ドイツ・フライブルク市から地球環境を考える 村上 敦

環境先進都市ドイツ・フライブルク市在住のジャーナリスト村上敦(むらかみ あつし)が環境政策、エネルギー政策、都市計画、交通政策、など様々なジャンルの環境にまつわる話をお届けします。

ドイツの新築における新しいエネルギー源とセクターカップリング

中期的にはもともと予想されていなかった人口増加(南欧州からの大量の移住)、そして都市集中化、および経済活動の偏在化(南強・学園都市強)、出生率の上昇などの理由によって、2012〜14年ごろから急速に需要が増大し、2015年には大きな社会問題にまで表面化したドイツの新築需要の増大ですが、

各自治体の精力的な都市計画上の努力と市場によって、2016年の新築申請は32.9万戸までに上昇しました。


新築戸数が10年前の1.5〜2倍近くに大きくなったことで、省エネ改修のスピードが低下し続けているのは(建築市場がこちらに労力を割けず)、別の大きな問題としてあるのですが…


ただし、住宅総数の4150万戸からみると、新築はまだまだ小さな割合でしかありませんし、今後もこの新築30万戸レベルが持続的に続けられるとはあまり考えられていません。

その最大の理由は、現在のドイツの人口増加の一番の理由となっている南欧州からの優秀な若者の移民という玉も、少子化が急速に進むギリシャやスペイン、ポルトガルなどではそもそも尽きようとしていますので、持ってあと10年というところ。


基本は、ストックの改修と価値を持ったままの中古住宅の流通が、今後も建築、不動産市場の中心です。

さて、今回は、これらの住宅におけるエネルギー源(主に給湯&暖房)について。

ドイツのストックにおいては、
・49.4%が天然ガス(その多くが潜熱回収型)
・26.3%がオイルボイラー(ドイツは灯油ではなく軽油)
・13.7%が地域熱供給
・6.1%がバイオマスなどその他(一部、ブリケットなど)
・2.7%が電気生炊き(別荘など年中使わないところ、他のエネルギー源確保が困難なところのみ残されている)
・1.8%がヒートポンプ(多くが地熱利用で電気式)

という形で熱源が使用されています(ここまで正確に統計が取られているのは素晴らしい!)。


ただし、2016年の新築においては、
・44.4%が天然ガス(すべて潜熱回収)
・23.8%が地域熱供給(凄いですね!)
・23.4%がヒートポンプ(地熱主体)
・5.3%がバイオマス(木質)
・0.9%が電気生炊き(別荘など)
・0.7%がオイルボイラー(軽油・潜熱改修)
・1.5%がその他

という形に変化しています。(ほぼ例外措置であるバイオマス、電気生炊きを除いて)、オイルボイラーは市場からほぼ消滅したことが分かります。

https://www.bdew.de/internet.nsf/id/DE_Heizkostenvergleich

基本的には、ドイツで2010年に策定されたエネルギーシフトのシナリオでは、熱セクターでは、熱消費の総量を迅速に減らし、再エネ由来の総量を上昇させることで、再エネ割合の持続的な上昇を目論んでいました。


ただし、すでに数年後には再エネ由来の要であるバイオマス資源量がこれ以上増大させられないことが露見し、(人口増加などの予定外もあって)熱消費量の総量についても、削減され続けてはいるものの、思うような削減スピードにはなっていません。

というところで2015年ごろから出てきたセクターカップリングのコンセプト(電力・熱・交通の3つのセクター)。

これは、

1)予想以上のスピードで上昇している電力セクターの再エネ由来電力を、高効率なヒートポンプで熱セクターで活用すること、そして、

2)地域熱供給をさらに強化し、ヒートセンターにおいて、パワートゥーヒート(余剰電力を熱として巨大な蓄熱タンクに溜める)や各種の大型再エネ熱源、あるいは天然ガスコジェネなどを電力と熱と一体で供給運用し、それをIoT、VPPなどでつなぐことで電力系統の運用を柔軟化して、上記の電力セクターにおける変動性再エネ割合増加による影響を受け止める

という形の取り組みが進められています。

※ただし、ドイツの全戸がヒートポンプになることはありえません。そうすると、そもそも厳寒期の電力需要がフランスや日本などの「オール電化」された社会のようにいびつなピークを表し、年間で平均的な需要を作り出せないことから、その分、設備利用率の低い多大な容量の電力系統やネットワーク、柔軟度を準備することになりますので。
 

ですから、まだまだ安価で、手軽な天然ガスボイラーを追い落とす勢いで、1)のヒートポンプと2)の地域熱供給が実際に急増しているのを確認できてよかったです。

ただし、民生家庭用はボリュームゾーンではないですから、これが大勢であるわけではないこともご理解ください(日本の方はこれを誤解されているケースが多いので)。あくまで民生業務、産業などの大規模設備・消費場所が主戦場です。

40歳前後でピークになるドイツの上級管理職の給与

ドイツの上級管理職層の平均年収について。

40歳前後からの男女差が大きく離れてゆくのにも驚きますが(男のほうが無能なのに…)、

男性の40歳で平均11万ユーロ(約1300万円)というのは良い線ですね。
http://www.faz.net/aktuell/beruf-chance/recht-und-gehalt/studium-vs-ausbildung-ab-wann-gleicht-sich-das-gehalt-an-14919170/infografik-14916665.html

とはいえ、再分配を強く取る社会のドイツでは、40%は所得税と社会福祉負担費で普通は持っていかれますので、手取りは800万円以下が通常でしょう。


日本式と大きく異なるのは、45歳を境にして給与の上昇が止まることではないでしょうか。


専門職の平均所得でも45歳がピークになるようです。
http://www.faz.net/aktuell/beruf-chance/recht-und-gehalt/studium-vs-ausbildung-ab-wann-gleicht-sich-das-gehalt-an-14919170/infografik-14916629.html


