ということで、原発があるなしのドイツの発電状況をじっくりと比較していただけたでしょうか?

まずは、このグラフ上で示されている発電量を比較してみると、2011年(原発ほぼなし)が1,109GWhで、2010年(原発あり)が1,060GWhです。原発なしの今年のほうが、発電量が増えていることに注目してください。太陽光、風力を除くと、70GWh程度、発電量が2011年のほうが少なくなります。

通常、5月の平日はドイツ国内では約1,400GWhの電力消費量がありますが、こちらは情報公開の対象になっていないので、リアルタイムの時間別では分かりません。時間が遅れて、しかも月別の量しか私には探せません。ですから、詳しいことは分からないのですが、両年ともおよそ300GWhの電力不足になっているように見うけられます。ただし情報公開の対象になっているのが全部の発電出力ではないく、100MW以上の発電所であることから、ここに発電量として公開されない形で、ドイツ国内で小型や分散型の発電施設で発電されていると考えられます。

また、周辺各国とのやり取りということもあります。繰り返しになりますが、チェコとフランスは、冬場の暖房・給湯需要のために出力変動の効かない原子力を保有していて、とりわけ電力→熱需要の低い今の時期は、安価に電力を輸出しています(というかこの時期に安価でも輸出しておかないと、7、8月の夏季に河川水位が低下したり、冬季がとりわけ寒い年であったりすると、輸入国になりますから)。つまりフランスやチェコが、周辺国の電力供給の安定のためにバックアップしているのではなく、他国が調整してあげているというイメージです。

たとえば昨年の5月は、ドイツ→フランスが52GWh、フランス→ドイツが920GWhという電力の流れになっていました。1ヶ月で868GWh前後の輸入超過という結果です。これは5月の電力消費量約40,000GWhの約2%です。これを平日の1日あたりとして計算すると、フランスからドイツへは、30GWhの輸入となります。

2010年のものを見ていただければ、2011年もほぼ同様に電力の動きがあるだろうことが推測されます。その推測を裏付けるように、フランスとの国境を抱える広域系統事業者EnBWTAGは、2011年5月25日に28.2GWhをフランスから輸入超過していました。
http://www.enbw-transportnetze.de/kennzahlen/grenzueberschreitende-lastfluesse-und-fahrplaene/

いやー、情報公開ってすばらしい! 何でもネット上で読め取れてしまいます。

そしてもう一つのフランスとの国境に位置する広域系統事業者Amprionですが、残念ながら情報は1週間ごとに更新されているので、5月25日のものはつかめませんでした。ただし、原発稼動が5基の時点の先週の金曜日5月20日のデータを見ると、フランスからの輸入超過が10.2GWhということが分かり、ここは、フランス側との接続容量が上記のEnBWTAGより小さいので、多くても最大20GWhとしておけば、お釣りがくる計算です。
http://www.amprion.net/grenzueberschreitende-lastfluesse

ということで平年並みの30GWhよりは多少多いものの、フランスからの輸入量は38〜48GWh程度と、一日の消費量の3%前後であり、従って、「ドイツが急速に原発停止をしたため、不足する電力をフランスの原発電力で補っている」という趣旨は、もはや幻想でしかないと言い切ることができたのではないかと思います。


今回、夜なべして、手間をかけて集計したのは、理由があります。それは、フランス云々のことなど、本来どうでもよいのですが、ドイツの電力供給の状況がどのように組織されているのかをより深く認識してもらいたかったからです。

(続く)