皆さん、一昨日に公開しました電力需給の見える化について、たくさんの方がご覧になられているようで、ありがとうございます。


電力需給の見える化サイト:

https://wellnesthome.jp/energy/


意図、背景説明のブログ:
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/52006449.html



すでに数千人の方が、全国それぞれの電力会社で、春夏秋冬で、どんな電力供給の姿になっているのか、確認されているようで、嬉しく思います。こうした方々が、数万人、数十万人になってゆき、多様な議論ができてくると、日本の将来の電源MIXに関する議論がより高い次元で進むのではないかと思っています。


さて、こうしたサイトをオープンして、見える化がはじまると、どんな考え方が生まれてくるのでしょうか?
ドイツをはじめとする欧州では一般的になっている新しい考え方について説明しましょう。


1.まずは変動性再エネ(太陽光と風力)の破壊力に驚くことになります。日本では2016年末までに、累積でドイツを追い越す43GWの太陽光発電を設置しましたが、とりわけ九州、四国に偏っているので、該当する電力会社の需給調整は、まだまだ変動性再エネの1年間を通じた発電「量」自体は大したことがないのに、なかなか大変な状況になってきています。

2.ただし、この太陽光と風力の優れているところは、(日本ではいまだに割高ですが)世界的にもっとも安価な電源になりつつあり、最大の利点は、分散型で、燃料を必要としないところです。

3.また、太陽光と風力は、多くのケースで、お互いに補完し合う関係にあることに気が付きます(晴天→風なし、荒天で風あり→太陽なし)。

4.そのため、ドイツなどの一般的な再エネ先進国では、電力システムにおける基幹電源を、この太陽光と風力に据えることにしています(両者の原則優先給電のルールなど)。

5.え、この両者はお天気任せなんで、基幹電源に向かないって?

でも、電力需要のほうも見てください。これだって、常に安定しているわけではなく、時間帯ごとに刻々と必要量が変化し、とりわけ同じ平日でも、温かい日と寒い日では、需要量が全く異なっていることにも気がつきますよね。

そう、皆さんが今、お部屋で電気をつけるのも消すのも、テレビをつけるのも、テレビを消すのも、お天気任せと同じぐらい、個々人の気分と行動任せなんです。

それにもかかわらず、例えば、皆さんが100人の友人と示し合わせて(電力会社には何も言わないで)、一斉にテレビを消しても電力システムはブラックアウトすることはないですよね?


電力システムは多くの一般の皆さんが思い込んでいるほど、度量の狭い敏感なシステムではありませんし(であれば、すでに1890年頃から欧州に広く出現していないでしょう)、そのために同期運転で周波数を整えるなどの予備力によって保険をかけ、そしてお天気予報の確度を高めて、電力需要を(過去の経験を生かして)常に予測しながら、水力・火力発電所の運転計画を立て、随時、出力を変動させたりしているわけです。


6.ということで、再エネ推進の第二段階になると、この不確定要素の高い事柄の2つである「電力需要」と「変動性再エネ」を組み合わせることを行います。

つまり、予測される電力需要から、予測される変動性再エネを差し引いたものを「残余需要」という概念にして、この残余需要を、残りの手段(×バックアップ、〇柔軟化対策=後述)で、どのように調整してゆくのか、考えることになります。
https://www.next-kraftwerke.de/wissen/strommarkt/residuallast


7.例えば、この見える化のサイトで、四国電力の201671日から1週間のデータを見てください。

系統連系をガンガン使って(関西電力に電気を送り)、需給バランスを調整している(電気が不足しがちな関電を助けている)努力がうかがえますよね。

四国電力 2016年7月 実績

この時点では、四国電力管内における太陽光発電の設置量が、1.5GW出力以下でした(年末までに1.9GW設置)。ただし、2017年現在、FITの申請で認定が出ている太陽光発電の量は、すでに2.9GW出力もあります。

もしも、この2.9GW出力が実際に作られてしまったら(累積で4.7GW)、夏場の多くの日中の時間帯で、太陽光発電だけで、四国電力の電力需要のほとんどを瞬間的には賄ってしまいます。

ですから、系統連系容量、揚水発電の容量をすべて使いきってしまっても、需給調整はかなり大変になることが予想されます。

それでは、太陽光発電はもう必要ないのでしょうか?


