純粋とは矛盾色

―Necronomicon rule book―

幸せとは何かを探していた。
最高の幸せを追求し、自らの幸せを探求し続けた。 
人と同じことをすれば腹が立ち、人と違うことをすれば角が立つ。
特別になろうと私欲に働けば、抑止を以って常人の行動なのだと気づかされる。
故に、自らを幸せにすることに意味はなく、他人を幸せにすることに意義を見つけ出す。

他人に乗り移る呪い事は自らの存在を薄め、描いた作品を腐らせる。
幾千にして腐敗。誰かに恨まれる人生でも構わない。
キャラを殺し、自分を殺し、最悪の結末で物語が終わろうと、
己の私欲をかけた場所を守り続ける。


私には、正義としての素質があったのだ。


『純粋とは矛盾色 村崎色の手記より抜粋 Necronomicon rule book』 

「信じられない。自分の出したモノ飲み込むなんて・・・」

 私はそう言わずにはいられなかった。誰か知らないおじさんの精液を自分の口の中に入っているのを見るだけで吐き気を催す。普段の私だったら絶対にやらない行為を、おじさんと入れ替わったせいで真琴のイヤらしい行為を見せられている。
 自分で吐き出したせいもあるけど、この身体だって元はおじさんの身体。一概にすべて私のせいだって言えないのだから、私が悪いわけじゃない。

「お願いだからかえして。私の身体でヘンなことしないでよ」

 私は縋り付くようにおじさんにやめてもらうようにお願いした。それでも、真琴(伴典)は「イヤだ」と首を縦には振らなかった。

「言っただろ。会うのはこれで最後だって。お前の身体も人生ももう俺のものなんだよ」
「そんなぁ・・・」
「俺の人生も腐ったようなもんだけど、親のすねをかじって生きていられるし、誰とも会話しないことを苦に思わなければ楽な人生だったろうよ」
「そんなのイヤだよ!」

 私は日陰に隠れて生きていたくない。お外にだって遊びに行きたい。誰とでも会話したい。
 おじさんの言う人生に賛同なんか絶対しない。私は私の信じる人生を歩きたい。
 そのために、元の身体に戻りたい。和泉真琴に帰りたい。
 だって私は、――私が和泉真琴なのだから。
 叫んだ私をつまらなそうに見ていた真琴(伴典)は、ある結論に辿りつき、不敵に笑った。

「そうか。お前はまだこの身体に戻れるって希望を持ってるんだな。元通りに生活が戻るって願望を抱いているから楽しくないんだ」
「えっ・・・」
「まだお前は女の子だと思ってるけど・・・お前は誰がどう見ても40歳過ぎたオジサンで、越智伴典って人間ってことを忘れるな!!!」

 真琴(伴典)が私に叫んだ言葉が心臓を貫く。途端に呼吸がしずらくなり、息が上がり、心臓の音が五月蠅く聞こえる。

「・・・んふっ。だから、今夜は和泉真琴がやってきてあげたよ♪ロリロリの女の子がやってくるなんて滅多にない機会だもんね?」

 私の口調、私の仕草、私の声で真琴(伴典)は語り掛ける。普段の私と寸分変わらない、屈託ない笑顔は、先程とはあきらかに別人に見える。

「ほらっ、見てよ。今日の水着のあと。炎天下でプールやっちゃったからくっきり跡が残ってるでしょう?」

 フリフリのネグリジェを脱ぎながら焼けた肌に浮かび上がる水着の跡。しかし、私の見る視線は、真琴の小さな乳首に目移りしてしまう。
 元の自分の身体を見ながら欲情している自分がいる。荒々しく吐く息に呼吸が乱れ、悶々としてくる心境に駆られていく。

「見た目とは裏腹にロリっ娘がたまらなく好きなんだよね、オ・ジ・サ・ン・♪」

 真琴(伴典)の声は男の野生を呼び起こす。この身体に染みついた、伴典の本能が私を突き動かそうとしている。

「ちがう。私は・・・」
「だから本当は今すぐ私を襲いたいんでしょう?おじさんの目は私をどう狩ってやろうと考えてるみたいで生き生きして見えるよ♪」
「そんなことない・・・わたしは・・・」

 真琴(伴典)の言葉を否定したくて、視線を外して首を横に振る私の前で、真琴(伴典)は全裸になってベッドに腰を下ろした。そして、誰にも見せたことのない自分の秘部を、私にマジマジと見せつけたのだ。


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「ん・・・ちゅ・・・んちゅ・・・」

 私は真琴(伴典)とキスをしている。今まで自分でも見せたことのない大人びた表情で、淫靡な雰囲気を醸し出しながら、真琴がぴったりと唇を重ね合わせてきた。

「れろ・・・ちゅ・・・くちゅ・・・ちゅろ・・・ちゅ・・・んちゅる・・・くちゅ・・・」

 真琴の舌が唇を這う。濡らした唾液の感触に慣れない私を無視して、真琴(伴典)は無意識に開いた口の中に舌を侵入させてゆっくりと歯茎をなぞり始めた。

「ん、ちゅ・・・ちゅっ・・・ちゅろ・・・んちゅる・・・ちゅぅ~・・・・・・」
「ん・・・んく・・・んくぅ・・・ひゃ、ひゃめてぇ!」
「・・・あは、そんな慌てちゃって面白い」

 口内を舐めまわされて、未知の快感に背筋がざわついて身動きが取れなかった。大人の知識を私だって知ってる。これが大人のキスの感触。柔らかい唇の温もりが残る自分の唇をなぞり、相手の唾液に濡れている唇が、これが夢ではないことを教えてくれる。
 私のファーストキス。それを奪ったのは他でもない、和泉真琴なんだ。

「もとが自分とはいえ、やっぱりどこか女の子っぽいな。仕草と言い態度がまだ幼いっつうか・・・こういうことに慣れていないっていうのがはっきりわかるんだよね」

 そんなの当たり前。今日まで私は中学生だったんだ。男性のことも自分のことも知らない、無垢な女の子だったんだ。
 でも、何も知らないからこそ、下腹部から盛り上がり、ズボンの奥でテントを張っている異変の正体にすぐに気付いた。

「えええ。なにこれぇ!?」
「キスだけでこんなに大きくしてるなんてよ。ち〇ぽ勃起させて感じてたんだな」
「な、なにするの、いやぁ!」

 真琴(伴典)が寝巻のズボンを乱暴に剥す。男性用の下着から覗いて見せたのは、男性しかついていない、勃起したおち〇ち〇だった。直立しているおち〇ち〇は、触っていないのに既に熱く硬くなっていた。

「これが俺のち〇ぽかよ。俺の目の前にあるなんてよ・・・・・・へぇ~。裏筋こんなんなってるのかぁ」

 顔を近づけておち〇ち〇に興味を示す真琴(伴典)。勃起したおち〇ち〇のイカ臭い香りと皮の先っぽから見える亀頭部分を見つめている自分の高揚した表情。
 まるで、本当に私がおち〇ち〇を欲している顔をしているみたいだ。