例外はなんでもあるでしょうが、平均して、客観的な能力(=報酬)から見ると、そのほうがまともな社会だと個人的に思います。
 

老害が若者を食いものにしている社会に未来はありませんから。

ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか

ブログでお伝えすることが遅れましたが、エネルギーと同じようなコンセプトで(kWh=¥)、都市計画、交通を違う方向に整備するために舵を切り、地域経済を活性化させることはできないか模索した本(km=¥)を記しました。
WP_20170314_07_59_51_11 Pro

https://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AF%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E8%BF%91%E8%B7%9D%E9%9B%A2%E7%A7%BB%E5%8B%95%E3%81%8C%E5%9C%B0%E6%96%B9%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%82%92%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B-%E6%9D%91%E4%B8%8A-%E6%95%A6/dp/4761526394/ref=pd_sim_14_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=BKTV0S7842TAVW4SQJ4Q
 

ドイツの都市計画の基礎の基礎「ショートウェイシティ」について説明し、そして交通対策でまちを活性化する方策について論じています。

まちを活かすには、日本でのコンパクトシティ、立地適正化計画のような面=線引きでの取り組みではなく(もちろん大型商業施設の再開発でもなく)、ドイツのように面を意識した上で個々の建物ごとのミクロでの取り組みを積み上げて行く必要があります。


この本で試みたことは、都市計画の方針と交通政策について、これまでのまちづくり本にはない切り口で、とりわけ小規模都市、人口少数の農村も念頭においたことです。また、ウーバーX的なるもの、完全自動運転車など新しいテーマについての論考も含めています。


最終的なタイトルは出版社が会議で決めたわけですが、私個人的に内容的に即したタイトルをつけるなら、

『ドイツにはコンパクトシティという言葉すらないのに、なぜまちがコンパクトにまとまり、活気があるのか? 〜交通から考えるドイツのショートウェイシティ、移動距離の短いまち 〜交通手段を変更して、地域において経済的な付加価値の創造を行う、すなわちkm=¥のコンセプトとは!』

というものです。

もしよろしければ、お読みいただけると幸いです!
 

ドイツ『建物エネルギー法』の2017年中の成立断念

さて、すごく残念なんですが、メルケル率いるCDU/CSU党は、基本的に、これ以上の気候保護に邁進するつもりがないことを、決定的に、明確にしました。
http://www.tagesspiegel.de/wirtschaft/energiepolitik-koalition-laesst-gebaeudeenergiegesetz-scheitern/19594854.html


ゴリゴリ保守の立場からエネルギー政策を語るDena(ドイツエネルギー機関)まで残念がっている…
https://www.dena.de/newsroom/meldungen/2017/gescheitertes-gebaeudeenergiegesetz/


本来は、2017年の秋の総選挙前に、つまり夏休みが始まる前までに、これまでのドイツにおける建物の省エネ性能&再エネ性能を決める『省エネ法』『省エネ政令』『再エネ熱法』の3つの法律を取りまとめ、新しい法律として『建物エネルギー法』を決議し、施行する必要がありました。


これはEU指令(EPBD)による国内法を整備するもので、策定が急がれる背景には、2019年1月1日から公共建物については『ゼロエネルギー建物(超低エネルギー建物)』の新築が義務化されるからです(法律施行後に、はじめて2019年以降の公共建物の新築の構想をはじめられるわけなので、時間的な猶予が必要です)。ちなみに公共以外のすべての建物は2021年1月1日からゼロエネルギー建物が義務化されます。
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/02460002.pdf


国内法の整備では、そもそもの『ゼロエネルギー建物(超低エネルギー建物)』とは何ぞやという定義をする必要があります。

EU令では「建物に必要なゼロに近い、またはきわめて僅かな量のエネルギーは、その大部分を、オンサイト、または近隣で生産される再生可能エネルギーにより賄われるものとする」と記してあるだけなので、

★何をもって「きわめて僅かなエネルギー消費量」として、
★何をもって「それを可能とする建物の性能」とするのか、
各国ごとの気象条件や建物の仕様に置き換えて、それを定義する必要があるわけです。


そこで、このドイツにおいては、この新法『建物エネルギー法』を策定し、これまでによる政治的な議論と専門家・ステークホルダーの意見を含めた環境・建設・原子力安全省による草案では、現行の省エネ政令で示す最低限のミニマムスタンダードから45%省エネを厳格化した建物(KfW55)を『ゼロエネルギー建物』と定義づけることに取りまとめられており、

この内容については、各種のエネルギー関連、建築、不動産関連のステークホルダーも、驚くべきことに産業団体であるBDIですら一定の理解を示しており、素早くこれを法制化することで、投資行動や経済的な枠組みが確定されることが市場から望まれていました。
※フランクフルト、フライブルク、ハイデルベルクなどの省エネ建築の盛んな自治体ではすでに数年前からこの水準を自治体内の建築基準としていますから、それほど驚くべき技術水準ではありません。
 

しかし、連立パートナーの社会民主党、および環境・建設大臣のヘンドリクスによる交渉もむなしく、CDU/CSU党は「この基準では厳しすぎて経済性が担保できない」として、連立政権委員会でこれ以上の審議を続けることを拒否、この法案は一旦廃案となって、夏休み前に国会に提出される可能性は潰されました。


これによって秋の総選挙の後にこのテーマは再び議論されることになりますが(すぐにはこの法案に取り掛かることは困難であり、おそらく来年の夏休み前に再度、法案の提出が間に合うかどうか分からないタイミングとなりそう)、そもそも2019年1月1日からのEU令をドイツが順守することもほぼ絶望的になりました。


なにやってんだか…


先ほどのブログ記事では、2020年のドイツの温室効果ガスの排出量の削減目標の達成は絶望的と書きましたが、こうしたCDU/CSU党のサポタージュのため、その後の気候保護やエネルギーシフトの目標自体にも悲観的にならざるを得ません。


日本ではメルケルや政権党であるCDU/CSU党自体がエネルギーシフトを牽引しているという誤った(?)評価をする方もいるようなので、私個人の意見では「彼らが妨害しまくっているにも関わらず、市民と市場がそれをけん引している」ことを改めて強調したいと思います。
 

この辺の背景は、以下の私と同僚で行った訳書がお勧めです。メルケル自身、エネルギーシフトに関心はほどんとないのがよくわかります。
http://amzn.to/2nEm4Dw

