純粋とは矛盾色

―Necronomicon rule book―

幸せとは何かを探していた。
最高の幸せを追求し、自らの幸せを探求し続けた。 
人と同じことをすれば腹が立ち、人と違うことをすれば角が立つ。
特別になろうと私欲に働けば、抑止を以って常人の行動なのだと気づかされる。
故に、自らを幸せにすることに意味はなく、他人を幸せにすることに意義を見つけ出す。

他人に乗り移る呪い事は自らの存在を薄め、描いた作品を腐らせる。
幾千にして腐敗。誰かに恨まれる人生でも構わない。
キャラを殺し、自分を殺し、最悪の結末で物語が終わろうと、
己の私欲をかけた場所を守り続ける。


私には、正義としての素質があったのだ。


『純粋とは矛盾色 村崎色の手記より抜粋 Necronomicon rule book』 

「たまたま近くを歩いていたらきみに逆ナンされたんです。だから俺は悪くねえ。俺は悪くねえ!」
「そうですか・・・」

 俺の言葉に怜夢はただ静かにうなずいていた。決して彼女が納得したわけじゃない。しかし、これ以上の検索は俺に迷惑がかかると怜夢が配慮した答えだった。おかげでしばらくの間沈黙が続いた。一般人とアイドル。普段なら手が届かないところにいるはずの関係なのに今は同じの家の中にいる。彼女が勇気を出して俺の元までやってきてくれているにも関わらず、俺たちの距離感が縮まることはない。

「どうして俺の居場所が分かったんですか?」
「ネットで聞きました。ファンの中には事件の真相を突き止めようと試みた人がいたみたいで、写真から田上さんの情報を提供してくれた人がいました。半信半疑でしたけど」
「ネットこえぇぇ・・・」
「ごめんなさい。決してあなたを疑っているわけではありませんでした。私も自分の犯した過ちの真相を知りたかっただけなんです。急に押しかけてしまって申し訳ございませんでした」
「いえ・・・」

 「おじゃましました」と、すっと立ち上がる怜夢の後姿を俺は見送っていく。彼女の知らない記憶の断片を俺は知っているだけに、心苦しいものがある。しかし、それを本人に伝えることなどできやしない。例え、怜夢本人が苦しんでいたとしても、俺と琴子が他人の身体を弄んだことを知ってしまえば、嫌われるだけでは到底許されない制裁を受けることになるだろう。
 社会的制裁・・・。社会的道徳・・・。憲法・・・。司法・・・。
 他人を傷つけた者には万人必ず罰を受ける。
 それは決して逃げられない。
 夢や希望を持つ俺たちだって関係ない――。
 好奇心や向上心で「つい」「うっかり」「おもわず」「とっさに」「そんなつもりはなく」、――怜夢を傷つけてしまったのだから。
 それは俺だけじゃない。
 天才だろうが馬鹿だろうが関係なく――
 男だろうが女だろうが関係なく――
 琴子にもその罰がやってくる。

「ヤッホー!浩平!帰ってる?」

 こんなタイミングで樹下琴子が家にやってくる。そして怜夢と鉢合わせする。

「はっ!な、何奴!?」
「えっと・・・お友達ですか?」

 怜夢にとって琴子とは初対面だ。きょとんとする彼女をよそに俺は琴子に粗相がないように先に釘を打っておく必要があった。

「琴子・・・待て、何も言うな」
「あれ?・・・よく見れば・・・私が取り憑いたアイドルちゃんだよね?」
「琴子!!?」

 やりやがった。琴子が先制パンチをお見舞いしやがった。取り憑くとか今のこの雰囲気では絶対に御法度にしたかったワードの一つだ。怜夢の表情も引きつり始めていた。

「取り憑いた・・・へ?」
「まさか、あの時の快感が忘れられないからって遥々家までやってきたの?こ、この・・・色情魔!!」

 マズい。琴子が暴走しかけている。良からぬ発言で誤解を招くことは出来るだけ避けなければ取り返しのつかないことになる。

「浩平もまさか、こんな子を家にあげるだなんて・・・私という内縁の妻がいるにも関わらず、情が移ってあわよくばワンチャンあるなんて画策するだなんて・・・」
「・・・・・・そうなんですか?」
「妄想をやめろ!頼むからやめてくれ!」
「この泥棒猫。殺しておけばよかった」
「物騒なこと言うな!」
「ふっ。案ずるな、浩平。――生きているのなら、神様だって殺してみせる」
「お前がその台詞を言うな!」

      瀬戸際の境界線

 琴子がポケットから取り出したのは短刀・・・ではなく、小瓶に入った薬だった。

「浩平に言われて『馬鹿につける薬』を手に入れてきた。『飲み薬』をくれた関西弁のお姉ちゃんが『こいつは劇薬やで!』ってくれた代物なんだよ」

『飲み薬』も貰い物だったのかという突っ込みを置いといて、琴子が持ってきた新たな薬は、『飲み薬』と同じくらい劇薬という代物だとすれば、さすがにヤバいとしか言い表せない。

「それを使って何をしようって言うんだよ・・・」

 琴子は鼻で笑うと、手に持った『薬』を口に持っていき、ゴクゴクッと、喉を鳴らして飲み干していった。

「ぷはぁ!うめえ!」

 おいおい、やりやがった。『馬鹿につける・・・薬』なのに飲んじゃったよ・・・。
『塗り薬』みたいなものを想定していたのだが、飲めるのかよ。それ、本当に飲んで大丈夫な代物だったのかよ。一回で全部飲み干して用法用量合ってるのかよ。
 馬鹿か。樹下琴子はここまで馬鹿だったのか。馬鹿は死なないなんていう言葉はあるけど、むしろ死にたがりのようにしか見えなかった一連の行動の後――

「うっ」

 琴子はその場にばったりと気を失って倒れた。慌てて駆け寄った俺は琴子を抱き上げると、苦しそうな表情を浮かべているわけでもなく、呼吸を正しく眠りについているようだったので安心する。それはまるで、『飲み薬』の時と同じ展開を予感していた。
 そのことに気付いて慌てて怜夢に振り向いた瞬間――

「うぅっ・・・」

 怜夢の身体がぷるぷる震えており、苦しそうにもがく様子が俺の目に映った。
 しまったと思っていてももう遅い。俺は慌てて引き返し、今度は怜夢を抱きかかえた。

「しっかりしてください。坂本さん!坂本さん!」

 何度か肩を揺らす俺の言葉が聞こえたのか、しばらくして怜夢はゆっくり目を開けた。先程までの苦しみや痛みは全くなさそうで、きょとんと俺の顔を見つめた怜夢の様子に胸を撫で下ろす。しかし、俺は知っている。それは決して余裕や猶予があるわけじゃないということ。憑依した相手が他人の身体を浸食し、馴染み終わったことを意味するのだということを。

「・・・・・・バナナ食べたい」
「坂本さぁん!!!」

 怜夢の口から出ていた突拍子もない発言に、俺は身体を強張らせた。


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 坂本怜夢―さかもとれいむ―は普通の女の子だった。
 対して取柄があるわけじゃないし、自画自賛するほど可愛い訳じゃない。同じ年くらいの子と同じくらいの身長、体重。スリーサイズだって特質しているわけじゃない。普通に夢を持ち、普通に願望を持ち、普通に未来を持ち、普通の生活をしている高校生だった。
 だから最初は私がアイドルになれるなんて信じられないくらい夢見心地だった。

 生まれてこの方、アイドルになりたいと思っていたわけじゃない。何気なく街中を歩いていたら「芸能界で働きませんか?」と声を掛けら―スカウトさ―れただけの、特に夢も希望もない理由だ。
 アイドルを続けたいと思っているわけじゃない。将来不安だし、お給料が良いわけでもない。入れ替わりの激しいテレビ界隈で、時期が来ればきっと辞めることができるだろうと静観しているもう一人の私がいた。
『アイドル』とはつまり自分という商品。自分の人気が価値になって評判になって、立場になって、お金になる。
 それが普通なんだと思う。
 その中で私が人より少し売れたのは異例であり、特例であり、異質であり、特殊なんだと思う。

「彼女ってもしかして種田さん?」
「凄いだろ?かつて一世を風靡した種田架純と瓜二つの新人、坂本ふぁんとむちゃんだ」
「別人なの?血も繋がってないの?」
「ドッペルゲンガーみたいだろ。その魅惑こそ彼女の魅力だ」

 ――そう。私はドッペルゲンガー。伝説のアイドル、種田架純と瓜二つの容姿を持つ赤の他人。『生まれ変わり』のアイドルと言われる私の知名度は瞬く間に上昇した。地下アイドルとして発掘される前に大手事務所と契約は成立していて、来年にはドラマ、CM出演の話も飛躍的に増大する話がでていた。お茶の間に顔を出すのも時間の問題という順風満帆さに私は逆に不安になっていた。
 しかし、それが本当に私の価値なのだろうか・・・・・・CDを出せばミリオン連発、テレビに映れば高視聴率、コンサートを開けば会場だけではなく、場外で隣駅まで出待ちが群がる。当時の社会現象すら作り出した伝説のアイドルの面影に便乗しているだけの私、坂本怜夢に果たしてそれだけの価値があるのだろうか・・・。
 本当の自分ですら他人に見せたことのない私が、アイドル業をやっているのだから失礼極まりないのは分かっている。でも―――――、

『忙しい?立編結構なことじゃない。人生暇しているより全然マシよ』
『売れればいいじゃない。怜夢はファンのイメージ通りの行動をして喜ばせてあげればいいのよ』
『休みたい?どうしてそんな自分勝手なことを言うの?以後言葉に気をつけなさい。理由によっては今後の出演を減らさなくちゃいけないけどそれでいいの?』

 もう世間の波は私の力じゃ止めることは出来なくなっていた。私の想定を超える反響に驚愕し、同時に恐怖を覚え、足が竦み縮こまる想いを隠し、偽りの笑顔でイベントの数をこなしていくしかなかった。
 強大すぎる力の一つの駒と成り果てた私は、言われた通りの場所に行き、言われた通りの行動を取り、言われた通りの言葉を繕う、ただの偶像でしかなかった。ファンが貢いでくれた雀の涙ほどのお金は事務所へ流れ、私にははした給料しか入らない。それでも売れている限り私は逃げられないと悟った時、会社に貢献して行動の場を広げることで、いつか事務所の目が届かなくなるのではないかと思っていた。