「女が平気で男のブツを咥えることができるか分かった気がするぜ。こんな立派なモノ見せられたら、咥えたくなるな」
「え、なに言ってるの?」

 真琴(伴典)が私に目を合わせてニンマリと嗤う。小さな口を大きく開けて、喉仏の奥まで見せつける。

「この口でフェラしてやろうか?」
「なな、なに言ってるのよ!いやよ、そんなの。絶対、いや!」

 私は真琴(伴典)の案を認めない。自分の身体を心配して、どこの誰かも知らない中年のおち〇ち〇なんか絶対咥えたくなんかないから。

「私のお口に、そんな汚いモノ入れないでよ!」
「汚い・・・?」
「あっ・・・」

 感情が先走り、思わずついた言葉に真琴(伴典)は眉間の皺を寄せる。しかし、怒りを抑えながら平然と私に笑みを浮かべていた。黒い笑みだった。

「へえ、それもそうかもね。でもね――」
「んあっ!」
「触られただけでビクンって跳ねるち〇ぽがどこまで我慢できるだろうね?」

 おち〇ち〇に触れただけで背筋が伸びて、足の先までピンと跳ねるくらい味わったことのない刺激が突き抜ける。おち〇ち〇は男性の性器だって知ってるけど、こんなに感じるなんて思わなかった。
 真琴の手が私の性器を両手でしっかり掴んで上下に扱き始める。皮が捲れて見える亀頭がぷくりと顔を見せては鈴口を気持ちよさそうに広げていた。

「ち〇ぽ弄ったことなんかないんだろ?それじゃあ気持ちよさなんか知るはずないよな?」
「あっ、あっ、これ、やめてぇ」
「んふふ・・・。ふぅ~♪」
「ひぃぃ!!?」

 捲れた亀頭に突然息を吹きかけられて、思わずヘンな声を上げてしまった。ぞわりと背筋が震える。これが、男の子の性器なんだ。女の子と違って、外にはみ出している性器は、快感に敏感で、弄られるとどんどんおち〇ち〇が気持ちよくなって勃起しちゃうのが丸見えになっていた。
 戸惑いながらも徐々におち〇ち〇に血が巡っていくのが分かった。

「あははっ!ひぃぃだって!か・わ・い・い・~♪」

 真琴(伴典)が笑いながら私を侮辱する。
 私の顔で、私を馬鹿にする。おち〇ん〇を扱く真琴の手が止まらない。小さな手の平で包まれ、イヤらしい動きで上下に扱く自分に、吐き気を覚えながらも、身体は素直に反応してしまっていた。

「うわっ、見て。こんなに大きくなってきた」
「はぁ・・・はぁ・・・こんなに大きくなるんだ・・・」
「自分の勃起したち〇ぽこんなに大きかったかな?それとも俺が縮んだせいかな?」

 伴典本人も見たこともないおち〇ち〇の勃起をまるで私が異常に興奮しているせいだと暗に促しているように聞こえた。捲りあがった皮の間に見える白いカスを扱きながら掬い取る。

「皮の間に溜まったお汁と、カスが一気に見えてきて・・・すんすん・・・くっさいたらありゃしない」
「私のせいじゃないもん・・・」
「あーくっさい。男のチ〇カスって臭くて汚い。すんすん」

 そう言いながら、指先で、カリ首のあたりについた白いカスを取っては自分の顔に近づけて匂いを嗅いでいた。罵倒しながらも匂いを嗅ぐ真琴の表情は、さらに赤く染まっていった。

「なんか、嗅いでいると癖になりそう」
「ヘンなことしないでよ・・・変態!」
「そう言いながらも私を見てすっかり勃起してる変態はお前じゃないか。手の中で熱く滾って、思わず火傷しそうなくらい火照らしているのはダレだ?」

 私が罵ると、さらに輪をかけた罵倒が言われる。すっかり根負けしている私は、真琴(伴典)の良い様に弄ばれる。自分の身体を使って、私を弄ぶ。自分が自分じゃないみたいになりそうで怖い気持ちでいっぱいだ。

「あれ?まだ濡れが足りないかな?・・・・・・んあ~・・・・・・」
「ひゃぅっ!?」

 戸惑う私を置いて、おち〇ち〇の先っぽに唾が垂れ零れる。空気に触れてひんやりとした唾がおち〇ち〇に垂れてきて、思わず腰が跳ねてしまう。

「そんな、き、きたないよ」
「んぅ~?自分の綺麗な唾でしょう?これでちょっと強めに擦っても大丈夫。綺麗にち〇ぽ洗ってあげるからね」

 自分の唾で濡れたおち〇ち〇を亀頭の先から白いカスを拭いていくように扱いていく。ぷっくり膨らんだ亀頭から皮の奥まで捲り、チ〇カスを掃除するような手つきで何度も擦っていく。

「あ・・・うぅ・・・ふぁぁ・・・・・・」

 一番敏感な部分に触れられているせいで、イヤでも声が出てしまう。

「ふふ、気持ち良いんだ。ち〇ぽどんどん大きくなってきてる。汚い童貞ち〇ぽ掃除されて、興奮してるんだ?アハハ、はずかしー!」
「やだ、やだ、言わないで!」
「40歳過ぎた男が、12歳の女の子にち〇ぽのお世話されて、しかも気持ちよくなって・・・」
「ひぅっ――――!」
「ほんと、変態みたいだねぇ~」

 まるで赤ちゃんのように、下の世話をされている私を他の人が見たらどういう姿に映るだろう。
 そう、きっと変態にしか見えないのだろう。
 真琴の手は擦るだけじゃなく、おち〇ち〇を絡めて刺激する動きもし始めている。恥ずかしさがあっても、その刺激は気持ちよくて、一気におち〇ち〇が硬さを増していく。

「あはっ♪まだち〇ぽ大きくなるんだ。綺麗にしてあげていただけなのにね、おかしいねぇ~?」

 笑い声をあげながらも目は私を蔑んでいる真琴(伴典)。初めて男の子の快感を知ってしまった私を誑かすように、唾と先走り汁で濡れた指先のツボを突いた刺激を加えながら上下に優しくおち〇ち〇を扱いていった。
 先端からとろとろと溢れだす先走り汁。他の誰でもない、私が溢れさせた男の子のお汁。既に感じて亀頭を真っ赤に充血しており、先走りは止まらない。

「(あ、あ、このまま、いっちゃう・・・いかされちゃう・・・っ!) 

 私は真琴―わたし―にいかされちゃう。そう思った時、真琴の手がぱっと放れ、勃起したおち〇ち〇はぶらりと重力に垂れさがる。包み込んでいた真琴の手の体温から離れ、急に寒さを覚える。もう少しでイケるはずのおち〇ち〇が、我慢できずに訴えかける。
 ビクンビクンと、自分の呼吸に合わせて跳ねる。それは、まるで本当の私の心の声を代弁しているみたいだった。

「あっ・・・あっ・・・」
「それで、この後どうしたいのかな?」

 真琴(伴典)はここで初めて私にイニシアチブを譲り渡す。
 ずるい、このタイミングで。
 否定をしたい私の気持ちよりも、感情が勝ってしまう状態で私に主導権を与えるのだから。
 全部、彼の言う通り。彼の望む通りにしか私はもう動けない。悔しい。悔しいけど――