2016年のドイツの温室効果ガス排出量

ドイツの2016年の温室効果ガスの排出量が、ひっそりと連邦環境庁のHPにアップされました。
https://www.umweltbundesamt.de/themen/klima-energie/treibhausgas-emissionen
(下のほうの経年変化のグラフです)

緑の党の委託によるarepoコンサルトのレポートも興味深いかと。
http://www.baerbel-hoehn.de/fileadmin/media/MdB/baerbelhoehn_de/www_baerbelhoehn_de/THG-Kurzstudie_2016.pdf

そして、AGBEのエネルギー統計でも2016年の詳細なものが上がってきています。
http://www.ag-energiebilanzen.de/22-0-Pressedienst.html

ということで、2016年のデータがぞろぞろと上がってきているので、少し総括してみましょう。

2010年にドイツ政府が打ち出した「エネルギーシフト」という試みは、

『現在、ここ5年間、統計上は停滞している(エネルギーセクター部門、業界の変化は、革命といえるほど劇的に進んでいるにもかかわらず…)』

と表現するのがぴったりなように思います。


2010年の時点で9.42億トンだったCO2排出量を2020年までに7.51億トンまでに削減するという意欲高い目標は、例外なしで、毎年2%ずつの削減を継続的に続けてゆかなくては達成できません。

しかし、2012年からドイツでは、
〃从儚萋阿一大活性化(産業でも、製造でも、輸出でも、EUで1人勝ち)、
交通(とりわけ貨物輸送)総量も増加、
人口の増加(とりわけ南欧州から若者、高学歴層が大量流入)、
という社会背景によって、CO2排出量は削減の足踏み状態であり、2016年には9.06億トンと3年連続で前年並みにとどまりました。

これで2020年目標の達成がほぼ不可能であることが確定してしまいました(経済の崩壊でもない限り、人口が増加を続けているのに、今後4年間、毎年4%以上の削減というのは実現不可能です)。

もちろん、1990年の12.51億トンを持ちだせば、すでに2016年までに28%の削減を達成しているとも言えますが、これを可能にしたのは、旧東ドイツの非効率な経済体制を西ドイツの投資によって大改造したこと、加えて、日本と同じようにグローバル化によって低付加価値の工業製品の生産地が他国に流出したことによる恩恵の割合も大きいです。

しかし、エネルギー源の内訳を見ると、方向性としては、石炭・褐炭の消費量が減少し続け、天然ガスや再生可能エネルギーに置き換わってきているのも事実です。全然、悪くない方向の発展があります。


ただし、全体のパイがなかなか小さくならない。


日本のように人口が縮小し、毎年輸出を減らし、名目GDPもすり減らしているような国ならともかく、毎年記録的な好景気を続け、輸出も記録更新、財政も黒字になるなど、ありえない経済状況の現在のドイツでは、「総量」を表す統計だけを見ていると見落としてしまうものがあるのかもしれません。

しかし、新興国も同じように人口増、経済発展をしている上で、パリ協定では徐々に縛りをかけてゆこうとしているわけであり、ドイツだけが例外とするわけにもゆきません。


エネルギーセクターの中の世界は、毎年のように破壊的なイノヴェーションが生まれ、業界は激しく変化しています。

それらの成果が数年後に「総量」のほうにも、大きく影響してくるのでしょうか? その結論を出すのはまだ時期が早いのかも知れませんが、楽しみな未来ではあります。


そして同時に、メルケル率いるドイツ政府にはこの時点で、もう一度謙虚になっていただき(無理かなあ…)、

〆謄┘揚電の推進にブレーキをかけ続ける政策を直ちに取り止め(とりわけ市民発電に対するブレーキがひどい…)、

△海譴泙任曚箸鵑豹覆泙覆った電気自動車の大々的な普及促進と、HVさえ搭載していない通常のガソリン・ディーゼル車、とりわけ大型車に対するいよいよの阻害・罰則措置などの対策をして、アウトバーンにも面状に時速制限を設け、

新築ばかりに労力が奪われている建築市場において、もう一度省エネ改修事業を2005〜2010年の頃のように一大推進を支援する、

というエネルギーシフトの基本のキホンである3本柱を地道にサポートする政策を打ち出していただくことを期待したいと思います。

エネルギー政策については、世界の新興国のお手本でありえる工業国、大国は、ドイツしかないと思うので。

上記について理解を深めたい方は、以下のレポートをどうぞ:
https://www.club-vauban.net/2015/10/06/2050%E5%B9%B4-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%B6%88%E8%B2%BB%E9%87%8F%E3%82%9244-%E5%89%8A%E6%B8%9B%E3%81%B8-%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%82%92%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E6%8E%A1%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E5%90%8C%E6%A7%98%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C/

電力・熱・交通のセクターカップリング

中期的にはもともと予想されていなかった人口増加(南欧州からの大量の移住)、そして都市集中化、および経済活動の偏在化(南強)、出生率の上昇などの理由によって、2012〜14年ごろから急速に需要が増大し、2015年には大きな社会問題にまで表面化したドイツの新築需要の増大ですが、

各自治体の精力的な都市計画上の努力と市場によって、2016年の新築申請は32.9万戸までに上昇しました。

新築戸数が10年前の1.5〜2倍近くに大きくなったことで、省エネ改修のスピードが低下し続けているのは(建築市場がこちらに労力を割けず)、別の問題としてあるのですが…

ただし、住宅総数の4150万戸からみると、新築はまだまだ小さな割合でしかありませんし、今後もこの新築30万戸レベルが持続的に続けられるとはあまり考えられていません。 南欧州からの優秀な若者の移住という玉も、少子化が急速に進むギリシャやスペイン、ポルトガルなどではそもそも尽きようとしていますので、持ってあと10年というところ。

基本は、建物ストックの改修と価値を持ったままの中古住宅の流通が、今後も建築、不動産市場の中心です。

さて、今回は、まずはこれらの住宅におけるエネルギー源(主に給湯&暖房)について。

ドイツのストックにおいては、
・49.4%が天然ガス(その多くが潜熱回収型)
・26.3%がオイルボイラー(ドイツは灯油ではなく軽油)
・13.7%が地域熱供給
・6.1%がバイオマスなどその他(一部、ブリケットなど)
・2.7%が電気生炊き(別荘など年中使わないところ、他のエネルギー源確保が困難なところのみ残されている)
・1.8%がヒートポンプ(多くが地熱利用で電気式)