 今日もアイドルのイベント会場でのイベントに参加した私。マネージャーも前会議の予定が重なり到着がイベント後になってしまい、急いで打ち合わせを始めていく。私はスタッフさんが私のために用意してくれた会場作りに感謝の言葉をかけていく。一人一人に挨拶をしていくと疲れた表情の中でぱっと笑顔になって返事を返してくれる人もいる。しかし、その中でも事務所と内通して私の行動を監視している人がいるのだ。偽りの笑顔を偽りの笑顔で返しながら、心だけは絶対に縛られないように心掛ける。身体はもう雁字搦めで見動きが出来ない状態でも、私の心だけは自由でいたいと切望しながら今を生き続ける。
 安直にアイドルなんてならなければよかったと後悔してももう遅い。自分を殺し、商品化してこそ私なのだから。
 ぞくりっと悪寒が走る。それは私に芽吹いた小さな諸悪の根源だったのかもしれない。その芽は瞬く間に開花して私の意識を塗りつぶすように埋めていき、気付けば私の記憶はそこからしばらくなくなっていた。
 ・・・・・・・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・。

(この作品は、GG『飲み薬―職業ガチャ―』とリンクしており、合わせてお読みいただけるとより楽しめるようになっております)

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「――――――えっ」

 気が付けば私は会場のトイレで眠っていた。しかもスタッフやキャストが使用する専用ではなく、来客が使用する店内トイレだった。どうしてこんな場所に居て眠っていたのかもわからない。私にはここに来た記憶すら覚えていない。ライブ衣装のままやってきて、いったいどのくらい眠っていたのかもわからない。
 私がスタッフの元に戻った時――会場は大慌てな状況になっていた。私の顔を見て安堵するスタッフとため息を漏らすスタッフが見えた。

「坂本さん!今までどこに行ってたんですか!?」
「えっ・・・あの・・・」
「坂本さん戻りましたー」

 私を心配して様子を見に来たスタッフに一言声を掛けていると、「怜夢!」とマネージャーの大きな怒号が響き渡った。鬼の形相を見せるマネージャーにスタッフが通路を開けていく。
 私の元に駆け寄るハイヒールの高い音が私を竦ませる。今にも泣きだしそうだった。

「いったい何処に行っていたの?」
「それが、その・・・お手洗いに・・・」
「馬鹿言わないで。いま何時だと思っているの?」

 マネージャーの視線から逸らすように時計を覗く。それは私の記憶から既に一時間は経っていた。お手洗いという理由で通じる様な時間の経過ではない。一時間の記憶が丸々私から抜け落ちていた。
 それを言って果たしてこの場にいる皆が納得できるのだろうか・・・・・・。
 マネージャーの怒りに油を注ぐような行動ではないだろうか・・・・・・。
 今までの私の態度、私の行動で、許容されるような範囲なのだろうか・・・・・・。

「ちゃんと誰かに報告してきたの?誰かに許可取っていったの?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「謝罪なんて言葉はいらないわ。どうしてみんなに迷惑をかける行為をしたの?その理由を教えなさい!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「いい加減にしなさい、怜夢!どうして本当のことを言ってくれないの!今までいったい何をしていたの!言いなさい!!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「怜夢・・・あなた・・・本当は逃げ出そうとしていたんじゃないわよね?」
「ちがいます。それだけはちがいます!ごめんなさい!本当にごめんなさい・・・」

 何が何だかわからない状況で、何も言えず、何も伝えられず、ただ「ごめんなさい」と、私は言葉を繰り返すことしかできなかった。
 他の誰よりも状況を理解していない。どうして私が謝らなくちゃいけないのかと疑問さえ脳裏をよぎる。床に涙を零し、顔を上げられないくらい酷い顔になりながら、ただ、場の雰囲気を和ませたい一心で私は頭を下げ続けた。
 埒があかないと無言で立ち去るマネージャーが居なくなったことにも気付かず、入れ替わりに私のことを気にかけてくれたスタッフたちが優しい言葉をかけてくれた。そうなって初めて私は解放されたのだと思った。

「無事でよかったよ。坂本ちゃん」
「ご、ごめんなさい。本当に・・・ご迷惑おかけしまして・・・」
「いいんだよ。坂本さんが無事ならそれで」

 悪いことをしたことを分かっている。時間が限られている仕事の中で一時間もの間作業を止めて私のことを探してくれていたスタッフのことを考えると不便でならない。それでも私を気遣って追い打ちをかけることをせずに優しくしてくれるスタッフに心が癒される。
 だけど、それでも、いつも仕事をさせてくれるプロディーサーは「でも・・・・・・」と――


「あなた、本当に坂本さん?」


 私に対してまるで別人を見る様な視線を向けてくる。ぞくっと背筋に寒気を感じながら私は答える。

「はい、坂本ですが?」
「そう・・・ごめんなさいね。ヘンなこと聞いちゃって。ただ、あまりに普段と雰囲気が違ったから」

 まるで私の中に住まうもう一人の私の片鱗を垣間見たような居心地の悪い言葉を投げかけていた。
 そんなの私の中にいるわけがない。もう一人の私という怪物を私自身育ててしまったなんて思いたくない。二重人格、多重人格者の話を聞いたことがあるけど、社会のストレスで私自身生み出してしまったとは考えたくない。
 仕事の途中で意識がなくなったことも、一時間もの記憶力の欠如も、もっと別の理由があるんだって信じたい。 
 坂本・・怜夢・・普通・・いたい・・・と信じたい。
 でも、残念ながらそんな想いは脆くも崩れ去ることになる。
 その夜、マネージャーから送られてきた一通の画像とお知らせ。それは、私が知らない男性と眠る裸の写真が流出したことを知らせる内容だった。
 後日、私の仕事は一切白紙に戻った・・・・・・。
 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 翌日から私は世間を騒がす人物になっていた。
 新聞社は一面記事に載せ、テレビ各局はニュース番組で大々的に放送し、雑誌では詳細を掲載し、報道者は事務所、自宅周辺、友達、ファン片っ端から情報収集を始めていた。
 私は堂々と表を歩けるような状況ではなくなり、熱りが冷めるまで自宅待機がくだった。実質的な謹慎処分であり、現実的に自主退社を願う事務所の態度だった。
 太陽の光すら遮るようにカーテンの締まった部屋の中で毛布にくるまり、ただじっと時間が過ぎるのを待ち続ける。
 一時間の記憶を失った日から私の生活は一変した。アイドルとしての生命を断たれ、今度は世間から叩かれる人生に転機する。ファンの声援はアンチの罵声に変わり、信用は失墜。それはまるで明と暗がはっきりわかるくらいの暴落ぷりだった。

「どうしてこうなったの・・・・・・」

 『空白の一時間で枕営業?!』という見出しと供に私と事務所にダメ出しをするコメンテーター。私の携帯から送られた写真に関しても、事務所は事実を否認し、『SNSアカウントを乗っ取られ、コラ画像をあげられた』と回答し続けている。アイドルとして輝く私の人生は今や犯罪者としての扱いだった。事務所に対する不平、不満を洗いざらい報道し、私が悪者のように扱われていく。テレビだけでもなく、ネットでも私のアンチスレが立つ始末。匿名でいくら擁護を試みても、

『痴呆症でしょ。病院イケBBA』
『おばあちゃん、ご飯は昨日食べたでしょう?』
『うーん。これは嘘松!」
『本当松なら悲しすぎるから嘘であってほしい』
『伝説の名を穢すアイドル。一刻も早く記憶から消し去りたい』
『生まれてくるのが早すぎたアイドル』
「・・・・・・・・・」

 まるで世界に味方なんて一人もいないような扱いだ。今まで私は私自身偽りだと思っていたけど、本当は世界そのものが偽りだったのかもしれない。本当の世界はこんなにも酷く、惨く、辛いものだったんだと思い知らされる。
 住み心地が良かっただけで、環境を守られていた私は、幸せを盲目になっていたのかもしれない。地獄の世界はココにあるんだと知って死にたくなった。
 元からやりたいわけじゃなかったアイドルに手を出してしまったために私の人生そのものが取り返しのつかなくなってしまった。就職活動も不可能に思える状況でいったいどうやって生きていけばいいのかわからない。
 私すら正解の見えない岐路に迷い込み、ただ無意味に時間を過ごしていくしかなかった・・・。
 一週間・・・・・・
 一ヶ月・・・
 ・・・

 三ヶ月が経過した頃。私の脳は寝て起きてを繰り返して完全に蕩けてしまい、何を血迷ったのか思わずカーテンを開けてしまった。
 三ヶ月ぶりに浴びる太陽の光に視界が失う。眩しいくらいに快晴の天気と雀の鳴き声が朝の時刻を知らせてくれる。
 かつて私の家を囲っていた報道記者の姿は今やどこにもいなくなっていた。人のうわさも75日というくらいだし、私の報道に世間が飽きてしまったのかと、ようやく私はこの時自分の置かれている立場を再認識した。
 誰とも会話をしていないため、声は以前にもまして出なくなっていた。そして、体重も痩せてしまい目の下に深い隈ができており、別人のように見えてしまうほどだった。
 そんなことよりも――

「あの画像・・・・・・」

 私は改めて自分の携帯に残った例の画像を見つめた。
 時刻は運命の日。私が記憶を失っている間に、見知らぬ同じ年くらいの男性が眠っている隙に裸で笑顔を向けて自撮りする問題の画像。
 そこに映る男性なら、この未解決事件の重要な手がかりを知っているのではないだろうか。
 この事件、私はただ謝っているだけしかできなかったけど、それだけでは自分を納得できない。
 不条理な理由で信用を失墜させた原因を私は知りたい。
 空白の一時間で私は彼と一体何をしていたのだろう。
 納得できる理由が欲しい。
 私は自分を守るために戦おう。
 そのために、彼と会おう。
 勇気を出して、彼に会いに行こう。
 その後のことは、彼に会った後に考えよう。
 私はもう幸せにはもうなれないなら、不幸から脱しよう。

