April 08, 2006

星々の舟 村山由佳 4

星々の舟






直木賞受賞作。
もちろん賞なんてのはそれに関わってメシ食ってる人の言い訳に過ぎないわけで参考程度のものでしかないのですが今回の作品は村山さんなりの自分のイメージに一石を投じる意図もあったんでしょう。

兄妹の禁断の恋、不倫、浮気、いじめと暴力、戦争体験をテーマに書かれてます。

「雪虫」「ひとりしずか」
禁断の恋、下品な言葉を使うと近親相姦ですがそこは村山さん、力技で純愛に描いてしまう。
前半のクライマックスは「P165-172」。
父親が再婚で妹は連れ子と言われて育ってある時期から恋愛感情が芽生えてしまったところで親から理不尽に否定される。
暁は最初は訳がわからなかったが血がつながっていないと言われて育った妹の紗恵は実は父親の血を引いていた。
再婚の母は父親と籍を入れる前に身籠っていた。
そんなの後から説明されて納得しろと言われる方が無理。
「てめえが、うす汚ねえ女遊びさえしなけりゃ」
「これ以上父親の顔を見ていたら殺してしまう・・・」
家を飛び出しても、帰って妹の顔を見ると自分がどうなるかわからないのが不安で、結局母の死に目にも会えなかった。

当の妹、紗恵はその後、自殺未遂。
ようやく縁談が持ち上がったけれど帰ってきた兄の姿を見て15年の時間が一気に巻き戻されてしまった。
縁談の相手の清太郎も相手が暁じゃなかったらともかくあいつじゃ勝負が見えてると。

「青葉闇」
たぶん浮気の描写は目新しくもないしもうひとつの農業について樋口に語らせている言葉の方が村山さんの趣味じゃないでしょうか。
この章は主張と趣味が半々に見えます。
村山さんの家は写真では見ましたが場所が分からない。
分かれば見に行くんですけど。
地元の町の人に聞けば教えてくれるって話です。
本人は迷惑してるようですがやっぱり見てみたい。

「雲の澪」
いじめと暴力について書かれてます。
もちろんいじめられる側の立場で書かれてますがテーマとしてはそれほど難しくもないんじゃないだろうか。
いじめる側にもそれなりの理由があるだろうし毎日暴力に明け暮れてるわけでもないでしょう。
同じではないとは思いますがたとえば俳優の宇梶剛士さん。
暴走族やってた時は天下を取ってやろう、E.YAZAWAみたいにと思ってたけど総長になってしまうと何もないことに気がついた。
それで逮捕、少年院。
ここではいじめられる側の視点で物語は進みますがやっぱり納得できないところがある。
「なぜ反撃しないの?」
3人にいじめられて立場は不利だとしてもそのうちの勝てそうなやつを選んで後で面倒みてやるみたいな。
たぶんこういうのって実社会と同じで何かのきっかけで風向きが変わるとコロッと手のひら返すもんです。
読みながら昔を思い出して笑ってしまいました。

「名の木散る」
父親の戦争体験について書かれてます。
村山さん、同年代なんですけどここについてはかなり取材してるようです。
靖国神社、軍隊での理不尽な訓練、従軍慰安婦問題、かなりリアル。
事実なら戦後保障で金で解決すると政府間では決めてるようですが実際に闇に葬られた人の数は大変なものではないか。
原爆と比べるとまた違うかもしれませんが。

あとがきで子供の頃、直接戦争の話を聞いたと書いてますがこれは環境によるので何とも言えません。
これは満州での体験を書いてますが極端な話、現在、沖縄や横須賀の米軍、あるいはアメリカ、イギリス、オーストラリアでも構わないが海外に行けば現在起きている戦争の話を聞けるだろうし下手をするとここに書かれてることよりもっと残忍な現実があるかもしれない。
中国政府は公式な場で靖国参拝を批判したり戦争責任を追求したりしてますがそれに対して当然欧米では過去の毛沢東の言動を再検証してるようです。
石原都知事は前から言ってることですが。
それで最近中国政府も毛沢東の業績をあまり無条件に正当化しなくなってきたとか。

祖父には祖父の立場があり徴兵の前にとりあえず結婚させられてほとんど恋愛感情のないまま子供ができて時の流れと環境の変化で新しい人間関係ができて再婚。
子供や孫はまったく違う世界を生きている。

村山さんの得意な分野は10代の男の子の心と体の描写。
今回はあえて登場人物の年齢層を上げて書いてます。
そのため他の作品のように作品を通して一途に突っ走る描写は影を潜めてそれぞれの人物が過去に傷を負っている。
当然、読み手としては現実の重みを求めてるわけではなくて瑞々しい表現の世界がいいわけで今回は前編を通して重苦しく描いてます。
作者としてはどこかに救いのあるエンディングにしたかったと言いますが正直、結末は納得できません。
私なら暁と紗恵をくっつけるのは無理としても清太郎といっしょにさせてから新展開があるとか紗恵に変化があらわれるとか何らかの動きが欲しかった。
ただ村山さんの作風として「おいコー」もそうですがズルズル引っ張る味ってのもまた楽しみではあるのです。
ファンとしてはちょっと消化不良でした。


muramatsuk at 21:17コメント(0)トラックバック(0)村山由佳 | 読書 

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