「わ、私の勃起したおち〇ち〇を、お口で咥えてほしい!」

 私は自ら、真琴にフェラを要求したのだ。


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 私が目を覚ますと――なにかヘンな声が聞こえてきた。

「・・・・・・ぅ、んぅ」

 布地の擦れる音。ポリエステルの生地を擦る音と微かな女の子の漏れる声が耳を撫でる。どこかで聞き覚えのある少女の声。それはとても近くから聞こえてきた。

「ぁぅ・・・あんっ」

 なんだろう。どんどん鮮明に聞こえる少女の声。私の意識がしっかりしてくると、ゆっくりを目を開けてなにが起こっているのかを見たくなってくる。そこに映った景色。電車内で繰り広げられていた景観は。それは、スク水姿の女の子が電車内で椅子に座り、自分の胸を弄っている様子だった。
 ただ一人占拠した椅子の上で、片脚をつき、右手を自分の胸へと伸ばしてこねくり回している。その仕草、その動作はまるで、夜に電気を消した部屋の中で、人目を忍んでオナニーをするのと同じだった。ただ今回違うのは、その動作が行われているのは夜ではなく昼。人目を忍ぶ部屋の中ではなく、人目を憚らず公共の電車内で平然と自慰行為に耽っているのだ。信じられないことをする少女。私ですらデリカシーがない人だと、その人に忠告してしまうかもしれない。
 でも、私はその忠告をあげる声が出なかった。あまりにもびっくりして、声が出てこなかったから。 
 だって、私の目の前で、公共の場で人目を気にせずオナニーをしている少女というのは、紛れもなく私、和泉真琴だったのだから。

「ふぁ・・・っ!あぁん!」

 スク水を着て電車に乗っている少女というだけで、かなり少女を特定できるはずだ。この時刻にそんな格好で電車に乗っていたのは、私以外誰もいないだろう。つまり、目の前に映っているのは紛れもなく和泉真琴で、でも、私も和泉真琴で――どういうことなのかわからないよ!!

 くちゅくちゅくちゅ・・・・・・

 少女の左手がスク水の股の部分を擦っている。すると、ぷにぷにと押される恥丘の形にお汁が染み出し、スク水を濃く変色させていく。私の身体は濡れているみたいだ。感じている声を張り上げてしまうほど、気持ちよくなっているのだ。
 私の脳が現実に追いつかない間に、私の身体がどこか行ってしまう――それだけは守らなければいけない。

「ちょっと、やめてよ!」

 私が声を張り上げる。すると、普段聞くことのない野太い声が私の言葉を奏でていた。声を張り上げた私もそうだが、オナニーに耽っていた私の身体もようやくその手をいったん止めた。

「ようやく目が覚めたんだ」

 私に向かって私がしゃべりかける。自分の耳から聞こえる声と違う声色で私が話しかける。
 まるで別人のような喋り口調だ。

「あなた、ダレ・・・?」
「私は真琴。和泉真琴。中学1年生の12歳」

 私の身体は私に聞かせるように自分の名前を二回繰り返した。聞いてもいないのに自分の年齢を言うことで、さらに私に自分が和泉真琴で間違いないことを諭した。
 電車の中に私に似た同姓同名がいる以外、こんな現象起こるはずがない。でも、そんな仮説こそ馬鹿げた話なので、自分の頭で論外する。だから、おかしいのだ。私がもう一人いるなんてこと――

「それは私!私なの!!」

 私が叫び、存在を否定する。すると、真琴は自分でも浮かべたことのない歪んだ笑みをみせて、低い声で私に嗤った。

「くくく・・・!そりゃそうだよな。さっきまでこの身体はお前のモノだったんだからな。俺だって付け焼刃の知識じゃこの程度しか覚えてねえよ」

 急に口調が男性のものへと変わる。私の声がさらに別人の音に変わっていく。

「でも、もうこの身体は俺のモノだ。お前のモノじゃねえ」
「あなたこそ、ダレなの・・・?」
「財布に身分証明書が入ってる。それで勝手に調べろ。その財布の中身はもうお前のモノなんだからよ」

 私の質問に答えず、真琴は椅子に転がっていた古びた長財布を投げつけた。私は無言で財布を受け取り、中身から身分証明書を見つけた。
 越智伴典。仏頂面した証明写真と供に記された名前と顔。それが――今の私・・・?

「――――っ!!?」

 私はこの時になってようやく自分の今の姿を見たのだ。
 窓越しに映る男性の姿。それは、身分証明書に映っていた証明写真とほぼ同じ顔だった。仏頂面だった顔が、今にも泣きだしそうな顔をしている以外は――。

「これが・・・わたし・・・」

 私の声が、私の気持ちが、男性の声で発せられていく。震える手で自分の顔をなぞると、伸びっぱなしの無精髭がジョリジョリと硬くなって手の甲の滑りを何度もせき止めていった。そんなことをお構いなしに、私は自分の置かれている立場に気付き、絶望に打ちひしがれる気持ちに苛まれていた。
 和泉真琴と越智伴典の姿が入れ替わっていた。

「ウソよ・・・。なんで、こんなことに・・・」
「なにも知らないお前が悪いんだよ。またいつどこに来るか分からない『入れ替え車両』に乗れたらいいな、ハハハ」

 真琴(伴典)は下衆な表情で私を見下した。その表情は中学生が浮かべるものとは思えないほど冷めきっていた笑みだった。
『入れ替え車両』の噂は聞いたことがあっても、所詮噂と思って軽く聞き流していた。噂を本当に信じている人なんていない。私たちの世代なんて昔流行った百物語や七不思議なんて、そうそう信じていない。
 だからこそ、もしその噂が本当に起こったとしたら、一体だれが本気で信じてくれるというのだろうか。
 姿が変わるより、心が変わるより、真実を信じてもらえないことの方がよっぽど、怖い。

「かえして。私の身体かえして!」
「さわんじゃねえよ!この身体はもう俺のモノだって言ったろ!」

 大の男が少女に蹴り飛ばされる。乱暴にお腹を蹴られた伴典(私)の身体は、電車を転がりくの字に曲がった。そんな無様な伴典(私)を見て真琴(伴典)はニヤニヤと嘲笑っていた。

「この身体だけじゃねえ。この身体を手に入れたってことは、お前の人生を手に入れたってことなんだよ。つまり、俺はこれから美羽と咲良ってやつと一緒にプールに行くんだよな?」
「な、なんでそのことを・・・?」
「付け焼刃の知識って言ってたけどよ、『入れ替え車両』は身体だけじゃねえ、記憶だって入れ替わってるんだよ。だから、いつでも記憶を引き出せばいつ何があったかを読みだせるんだよ」
「そんな・・・」
「だからよ・・・・・・ふふっ、ごめんね。おじさん。これから私、二人の元に帰らないといけないの。だから、もうすぐお別れだね」

 急に真琴(伴典)の口調が私の普段の口調に早変わりした。仕草も先程の横暴な姿は微塵も感じさせない。屈託ない笑顔はまるで入れ替わりが起こる前の私そのものだった。
 伴典の言う通り、彼は私の人生をそのまま奪おうとしているのだと、この時確信した。唖然としている私の耳に、駅到着のアナウンスが流れ始めた。目的の神保市に到着したのだった。

「ウソ・・・ウソでしょう・・・」
「おじさんもおじさんの人生を満喫して楽しく過ごしていってね。それじゃあね~」

 身支度を整えた真琴(伴典)は電車を降り、人ごみに紛れて消えていく。私はいなくなってもらったら困ると、慌ててもとの自分を追いかけるように電車の外に飛び出した。

「いや、行かないで!」

 同じように人ごみをかき分けて進む伴典(私)。すると、改札口を出た駅前で美羽と咲良に再会した真琴(伴典)の姿を見つけたのだった。

「どこまで行ってたのよ。心配したじゃない」
「うまく合流できて良かった。あと、『入れ替え車両』に乗らなかった?」
「うん!もちろんだよ!」
「そもそも、それはあくまで噂だし、乗ったとしても入れ替わりなんて・・・・・・そんなのあるわけないじゃん!」
「・・・そっか。それならよかった」