 そして、普通に生きて、普通に死のう。
 
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 千村貴明は無類のアイドルヲタクである。
 今を活躍するアイドルグループだけではなく、一世を風靡した伝説のアイドルからメディアにほとんど出ず、ライブ活動中心に活躍する地下アイドルまで熟知しているほどだ。
 今日も社会が生み出したアイドルの卵を発見する”シグマップ”の会場にやってきていた。


「どけ。ここは俺に任せておけ」
「隊長みずから!?」

 一人異常なほどの熱が入る貴明に、今日は普段とは何か違う予感を察知するアイドルヲタク一同。

「気合入れるぞ、お前ら。今日は凄いのが現れるっていう情報があるんだ。刮目せよ!」
『はい!!!』

 一致団結する貴明たちと同じタイミングでアイドルが会場に入ってくる。今日のアイドルの卵を見たファン達はどよめきを見せ始める。

「みなさん。今日は私のライブに来てくれて本当にありがとう!」

『う、うおおおおお――――!!!』

      アイドルは常に変化している。

「ま、マジなのか!?マジなのか!?」
「すげえ、これは凄すぎるぜ!」

 一斉に彼女に向かってシャッターを切る。
 紹介された彼女の顔を見て布施義也ですら「えっ?」という声を上げてしまった。それはそうだ。アイドルに疎い義也ですら、彼女の顔を見て知らない人はいないと言わんばかりの知名度を持つかつてのアイドルの姿が蘇っていた。

「あれ?貴明。彼女ってもしかして種田さん?」
「凄いだろ?かつて一世を風靡した種田架純と瓜二つの新人、坂本ふぁんとむちゃんだ」
「別人なの?血も繋がってないの?」

 言われてみれば一回り小さいような気がするが、現在、アイドル育成のマネージャーをしているはずの架純に義也は一度しか会ったことがない。そんな記憶を思い出しても背丈まで完璧に覚えていられる自信はない。
 しかし、彼女の姿を見れば誰だって彼女と間違えてしまう。それほど彼女は似ているのである。

「まさにドッペルゲンガーみたいだろ。その魅惑こそ彼女の魅力だ」

 架純のカバー曲を歌う坂本ふぁんとむに、ヲタク達も一緒に踊って見せる。もちろん、彼女の踊りも歌唱力も一流だ。そんな彼女が地下で活動しているということにアイドルヲタクは早速目を付けていた。普段よりも一際大きな握手会になった坂本ふぁんとむの列を見て、アイドルの可能性をさらに発見した貴明であった。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「監督。今日はありがとうございました」
「はい、お疲れ」
「照明さんもありがとうございました」
「いえいえ。お疲れさまでした」

 イベントを終わらせた坂本ふぁんとむ、本名、坂本怜夢―さかもとれいむ―はマネージャーが打ち合わせをしている時間の合間に会場の準備をしてくれたお手伝いの人一人一人に挨拶に回っていた。ファンサービスだけじゃなく、会場作りのスタッフにもきっちり大人の対応をする彼女。それはかつて教育してくれた者がいた――。

「んっ・・・・・・」

 しかし、突然彼女が小さく呻き声をあげて震えだした。小さな彼女が体調を崩したのかと思い、スタッフたちは彼女のもとに駆け寄る。

「どうしました、坂本さん?」
「はっ!・・・・・・お、おおぉ!これがアイドルかあぁぁぁ!!?」
「えっ?坂本さん?」

 突然、奇声をあげた怜夢に目を丸くするスタッフ。普段の彼女とは別人のように目を見開き自分の動きを確認している彼女は様子が普段と違うという印象を持たせる。

「どうしたの、坂本ちゃん?」
「って、こんなことしている場合じゃない。早く浩平に知らせてあげないと!」
「ちょ、ちょっと!どこいくの?坂本ちゃん!?」

 衣装をそのままで全速力で会場を後にする怜夢。スタッフの声などお構いなしに飛び出していく姿に、会場に残った全員が呆然と眺めるしかなかった。
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 次に憑依する人物を探している浩平だったが、なんとも言えない喪失感に苛まれていた。

「俺はあんな簡単な仕事すらできないのかよ・・・」

 喫茶店での一件により店長に発見された松下架純は自宅謹慎を通告され、後日退職を余儀なくされた。簡単な仕事と舐めていた浩平にとって、自分を守るべき店長が逆に自分を切り捨てたことに対して憤りを覚えていた。架純にとって残酷な結果になったとはいえ、浩平にとってそれはまるで自分のことのように降りかかった災難であり、架純に対しての反省と同じくらい、社会に対しての怒りを募らせていた。

「なんだって言うんだよ。上司なんて部下を好き放題使って楽してきてるくせに、困った時は責任を問わないのかよ。それが現代社会か。クソが!!」

 労働基準の改善が行われた現代社会。しかし、実態は大企業が楽をして中小企業にしわ寄せがくる。現場を知らない熟練者―エキスパート―によって進められた抜根的改革。大企業の中で話し合わされた議会により、中小企業の実態は蓋をされ、今なお社会には根強い闇が沈殿している。
 正社員と非正社員の平等化、残業時間の短縮、管理体制の強化――会社により抱える課題は多い。
 社会はダレに課題を背負うと問いかける?
 そして、会社はダレを犠牲にすると問いかける?
 責任のため?遣り甲斐のため?役職のため?
 そのために人は働き続けるのだろうか?
 お金のため?自分のため?プライベートのため?
 そのために人は働き続けるのだろうか?
 だとしたら、この社会はスクワレナイ――。

 ――アラガウノ?

 誰かが浩平に問いかける?そいつはケタケタと嘲笑した。

 ムダダヨ サカラエヌ ジダイ ノ サダメ
 ミズカラ ソダテタ ヤミニ クワレル ノミ
 オマエハ スデニ ソマッテ イル ノダ

 雑音に混じり聞こえる不協和音。
 自分の理想、夢に期待膨らみ就職する者たちを染め上げる闇からの招き声。

「はぁ、もう、イヤだ。めんどくせぇ・・・」

 堕ちろ堕チロヲチロオチロ堕チロヲチロオチロ堕ちろヲチロオチロ堕ちろ堕チロオチロ堕ちろ堕チロヲチロ堕ちろ堕チロヲチロオチロ堕チロヲチロオチロ堕ちろヲチロオチロ堕ちろ堕チロオチロ堕ちろ堕チロヲチロ堕ちろ堕チロヲチロオチロ堕チロヲチロオチロ堕ちろヲチロオチロ堕ちろ堕チロオチロ堕ちろ堕チロヲチロ。

 ――堕落シロ。

「仕事なんか、なんでもいいや」

 浩平は考えるのを止めた。
 仕事なんて無かったら別に働かなくてもいい。
 若さと住む家があるのだから、死ぬことはない。困ったら親に頼ってご飯でも作ってもらえばいいのだ。
 気が向いて働きたくなったら働けばいい。死ぬ気で働いても死んでしまってはどうしようもない。
 社会の闇に染まって病むくらいなら、浩平はそんなことをして無理に働く必要はないと思ったのだ。
 戦わないという選択を選んだ――。
 ――堕落を選んだのだ。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「――――えっ?」

 浩平が目を覚ましたところはどこかのビルオフィスだった。パソコンの置かれた机が並ぶオフィスには自分以外誰も居なかった。
 時刻は昼前。会社の光景で誰も居ないなんてことはあり得ないと思ったのだが、浩平はいつものように自分になにが起こったのかを確認するように、憑依してしまった女性の記憶を覗きこんだ。

「・・・みんな営業に出ているのか・・・・・・そうか。今回は営業なのか」

 浩平にとって業種を選ばないつもりだったが、知らずうちに営業の女性に憑依してしまったようだ。元の身体に戻れるかと思っていた浩平にとって予期せぬ結果になってしまい、しばらくその場に立ち尽くしていた。
 鏡に映る女性の姿から見ても若い。下手したら浩平と同じくらいかそれ以下の年齢にも見える。小さな両手を握ったり開いたりしながら自分の置かれている状況に馴染ませ、仕方なく営業として彼女の職務を全うするつもりだった。
 会社の中で一番若く入社した子のようで、難しい仕事を頼まれている様子はない。営業として数字を取ってくることのみを強く言われているようだが、毎日定時で仕事を切り上げて帰っているらしい。浩平からすれば気持ちが楽であり、楽に仕事ができるのならそれに習ってやっていけばいいと思っていた。
 浩平にとって憑依した子はいわば先輩であり、後輩である浩平は先輩の姿を見て育つのであった。

 突如、一枚しかない扉からけたたましい音がした。その音に驚いた少女(浩平)はなにが起こったのか顔を覗かせた。
 男だった。背丈もある大男であり、スーツに身を包んだその姿はその女性の記憶から会社の課長だということを浩平に知らせてくれる。
 つまり、営業から課長が帰ってきたのである。

「やっぱり、サボっていたか」
「・・・えっ?」

 課長は帰宅するや否や少女(浩平)に詰め寄ってきた。色の入った眼鏡から覗く鋭い眼光は、少女ではなく、成年ですら身震いするほどの恐怖を与えていた。
 その表情は怒り。明らかに営業課長はこの少女(浩平)に怒りを向けていた。

「てめえふざけるな!どういうつもりで仕事してんだ!あぁん!!?」
「ひっ!な、なにをおっしゃっているのですか?」
「なにをおっしゃっているだぁ!?それはこっちの台詞だろが!てめえ自分の立場がまだ分かってないのか!!?」

 喧嘩腰の課長に怯えながら返事をする少女(浩平)。突如憑依してしまった浩平にとって降りかかった災いであり、課長の言っていることが当然理解できずに少女の変わりに怒られていた。