という形で熱源が使用されています(ここまで正確に統計が取られているのは素晴らしい!)。

ただし、2016年の新築においては、
・44.4%が天然ガス(すべて潜熱回収)
・23.8%が地域熱供給(凄いですね!)
・23.4%がヒートポンプ(地熱主体)
・5.3%がバイオマス(木質)
・0.9%が電気生炊き(別荘など)
・0.7%がオイルボイラー(軽油・潜熱回収)
・1.5%がその他

という形に変化しています。
https://www.bdew.de/internet.nsf/id/DE_Heizkostenvergleich

(今ではほぼ例外となったバイオマス、電気生炊きを除いて)、オイルボイラーは市場からほぼ消滅したことが分かります。

エネルギーシフトとセクターカップリングの話です。

基本的には、ドイツで2010年に策定されたエネルギーシフトのシナリオでは、熱セクターでは、熱消費の総量を迅速に減らし、再エネ由来の総量を上昇させることで、再エネ割合の持続的な上昇を目論んでいました。

ただし、すでに数年後には再エネ由来の要であるバイオマス資源量がこれ以上増大させられないことが露見し、(人口増加などの予定外もあって)熱消費量の総量についても、削減され続けてはいるものの、思うような削減スピードにはなっていません。

というところで2015年ごろから出てきたのがセクターカップリングのコンセプトです(電力・熱・交通の3つのセクターをカップリングすること)。


これは、

1)予想以上のスピードで上昇している電力セクターの再エネ由来電力を、高効率なヒートポンプで熱セクターで活用すること、そして、

2)地域熱供給をさらに強化し、そのヒートセンターにおいて、パワートゥーヒート(余剰電力を熱として巨大な蓄熱タンクに溜める)や各種の大型再エネ熱源、あるいは天然ガスコジェネなどを電力と熱と一体で供給運用し、それをIoT、VPPなどでつなぐことで電力系統の運用を柔軟化して、上記の電力セクターにおける変動性再エネ割合増加による影響を受け止める という形の取り組みが進められています。

ですから、まだまだ安価で、手軽な天然ガスボイラーを追い落とす勢いで、1)のヒートポンプと2)の地域熱供給が実際に急増しているのを確認できてよかったです。

ただ、まあ、民生家庭用はボリュームゾーンではないですから、これが大勢であるわけではないこともご理解ください(日本の方はこれを誤解されているケースが多いので)。 あくまで民生業務、産業などの大規模設備・消費場所が主戦場です。


ということで、VPPとは何ぞやの話もしたほうが良いのですが、

自分で書くよりも、電力の需給バランス、VPP、系統の柔軟化系のコンテンツについては、最近の環境ビジネスさんに掲載されている記事群が、ひと頃と比べると急成長して、有意義な記事が満載です。


稲垣さんナイス!
https://www.kankyo-business.jp/column/014483.php


西村さんもイイね!
https://www.kankyo-business.jp/column/014486.php


村谷氏のコラムは、村上が言い続けていることと重なりました(敬服)
https://www.kankyo-business.jp/column/014487.php


でも、以下のようなレベルの記事だった時代であると、情報格差が大きいので、村上の講演でも「スゲー!深ーい!」感を演出することは容易だったんですが、記事などでこうしたことが上がってくると、村上的にはちとやりにくい…
https://www.kankyo-business.jp/column/013208.php


でも、そんなことはどうでもよいとして、インバランスやVPPなどに対する正しい理解の情報が増えることは世の中のためにも素晴らしいことですよね。

ということで、VPPってスマートホームとか、スマグリとか、蓄電池万歳などを単に焼き直した流行の言葉だけっていう日本の状況とドイツの状況は違うんです… 


そして、もう一つのセクターカップリング、電気と交通をつなぐのは当然こいつらEVで、ドイツでも、欧州でも、すでに(イスラエル、ノルウェー、中国などに比べて)遅すぎた感はあるけれども、これから快進撃が期待されています。

http://www.sonnenseite.com/de/mobilitaet/deutschlands-autobauer-wechseln-in-den-oeko-modus-54-prozent-mehr-elektroantriebe.html

日本で持続的に利用可能な木質バイオマスの量は?

日本ではFITにおけるメガソーラーブームがそろそろひと段落という感じになってきましたが、木質バイオマス発電については、なかなか目を見張るものがあります。いや、ネガティブな意味で…
http://www.mori-energy.jp/hatsuden1.html

こんなに大量に、木で発電するという馬鹿なことをやっていると、いよいよ治山という意味で恐ろしい時代がやってくるなと危惧していますが、やっている関係者は良いことをやっていると思い込んでいるところに、日本の木質バイオマス発電のゆがんだところが凝縮されているんだと思います。

その「良いことをやっている」という思い込み(妄想)の根拠はおおよそ次の2点になります:

1.地域産材(とりわけ未利用材)を主体として利用することにしているプロジェクトでは、木質バイオマス発電をすることで、燃料を供給するチェーンを展開することで、|楼茲諒置されている森に手を入れ、間伐などの作業を進め、地域に雇用場所を作り、2畫造了蛎蕊瑤粒萓化をもたらす、環境にも良いし、みたいな感じの妄想です。

それぞれ、
1m3=6000〜9000円のB級材を産出するためにすら、1m3=4000〜6000円の低質材を産出するためにすら手が入れられなかった森に、なぜ、1m3=3000円前後であるべきのカスケード利用の最下端であるはずの木質チップを生産することで、森に手が入るのか? そんなゴミを拾いに行くために日本の道なき、急峻な山に入っていって、森に必要とされている気の利いた形で手が入り、整備されることなんて妄想でしかありません。木質バイオマス発電によって、間伐などの手が入るようになるわけでは100%なく、単に助成措置が別でついているから(木質バイオマス発電などなくとも)、間伐されているだけです。結局は、コストとの兼ね合いで、皆伐される山も大量に出てくるでしょうし、その費用対効果は、時間経過とともに(最初は有利なところからチップを集めてくるので)悪化し、時間経過とともに、山がより荒らされることになります。