 二人に嘘をついて入れ替わりのことを隠そうとする。このまま別れてしまったら、二人は一生真琴(伴典)に騙されてしまう。そんなことさせない――。

「待って!!!」

 私は三人の前に姿を現した。美羽と咲良は伴典(私)の姿にびっくりしていた。

「私の身体かえして!二人とも、私が真琴なの!信じて!」
「えっ、ちょっと?どういうこと?」
「真琴?」

 二人が私の言葉に真琴(伴典)に疑心暗鬼する。それすら計算内のように、真琴(伴典)はくすっと口元を釣り上げた。

「やだぁ、怖い。変態じゃない。自分と同じ名前を言うなんて・・・・・・」
「へん・・・た、い・・・?私が・・・!?」

 動揺する私。真実を告げただけの私に対して、第三者の視点でそう発したのだ。40歳を過ぎたおじさんが二回りも年下の少女を名乗る――そんな姿を他の人が見ればどのように映るというのだろうか。どういう姿に映るのだろうか。
 真琴(伴典)の声に賛同するように、美羽も咲良も伴典(私)から一歩引いた。

「そ、そうよね。近寄らない方がいいわね」
「美羽ぅ!私だよ、和泉真琴だよ!」
「私の名前まで知ってるの!?ちょっと、この人ダレ?」
「そう言えばさっき、私の鞄の中身を漁ってた人がいたんだよ。きっと、この人だよ」
「ウソ!適当なこと言わないで!」

 騒ぐ伴典(私)に咲良が勇気を出して私の袖を掴む。その顔は今まで見たこともないくらい激しい剣幕を見せていた。

      そんな目で見ないで

「これ以上邪魔するなら駅員呼ぶ。それで、警察に連れて行ってもらうから」
「咲良ぁ・・・・・・」
「誰か助けてぇ!ヘンな人が私たちをつけ回してるんです!」
「えぇぇ・・・っ」
「警察だ!」

 作り話、捏造で固めてくる真琴(伴典)の言葉を否定したくても証拠など何一つ無い。入れ替わりと同じなのに、信じるか信じないかはその人次第だなんて、そんな他人に投げつける真実は本当に救えない。

「私・・・違うのに・・・どうして誰も分かってくれないの!!!」

 私は警察から逃げるように三人の元を放れざるを得なかった。泣きながら帰宅する私の家は、帰る家ではなくなってしまったことにまた泣いた。


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 8月に入り本格的な暑さが到来した最中、夏休み真っ只中の私、和泉真琴―いずみまこと―は友達と一緒に神保町の大型市民プールにいく約束をしていた。

「和泉ちゃん!きたよ!」
「はーい」

 お母さんに「いってきます」と挨拶して、玄関を飛び出した。外には水泳部の渡辺美羽―わたなべみゆ―と桃井咲良―ももいさくら―が待っていた。

「おまたせ。それじゃあ行こうか!」

 三人仲良く歩き出す。駅前までしばらく歩くため、暑さを紛らわしながら夏休みから会っていなかった友達との再会に会話に華を咲かせていた。

「うわ、夏休み見ない間に焼けたね」
「お互い様だよ」
「私は部活、咲良はアイドル活動で仕方ないにしても、帰宅部で何もやっていない真琴がなんでそこまで焼けてるのよ」
「家族で海に連れてってもらったんだよ」
「いいわね。家族旅行に連れてってもらえて。私も地方から外でたいわ」

 そういう美羽は水泳部では全国出場を狙えるほどの実力者だ。将来はオリンピックの強化選手に入ることを目指して日々練習している。

「私より咲良の方が全国知ってるでしょ?コンサートで飛び回ってるんだから」
「まだそんな大きい活動してないよ。他県に行っても日帰りで飛んで戻ってきてるくらいだし、実際よくわかってないよ。遊んで観光する時間なんて滅多にないし」

 アイドル活動と学生を両立している咲良は休みが取れる方が珍しい。学校が夏休みならアイドル活動の予定を入れられてしまうくらいなのだから、私たちと一緒にプールに行けることが本当に稀だ。
 咲良は咲良なみに、クラスメイトとの時間を大事にしたいと思っているのかもしれない。

      褐色娘(日焼け

「あ、真琴ったらもう水着着てきてる!ちょっと早くない?」
「そんなことないと思うよ。着替えるの楽だし、汗かいたってへっちゃらだし」
「あんたにはデリカシーってものがないのかしらね」

 美羽がため息をつき、私は愛想笑いで誤魔化した。別にいいと思うんだけどな、誰かに迷惑かけてるわけじゃないし、学校で水泳の授業があれば家から水着を着てその上にセーラー服を着て登校するくらい普通のことだと思ってるんだけど。
 美羽はそれは反対らしい。まっ、人それぞれってことで。それが私らしいってことでもあると思うの。
 駅前にやってきた時に電車が到着したアナウンスが流れた。

「ちょうど電車来るよ」
「ま、待ってよ」

 慌てて切符を買い、ホームにかけ下りる。私たち三人が電車に乗り込んだ瞬間、扉が閉まった。

「タイミング良かったわね。今日はついてるんだよ!」

 息を切らしながら飛び乗った私たち。冷房の効いている車内の涼しさに呼吸を整える。
 それでも車内に人は多い。仕事に出るサラリーマン、OLから、妊婦、老人、私たちと同じ夏休み中の子供たち。
 飛び乗って騒いでいる私たちに視線が集まるのを気にして、美羽がすぐに私たちを静止させた。社内は静かにするように躾けられている美羽にならうように、私たちも静かに駅の到着を待った。
 その時間ですら私は楽しみが膨らんでいく。ワクワク感で心臓が高鳴り、今すぐ泳ぎだしたい衝動に駆られてしまう。

「まだかな、まだかな」
「真琴は面白いよね。言葉に出なくても何を言おうとしているのかわかっちゃうし」
「そうかな?」
「お盆に小さいライブコンサートがあるけど見に来ない?真琴ならきっと嵌っちゃうと思うよ?」
「えっ、ほんと!いくいく!咲良が出るなら絶対観に行くよー!」
「そう言ってくれると嬉しいな。私も頑張って歌って踊るよ!」

 私と咲良で会話をしていると、美羽が小さく咳ばらいをした。声が大きくなったことで注意した美羽に咲良は勘付き声を落とした。私も周りを見ると、周囲の視線がちらほら目に入った。
 その視線はやけに私に刺さるそれくらい私は車内で要注意人物として映っているのだろうか。

「・・・・・・あっ、スク水・・・」

 私は肩から見えるスク水を隠すようにキャミソールの肩紐を掛け直した。当然、それでスク水の紺色が隠れるはずがないのだけれど。
 なんだろう、この見られている感覚・・・・・・これが、恥ずかしいという感覚なのだろう。
 見せるつもりじゃないものを大勢の人に見られるというのはなんだかこそばゆい。美羽が言っていた、でりかしぃっていうものに違いない。
 穴があったら入りたい。せめて、電車の中で人の少ない場所に移動したい――――。