「てめえの今月の営業成績を見てみろ!てめえ一人だけ一つも取れてねえ!その意味が分かってるのか!?」
「へっ・・・それは・・・だっ、だって・・・!」
「言い訳なんぞ聞きたくねえんだよ!!!お前が会社に利益取ってこなきゃうちの会社は潰れるんだよ!!!営業が利益を取ってこなきゃ、俺も支配人も、みんな共倒れするんだよ!!!その意味がまだ分からねえか!!?」
「うっ・・・」
「支配人に気に入られてうちに入ったのは構わない。だがな、支配人を傷つける様な真似をすんじゃねえ!!!一年過ぎてもまだ新人気分なのか!!?誰かが変わりに利益取ってくれるくれると思っているのか!!?だったらさっさとうちの会社辞めちまえ!!!邪魔なお前よりも有能なやる気のある奴が入ってくるわ!!お前なんか会社に居なくても誰も困らねえんだからよ!!!」
「う、うう・・・」

      やめてくれよ・・・

 少女――浩平は泣いた。なんで涙を流しているのかも分からない。理解できない状況で怒鳴られている不条理に自分に泣いているのか、それとも少女の代弁に泣いているのか――。
 不条理で、不平等で、弱肉強食で、階級社会の、息苦しい社会に泣いているのか――。
 自分の理想を掲げている時点で、その理想があまりに遠くて泣いているのか――。
 それでも、こんな社会の中で健気に戦い続ける少女に泣いているのか――。

「イヤだ・・・俺は・・・もぅ・・・・・・・・・」

 辞めたい。浩平は社会に生きるにはまだ早い不適合者。高校生として守ってもらえるのなら今すぐにでも戻りたくなった。
 大人になんかなりたくない。
 子供のままでいたい。
 大人なんて大っ嫌い。
 社会はそんなに、甘くない――。


「待ってくれ、課長!!!」


 そんな少女(浩平)を守るように、一人の成年が課長の前に立ち塞がった。

「千村ぁ!!」
「もう少し様子を見るべきです。彼女だって頑張っているのを俺は知っています!」
「ならお前が最後まで面倒みるよな!!お前の業績の半分をこいつに分けるよな?あぁん!?」
「――――」

      この少年は――(恍惚

 自分の業績の半分を与える。そんなことは当然あり得ない。たとえそれが営業仲間だったとしても、仕事を完遂した成績を他人に分け与えることを面白いと思う人間など一人もいない。つまり、少女の犯した責任はそれだけ重いのである。
 そんなことは、もし浩平だったとしたら首を縦に振るわけがなかった。

「わかりました。俺の仕事を彼女に与えて下さい」
「―――っ!」
「よく言ったねぇ、千ぃ村くぅん~。じゃあ、明日のこの仕事の打ち合わせをこの仕事の合間にいってきてもらえるかなぁ~?」
「わかりました」

 それなのに、彼は二つ返事で自分の仕事を少女(浩平)に送ったのだ。そして、嫌な顔せずに次の仕事のために休憩時間がない状態で打ち合わせのメール作りをするためにパソコンを走らせた。
 仕事を続ける彼を見つめる少女(浩平)は、一種の憧れすら覚えた。

「先輩・・・」
「んっ?」
「あの・・・ありがとうございました。本当に、助かりました」

 少女(浩平)が先程の件で謝りに行くと、彼は目を丸くして思わず笑った。

「いや、お前でも謝ることがあるんだな」
「ど、どういうことです?」
「いや、こっちの話だよ。気にするな」

 彼はしばらく笑い続ける。そんなに少女は人に謝らないのだろうかと、逆に疑問に思うほどだった。

「後輩のミス?それ程度の支障、背負えなくて何が『英雄』だ!」
「せんぱい・・・ちょっとなに言ってるかわかんない」

 キリッとどや顔で言う彼にくすりと笑う。
 少女(浩平)は彼に救われたのだ。
 辛く厳しい社会の中で、誰かを救えるなんて技量の大きな人物はそうそういない。
 だからこそ、浩平はそうなりたいと思った。
 将来、自分もまた彼のように誰かを救えるように。
 後輩、先輩、アルバイト・・・係長、課長、社長。そして、自分を雇ってくれる会社を――
 救える器になりたいと初めて思った。

「(あっ・・・・・・)」

 突然、浩平に急激な眠気が襲う。
 浩平は少女の中から自分が抜けていくのを感じた。
 現実は無情であり、浩平にとって彼の仕事をもう少し見ている時間は残されていなかった。

(そうか。どんな職種についても、不満や愚痴なんてどこ行ったってあるんだ。だったら、その不満すら背負えるような男に俺はなりたい。戦い続けよう、社会と。将来は彼のように、憧れの先輩として後輩に好かれる存在に・・・)

 浩平は薄れゆく意識の中で、名前も知らない先輩がどこの会社に勤めているのかを少女の記憶から急いで探そうとした。
 憧れの先輩の名は――――
 この会社の名前は――――
 少女の目がゆっくりと閉じていく。
 穏やかな顔をしていた少女が、次の瞬間ぱちりと目を開けた。

「・・・ふあっ。課長の話終わった?」
「へっ?」
「まったく、いつもいつも五月蠅いよね。僕だって頑張ってるんだからいい加減認めてくれたっていいじゃないか!もぉ~ぷんぷんだよ!」
「”フェルミ”。さっきとキャラ違くないか?」
「えっ?当然だよ。だって、さっきまでの僕は、ボクじゃなかったからね!」
「・・・あはっ。相変わらずだな、おまえは。頼むから成長してくれよ」
「あっ、それはセクハラ発言ですね!僕の胸の成長を楽しみにしているって言う、暗に身体目当ての発言ですね、先輩!」
「ち、違う!そうじゃない!」
「社会の闇は深いですね。高学歴、高身長、高収入で入社したエリートサラリーマンコースは賠償目当てとして見られるんですね!」
「偏見持ち過ぎだ」
「時代のせいですよね。独身貴族まっしぐらの千村先輩はこの後高橋先輩をデートに誘えるんですか?」
「う、ぐうぅぅ・・・」

      これがほんとのラストかな


「頑張ってくださいね。仕事も、プライベートも☆」
「うがああぁぁぁぁ!!!」


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 架純に憑依した浩平は接客業としての仕事をこなし、空いた時間を使って廃棄になるホットコーヒーをこっそりと飲んでいた。

「はぁ・・・一時は大変だったけど、それでも人が空き始めれば楽な仕事よね」

 都会ならいざ知らず、地方の喫茶店なら回転率はほどほどだ。業務は決まっているし、例え失敗したとしても、それが死亡事故になるようなことは滅多にない。店内にはクーラーが効いており温度は常に一定。汗を掻いて仕事をするなんてことは料理人じゃないのでまずありえない。
 そして、一番の利点は時間になったら帰れるというところだ。
 架純の喫茶店では早番と遅番に分かれており、早番は17時になれば帰られるようになっている。その時間が忙しければ少し残ることもあるのだが、それでも微々たる残業と言えるものである。
 アルバイトとして給料が少ないという点に目を瞑れば決して悪くない職業である。さらに言うならやはり人と接する仕事ほど楽しいことはない。
 それを架純の時に感じた浩平にとって、自分は人と接する仕事に向いているという事を自覚した。

「さて、もう少しだけ頑張りますか!」

 コーヒーを全部飲み終えた架純はしれっとコーヒーカップを洗浄機に入れ、自分は残りわずかになった労働時間を見ながら夕食用のメニューをメニュー表に挟み込む作業を始めていった。これもまた喫茶店の作業の一つだった。

「あっ、どうも」

 そんな中で架純(浩平)はある一人の男性の席で軽く会釈した。その男性は同じ時間になると現れる、所謂常連の顧客であり、座る席は決まって店員たちの影になりやすい奥席で、分かっているので店員たちも進めたがらない席を彼は陣取るのである。態度や接し方から架純のことを好いている雰囲気を窺わせる人物だった。

「フヒヒ。こんにちは、松下さん」
「こんにちは。今日も仕事終わりですか?」
「はい。それじゃあいつものをお願いします」

 いつものというのは、男性が注文をするクラブハウスサンドとホットコーヒー、ミネストローネの夕食限定メニュー(1400円)である。彼にとってメニューに拘りがあるわけじゃない。注文を多くすることによって店内に長い時間留まることが重要なのであり、架純のウエイトレス服を眺める時間を稼ぐことに、値段据え置きになった夕食限定メニューが丁度いいのである。
 余談だが、架純の働いている喫茶店は従業員の着ている制服が可愛いという人気がある。胸を強調していて、腰の部分も前だけ短いデザインは架純が着ればよく似合っている。コスプレイヤーとしての一面も持つ架純が当店で働いていることを知ればファンは悩殺すること間違いなしである。

「(あまり、好印象よくないんだな・・・)」

 架純の記憶から男性の印象は悪いことが分かる。男性のじろじろ見る視線を嫌う架純にとって、あまり関わりたくない顧客のようだ。しかし、お店にとっては絶対に1400円払ってくれる大事な常連様なので、扱いも手厚いものとなり、よくよく架純を男性に対応させているようだった。

「ムフッ
「(ひぃぃぃぃ!!)」

 接客業とはいえ、生理的に無理なお客様でも大事な神様。そんな精神で今までやっていた架純だが、今回は違っていた。

「かしこまりました。それではご注文を確認させていただきます――」

 業務的に注文を繰り返す架純。その間も架純から視線を外さない男性。特に胸元ばかり見ている男性
は自分の注文を果たして聞いているのかすら怪しい。

「(だったら、少しからかってやるか)」

 架純(浩平)の口元がニヤリと釣りあがる。

「フェラチオがおひとつと、食後にセックスをおひとつでよろしかったですか?」
「・・・ほっ?・・・ほあぁぁ?!?」

 架純の言葉に素っ頓狂な声を荒げた男性。面喰ったような表情で固まっている男性にお構いなしに香澄はメニューを片付けさせた。
 ウエイトレスとしてあり得ない態度を起こす浩平。しかし、積もりに積もった身体の疼きが限界を迎え、彼に欲求を沈めさせてもらうことを望んだのだった。

