を、2010年12月に改正したためです。

メルケル首相とキリスト教民主同盟(保守)は、その前の選挙では、保保で過半数を獲得できなかったことから、社会民主党との大連立で政権を立ち上げました。このとき、社会民主党との連立政権の契約書には「原子力法には触れない」という一項がありました。しかし、このキリスト教民主同盟は、4大電力事業者からロビー政治家や多大な政治献金を受け付けている政党ですから、脱原発期限の延長は、いわば悲願ともいえるものでした。

そして先述したとおり、2009年には保保連立になり、昨年の秋から冬にかけて、脱原発期限を平均12年間延長する原子力法の改正を行ったわけです。ということで、福島事故の当時のドイツであっても、2035年前後に脱原発という政策を保持しています。つまり、脱原発をしないとは全く言っていないわけですから、いまさら、脱原発を決めたというのは事実ではありません。

そして6月9日、国会に政府は原子力法の改正を含む関連法案を提出し、議論がはじめられましたが、その脱原発期限は2022年、つまり昨秋に自身で強行的に改正した原子力法を、その前の時点に決められていたものに戻したというのが正解です。こういうのをマッチポンプと言うのでしょうね。もちろん、全く同じに見られないように、多少の変化はつけていますが(1980年以前のものを即廃炉、2022年という年度を明記など)、まあ、脱原発期限が延長されたのは福島事故の影響で、わずか6ヶ月のみという惨状です。


2.ここでもう一つの誤りについて説明します。それは、質問としては、「ドイツ政府は脱原発を決めましたが、それに対する市民の反応はどうですか?」ではなく、「ドイツ市民は一刻も早い脱原発を訴え続け、その力に政府は屈服する形で脱原発期限の短縮を余儀なくされましたが、ドイツ政府の反応はどうですか?」であるべきなのです。

上述しましたとおり、メルケル首相を含め、保保連立政権は、4大電力事業者にかなり依存しているため、脱原発を少しでも延長したい意向を持っていました。選挙後にエネルギー戦略を策定する段階(2010年の上半期)では、ロビー政治家からは2050年だとか、新設はしないものの、使える限りは既存の原発を使用するという内容のコメントが数多く散見されました。それに対して、ドイツ国民は10〜30万人規模のデモなどを駆使し、メルケル政権にプレッシャーを与え続けます。最終的に、12年間の延長が決まりましたが、政権内でもこの弱腰の政策に批判がでるほど保保政権は足並みが乱れていたわけです(もちろん保守政権内にも脱原発の延長反対を唱える政治家は多数おりましたが、お金があまりないので政党内では強い影響力を持っていません)。

各種のアンケート調査によると、大まかに言ってドイツ国民は以下のように分類されていました(福島事故前):
・2022年前後より早く、できれば即刻にでも原発の停止を求める=30%
・2022年前後に脱原発=35%
・2022年よりも長く原発を利用=15%
・脱原発しない=10%
・分からない=10%
(以下の調査などを参考:2006〜2010年までの環境省が研究機関に依頼し、定期的に行っているアンケート調査、国営放送ARDとZDFがそれぞれ行ったアンケート調査)

つまり、福島事故の前であっても、遅くとも2022年前後に脱原発という主張の方が65%おり、とりわけ昨秋に脱原発期限を延長するとなったときからこの割合はおよそ7割超に達します。

メルケル首相は、メディアでは「アンケート首相」とも比喩されている人物で、通常の政策は、各種の世論調査の動向を見ながら、自身の主張も変化させるという人物ですが、昨秋の原子力法改正の際は、ロビーと世論の板ばさみになっており、なんだかかわいそうなくらいの感じがしました。その数年前に、社会民主党との大連立政権を率いたときの精悍さは、2009年の保保政権樹立以降、色あせてしまった感があります。

ちなみに福島事故直後のアンケート調査では、脱原発については:
・2035年(そのときの現行の原子力法)=14%
・2021年(その前の原子力法)=24%
・可能な限り迅速に=60%
・分からない=2%
(国営放送ARD、3月14日調査)

ということで、2022年前後よりも早くに脱原発を求める声が84%に上昇していることが分かります。ということで、8割以上の国民が求めて、なんとか最低ラインではあるものの、その通りになった政策について、「市民の反応はどうですか?」という間抜けな質問をしてしまう日本のメディア・・・それよりも、「いかに今のメルケル政権が福島事故によって傷ついたのか?」「14%の支持しかえられないような政策を採択したことの理由は?」ということのほうが、一般には興味深いと思います。というか、設問の仕方の常識でしょう。

とまあ、今後も繰り返し、同じ設問に答えなくとも良いようにという思いで、今のドイツの脱原発の事情についてここに記しておきました。


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村上 敦
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