◆↓こうした現状を無視した妄想で実施した木質バイオマス発電は、需給バランスが崩れ、チップの価格が高騰したときに、事業者として即刻破たんさせるべきなんですが、往々にして、地域に利益があるという口車で、追加で助成措置などが入ったり(それをやるなら、FITなど適用させるべきではないでしょう)、あるいは自治体や県の税金からの資本を投入して三セクなどの形態で行うため、ある程度の高額でも発電を続けてゆくことになります。すると、木材のカスケード利用の川上(合板、製紙、製材など)における需要とが被ることになり、材は高騰し、健全に経営していたはずのそうした雇用効果の高い木材チェーン産業の雇用が失われる可能性を飛躍的に高めます。そもそもバイオマス発電単体では、発電所などでほとんど雇用を生み出しませんし、とりわけ、その施設が地域資本ではなく、地域外から(東京など)資本を持ち込んだものであると(設備・プランとも輸入とか、別地域で作られたものであると)、域内GDPは逆に減少することにもなりかねません。ということで、上記のサイトで示されたような無数のプロジェクトが、その半分でも実現してしまうと、地域から雇用を減らし、地域の活性度を奪ってしまう結果になります。

2.外材(とりわけチップ輸入、やしがら輸入など)を主体として利用することにしているプロジェクトでは、ず得顕椎愁┘優襯ーを推進しているのだから、地球温暖化の対策にもなり、地球環境に貢献する、というような感じの妄想を持っています。

ただし、
そもそもFITの賦課金負担によって、国民がお金を出すことが正当かの判断を問われることになりますし(FITを適用しないのなら、勝手にやれば良いのですが)、い砲弔い討蓮∈謄┘佑琉譴弔任△詭攫繊丙燃)バイオマス発電をすることでも、その輸入する材料を出荷する国での環境保護、自然保護のスタンダードは、日本のそれよりも格段に低いケースがほとんどで、現地での乱伐、汚染の排出などを伴います。同時に、EUで行われた多くのバイオマス燃料に関するLCA調査でも明らかなように、そうした輸入バイオマスは、(とりわけ森林などの土地消費と汚染排出によって)化石燃料よりもLCAバランスが悪いということが往々にして起こりますし、日本には、EUにあるようなそれが本当に意味のあるバイオマスなのかどうかを認証するシステムも義務化されていません。

ということで、最悪の木質バイオマス発電ですが、上記のことをお話した上でも、それでも、自分の地域だけは、入念に地域における需要量と供給量を計算しているから大丈夫だとうそぶく方々が沢山います。というか、大多数はそう。

で、ここでの大きな問題点なのですが、,發掘近隣の自治体や県で同じような真似をするプロジェクトが後で出てくるなら、マスタープランなどで調整しているわけではないので、その目論みは完全に破たんすること、△修Δ靴進々は、地域で供給できる木質バイオマス(チップ)の量を、地域にある森林面積やその蓄積から推計して計算していることがほとんどであることです。

いや、そういうポテンシャルからの計算(とらぬ狸の皮算用)は、材料をわざわざ運び出す必要のない太陽光発電や風力発電の場合は有効ですが、木質バイオマスの場合は意味がありません!

これでやったことで、ドイツでも、オーストリア(ウィーンやギュッシングなんか本当に死んでいます)でも手痛い失敗を過去にしたわけです。

例えば、食品廃棄物を原料にバイオガス発電を計画する場合、あるエリアの人口と可処分所得から、食品購入や外食に使える総額を割り出し、それを食材量に変換し、そのうちのロス率を推計することでポテンシャルを導き、施設を建設する人なんかいるはずもないことは自明です。

基本的には、地域で「すでに処分」されている食品廃棄物の量から、それをどれだけ自身の発電に回せるのか営業し、あたりを付けたうえでプロジェクトを開始するのが普通です。でも、この普通が、木質バイオマスになると(太陽光や風力のポテンシャルの意味とごっちゃにして)いきなり消滅するのが怖いところです。

木質バイオマス発電を計画できるのは、地域において、「すでに存在する」木材チェーン産業から、「すでに現状で」どれだけの廃棄物(カスケード利用の最下端なんだから当たり前ですよね)が無駄に処分されているのか調査し、実際に営業してあたりをつけて、計画するべきなんですが、こうした形で計画されているところは皆無です(でなければ、上記で紹介したリンク先のように大量の発電所が計画されるわけがない!)。

ということで、日本で今のところ、持続可能に産業として利用できる木質バイオマスの総量について、ざっと検討してみましょう。

基本的には、発電用の燃料として理性的に利用できる量は、最大でも国産材の製材量の10〜20%程度が良いところでしょう。

統計を見ると木材の年間の日本国内の総需要量は7500万m3、国内生産量は2500万m3、輸入量は5000万m3という感じです。
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/150929.html
http://www.maff.go.jp/.../kouhyou/mokuzai_zyukyu/index.html

その国内の2500万m3のうち、製材としては1500万m3程度です。これが製材された際に、歩留まりではじかれた分のカスケードの最下端と仮定すると、使えてもせいぜい10〜20%が良いところでしょう。とするなら、年間150〜300万m3程度が(そして建築取り壊しなどで出てくる廃棄物としての廃材を加えたものが)、持続可能な産業としての木質バイオマスの利用可能になります(これでも多すぎかもしれませんが)。

ただし、廃棄物の廃材については、すでに日本ではセメントや製鉄などの分野で、石炭に混燃させる取り組みが90年代から行われ、需要のほうが供給を上回る感じだったわけですから、純粋にFITで進めて良いのは、全国で例えば5MW出力(年間チップ消費量10万m3)の木質バイオマスの発電所であれば、最大でも15基程度で終了です。

ということで、発電出力であれば、「現状!」の日本の川上の森林産業の力量であると、最大でも75MW発電出力分、つまり8760時間×設備利用率80%≒5億kWh程度でしょう。これは、国内の総発電量10,000億kWhの0.05%に該当するのみです。