8.はい、一方では、電力システムが後述するような柔軟化されていない段階では、さすがにここまで太陽光発電だけを推進するのは効率が悪いでしょう。

電力システムのバランスを考慮して、より一層「風力発電」の推進をすることのほうが得策でしょうね。


しかし、他方では例えばすでに四国電力が新規では取りやめをしているように「安価な深夜電力」という料金制度を廃止する必要があります。

http://www.yonden.co.jp/kouri/menu/kojin/code_57.html

すでに日本中で普及している電気式給湯器(電気温水器とエコキュート)を深夜にお湯を沸かすのではなく、太陽光発電や風力発電で大量の電力が作られているタイミングを狙って動かすことは、非常に有効な「柔軟化対策」になります。


9.そして、こうした「残余需要」を調整するための「柔軟化対策」とは、エコキュートの運用方法を変えるだけではありません。

・大型のロジスティック倉庫などで利用される大型冷凍・冷蔵設備のDSMなど電力消費の大量な産業と連携しても良いでしょう(ドイツのインダストリー4.0にはこの視点が大きく含まれます)


・水力・火力・揚水などの既存発電源をより柔軟に扱えるようにしてもよいでしょう


・天気予報の精度を高め、電力システムに統合することも重要です


・電力市場の取引をもっと活性化してゆくと、需給調整の厳しくなる時に電力価格は高騰したり、急減したりといったスパイクを示すようになります。ですから、そこで利益を得られるのを目的に需要を作ったり、供給を抱えたりといったプレイヤーの進出を促すのも一手です(ドイツでは、こうしたアグリゲーター、パワートレーダーが仮想発電所VPPを運営するようになっています)


・電力系統の強化とより柔軟的な活用も非常に大切です

などなど。


もし、こうした考え方で電力システムを、変動性再エネと統合してゆくなら、「硬直的な運用しかできない、いわゆるベースロード電源」というのは、障害にしかなりません。

そうです、太陽光発電が尖って飛び出しているように見えるのは、柔軟性のない電源がまだシステムに存在していることの証明で、柔軟性を上げてゆくと、以下のドイツのようなシステムに徐々になってゆきます。
https://www.agora-energiewende.de/de/themen/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/


10.例えば、すでに一定の太陽光発電が過去5年間で普及してしまった四国電力においては、原発を再稼働することで、得られる電力システムにおける社会的な便益はかなり小さそうだ、とことに気がつきます(電力事業者としての短期的な金銭的な利益はあるのでしょうが、電力システムを取り囲む社会的な有用性はすでに小さいだろう)。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170721/k10011067721000.html


同時に、FITを利用して年中同じ出力で発電を続ける稼働を前提とした大型木質バイオマス発電も単なる障害にしかならないでしょう。


三浦さまの7/14の投稿:

https://www.facebook.com/shuichi.miura.5


11.ということで、長くなりました。


この見える化のサイトは、201746月のデータが公表されたら、アップデートを行うのですが、その時に、表示されるグラフを「これまでの考え方→発電所の運用で設備利用率の高いものからの積み上げ式」と「新しい考え方→残余需要方式」を選択できたりするように配慮したいと思います。


お楽しみに。


追伸です。

12.太陽光発電にしても、風力発電にしても、1か所であまり巨大なものを設置したり、一つの場所に集中させてしまうと、電力システムは硬くなります。

せっかくの分散型(=発電量もすべてが一斉に偏るわけではない)の特性が台無しになるからです(柔軟化対策の規模だけではなく、その対応のスピードも必要以上の速度が必要になってしまいます)。


ですから、日本で散見されるように10MW出力を大きく超えるような大規模な太陽光発電は、柔軟な電力システムを目指すなら、推進するべきではないでしょうね。


とくに電力消費者の負担(賦課金)で運営されているFIT(再エネ電力の固定価格買取制度)では推進する意義がないと、欧州の知見は教えてくれます(例:ドイツのFITでは当初5MW出力を買取価格の上限に設定していました。途中、各種の発電源によって上限を取り除いたり、強化したりしていますが、太陽光発電では10MW出力のものは適用外に落ち着いています)。