「あっ、真琴。どこ行くの?」
「んっ・・・ちょっと隣の車両を見てくるの」
「もうすぐ着くよ?あまり遠くに行かないでよ」
「あはは。分かったよ。すぐ戻るね」

 私は二人の傍を放れ、隣の車両へと歩き出す。私が二人と離れてしばらくすると、車内アナウンスが流れ始めた。


『お客様にご連絡いたします。当車両は次の鳴神駅を通過しますと、5両目を「入れ替え車両」に変更いたします。お客様のお間違いがないようにお願いいたします』


 途端に、人が流れるように私の車両に人が押し込んできた。狭い車内がさらに人でごった返す。もう私の目から二人の姿は見ることが出来なかった。

「入れ替え車両・・・・・・?」

 何のことだろう。そんなの初めて聞いたことだ。よくわからなかった私の視界に入ってきたのは、目の前に開けた誰も疎らにしか乗っていない車両。椅子がガランとした車内に惹かれるように、私は自然に5両目へと足を踏み入れていった。


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 会社を無断欠勤することにした俺は、昼間の商店街へと足を運んでいた。
 真面目で通っていた俺が平日の商店街にいることなんて滅多になく、外で汗を流しながら走り抜けるサラリーマンだけじゃなく、学校をサボる高校生、夫が外出して息抜く妻たちと、老人たちの集いと、土日とは違う面子の商店街の賑わいを見せていた。

「へえ・・・みんな外に出てるんだな。って、俺が出ていないのか」

 最近では休みの日でも部屋に籠もりきりの俺。意欲を湧いて外に出てきたのが久し振りだ。
 なにしろ今の俺は見た目から体格まで全然違う。女体化してしまい、誰が見ても女の子になっているのだ。
 もとの男性の姿は微塵もない。筋肉の付き方も違えば顔の骨格まで変わってしまっている。そうなれば当然、服のサイズも変わってしまう。外に着ていく衣服が全く無いのだ。
 唯一俺の部屋にあったのは、去年の会社の忘年会のビンゴゲームの景品でもらったセーラー服のコスプレ衣装のみだった。
 皆が俺の景品を嘲笑っていたのを覚えている。俺すらも貰った時は何に使えばいいのか分からず、棚の上に置いたまま放置していたくらいだ。
 まさかそんな物を俺が着ることになるとは夢にも思わなかった。

      乳首みえてますよ?(伏線


 どこの制服を模倣して作ったのか分からないが、これは恥ずかしい。俺が高校生だったのは〇十年前の話だ。今更学生服が似合うとは思っていないが、すれ違う人の視線を浴びている気がする。
 男性では着ることがないセーラー服とスクールスカート。男性指定の学生服(学ラン)とは違い、露出する膝部分にひんやりとする冷たい風が撫でていく。高層ビルが立ち並ぶ一角にある商店街に強いビル風が吹き抜けると、スカートが捲れそうになり慌てて手で押さえるほどだ。

「ひえ、女子高生たちは恥ずかしくないのか?」

 スカートというのは全然慣れない。今まで穿いたことないのだから当然であるが、それにしても風がスカートの中に入り、股ぐらまでくすぐっていくのだから違和感だ。ジーンズやズボンのように下半身全体を守っているのとは違い、スカートは涼しい。涼しすぎるのだ。
 ズボンの中が蒸れることなく、下半身を露出しているのだから涼しさはあって当たり前だが、今まで感じたことのない涼しさに慣れるまで時間がかかりそうだ。スカートの魅力と魅惑は女性にならないと分からないだろう。男性はその魅力を見て楽しんでいるに過ぎないのだ。スカートから伸びる白い脚を見てニヤニヤする男性の視線もちらほらいる。
 つまるところ、今の俺にこの姿は落ち着かなかったのだ。
 商店街に来たのは新しい衣服を買う為だ。女体化した俺に合う衣服を買いに足を運んだのだ。

「いらっしゃいませ」

 若い店員が働く女性ものの衣装を扱うお洒落なお店。ここも男性だったころは入ろうとは思わなかった店。

「あの――」
「あらっ?うふふ・・・・・・」
「――えっ、なんですか?」

 笑われた。店員が俺を見てすぐに笑ったのだ。いったい、何が可笑しいのか分からずびっくりしてしまう。

「いいえ。なんでもありませんわ」

 店員ははぐらかしながら規律を正す。店員と客の距離がやけに近い気がした。
 女性同士だとこういうものなのだろうか・・・。

「あの、俺・・・私に合うような衣装はありませんか?」
「お任せください。お客様みたいな可愛い子に似合う衣装を取り揃えておりますわ」
「可愛い・・・俺が?」

 他人に言われると何とも言えない歯がゆさが背筋を駆け巡る。もと男性の俺が可愛いなんて言われて喜ぶべきだとすれば、女体化を受け入れるというようなものだろうか。

「でもお客様。自らが着てみたいジャンルはありませんか?」
「ジャンル・・・?」
「カジュアルからお姉系、きれいめ、ギャル系、B系・・・ひょっとしたらお客様なら姫系、ゴスロリも似合いそうですね、うふふ」

 簡単に言う店員の話に頭が回らない。そんなにあるのか。女性のファッションなんて全然わからないぞ。
 早くも失敗した。安直に、お店に行ったらなんとかなると思っていたのが裏目に出たと後悔し、言葉を失ってしまった。

「お客様」
「は、はい・・・」

 俺が困っていると店員が声をかけてくれた。

「大事なのはお客様がどういう衣装を着てみたいかですわ。お客様なら何を着てもお似合いですからご安心ください」
「そ、そうですか・・・!」

 まるで俺は店員の言葉に救われたような気分になった。服選びにおいて最も重要なのは、なにを着るかが重要じゃなく、自分が何を着たいかが重要なんだ。
 時代の流行も、雑誌の宣伝も、店内の広告も、ネットの評判もすべてはそれに集束する。モデルを真似るのも、他人の衣装を着てみたいと思うのも、自分が着たいという欲望の表現だ。
 恥ずかしがる必要もない、自分が一番着てみたいと思う衣装を買うのだ。格好つける必要もない、自分が一番になれると思う衣装なのだから。
 今着ているセーラー服にしてもそうだ。例えなにを買おうと、全ての衣装は俺に似合うのだ。誰が何と言おうと、恥ずかしくない衣装だと誇りに思おう。

「わかりました。じゃあ・・・ブルセラを着てみたいです」

 店員の顔が固まったのを見た。
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 俺の手は自然と、胸に伸びていた・・・・・・。

「あっ、んあぁ・・・っ!」

 今のが自分の口から出た声なのか。
 今のが、自分の胸から感じた刺激なのか。
 ビリッと、稲妻のような快感が走る。胸から甘い刺激が蕩けだしてくる。自分の胸から感じたことのない柔らかさを堪能し続ける。その手は止まらず、自分の欲望を自制できない。

「はぁ・・・っ、だめだ、止まらない・・・・・・んっ、んんっ」

 朝の支度を忘れてオナニーをしたいという欲求に駆られる。自分の身体でありながら初めて味わう快感に、未だに夢を見ている気分だった。

「やっぱり女になっている。ってことは・・・アソコもやっぱり、女になってるんだよな?」

 胸を弄り、興奮しているはずの俺の下半身は、普段感じるムスコの存在を感じることは出来なかった。パジャマの奥に隠れているアソコ・・・俺は見たいと思ってズボンを脱いでいった。