「(大丈夫さ。死ぬことはないんだから)」

 彼が決まって影になる席に座ったことも好都合だった。架純一人消えたところで、既に仕事に支障が出ないほど店内は落ち着きを見せていたのだから。

「失礼します」

 架純は早速テーブルに潜り込むと、男性の足元にしゃがみ込む。そして、彼のズボンのチャックを下ろすと、小さな手で肉棒を引っ張り出した。

「それでは、ご注文のフェラチオをさせていただきます」

 上目遣いで机の下から彼を見つめながら、小さな口で逸物を咥えこむ。

      サービスサービス☆

「はむ・・・んっ・・・ちゅっ・・・ちゅぅ」

 亀頭にキスをしながら、男性の逸物をゆっくりと口に頬張る。

「ぺろっ・・・ちゅくっ・・・ちゅ、ちゅっ・・・ちゅっ!」

 唾液の音を立てて舌を動かす。男性の逸物は架純の口の中でどんどん膨らんでいった。

「ほ、ほ、本当に・・・松下さんの唇で・・・フェラしてもらってるのかぁぁ!?!」

 まさかの展開に驚愕と戦慄を覚える男性。しかし、その心境とは裏腹に、まるで架純の行動を黙認し、辺りから架純の姿を隠すように自分の荷物で机の下を見えなくし、態度をあからさまに平常心を保とうとしている。他の店員にばれない様にしながら背徳感を刺激する行動を容認する。

「んんっ・・・んんんっ!」

 架純の舌先がカリ首に溜まった恥垢を綺麗に舐めとっていく。そうしながら彼の完全に勃起した逸物を両手で扱きあげる。
 接客業とはいえまるで風俗嬢のようである。喫茶店でこんなサービスを味わえるなんて男性自体考えているわけもなかった。

「ちゅぶっ、ちゅくん・・・ちゅっ、ちゅぅ・・・ちゅ、ちゅっ・・・ちゅう!」
「おっ、おっ、ああ、いい・・・」

 小刻みに舌先を動かす。亀頭の先端を軽くほじ開け、尿道口に舌を差し込み刺激を与える。

「んひぃ!」

 男性がその刺激に身体を震わせる。カウパー液の味が架純の口内に侵入し、唾液の分泌がさらに多くなっていく。

「ふぁっ・・・んっ、んっ、んんっ、ふっ!ふぅっ!ふぅっ!んっ!んっ!」

 唾液の音を含ませながら、霞の顔が揺れ始める。亀頭だけを責めていたうごきとは違い、竿まで咥えはじめる。唾液の量が多く、滑りの良い架純の口が男性の逸物を全体的に濡らしていく。

「んんぅっ!いい!最高だぁ・・・」
「ちゅぶっ、ちゅ、ちゅくぅ・・・ちゅぷぅ!んくぅっ・・・んっ、んんっ!」

 お客を満足させようとサービス精神旺盛の架純。小さな舌が忙しなく動き、男性の逸物に絡みついてくる。吸い付く口内の感触にだらに男性の逸物が膨らんだ。

「んんぅっ!じゅっぼ!じゅっぼ!ちゅ、ちゅくぅ・・・お客様・・・ひつれも・・・こうなひに・・・らひて、くらひゃいね!ちゅ、くちゅ!んっ!」
「うはぁ!で、出――っ!!」

 喉奥にまで亀頭を咥えた状態で喋る架純に絶妙な刺激が襲う男性。喉奥を襲う感覚に興奮を覚えた男性は一気に限界まで引き上げられてしまった。架純の頭を乱暴に掴んで同時に腰を突き出した男性が、さらに架純の喉奥深くに逸物を押し込んだ。

「出ますよ――――!!!!」

      出しました。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「大変お待たせしました。バナナミルクセーキをご注文のお客様」
「はいはーい!それ、私!」

 一方その頃、華子と琴子のもとに注文したドリンクが運ばれてくる。
 琴子は店員が机の上に置こうとしたドリンクを奪い取るように手に取り、それを一気に飲み干していった。

「ゴク・・・ゴク・・・ゴク・・・ぷはぁ!!マンモスうめぇ~・・・・・・」
「琴子ちゃん。お口のまわりに白くてベタベタしたモノが付いてるよ」
「はっ、いっけね。じゅるるるる~!!じゅるっ!!じゅぼぼぼぼぉ!!!」
「凄い音・・・・・・」

 琴子と華子のやり取りを見た店員からは笑顔が消え、とても冷ややかな表情をしていたのだった。

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()()憑依()する(しょく)人物(ぎょうを決める時に浩平が思ったことは、人の人生を左右することは絶対に避けることだった。
 先の失敗を反省し、”先生”と呼ばれる職業、政治家、茶道、華道、書道、医者、学者、薬剤師――等と後に問題になりそうな職業になることは諦めていた。

「先生、と呼ばれるのは心地よかったのにな・・・むしろ、そう考えれば教師って案外楽な職業だったんじゃゲホンゲホン」

 憑依出来るとはいえ、作法を知っていても教えることのできない浩平には、人の上に立つことは出来ないと学習する。それならばいっそ、一般的な職業に就職する現実的な憑依にしようと考えた。
 営業、接客、総務、経理、管理、装置オペレーター――数ある職種の中で自分に一番合った職種を選び、なりたい職業を決める。40年近くやり続けることになる職業で、飽きが来ない、苦労しない、危険がない、定時で帰れる、休みが多い等と要望を出し合った結果、自分の職業を決めることは決して間違っていない。
 それこそが一般人である田上浩平の職業選びとして最も近いものではないだろうか。そして、それこそが追い求めた理想の職業(じんぶつ)ではないだろうか。

「休みは多いに越したことないし、完全週休2日がいいよな。その方が遊びにだって行けるしな。あとは俺は人付き合いが好きだから接客業が向いてるんじゃないか?責任だって取りたくないし、ゲームしたいし、疲れて家に帰りたくないし、鬱になるなんてまっぴら御免だ」

 そう考えているときが一番幸せに違いない。
 誰だって仕事選びは大変だ。働かなければ生活できないために、自由を引き換えにしなければいけない。犠牲を減らせば職業は引く手数多だ。しかし、欲を持てば犠牲は大きくなる。
 拘束時間、企業努力、責任は大きくなる代償に、給料は増えていき、将来の安定は得られる。しかし、それが幸せ――?本当に――?

「よし、次に憑依するのはプライベートを充実しながら接客業をやりくりしている人にしよう」

 それが、浩平の追い求める職業だった。プライベートと仕事の両立。それが確立している人物にこそ、将来的に浩平の役立つ管理能力があるはずだと、浩平は人物を思い馳せた。
 すると――

「キタ。この、吸い込まれる感覚――」

 前回同様、幽体がなにかに吸い込まれるように勝手に飛び出していく。学習能力を得た浩平は焦ることはせず、一件の家の二階に一気に突っ込んでいく。窓を通過し、ベッドで腰かけて携帯を弄っている女性。目標はこの娘に違いないと、胸の中にダイブする浩平の視界が、次の瞬間には一気に開いたのだった。

「・・・・・・・・・・・・」

 ベッドに腰掛けて携帯を見ている自分。イベントのサイトを開いていた状態で硬直していた身体を起こし、辺りを見渡した。
 今時の有名ロックバンドのポスターが貼ってある。それに、某アニメのコスチュームが掛かっていたり、ラケットやランニングシューズとスポーツ用品が置かれていたり、部屋を見て察するように、アウトドア派の多趣味の子だと分かった。

「今時、こんな子いるんだな」

 自分の発する甲高い声も、この部屋の住人の声に変わっている。浩平はどういう娘になっているのか、鏡で映して確認しようと向かっていく。さっき見下ろした時と同様に、髪の毛がふわりと甘い香りとともに絡みついていくる。それだけでこの子から良い匂いがした。

「か、かわいい・・・」

 自分と同じ背丈のお姉さん像。20歳から25歳までと推定される仕事優先より遊び盛りの活発な子に見えた。整った顔立ち。吸い込まれそうな大きな瞳、筋がしっかりと通った高い鼻、ぷっくりとした小さな唇。目の前の鏡に絵に描いたような美女が映し出されていた。

「・・・すげえ、これが俺か・・・」

 浩平がつぶやいた言葉を美女が喋る。憑依したことを十分に実感してしまう浩平。試しに浩平が笑みを浮かべ、怒り顔を繕うと、目の前の美女をどんな表情でも浮かべることができる。自分がちょっと表情を変えてやるだけで、美女が表情をコロコロ変えるのが面白かった。そして、そのことで浩平が彼女の身体を支配している実感が沸きあがり、興奮を高めていった。

「ああ、この子に対してすげえ興味出てくるな。そろそろ記憶覗いてもいいかな」

 浩平が彼女に対して知れば知るほど、浩平は彼女になってしまう。それは少し悲しいことだった。

「・・・
松下架(まつしたか)(すみ)。22歳ってことは今年大学卒業したばかりの新卒者・・・って、違う。この子・・・ウソ・・・アルバイト!?有名ブランドの新卒枠を蹴ってお気に入りの喫茶店で働いているだなんて・・・!」

 浩平が驚くも、昨今珍しい話でもない。大学で遊んで過ごしていた架純にとって、もう少し遊んでいたかったという想いが強く、アルバイトとして働く代わりにプライベートの時間を増やした結果である。実は趣味だったコスプレイヤーとして成功しており、副業で稼いでいる架純にとってアルバイトとして働いた方が気兼ねなく生活できるのである。

「こんな生き方があるなんて、ちょっと羨ましい・・・」

 人生ですら選択肢が多様化している現代。有名ブランドで一生身を粉にして働くより、自分を資本に売り出す方法で成功しているのなら自由の幅が大きくなるだろう。しかし、健康管理、体重管理だけではなく、精神面での苦労は増えるにちがいない。自分のやりたいことをすることに対しての理想と現実。一長一短の選択において、なにを重要視するかもまた、誰でもなく自分の責任が問われる。

「今日は一日オフだったんだ。だから暇を持て余してライブに行こうとしていたんだ」

 架純が携帯を見ていたところまで記憶を読んだ浩平。つまりは架純になりきることに成功し、仕草から口調まで女性口調に変わっていた。
 休みと分かった浩平は、架純の代わりに一日弄ぶためになにをするかを模索する。すると、架純
の目は自然に下の方に向かっていた。背丈は浩平と同じくらいだが、肩幅は優に一回りは小さな身体になっている。その下に服を押し上げる綺麗な乳房のかたち。
 下半身にはラフなパンツを穿いており、腿は見えなかったが、そこから覗いている足も普段とは比較にならないほど小さかった。
 コスプレイヤーと言うだけあり、小さな身体と整った顔。何を着ても似合いそうなのは間違いない。
 架純の喉が一度大きくなった。

「あーあ。今日は暇だなぁ。なにしようかな~」

 まるで、架純本人が言っているように独り言をつぶやく。

「そういえば来週の長期休みにイベントがあるんだった。その服のお披露目会でもしてみようかな~」

 ハンガーにかけられたままクローゼットから出されたコスチューム。あれがイベント用に架純が手作りしたものだった。
 自分で作り、自分で着るのもまたコスプレイヤーとしての楽しみ。架純は手に取ると、早速着替え始めた。パンツを脱ぎ、スカートに足を通す。架純の生太腿は想像通りの綺麗な美脚だった。お腹まわりはコルセットを締めて中のシャツをきつめにしてボタンをかう。そうすることで身体のラインが細く、胸まわりの下乳を強調するシルエットを際立たせることができる。今回のコスプレ衣装は露出が少ない分、清楚感を多くするコンセプトになっている。架純お気に入りのデザインに仕上がっている一品だ。

      コス・・・プレ・・・?