これ以上の発電量を期待するならば、

1.禿山が増加する(そして、その植林コストは税金ですし、災害が発生したら税金で補償するわけです)

2.合板や製紙など、他の低級材を取り扱う産業構造が目茶目茶になる(材料の取り合いでチップが高騰し)、雇用が失われる、地域がより貧しくなる

3.外材に頼るなら日本よりも自然保護関連の法整備が緩い国々で悪影響(乱伐・汚染)を出しながら、大部分は原油を輸入するよりも悪いLCAで、チップやヤシガラを輸入する

4.本来は製材用として使われる予定だったB級材(日本の短寿命の家でも30年間使用され、炭素を固定)までが、瞬時に燃やされて終了のチップとなってしまう

という事柄が発生することは、子どもでも容易に想像できます。

で、今の日本では、これら4つすべてがすでに同時進行で進んでいるところなので、それでもやる方々を、私は放火魔と呼んでいます。


もちろん、今後の話をすれば、

1.日本の山々に20〜30年間投資をし続け、森林路網が整備され、

2.最終林形を定めた後(できる限りの大径材、高級材という付加価値を山で作りだす!)、皆伐に頼らない複層林、恒続林という形で、

3.高い職業訓練と厳しい安全教育を専門の学校でしっかりと受け、最新の防護設備、機械設備など適材適所で駆使して、多くの山々がプロの手によって整備され、

4.製材所や森林組合は、安易なエネルギー供給で将来を潰すような真似をせず、地道な営業努力と商品開発、市場開拓を続け、木材チェーンを盛り上げ、

5.それぞれの川上の木材チェーンの生産性が高まることで、品質、価格ともに外材を上回るようになり、

6.国内の木材需要である7500万m3をほとんどすべて国内で処理するばかりか、場合によっては相当量を輸出にも回せるようになるなら、

7.国内で産業として消費しても良い木質バイオマスの総量は上記の10倍の1500〜3000万m3、5MW発電出力の木質バイオマス発電所が150基程度(国内の発電量の0.5%程度)にまでは上昇させることも、30〜40年かけると、持続的に可能になるはずです。

ただし、上記の順序ではなく、いきなりカスケード利用の最下端の燃料利用として、森の木を燃やし始めている日本では、(せっかく戦後の拡大植林したものが育って、いよいよ何かの手を打てるようになったばかりの状況なのに)これらが叶えられるわけはないことも、子どもに対してであっても説明すると理解してくれます。

まあ、頭の中がカネばかりの人たちには、また、給料分の仕事をしていないのに、給料を得ている老害たちが沢山の日本の山間部の多くでは、こんなこと書いてみてもほとんど意味がないのでしょうが…

ドイツMV州・風力発電事業に住民の資本参加を義務付ける法について

ドイツで再生可能エネルギーの推進、およびエネルギーシフトに対して、国民の受容度が高いのは、

基本的には地域の市民出資による市民エネルギー組合だとか、合資会社だとかで、風力発電や太陽光発電などのプロジェクトを、その地域に住んでいる住民自体が推進しているケースが、

日本と比較して、飛躍的に多いという理由もあります。


日本でも、ドイツでもポテンシャルの高い太陽光や風力による発電は、従来型の化石燃料などと比較してエネルギー密度の低いエネルギーを利用することから、それを収穫して、ある一定量の規模で使おうとすると、これまで海岸沿いにポツン、ポツンと設置してあった火力・原子力発電所が必要とした土地消費量をはるかに上回る土地が、全国に面状に必要になるという性格を持っています。

ということで、ピンポイントでの地元対策だけではなく、全国面状に再エネの推進に対する市民、国民の受容度を高めないことには、大きな規模での進展はありえません(もちろん、民主主義的にやらないなら、何でもありなんですが)。

ということで、一部の事業者(往々にして、大都市部に立地する大企業や裕福層)だけが、FITによる(再エネ設備設置による)利益を享受し、FITの賦課金は国民が横並びで負担し、同時に全国津々浦々再エネ設備の負の影響(土地消費、景観の変化、騒音、自然破壊など)を国民が受けるようになると、どこかの段階で「再エネの推進=悪」という社会正義が出来上がってしまうことになります。

そうした意味では、今の日本はこれ以上想定できないほど最悪の路線を一直線で進んでいるように見受けられますし、ドイツはそうならない道を常に(妥協しながらも市民の抵抗で)選択して、進んできたように観察できます。

その王道が、再エネ設備が立地する場所の地域住民が、その再エネ設備に投資し、利益を享受することで、受容度を高めるという取り組みです。


とはいえ、こうした市民出資、市民組合による大規模・営利プロジェクトという経営精神と強い自助精神を必要とする取り組みは、ドイツのどの地域でも、同じ強さで行われているわけではなく、とりわけ南部では強いですが、旧東ドイツや北ドイツでは弱いという傾向があります。

ということで、政治的に、今まで以上に市民による投資参加を促したいメクレンブルク・フォアポメルン州(MV州)では、ドイツでははじめてとなる以下のような法律を施行しています(チューリンゲン州でも検討中、デンマークがお手本)。
http://www.landesrecht-mv.de/jportal/portal/…/bsmvprod.psml…


この法律は「ウィンドパークへの自治体・市民参加法」と名付けられ、2016年5月末から施行されました。


具体的には、この州内で風力発電を開発する事業者は、

‥蟷饒躋曚虜把20%を地域出資に(風車から直線距離で半径5km以内に居住する住民に10%+風車設置から5km以内に領土を持つ自治体に10%ずつ)提供しなければならないことが義務付けられています。また、市民出資の場合、一口は500ユーロ以下にすることが決められています。

対象は高さが50m以上の風力発電

そして資本参加の提供ではなく、代替案としては、
・自治体の同意があれば、風車設置から5km以内に該当する自治体が毎年一定額の支払い(この風力発電事業で得られる利益の10%)を受けることで免除されます。
・市民に投資参加を促さない場合は、該当する地域住民に対して貯蓄商品を提供することで免除されます。例えば、風力発電事業者は利益の10%を毎年適当な銀行に一旦預入します。その銀行は、該当する5km以内の市民がそこで定期預金を組む場合(3〜10年で満期とする元本保証)、その利子を、毎年繰り入れられる風力発電からの利益で支払うことになりますので、かなりの利回りが期待できるという仕組みです(かつ、リスクが少ないので、投資に慣れていない市民も利用しやすい)。
http://www.regierung-mv.de/…/B%C3%BCrger-und-Gemeindebeteil…



もちろん、風力発電事業者の所有権を侵害する可能性の高い法律ですが、同時に、これによって風力発電への地域住民の受容度が高まるなら、反対運動などにあって、計画が遅延したり、最悪中止になるようなリスクを低減させることができます。

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もう、こういうの日本でも即時に必要じゃないでしょうか?