「お、おぉぉぉ・・・・・・」

 パジャマの奥から姿を現したのは、むっちりとした太腿だ。ムダ毛もなく、すべすべの素肌に包まれて、はちきれんばかりに肉感的な、それでいて健康的。自分の太腿とは思えないほどの青白さだ。

「こんなにすべすべなんだ。触っているだけで気持ちいい。はぁ、はぁ・・・・・・んっ、ちょっと触っただけなのに・・・ひぅ・・・・・・っ」

 手の平が太腿の上を滑るたびに、腰の辺りにぞくぞくとした甘い刺激が走る。胸や秘部だけじゃなくても感じやすいのが女性の特徴なのだろうか。太腿をなぞっていると、付け根にあるパンツに隠れた部分が熱くなってくるのを感じた。

「あぅ・・・ココ、やっぱりおち〇こなくなってる」

 パンツの奥から感じるのっぺりとした感覚。パンツの上から擦ってみると、やはりムスコの存在を感じることはなく、存在がなくなってしまっていた。男性としてではなく女性として確立された瞬間だ。普段ならショックを受けるだろう。しかし、そのショックよりもさらに上回る期待と興奮が俺を高めていた。
 擦りつけるだけでわかる女性の性器の感覚。白い布の奥からじわりと濡れてくる感覚。パンツに張り付いて性器の形を浮かび上がらせる。

「これが、女性の濡れる感覚なのか・・・。熱いのが染み出してきてる、んっ・・・・・・」

 擦りつける度に、じわりと、身体の芯が熱くなる感覚。身体の火照りを覚え、疼き出してくる。
 切なささえ覚えるこんな感覚、初めてだ。
 まるで焦らされているみたいに快感が欲しがる身体。訴えかえるように濡れる身体に我慢できなくなって、そわそわと太腿を擦り合わせてしまった。

「ん、いいよな・・・触っちゃっても・・・・・・俺の身体なんだもんな」

 もう耐えきれなくなった俺はパンツを脱ぎ捨てて、大きく脚を開いて鏡に剥き出しのおま〇こを曝した。

「はぁぁ・・・・・・これが、俺の・・・お、おま〇こ・・・・・・んんっ、すげえ・・・はぁ・・・っ」

 初めて対面する自分の女性の性器。興奮しているせいか、うっすら開いてて奥まで見えてしまう。ネットにいくらでも転がっているエロ画像とは違う、本物のおま〇こがそこにあった。鮮やかなピンク色しており、舌先で軽く触れれば溶けてしまいそう。綺麗すぎるほどの女性器だ。

「あっ、はぁ・・・はぁ・・・・・・はぁぁぁ・・・・・・っ!」

 男性として見てる感覚と、女性として見られている羞恥に同時に襲われる。自分の口から洩れる吐息がどんどん甘く激しいものになっていき、その声に興奮をしてしまっていた。まだ何もしていないのに、視線だけで感じてしまう。そんなこと男性の時にあっただろうか。
 足を少し開けばおま〇こもうっすら開く。鏡に剥きだしのおま〇こを映しては自分が女性としてのダイレクトな快感が生まれていた。

「もうこんなの・・・いじりたくなってきて・・・はぁっ、んっ、んぁぁ」

 自分の身体だからと・・・。他人の身体を傷つけるわけでもないにも関わらず、初めて見る女性器を見る背徳と辱められる女性の感覚を感じ、腰の奥から焦燥感にも似た甘い感覚が込み上げていた。
 じんじんと切なく嘆く身体の訴え。自分の手が自然に動くのを抑え込むことが出来そうになかった。

「ちょっと触るだけだから・・・ちょっとだけおま〇こ触ったら、それで終わりにするから・・・」

 これからする自分の行為の言い訳を発してしまう。
 これからする――女体でのオナニー。今までやってきた、男性の時と同じように、おち〇こを握るように手を持って行くのを、今回はおま〇こへと持って行くだけ。それだけでも
燃え上がった気持ちを抑えることが出来ず、自分の細い指先は戸惑いながらも次第に肉襞へと這い進んでいく。

「ふああぁっ!」

 触れた瞬間、ビリッと全身が甘く痺れる。今までお金を払っておま〇こを触れる機会を買っていた俺が、おま〇こに触れられる感覚を味わっているのだ。
 女性が味わっていた感覚を、自分も体験しているのだ。

「んぁぁ・・・っ!あっ、ここ・・・こんな感じるんだ・・・んっ、んぁ・・・・・・」

 自分が出している声なのに、女性の声で聞こえる喘ぎに耳が犯されていった。

「んっ・・・もう、ぞくぞくってしてきて、ん、ぁぁ・・・。こんなに凄いんだ。・・・おま〇こ触られるのって」

 自分の意志とは関係なしにひっきりなしに喘ぎ声が漏れてしまう。野太い男の声ではなく、聞いているだけでイヤらしさを際立たせる妖艶な女性の喘ぎ声だ。それが、今の俺なんだ。

「はぁ、はぁ・・・っ。自分の声で興奮するなんて、なんかヘンな感じだ」

 鏡には女性器だけじゃなく、自分の姿も映っている。女性になった俺の姿が映っている。俺ですら初めて見る、誰も知らない女性が映っているのだ。そんな彼女が痴態を晒しているように、下品に大股を開いてオナニーをしていく。その行為に俺は興奮し、快感も増していく。そのうえ、女性の身体からの刺激はつよく、おま〇こを触られる感覚は男性のそれとそう変わらないのに対して、おま〇この中に指が入って、ヌルってした感触はちょっと、すごい。

「あっ、あっ、んあっ・・・・・・んふぅ、くぅぅっ」

 指先が膣襞を引っ掻くと、自然と肩が震えた。ちょっと触っているだけなのに、腰の奥からじわりとした絶頂感が込み上げていた。男性の時とは違う、膣内が濡れていく感触に身体の疼きが収まらなかった。

「こんなの初めてだから。俺、興奮してるかも・・・んふっ、あああ・・・」

 性器のまわりをなぞるだけでも、先程よりも刺激が強くなっていく。敏感になっていく身体。ぷっくり膨らむ恥丘は唇みたいに指先に絡みついてくる。刺激はおま〇こほど強くないが、焦らすみたいに指先でなぞるのも結構きもちいい。

「ああ・・・頭の芯が、熱で蕩けたみたいにぼうっとしてる・・・・・・」

 朝起きたら身体が女体化していて、夢中になっておま〇このまわりをなぞり、次第に身体が疼いて脳が熱でやられている。これが夢だと思っても仕方ないくらい身体がふわふわしている。気持ちいい女体の身体を好きに弄ることができ、おま〇こ見放題の現実に完全にやられてしまっている自分がいた。
 男性に戻れなくなりそうだ。
 理性を抑えるなら、ここで踏み止まるべきだ。しかし、それを拒む様にジンジンと存在感を見せ始めてくる部分があった。


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 千村貴明は無類のアイドルヲタクである。
 今を活躍するアイドルグループだけではなく、一世を風靡した伝説のアイドルからメディアにほとんど出ず、ライブ活動中心に活躍する地下アイドルまで熟知しているほどだ。
 いったい、どこでそういう情報を仕入れてくるのかは定かではないが、布施義也は貴明に連れられてライブハウスにやってきていた。
 そこで活躍している地下アイドル。その、闇――

      これが立ち絵だと!?