 架純が着替え終わり、鏡を通す。まるでノンフィクションのキャラが具現化したような完成度にご満悦の様子だった。先程よりもさらに可愛く、萌えという擬音が聞こえてきそうな出来栄えだった。

「うーん。スカートを穿くと足がすぅすぅして、なんだか落ち着かないわ」

 鏡の前で一回転する度にスカートが舞う。小っ恥ずかしさを覚えながらも他人に見せたい、自分だから似合うという自己アピール、自己顕示力を感じるには、それなりの自信があるからだ。
 架純の生まれ持った素質と、体系の維持。そして持続力。架純ほどの容姿があればコスプレイヤーになりたいという憧れは最もである。スマホでコスプレ姿を何枚か写真に納める架純。それは無意識に浩平が架純のコスプレ姿を保存する動作と、架純のコスプレ姿を確信する動作が一致した行動だった。

「お腹が結構苦しいな。コスプレイヤーも大変だわ」

 浩平にはコスプレイヤーの気持ちが分からず、不平を言いたくなる。苦労して得るものが少ない。まさにコスプレが好きな人がなる職業である。衣装を着たままオナニーをしたかったけれど、さすがの浩平ではその苦しさに一刻も早く脱ぎたくなっていた。

「・・・ふぅ。まあいいわ。今度は違うコスプレに着替えて・・・ん?」

 これからという時に架純の電話が鳴る。本日休みを取っていたバイト先の喫茶店からだった。

「はい。もしもし?」
『あっ、松下さん。ごめんね。いま大丈夫?』
「ええ。どうしたんですか?」

 相手は店長からだった。この声を聞くと、身体が無意識に震えが立つことに、浩平は気付くことはなかった。


『本当に申し訳ないんだけど、今日出勤できる?』

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 突然唇を奪われた絢子が慌てて水夏を押し返そうとした。

「いや!せんせい」
「どうして?絢ちゃんは先生のこと嫌い?」
「い、いえ、そうじゃないけど・・・」
「先生のようになりたいのよね?泳ぎだけじゃなくて、私生活も教えてあげようかなって思って」
「それって、どういう意味?」

 困惑する絢子を諭すように、水着の上から胸を触る。少女という年齢の絢子は発育時期がまだ来ていないのだろう、平たい胸の感触に柔らかみを感じることはなかった。

「絢ちゃんはオナニーって言葉は知らないの?」
「えっ?なんですか、それ?」
「オナニーよ。とっても気持ちよくなれる行動のことなんだけど、そっか。まだ知らないんだ。本当に初心なのね。うふふ」
「せんせい・・・」
「大丈夫よ。今日は私から絢ちゃんにオナニーのやり方を教えてあげるから。あ、でも、このことはお母さんお父さんには内緒よ。分かったわね?」
「それで、早く泳げるようになるんですか?」
「ええ。余計な力が抜けて身体が楽になれると思うわ。私も今日泳ぐ前にやってきたことだから」
「そうなんですか・・・お、オナニー・・・」

      狙われるょぅι゛ょ


 納得はしていない気がするが、そんなことはお構いなしに水夏は絢子の胸を両手で揉み始めた。

「はにゃん・・・!せ、せんせい!ぃ、ぃゃぁ・・・」
「くすぐったい?これは胸のストレッチよ。私くらいになると胸が重くて肩が凝るの。絢ちゃんもきっと近い将来胸が膨らんでくると思うから、今のうちからストレッチしといた方がいいわね」
「そう、ですか・・・くっ、くふぅ・・・」

 自然に絢子に受け入れられるように優しく胸を揉む水夏。絢子にとって疑いの色を見せる内は水夏だと思わせることが重要だと浩平は抑え気味に掌を動かしている。しかし、それでも絢子の胸を揉み放題である事実に、水夏の記憶にちょっとアレンジを加えて、エッチに絢子の胸を揉みほぐしていく。

「それじゃあ、今度は自分でやってみるのよ」
「えっ」
「先生が今やったように、自分で自分の胸を揉むのよ。こういう風にね」

 絢子の目の前で自分の胸を大胆に揉みし抱く水夏。恥ずかしそうに見る絢子だが、その視線に負けず、さもそれがストレッチのように自分も胸を揉みくちゃにすることで、絢子にも実践させようとする。すると、絢子の両手がゆっくりと自分の胸へと移動していき、水着の上から胸をきゅっきゅっと、揉み始めた。

「そうじゃないわ。もっと掌全体で胸を包み込むように・・・」

 水夏の優しい口調で絢子の動きを指摘していく。自分の胸を意識的に触ることが初めての絢子にとって、次第に表情が赤くなっていくのが見て取れた。

「はぅっ」

 その時、今までとは明らかに違う声を絢子は発した。

「んっ?どうしたの?」
「い、いま・・・なんだか、今までくすぐったかっただけなのに、身体の中がだんだん熱くなってきて、頭がボーっとしてきて・・・」
「あらっ。もしかして感じているの?」
「かんじる・・・?」
「ううん。こっちの話。・・・そっか。絢ちゃん初めてなのね。変な気持ちになっているのね」
「へんな・・・うん。今まで感じたことのない・・・痛みというか・・・」
「気持ちいいのよね?先生、絢ちゃんのことならなんでもわかるわ」
「うっ・・・」

 少女という殻を破って女性になる瞬間の絢子を母親のような眼差しで見つめる水夏。そうさせたのは浩平であり、その行動が果たして堕落する奈落の底へ突き落とす行為だったとしても構わないとさえ感じている。
 いまは絢子に芽生えた初めての快感を開花させることを楽しんでいく。

「それじゃあ、もっと気持ちよくしてあげようか。これもストレッチの一環なのよ」

 そう言うと、水夏は自分の胸を絢子の胸へ押し付け、お互いの胸と胸を擦り合わせたのだ。

「あぅっ!」
「あはっ。絢ちゃんったら乳首勃っているのかしら。乳首が硬くなっているのが感じるわ」
「い、言わないで・・・せんせいっ!」
「気持ちいいでしょう?気持ちよかったらそう伝えるのよ。だって、ストレッチは気持ちいいものだから」
「はぁ・・・はぁ・・・あはぁん・・・!」

 人に見られて恥ずかしいという背徳感から守ろうとする自尊心と戦う少女に、ストレッチとは気持ちよくさせるものだという先入観を植え付けることで、自尊心を薄らげていく。皆がやっている行為であり、誰しも感じる行為で、自分だけが感じることではないということを教えることで、背徳心を受け入れやすくしていく。

「んっ、んっ・・・もし気に入ってくれたら、佐緒里ちゃん達にも教えてあげましょう。そうすれば、皆がいい記録がだせるんじゃないかしら?んふぅ・・・」

 上下に身体を擦り、乳首を擦り続ける水夏に絢子の脳が痺れ始めていた。上目遣いで普段と違ってイヤらしく絢子を見つめる水夏の違った一面を見せつけられ、さらに自分が率先して佐緒里と真琴にもストレッチを教えていくように期待されている。
 本当にこれが効くのか分からない。でも、絢子にはこのストレッチは気持ちよかった。

「・・・きもち、いい」
「そうでしょう。気持ちよくなることがストレッチの本質なのよ」

 脱力させて筋肉が痛みを覚えないことがストレッチの最も重要なことだと水夏の記憶も言っている。そのことを伝えるために絢子の唇を再度奪う。

「んぅ・・・んっ・・・ちゅっ・・・ちゅぱっ」

 今度は拒絶しないで唇を受け入れる絢子。そして、舌を伸ばす水夏と同じように舌を差し出し絡めあった。

「(この子素質あるかも。とってもえっちな顔してる)ちゅむ・・・ちゅぱっ・・・ちゅるるぅ・・・ちゅっぱぁ」
「ちゅぅちゅぅ・・・んっ・・・んぅぅっ・・・・・・」

 目を閉じてうっとりと恍惚している絢子と一度唇を放すと、糸を伸ばした唾液の橋が綺麗にかかった。未だに知らなかった少女が初めて覚えた快感を自分が芽生えさせたことに感動した水夏が興奮を覚えていた。

「絢ちゃん、今のストレッチでココが感じるようになったんじゃないかしら?」

 そう言って、水夏はパンストの上から小陰唇の場所を指さした。そして、絢子の前でパンストの中に手を入れて直接触り出した。

「私もね、ストレッチで気持ちよくなると、こうやって触っていくのよ。女の子は気持ちよくなるとヌルヌルに濡れてくるのよ。・・・触ってみて」
「えっ・・・い、いやだよ。こんなの・・・」
「いいから!触ってみなさい!」
「きゃっ!」

