2017年10月には、日本において久しぶりに衆議院選挙に遭遇することになりました。

通常はドイツからネットでささっと結果を見るだけなんですが、今回は投票日(10/22)には台風の影響で翌日飛行機が飛ぶのかどうかジリジリしながら札幌のホテルでテレビ結果速報と討論番組を、その後も比較的時間に余裕があった際は、選挙関連の討論番組など、テレビというメディアで20年以上ぶりに選挙を眺めることになりました。

そこで、非常に違和感が大きかったのは、以下の2点です。

1.立候補者や当選者などから二大政党制を目指すなどのコメントが多かったこと

2.選挙制度そのものに対する批判的な意見が見られなかったこと



まず、1.については、往々にして立候補者側から「(欧米のような)政権交代可能な二大政党制を目指すために…」というニュアンスで語られることが多かったように思います。

で、欧米と言うからにはアメリカと(多くの)欧州の国々で二大政党制が根付いていないといけないと思うのですが・・・アメリカはさておき、欧州でいまだに二大政党制が機能している国ってあったっけ?、そんなのあるはずないでしょ、というところが突っ込みです。

EU加盟国で人口1000万人以上の11か国の各政党(一部会派・連合)の獲得議席配分を眺めてみると、以下のようになります。

・ドイツ連邦議会 (下院、人口8100万人)
キリスト同盟=35%、社会民主=22%、選択肢=13%、自由民主=11%、左派=10%、緑=9%

・フランス国民議会 (下院、人口6600万人、小選挙区&決選投票)
共和国前進=53%、共和=19%、民主運動=7%、社会=5%、その他=16%

・イタリア代議員 (下院、人口6100万人、第一得票連合には過半数の議席のボーナス、残りは比例で振り分け)
民主=46%、5つ星運動=17%、自由の人民=15%、左派・エコ=6%、市民の選択=6%、その他=10%

・スペイン下院 (下院、人口4600万人)
国民=39%、社会労働=24%、ポデモス=20%、シウダダノス=9%、その他=8%

・ポーランド共和国下院(下院、人口3800万人)
法と正義=51%、市民プラットフォーム=30%、クキズ=9%、現代ポーランド=6%、その他=4%

・ルーマニア代議員 (下院、人口2000万人)
社会民主=47%、国民自由=21%、ルーマニア救出=9%、ハンガリー人民主=6%、自由民主=6%、人民運動=5%、その他=6%

・オランダ第二院 (下院、人口1700万人)
自由民主=22%、自由=13%、民主=13%、キリスト民主=13%、フルンリンクス=9%、社会=9%、労働=6%、その他=15%

・ベルギー代議員 (下院、人口1100万人)
新フラームス=22%、社会=15%、改革運動=13%、キリスト民主=12%、フラームス自由=9%、社会党別=9%、民主人道=6%、その他=14%

・ギリシア議会 (一院制、人口1100万人)
急進左派=48%、新民主=25%、黄金の夜明け=6%、民主連=6%、共産=5%、その他=10%

・チェコ代議員 (下院、人口1000万人)
社会民主=25%、ANO=24%、共産=17%、TOP=13%、市民民主=8%、直接民主=7%、キリスト民主=7%

・ポルトガル共和国議会(一院制、人口1000万人)
社会民主=39%、社会=37%、左翼=8%、民主社会=8%、共産=7%、その他=1%


ということで、そもそも(伝統的には過去に存在したような左派中道VS右派中道のような形で)二大政党制のようになっている国は皆無で、欧米とひとくくりにした時にそれを西側先進国、あるいは西洋社会という定義で見るなら、アメリカの下院の共和55%VS民主44%のような構図は、完全に例外といえます。

基本的には単独過半数などは稀ですし、国民の興味も多様化している社会を反映して小規模な政党も沢山選出されますから、選挙後には、連立政権を組んで過半数を得るために四苦八苦して政権を樹立するところがほとんどと言えますし、北欧やベネルクス諸国では過半数割れの少数与党での政権運営をしているところもあります。

また、フランスの前進、およびポーランドの法と正義、ルーマニアの社会民主、ギリシアの急進左派という4か国では、ほぼ過半数に達する第一政党が存在しますが、これらはどちらかというと伝統的というよりも、最近の時事問題的な事柄に起因するイレギュラーな事例と言えそうです。

例外としてイタリアの民主の場合は、イタリア特有の選挙制度によって、選挙戦を戦う連立・連合政党のうち、比例で最大得票率を得たところが一気に過半数の議席配分を得るという特殊性によって大きな議席配分を得ています。


したがって欧州での選挙結果などとの比較であれば、以下の日本のような議席配分を眺めた時、例えば何らかの時事的な社会を揺るがす大きな事柄が生じた際(例:国難w)のイレギュラー的な選挙であれば、アリという形なのではないかと思えます。
・日本 (下院)
自由民主=61%、立憲民主=12%、希望=11%、公明=6%、その他=10%

ただし、日本における問題は、国民の投票行動では、比例でこのような議席配分になるような投票をしたわけではないにもかかわらず、このような議席配分がなされてしまっているところでしょう。

・日本 (比例得票率)
自由民主=33%、立憲民主=20%、希望=17%、公明=13%、共産=8%、維新=6%、その他=3%

もし、上記のような比例に準じた議席配分であれば、自民・公明の議席では過半数に足りないため、維新を加えた連立にならざるを得なかったはずですし、2/3の議論云々というのは生まれようもない問題でした。

ということで、他国との比較ということを念頭に置くなら、比例で議席が決まらない選挙制度自体について、大いに議論が湧いても良いような気がします。しかし、2.のところで私が違和感を得たように、選挙前後に、選挙制度そのものについての議論を大いに取り上げたテレビ報道、討論番組というのは見かけませんでしたし、そのような議論が出なかったことについてかなり残念に思います。


ちなみに上記に掲げた欧州11か国の中で、比例、もしくは類似の比例方式により大部分の議席が配分されない国は(一部は選挙区制の影響も入るところもある)、フランスのみです。ただし、フランスは小選挙区制を採用していますが、一回目の投票で過半数を得られなかった場合(日本の自民のような得票数と獲得議席数に大幅な乖離が生じないように)、得票数上位二者で決選投票を行う方式になっています。

もちろんアメリカは小選挙区制ですし、EUを去ることになるイギリスも二大政党制(保守党49%VS労働党40%)&小選挙区制(ただし、死票が多いため国内における批判も多く、比例へとの議論もあり)を採用しています。

ということで、このポイントについては私は専門でもなんでもありませんが、記事として多少調べて残しておきたかったため記させていただきました。

※なお、今回の上記で取り扱った議席配分の割合(%)については、Wikipediaの日本語版(確認のためドイツ語版でもチェック)の各国の政治のところを出典として、四捨五入で表しています。そのため合計では100%にならないところ、その他の割合が多少異なっている可能性もあることをお断りしておきます。