「みなさん。今日は私たちのライブに来てくれて本当にありがとう!」
『うおおおおお!!!』
「今日は私たちの歌声に大いに盛り上がってくださいね!」
『咲良ちゃあああああんん!!!』
『千秋ちゃあああああんん!!』
『希美ちゃああああああんん!』

 1〇歳の女の子グループに群がる兵の紳士たち。その中に貴明は目立つほどの声援を飛ばしていた。成人を超えた男性の中に高校生がいるだけでも一際目立ち、その軍勢のリーダーシップを発揮して統率を取りながら振り付けの合図を出していた。歌っている彼女たちに負けないほど貴明は汗をかいて踊っていた。

「ああいう踊りもアイドルからしてみたら邪魔なんだって聞いたことあるな・・・・・・」
「バカヤロウ!」
「ぐはぁ!」

 なぜか隅で輪の中から外れていたはずの義也の隣に貴明は戻っていた。ライブに連れてきたけど楽しむ様子のない義也を気にかけていたのか、それとも愚痴を聞かれたのか、平拳を飛ばした貴明は義也の様子を残念がっていた。

「音楽好きに年齢は関係ねえ!!」
「貴明、音楽が好きなの?」
「いや、魂―うた―を語る―うたう―アイドルが好きなんだ」
「うーん・・・限りなく黒に近いグレー発言のような」

 一歩間違えばストーカー候補筆頭の危険信号だ。

「地下アイドルとして活躍する幼気な1〇歳の女の子たちを俺たちが面倒見てやらないでどうする?」
「なにその親目線?」
「いいか。ライブはな、お金がなくちゃできないんだよ!言いたいことも言えないこんな世の中はお金が絶対必要なんだよ!!」
「完全に毒されてるね」
「この腐った世の中を粛正するために歌で自己主張する少女たちを俺たちが支えてやる必要があるんだよ!」
「腐ってるのは貴明のその考え方だよ!彼女たちはそんな世の中に絶望してないから!ラブソング歌ってたから!」
「へっ?あれがへヴィメタっていうんじゃねえの?」
「ばかぁ!」

 結局音楽のことを何も知らない貴明。無類の絶対主義アイドルヲタクなのである。

「貴明もよくこのライブのこと調べたね」
「今俺の中で最も熱いアイドルグループだからな」

 若手アイドルグループ『Gypsophila―ジプソフィラ―』。『霞草』の名を持ち、花言葉は『幸福』、『無邪気』、『親切』・・・・・・なるほど、如何にも彼女たちのグループ名に相応しい。しかし、それが理由で最も熱いアイドルというのは義也からすれば違う気がする。貴明にとって彼女たちを推すのは別の理由がある。

「彼女たちはあの種田架純がプロデュースしたアイドルグループなんだぜ」
「え!種田架純って、アイドルだった――!」

      天才は可愛いは正義

 わずか25歳にして天才として名を馳せ、アイドルという枠に捕らわれず女優としても活躍していた彼女。それが新プロダクションを立ち上げ新人育成に力を注いだことで多くの注目を集めていた。勿論、若さを残し人気絶頂時の突然の独立に連日記事は書き込まれ、彼女のアイドル生命は表社会で完全に消えており、イベントでひっそりと顔を出すくらいでありながら、彼女目当てにやってくるファンもいるほどなのだから、なにが正しいのか分からない。

「そう。アイドルがアイドルグループを作ったんだよ。いや、凄いねえ。雑草魂っていうか、抜かれても何度でも根付く執念みたいなものがさ。だから俺は応援してるんだよ」

 諦めない心、夢を追いかける情熱。受け継がれる意志。
 貴明が好きそうなフレーズが種田架純の生き方にはあるのかもしれない。

「貴明にとって『Gypsophila』よりも種田架純なんだね」

 そんな彼女のプロデュースしたアイドルに興味を持つのは当然だ。そして、好きになったらとことんまで突き詰める貴明の探求心は時に怖いものがある。

「お、そう言えば『Gypsophila』の一人の緑風千秋ちゃんの住所を突き詰めたんだぜ」
「貴明、もうそれファンじゃないね。ストーカーだね。危険人物、赤信号だよ」
「早速、憑依部として今夜彼女に憑依してきてくれ」

 貴明と義也。二人で立ち上げた憑依部の活動を突然言われ、義也は驚いた。

「へ?まさか、今日僕を呼んだのって、このためだったの?」

 ライブが終わり記念写真を撮っている『Gypsophila』の三人を横目で見ながら、声を落として貴明に問いかけた。

「高いライブチケットを二枚ゲットするために朝4時起きで電話の前にスタンばっていた俺の苦労わっかんねえかな~。俺眠いんだよな~」
「くっ」

 義也がライブのチケットを安易に受け取ってしまってから、貴明にはこうなることが分かっていたのだ。
 義也に拒否権はないってことが。


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 男尊女卑という言葉がある。男性を重んじて女性を軽視する態度や思想というのは、かつて常識まかり通っていた時代もあった。そして、それは現在でも少なからず社会の底に沈殿しており、中年世代から団塊世代では口を紡ぎ、女性を傷つけていることもある。
 女性の人権を守ろうという活動は増え、賛同する多くの者がその言葉をなくそうと頑張っている。社会が男尊女卑という言葉をなくす動きが活発し、関白宣言を歌った歌手でさえ、現在社会ではそれは間違いだと謳っている。

 電車の女性専用車両の設置、離婚した際の子供の親権、女性の社会進出など・・・

 現代社会において、女性はなくてはならない存在になりつつあるのである。

 対して――
 今まで尊敬の眼差しを向けられていた、男性の立場が危うくなっている。
 子供に尊敬しているのは父親か、母親か尋ねてみたところ、母親と答えた子供の割合は過去最高を記録している。仕事で活躍しつつ、家庭を両立している母親の姿を見ていることが伺える結果だ。母子の関係がより一層親密になっていることも影響しているのではないだろうか。
 専業主婦は既に女性だけに限った話ではない。専業主夫として、女性が働き、男性が家事をするのは既に稀ではなく、男性が家事手伝いをすることは当たり前の社会になっているのである。

 男性としての尊厳を削られ、女性としての尊重を優先された結果、立場は逆転しようとしている現代社会。
 男性として生まれても良いことはない。女性として生まれてきた方が楽だったのかもしれない。つまるところ、人権団体が現れ男女平等を謳う者たちが一番不平等を叫んでいた――俺、丸居千尋―まるいちひろ―はそんなことを思うのだ。

 都内の電車では痴漢冤罪を避けるように最新の注意を払い、セクハラパワハラ発言を気にするよう言葉を選びるまでは気が抜けない毎日を送っている。

「丸居さんってこんなことも出来ないんですか?何歳ですか?」

 仕事の良し悪しとはいえ、女性にこんなことをいわれてムスッとしない男性はいないだろう。それでも俺は歯を食いしばり、「申し訳ございません」と失敗に対して謝ることしかできないのだ。

「今まで何をしてきたんですかね?Excelでこの書類作るくらい一時間で終わらせてくださいよ」
「申し訳ございません」
「息臭いから喋らないでいいです。分かったら行動で示して下さい」
「申し訳ございません」
「はぁ・・・。私、あなたの書類の手伝いをするつもりはありませんから、終わらなければ残業してでも徹夜してでもやっていってくださいね」