日本では、乱暴な方々が全国各地ですでに暗躍していますから、あと5年もすると、(メガソーラーと同様に)国中が風車反対だらけになりそうです。

 

脱原発で電力大手にドイツ政府が訴えられて…(その5)

ということで、電力大手は困った事態に追い込まれました。

蛇足ですが、追加でその後の経緯と状況についても言及と考察してみます。

まず、原発の廃炉時期について(あるいは損害賠償金について)裁判で係争中という状態までであれば、それは売り上げ・利益をまだ無限に膨らむ可能性のある財産として計上できますが、基本法裁判所で確定してしまうと、残りの最大売り上げと利益などの上限が見込めてしまう、つまりプラス側は確定してしまう財産となってしまいます。


原子力発電所の怖いところは、それに対して、マイナス側である「廃炉・核廃棄物の処理」については、無限に膨らむ可能性のあるマイナスの財産ですから、その時点で、即時破たんという可能性が究極的には飛躍的に高まります。


「無限−無限=計測不可能」ですが、「有限−無限=マイナス側に無限」となるからです。


加えて、ドイツはエネルギーシフトを進展中であり、再エネによって増加した発電量を既存発電所で減少させることをしてこなかったわけですから、電力取引市場における電力販売価格は超低迷を続けており、それによって既存電源を大量に抱える電力大手は多額の赤字決算を続けており、分社化などで延命を図っている状況です。

ということで、2015年からは電力大手4社の将来性に信頼が置けなくなったドイツ政府は、原発の廃炉&高レベルや核燃料廃棄物のパッキングまではすべて電力大手の無限責任としますが、高レベル核廃棄物の中間貯蔵やすべての核廃棄物の最終処分については、国が最終的な責任を取る形で基金を新設し、その基金には、これまで電力料金に上乗せされて回収してきた積み立ててきたはずの核廃棄物処理費用を電力大手に支払わせるというコンセプトで検討を続けてきています。

で、おおよそその基金に払い込まなければならない金額(233億ユーロ≒約2.8兆円+αのリスクコスト)やシステムの専門家鑑定書が2016年4月に国会に提出されたのですが、電力大手はその内容に不服を持ち、合意には至らないでグズグズとしていました。
https://www.bundesregierung.de/Content/DE/Artikel/2016/04/2016-04-27-finanzierung-kernenergieausstieg.html

ただし、この基本法裁判所の判決によって、「有限−無限=マイナス側に無限」という状況を少なくとも終わらせるためには、「有限−有限=経営判断できる範囲での有限でのマイナス」にしなければ、早かれ遅かれ電力大手は破たんします。

ということで、判決の数日後には、

イ.電力大手は、そのほかの廃炉にかかわる係争中・準備中の20近くの訴訟を即時取り下げ(電力大手なりの試算では、これらによって政府は68億ユーロ700950億円の賠償金を支払わなければならないと言っていますが、これ都合の良い言い分のように聞こえます…ただし2件の裁判、一つは核燃料税について、もう一つはスウェーデンのVattenfall社によるアメリカでの訴訟については継続)

http://www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/atomausstieg-energiekonzerne-verzichten-auf-schadensersatz-a-1125261.html


ロ.その代わりに、原発の廃炉、および放射性廃棄物の適正なパッキングについては、これまでの規定通り電力大手が全額、最終的な無限責任を持って執り行うものとするものの、


ハ.中間貯蔵、および低レベル、高レベルの放射線廃棄物の最終処分については、国の無限責任とし、国が公的基金を設立し、国がその運営事業者となり、


二.そのための基金への拠出は、これまでの法的な廃炉と最終処分のための積立金に加えて、最終的に処分にかかるであろう追加費用である230億程度に確定させ、その金額を電力事業者が支払う


という形の提案を電力大手は政府に送りました。変わり身は早い早い。


そして、上記の判決からわずか10日後の20161216日には、国会でこの基金設立と責任の分担にかかわる各種の法律と契約が大多数の賛成で可決されています(ただし、将来のリスクコストの払い込みなどの詳細についてはまだ確定していない)。
http://www.das-parlament.de/2016/51/titelseite/-/485316


http://www.bmub.bund.de/presse/pressemitteilungen/pm/artikel/hendricks-entsorgungskonsens-schafft-klarheit-ueber-abwicklung-der-atomenergie/?tx_ttnews%5Bswords%5D=Atom&tx_ttnews%5BbackPid%5D=103&cHash=8d44e1a0c8c5eb8b170876912adf2c96



本来は、電力大手としては、基金に総額3兆円レベルを支払うが、本当は上記の基本法裁判所で完全勝訴して、係争中のすべての損害賠償請求で総額3兆円レベルを国から分捕り、これを行って来いにして終わりにしたかったわけですが、背に腹は代えられません。その目論見はまったく立たないことになりました。


最後にですが、ここで説明してきたように、ドイツが辿ってきた脱原発の経緯と、日本での経緯とでは全く異なります。


ですから、「脱原発を前倒しするとドイツのように膨大な損害賠償を支払わなければならなくなる」と主張される方の根拠はドイツには100%存在しないですし、

逆に、「損害賠償をドイツのようにほぼ支払わなくても良い」という状況を日本が享受できるのかどうかは、ドイツの事例からは主張できません。


ただし、人間の命や権利がある程度重いものとなっている日本やドイツのような社会では、基本的な考え方として、原発(脱原発)を取り扱う際、これまで「無限の売り上げ−無限のコスト=計測不可能」というメルヘン(先送りあるのみ)で進められてきたわけです。