 絢子の手を強引に掴んだ水夏は自分のおま〇こまで誘導させた。そして、自分の秘部が温かく濡れているのを知らせていた。

「・・・んふ。ねっ、濡れているでしょう?このまま指を動かしてみて。絢ちゃんの手で、もっと奥まで指を入れてみて・・・あっ」

 水夏の秘部に絢子の指を差し込むように、ゆっくりと上下に挿入していく。絢子の目の前で水夏は脚を広げて気持ちよさそうに喘ぎ始めた。

「あっ、あっ、絢ちゃんの手が私の中に入ってきて、気持ちいい~!」
「恥ずかしいよ・・・せんせい、やめてよっ」
「絢ちゃんも、気持ちよくなりましょう。ンっ・・・ちゅぱっ!」

 水夏が腰を落とし絢子の胸に顔を埋めると、舌でチロチロと乳首を舐め始めた。水着の上からでも硬くなった乳首に舌で叩き、口で塞ぎ、チューチューと音を立てて吸いあげた。

「や、やだ!はぁぁ!」

 水夏からのまさかの乳首責めを受けた絢子が一段声を張り上げた。

「おっぱい吸われるの気持ちいいでしょう?自分の気持ちに素直になって言うのよ」
「はぁ・・・はぁ・・・ぃゃ・・・でも・・・あっ」
「先生のように声を出して、気持ちいいって、言ってみるの。大丈夫。誰でもやっていることだから」
「あ・・・あんっ・・・あはんっ・・・」
「絢ちゃんの可愛い声、先生に聞かせて」
「せんせい・・・はぁ~・・・きもち、いいです。あぁんっ」
「そうでしょ、絢ちゃん。先生と一緒に気持ちよくなりましょう」

 絢子が指を動かし水夏のおま〇こを愛撫し、水夏が口を動かし絢子の乳首を愛撫する。二人がお互いの身体を愛撫することで身体を震わせて、妖艶な喘ぎ声を響かせる。

「あっ・・・んんぅっ・・・はぁ・・・」

 どんどんと快感に対して素直になって行く絢子。一番感じるところを残しているものの、そこは既に水がないのにお汁が滴っているくらい濡れているのが見て取れた。

「さあ、絢ちゃん。最後のストレッチよ」
「せ、せんせい――ッ!?」
「お互いに相手の一番感じるところを舐めあうの。こういう風に――」

 乳首から口を離し、絢子の秘部に顔を付けるようにシックスナインの体勢を取らせた。水着の鋭い切れ込みが入った、絢子の股間部分を目と鼻の先に突きつけた。
 絢子の割れ目ラインを覆う水着の布地。女の子特有の、本能を刺激する香ばしい蜜の香りがほんのりと漂ってくる。水着姿の少女の股間を、こんな間近で拝見できる機会などあるはずもなく、興奮と緊張でさらに蜜が滴り落ちる。
 絢子の股間を舐められることに感動を覚えつつ、ザラリとした水着の舌触りを楽しむ。

「ふぁっ、ふぅっ・・・んっ・・・んっくぅ、ふぅ。じゅる、じゅるぅ・・・じゅるじゅるぅじゅるぅっ・・・んっ、ふぅ・・・はぁっぁ・・・ふぅっ・・・はぁぁっ」

 水着の生地に水夏の唾液が染み込み、絢子の肉唇と秘裂の形が一段とくっきりとしてくる。水着越しとはいえ、初めて舐める女の子の性器の感触に、興奮が止まらない。

「さあ、絢ちゃんも一緒にやってみて」
「うんっ・・・ふぅ・・・あぅ・・・ちろちろ・・・れろれろ・・・」

 絢子も覚悟を決めたように、ゆっくりと押し付けられた水夏の秘部を舐め始めた。恐る恐る、実に消極的かつ試行錯誤な責めである。水夏とは対照的なクンニだけど、絢子の舌による愛撫は男性の右手の自慰行為とは比較にならない強烈な刺激だった。

「おほぉ・・・おぅっ、おぉぉっ・・・いいわ、絢ちゃん・・・うふぅ・・・」
「ちゅる・・・ちゅるり・・・ちゅるりぃっ」
「うあっ、はぁっ、お、おぅっ」

 なにが少女をそうさせるのだろう。初めて覚えた快感に取り憑かれるように、水夏―インストラクター―の教えを忠実にものしていく。今後絢子は友達にも同じプレイを教えるだろう。少女たちにとって一度快感を覚えてしまえば、湯水如く吸収してしまうに違いないだろう。
 ――だとすれば、こんなに面白い職業はない。

「私も負けていられないわ」

 スク水を捲り、抜き出しになった絢子の性器が水夏の目の前に現れた。ばっくりと広げた産毛に囲まれた肉唇と、内側のピンクの媚肉。そして奥からひたすらに滲んでくる透明な愛汁。
 濃密な雌臭漂う刺激的な花弁に舌を這わせた。

「ふぅっ、はぁっ、ぐうっ、んんっ・・・ひぃっ・・・ああぁっ・・・そんな、奥まで急に・・・んんっ」

 絢子の愛液をたっぷり味わいながら、柔肉に舌をねじ込んでいく。ぬるっとした膣壁が舌で擦る度にヒクヒク躍動した。
 初めて味わう女の子の汁と蜜壺の味。絢子の甘美な嬌声に、本能が刺激される。

「じゅるりっ・・・んっ・・・じゅるじゅるぅっ・・・んっ、ぐぅっ・・・じゅるりっ・・・じゅるれろ・・・」
「んぅぅっ!ンンん・・・っ!・・・れろぉっれろぉっ・・・」

 夢中になって媚肉を舐め回し、濃密な愛液が絡む肉襞を愛撫する。さらに秘裂の端に位置する小さな突起を、舌先が捕らえた。
 これが所謂、クリ〇リスだ。

「ふぅっ・・・あっ、ああぁ・・・ひぃっぐ・・・はぁっ、あはっ、そ、そこ・・・んんっ、敏感なのぉ」
「一番感じるのね、絢ちゃんの弱点はクリ〇リスね。・・・すごいわ。こんなに小さいのにしっかりと勃起している」
「ひぃっ、やぁっ、言わないで」

 とても敏感な場所を丹念に舐めさせてもらおうと、クリ〇リスを舌で包み込むようにしながら舐めあげると、絢子がビクンと身震いしながら蜜壺からビュッと汁を飛ばした。

「あぁぁっ、らめぇっ!・・・んんっ、ひぃっ・・・あっ、ひぃっ・・・あぁぁっ!」

 絢子が起こした初めての絶頂。悶絶するように身体を震わせ、悲痛な声を響かせる。口に入ってくる強烈な塩の味を噛みしめながら、これ以上はやめておいた方がいいと自分の身体が火照ったままであるにも関わらず、絢子の身体をゆっくりと自分の身体から下ろしていった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 初めて絶頂を味わったまま、ぐったりとした状態の絢子は体力が回復するのはまだ時間がかかりそうだ。しかし、今日教えたストレッチによって、絢子の人生が大きく変わることになるのはもう少し後の話だった――。



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 樹下琴子から貰った『飲み薬』によって、”憑依”することができるようになった浩平は、将来自分のなりたい職業の模範を考え、該当する人物を模索していた。

「・・・琴子には馬鹿にされたが、スポーツ選手になれば莫大な地位と名誉が手に入るじゃないか」

 世界各国で活躍しているスポーツ選手をテレビで応援しない日はない――。
 サッカーで言えばT〇FA出場を果たし、野球で言えばWB〇Cで活躍し、テニスやゴルフでグランドスラム達成と言えば、連日テレビに引っ張りだこ。スポンサー契約を果たしCM、宣伝でもすれば安泰。
 さらに引退したとしても解説、キャスター、モデル、俳優、人気や知名度の高さから政治家等まで活躍の場が大きく広がる可能性もある。
 若い内から練習に勤しんだ分だけ将来安泰できる。スポーツ選手になるというのはそれだけ大きな見返りがあるのである。
 子供の時に夢見た、将来なりたい職業でも男女ともに上位に入るスポーツ選手。夢を叶えた選手に憧れを抱くのは誰しも通る道である。

「よし、そうと決まればスポーツ選手になってみるか!」

 勉強一本でやってきた浩平にとって真逆の人生ともいえる体力勝負の職業といえど、スポーツというジャンルで報酬も名誉も手に入るならと、身を粉にして身体づくりをし始めることに高校生からでも決して遅くないと、躍起を見せる浩平。その為に世界的にスポーツで活躍している人物に”憑依”して、職業ライフを観察するのも悪くはなかった。

「でも、この状態でどこに行けばいいんだ?」

 なりたい職業は決まった。しかし、今はただ宙を漂っているだけの浩平。前回のように幽体が偶然さくら先生に当たったということはない。今回は相手を探してその人の下に自分が”憑依”するまでこの幽体をコントロールしなければならないという課題があった。結局、幽体の操作ですら解読できていない浩平にとって、スポーツ選手に近づくことすらままならないのではないかという課題が大きく残っている。

「まさか、宙を泳いでいくのかよ・・・これから俺のすることは広大な海より広い空で遭難者を発見するような確率に思えてきたぞ・・・」

 身体も不自由な幽体でスポーツ選手を追いかけるのはもしかしたら歩くよりも遅いのではないかと真っ青になる。しかし、やってみなければ始まらない。身体、というより幽体をゆっくり動かし、宙をかき分けるように平泳ぎの格好を取ることでようやくゆっくり進み始める。

「・・・・・・・・・・・・遅い・・・・・・」

 浩平は別にスポーツが嫌いなわけではない。人相応な運動神経はあるので、泳ぐことも平均タイムは出せるだろう。遅く感じるのは、目的地までゴールが見えず、その距離は果てのない道に見えるからである。下を向けば歩いて授業をサボる女子高生の姿が見える。電車の方が遥かに早く目的地に向かって走る。
 幽体というのはなんと不便で、文明の機器を使えない大変な重労働だろう。泳ぐことでしか通行手段はなく、壁も隔たりもないから一定の感覚で宙をかき分けて前に進むしかない。
 体力に疲労を覚えないのがせめてもの救いだが、だからどうしたというレベルで結論から言うと、しんどいものだった。