 どうして、そんな時代になってしまったのだろう。実力社会――嫌なら辞めれば良いと、まるで俺を蔑む様に見る年下の女性に対して、時代の移り変わりを実感せずにはいられなかった。こんなこと、昔の社会では許されなかった。今では定時に帰れることの方が稀だ。仕事の出来なさが上からも露見した俺の立場は、出世コースからは逸脱して、窓際族としての簡単な仕事しか回されないようになっていった。簡単というのはエリートの人たちが言うだけで、俺からしてみればとても難しい仕事なのだが。
 当然、年下と言えど上の者の態度にならう為、俺に対する扱いは皆厳しいものになっていった。
 大人になれば泣きたいことだらけだなんて知らなかった。こんな社会の空気が辞めさせようとしても、他に俺を雇ってくれる職場はなく、会社に居られることでなんとか食いつないでいくことしかできない。
 髪は無くなり、ストレスから太り、中年おっさんというのが似合う体型に自分からなってしまっていた。
 誰も俺を尊重なんてしないのだ。この歳になって誰からも見向きもされず、誰からも疎まれず、誰からも近寄らず、誰からも愛されない――そんな、男の末路が俺なのだ。
 無様だと、自ら想った。

「俺なんか生きていたってなんの意味もないよな」

 生きるということは、誰かに認められること。誰かに愛されること。それが既に叶わない俺の人生はもう手遅れだ。

「死んじゃおうかな」

 そんなことを考えていた時だった――。

「生まれ変わってみる?」
「は?」

      悪魔に姿は無い

 俺の独り言に答える相手は、俺の目の前に立っていた。女性だった。現代社会では一際浮いた衣装を身に付けた、海外の踊り子のような格好をしていた。
 そんな人が俺に話をかけてくるなんて――異常だった。
 そんな女性に誰も気が付かないようなに素通りするその雰囲気が異常だった。

「貴女はいったい誰です?なんで、俺なんかに話をかけて来るんだ?」

 久し振りに声をかける女性に対して俺は疑惑の念を向けていた。

「うふふ。私は悪魔」
「あ、悪魔――っ!?」

 疑惑はさらに強まる。

「私が誰からも関心を見せないのも、貴方の心を読んだのも、悪魔の所業だからよ」

 異常な雰囲気、疑惑をすべて納得させる彼女に、俺は恐怖に似た関心を示した。
 悪魔だろうが何だろうが、それでも俺に声をかけてくれたことに素直に喜びを覚えていたのだから。

「そんな貴方にこれをあげるわ――『女の子サプリ』」

 彼女が手のひらに握らせたのは、薬にも取れる錠剤だった。

「これを飲めば貴方はきっとやり直せる。辛く苦しい社会にだって立ち直せるわ」

 そんな優しい言葉をかけながら、俺の手のひらを優しく包む。悪魔と言うには似つかない、女性の細い手だった。

「それじゃあね」

 それだけ言って彼女はどこかに行ってしまった。彼女が消えた瞬間にその異常さはなくなり、元の活気が戻ってくる。

「あ・・・・・・これ・・・・・・・」

 俺に残されたサプリメントのみ。中身の成分が何なのか分からないが、たった二錠渡されただけというのがまた淋しく映る。たったそれだけなら体内に支障は出ないだろうと、簡単な気持ちでその場で口に放り投げた。
 ――ゴクンと、喉に落ちた音を聞き静かに家路につく。

「はぁ・・・明日も仕事か、ふあぁぁぁ~」

 布団を出して床に就く。
 ここのところ、毎日起きるのが辛い。


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 夏美の身体でイった悪魔は、休憩を挟むとすぐに元気になった。枇々木夏美という女性に苦戦しながらも手に入れた肉体だけに恩恵は大きく、感度も容姿も申し分ない。悪魔は夏美をとても気に入ったのだ。

「私ったら、こんなにシーツ汚して大丈夫かな~。まぁ、いいっか。どうせ戻ってきた時には渇いているだろうし」

 夏美は常時携帯しているウエットティッシュで身体を拭き、さらに汚れた制服も簡単にシミを消して再び着付けていく。普段手慣れた動きを見せながら夏美は乱れた髪の毛を整え、ツインテールをなびかせ部屋を出た。

「お母さん。ちょっと出掛けてくるね!」

 リビングでぼぉっとしていた香恵が遅い時間に夏美が出掛けることに危惧した。しかし、身体が覚えるだるさに引きづられ、夏美の元気な声を止める気分ではなかった。

「あまり遅くならないでね。早く帰ってくるのよ」

 夏美は香恵からの外出を許可され、家を飛び出していった。
 夏美の目的を聞かないまま。

「そう、私の目的・・・それは・・・、恩は身体で返すものでしょ」

 夜の駅前にやってきた夏美。仕事帰り、部活帰りに飲み屋もゲームセンターも賑わいを見せ繁盛していた。電灯の明るさがまぶしい夜の繁華街は、適当にぶらつくだけでそこそこのイケメンを発見することができた。
 スーツ姿で一人帰宅しているかのような彼に夏美は狙いを定め、声をかける。

「ねえ、お・じ・さ・ん」
「あ?俺?」

 急に声をかけられた男性がびっくりして立ち止まった。制服に仕舞っていた生徒手帳で自分を紹介し、

「現役の女子高生とセックスしません?」

      夜道を一人で歩くのは危険ですよ、おじさん☆

 即座に逆ナンをしかけたのだ。

「特別に2万円でもくれれば私のおま〇こ好きに使っていいですよ」
「やっす!?」

 彼が吹き出す。しかし、社会人としての彼もまた自尊心を保つように咳払いをする。

「だ、駄目だよ、女子高生がこんな時間まで遊んでちゃ。大人をからかうんじゃない」
「ええ?いいの?本当に?後悔しないの?」

 美少女高校生と言わんばかりに夏美は感情に訴えかける。公道で堂々とブラを覗かせる夏美に、男性の目に小さな膨らみと突起した乳首が見えた。

「こうみえて私、感度いいよ?試してみたくないの?乳首だって綺麗なピンク色しているでしょ?」
「きみのやっていることは援助交際だろ?もっと、自分のことを大事にしなさい」

 それでも男性は感情を押し殺す。彼はイケメンでも、法律に束縛された人生の典型のような人だった。

「へぇ。私のこと気遣ってくれるんだ。おじさんって優しいんだね――そんな虫唾が走るくらいの優しさ。私、つい蹴落としたくなるんだよね?」
「うっ・・・」

 夏美が何かを唱えると、男性は背筋を伸ばし、その場に立ち尽くしてしまった。
 まるで感情を殺され、命令を待つロボットのようだった。その例えはあながち間違いではなく、夏美が唱えたのは対象の人物を一時的に支配下に置く催眠魔法。それにより、彼は否定を許さない夏美の玩具に変えられてしまったのだ。

「おじさん。私とセックスしたいよね?」

 夏美がおじさんに再度質問する。

「はい。したいです」
「じゃあ、一緒にラブホテルに行こ。案内して」
「はい。わかりました」

 おじさんが夏美を誘導するように繁華街を抜けて人気の減った抜け道にあるラブホテルに入っていった。その姿はまるで、夏美がおじさんと援助交際をしている様子にしかみえなかった。


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