これが、脱原発期限を確定してしまうと、途端に「有限−無限=マイナス側に無限」という現実に突き落とされることになります。つまり、原子力発電を事業として行ってきたものは、即時破たんになりかねません(そうなると廃炉と廃棄物は誰が処理する?)。

この問題をどう解決してゆくのか、これについては、ドイツでの経緯も参考になるかもしれません。

それでは、それでは。

脱原発で電力大手にドイツ政府が訴えられて…(その4)

前置きが長くなりました。

さて、こうした利権の取り消しに対して、原子力業界、電力大手は、政府や州政府相手に20近くの訴訟を各地・各種の裁判所で起こしていますから(各種の廃炉、廃棄物処理などの規定や指導、法規制に関連して)、ドイツのメディア関連でも、それらの全貌を分かりやすく解説しているものはありませんし、訴えられている側の政府は、係争中には情報をほとんど外に出しませんので、なかなか取りまとめて説明するのは難しいです(電力大手も当然有利な情報しかメディアには出しませんし)。村上もすべては把握していません。

ただし、重要なのは、電力大手3社が共同で(電力大手4社のうちEnBWは緑の党が州政府を務めるようになったバーデンヴュルテムベルク州が筆頭株主なので、訴訟を取り下げた)政府(国)を相手取って、基本法裁判所(最高裁とは意味合いが異なる)に、このモラトリアムとい2011年の原子力法の改正の内容の是非(私有の財産権の侵害)について訴えていた「その1のまとめ」で記した訴訟です。

ここでは、

1.モラトリアム(古い原発の即時の一時停止措置&2010年原子力法の一時停止措置)を含む、

2.
2011年の原子力法の改正(古い原発の即時廃炉&の2010年原子力法改正で追加された残余発電量の取り消し措置)が、

3.基本法で保護されている私企業の所有財産(電力大手の原発)の権利を犯したか、どうか(違憲か合憲か)を争ったわけです。ということで、ここでは具体的な賠償請求額は法廷での表向きな係争には現れませんし、正確には損害賠償請求を求めた裁判でもありません。

ただし、電力大手側の言い分は(思いは)、20113月のモラトリアム発動まで有効であった残余発電量が、一時停止後に廃炉になった8基については一挙にゼロへ、そして残りの新しい原発についても追加であったはずの14年分の発電量が瞬時に取り消され、私有財産としての原発の経済価値が侵害されたわけなので、オフレコから伝わってメディアで報道された金額では190億ユーロ(2.3兆円)などを、基本法裁判所での完全勝訴の暁には、政府との示談で、あるいは別件の通常の民事裁判による係争で、政府から分捕ることを目的としていました。

http://www.zeit.de/wirtschaft/2016-12/verfassungsgericht-zu-atomausstieg-konzernen-steht-entschaedigung-zu


さらに、そのほかの係争中の訴訟群(20近く)でも、基本法裁判所での判決はダイレクトに影響します。


長く続いた基本法裁判所での判決は、201612月6日に下されました。


概要は次の通りです。


イ.2011年の原子力法の改正は、私有財産を侵害する法改正であり、20177月までに何らかの対応(原子力法の改正、および損害賠償)されなければならない(一応は、電力大手の勝訴)


※上記、誤りです。正しくは2018年6月末までに対応です…

ロ.しかし、その改正されなければならない内容とは、2002年の原子力法の改正において定められた残余発電量を満たさないままで、2011年の原子力法で廃炉措置とされた8基の古い原発が、2011311日後の一時停止措置(モラトリアム)までに、まだ財産として確保されていたのにもかかわらず残っていた残余発電量については(および新しい原発に乗り移された残余発電量)、電力大手側に財産権があるため、それを考慮しなければならない。
 

ハ.加えて、201012月末に原子力法の改正(平均12年の延長)が施行されてから、2011311日のモラトリアム発動までの3カ月の間に、平均12年の延長が認められたことによって、それに対応するために電力大手が投資をした分の費用(電力大手側はそれを証明しなければならない)についても、電力大手の私有財産が侵害されたことになるため、配慮しなければならない。


二.その他の内容(最大2022年までの時限か、もしくはそれよりも早く残余発電量を発電しきった際に廃炉になるとされた2011年の脱・脱・脱原子力法)は、合憲である。
 

ということで、8基の即時廃炉にされた古い原発のほとんど残っていなかった残余発電量分と、わずか3カ月間でほとんど追加で手をつける暇もなかった投資分だけを、示談か、もしくは民事裁判で係争して、政府が電力大手に賠償するか、それを賠償する内容にふさわしい原子力法の改正を20177月までに行うのか、ということに落ち着いています。


基本法裁判所は、いわゆる最高裁ですから、これで国内的には確定です。


ということで、「アタリだったけど、残念賞だった」というのが、ドイツのマスコミの報道であり、政府は、ドイツの脱原発が法的にもすべて認められたと、全面勝訴のような形でのプレスリリースを出しています。

http://www.bmub.bund.de/presse/pressemitteilungen/pm/artikel/hendricks-bundesverfassungsgericht-bestaetigt-atomausstieg/?tx_ttnews%5Bswords%5D=Atom&tx_ttnews%5BbackPid%5D=103&cHash=a010f821b5f6d995b501c4146eee90af


ちなみに、上記を示談で解決する場合には、数百万ユーロ規模(数億円)の損害賠償になるということが各種のメディアで報じられました。


2
3兆円が欲しかった電力事業者ですが、丸が4つ抜けて、23億円しかもらえないことが確定したわけです。

加えて、平均12年間の延長とパーターで開始されたはずの「核燃料税」についても、パーターであることが法律に記されているわけではないので、合憲。つまり、これまで支払ったものばかりか、12年の稼働を取り消された今後も「核燃料税」を電力大手は支払い続けなければならないことになります。

泣きっ面に蜂とはこのことでしょう。

(続く)

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ドイツ在住の環境分野のジャーナリスト、村上敦です。2012年秋に本を出しました。『キロワットアワー・イズ・マネー』。よろしくお願いします。http://t.co/0ojypWDT
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