「こんなんじゃ何時までたっても埒があかない。もうどの程度でもいいから適当に活躍したスポーツ選手がこの辺にいないかな?」

 いったん休憩して”憑依”する相手を格段に下げることにした浩平。すると、

「・・・う、うおお―――――っ!!!?」

 突然、なにかに吸い込まれるように幽体が勝手に飛び出していく。自分の幽体のことなのに、まるで掃除機に吸い込まれる埃のように軽く浮くと一方的に引きづられていく。コントロール不能。一体なにが起こっているのか分からない浩平は、混乱しながら街の体育館内部へと侵入していく。
 誰にも気づかれることなく、
 誰にも見つかることなく、
 誰にも触れられることなく、
 誰にもぶつかることなく――――目的の相手‐ばしょ‐まで勝手に到着していく。

 女子更衣室にいた一人の女性。その相手にも気付かれることなく、彼女の後姿見せる背中に吸い込まれるように”憑依”を果たした。

「・・・・・・うっ」

 漏れるようにくぐもった声を発した女性。それは彼女が発した声だったのか、それとも浩平が無意識に発したのか分からない。

「・・・・・・いったい、何がどうなってるんだ・・・・・・?」

 彼女が次に漏らした声は、男性口調のものであり、”憑依”した彼女を支配したものであった。浩平は自分の身になにが起こったのかを確かめるために、更衣室に備え付けられていた鏡の前に立った。

「っ!これが俺!?すごい可愛い・・・」

 鏡の前に立つ美少女。普段だったら浩平の姿が映っているはずのところに映る変わりの美少女。それが今の美少女‐こうへい‐の姿。自分がようやく彼女に”憑依”したことを思い出した浩平。スポーツ選手になりたいという憧れの果てに浩平が辿り着いた相手が彼女である。いったい彼女は何者なのか、浩平は彼女の記憶を手繰りながら失礼ながら勝手に彼女の情報を盗み見だした。

「・・・白星水夏―しらほしすいか―って言うんだ。水泳のインストラクターとして働いているのね」

 指導員‐インストラクター‐として働いている水夏。特に目立つような大会で優勝しているわけでもなく、高校までの水泳部の延長となにより泳ぐことが好きという理由から指導員として働いている。
 なるほど、どうやら憑依する前に浩平が”憑依”する対象者のレベルを下げたことで勝手に該当する人物を探し出して連れてきたというわけだ。
 決してテレビで活躍している人がスポーツ選手のすべてではない。地方で指導員で働いている人も立派なスポーツマンであり、水夏という女性は現状の生活に不満もなく楽しい日々を過ごしているという。
 予期せぬ”憑依”であったものの、水夏という女性に”憑依”できたことは浩平にとって思わぬ収穫だった。

「・・・へえ~。悪くないじゃん」

      インストラクターって響きがえっち(失礼)

 自分を見ながらイヤらしい目でボソリとつぶやく水夏。その目は明らかに水着から盛り上がる乳房を見つめていた。
 浩平にとって白星水夏という女性は容姿、声、仕草すべてを気に入ってしまったのだ。
 指導員だけが入ることを許されたロッカールームで一人ガッツポーズを決める水夏。その姿はスポーツマンらしい動作だけど、彼女の雰囲気からはかけ離れたものだった。

「この身体でどうやって楽しもうかなぁ~」

 職業を体験する前に白星水夏という女性を体験する浩平。姿見の前で水着を穿いている両足を徐々に広げていくと、股間に食い込んだピンク色の水着が見え始めた。
 
「なんて、イヤらしい姿・・・」

 水夏だったら言わないだろうし、行動を取らないだろう。しかし、本人がしないことをやらせることに興奮を少しずつ覚えてくる。
 水着の食い込みを直した水夏は、じっと自分の胸を見つめて、ニヤリと笑うと、両手を胸に押し当てた。

「あ、あん・・・!」

 水着の生地に指をめり込ませると、うっとりとした表情を見せ始める。

「水着の上からなんて、ダメぇ・・・。でも、気持ちいい」

 その揉み具合はさくら先生よりも大きい気がする。余分な肉もなく、引き締まった身体が水着に収まっているのだから、その柔らかさが胸にすべて集まっているかのような凝縮感だ。水着の中に両手を差し込み、直接胸を掌で包み込みながら乳房を揉みし抱いた。

「ふああっ、あっ、ああん!」

 胸元が指の形に膨れ上がり、胸を弄る様子が分かった。感じる水夏の乳首を弄ると、思わず声が裏が得るほどの敏感な刺激が身体に走った。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 さくらの時に女性の快感を体験した浩平にあの時の興奮が蘇ってくる。今回の水夏の時も同様か、それ以上の快感が押し寄せてきては引いての繰り返しがやってくる。波立つ快感に逆らうことを忘れて、指で乳首を摘まんだり転がしたりして波を荒立てていく。

「乳首が・・・勃起している・・・」

 これから子供たちの教育があるというのに、一部水着を濡らして濃色に変化している。あるまじき行為と分かっていても、止められない欲求に水夏は両手を下に移動させていった。水着が盛り上がりを見せながら動き、パンストの中に忍ばせた彼女の手が茂みに到達した。さらにその手を下に移動させ、滑った感覚と供に小陰唇に到達し、くいっと押し込むように指の甲をめり込ませた。

「ふああああぁぁぁあぁ!!!」

 水夏の身体が男性では味わうことのできない快感を与えてくれる。瞬間的に身体中に駆け巡る刺激に思わず喘ぎ声を漏らしてしまった。
 水夏自身が喘ぐ声と全く同じ声色、声質で、女性本来の喘ぎ声を荒げてしまったことに興奮する。

「お、おおお・・・おおおおぉぉぉおぉ!!!」

 弄る度におま〇こから感じる快感に、イヤらしい水音が聞こえ出す。まわりから見たら水夏がオナニーしているようにしか見えないだろう。水着の中でイヤらしく手を弄る水夏がさらに激しく手を動かす。

「いい、いいわ。すごく気持ちいい」

 水夏の裏返った声と水着の中から聞こえる愛液が浩平の脳を焼き付ける。擦りつける度に快感が増してゆく身体に耐えられなくなりつつも、それでもなお水夏の指を動かして全身を快感で埋め尽くしていく。

「あっ、あっ、す、すごい・・・こ、これ、くるっ!イきそっ!まちがいない・・・イク・・・イク!イクゥ!・・・・・・あっ―――」

 一気に津波が押し寄せたかのような感覚に捕らわれた水夏に目の前が白く靄がかかる。一瞬、なにも考えられない状態がやって来ると、その間に全身が脱力し、水着の中で潮を噴く感覚がやってきた。
 これが、水夏の絶頂なんだと、温かい感覚がパンストの中でじわりと滲み出てくる中で思った。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・やっちゃった・・・」

 手を水着の中から抜くと、びっしょりと愛液に濡れて透明なお汁が人刺し指に満遍なく降りかかっていた。自分の愛液に光る指をうっとりと見つめながら、更衣室に備わっているシャワーを捻り、自慰に耽っていた証拠を消すように水で洗い流した。


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 さくら先生に乗り移った浩平は、先生になりすまして授業を進めていく。最初は戸惑いを見せていた浩平だったが、やるしかないと奮起すれば宮坂さくらの記憶や情報、習慣、癖を駆使して誰にも疑われることなく授業を続ける。

「(これが先生という立場か・・・)」

 浩平も人前で喋ることに慣れているはずはない。しかし、教える側に立つ教師の一挙手一投足は生徒たちの人生を大きく左右してしまう。責任感という重圧が重くのしかかる毎日をなんとかやっていけるのは、培ってきた経験あってのこと。授業の合間に休憩をはさみ、雑談を交えながら生徒達の集中力を持続させるように、普段のさくら先生の授業体制をなぞっていく。
 まるで先生の頭の中で監視しているように、自分を殺してさくら先生になりきることで二時間目の上級生のクラスを終わることが出来た。

「ふう、疲れた」

 三時間目は休憩。職員室で他の先生達が移動していく中、自分の椅子に腰深くまで座って一時的の休息をとる。

「でも、先生って言われるのは気分いいわ。ふふ」

 教える側は大変でありながら、慕われ信用されることでその苦労が報われる。生徒たちの笑顔を見ながら、自分の教え子たちが将来どのような職業に就くのかを考えることがなによりも楽しいとさくら先生は思っているようだ。未来の如何なる世界で活躍できる人材に育つために、先生であるさくら自身が真っ当な人生を歩むことで生徒のお手本ににならなければいけない。
 それが教師としての宮坂さくらの在り方だった。

「やっぱり先生って楽しいなぁ~」

 教師だって色々な人がいる。生徒よりも退職金を選択した者もいる。それだって教師だ。資格を持っていれば教師になれる。そして、生徒に不要な知識を植え付ける害悪なことすら出来る。最悪なのは、生徒たちに責任転嫁する教師も――
 なにが正しくて、なにが間違っているか。
 教師が全て正しいわけではない。教師だって人間なのだ。
 ただ、教師が間違いを言え辛い。認めることは即ち、教えてきた生徒達全員に罪を与えたことになるのだから。
 浩平にはまだ、それが分かっていなかった。

「ニヒッ。・・・でも、先生になったら一度はやってみたいことがあるわよね」

 さくらは数学準備室にいき、隠していた自分の身体を引っ張り出す。引きずられていても眠ったままの浩平の身体は全く起きることはない。
 そこにいるのは魂のない、人間の器。身体機能だけ生きている人体模型と同じ――等身大オナペットである。

「田上君。・・・先生ね、実は田上君のことが好きなの」

 突然、浩平の耳元で告白をするさくら。

「私、生徒のことを好きになっちゃうイケナイ先生なの~」

 まるでドラマのようなシチュエーションを好む発言するさくら。誰にも聞かれていない空間で性癖全開の展開を進めていくさくらは浩平の前でタイトスカートの奥でストッキングと一緒にショーツを下ろした。

「こんなことがばれたら、先生くびになっちゃう。・・・そしたら、田上君が先生を守ってくれないかしら?こう見えて、先生だって蓄えあるのよ。だから、お金は当面安心して。一緒に先生と逃避行してくれるかしら?」

 先生という生徒に対して頼られるさくらも、本当は頼りたいと心の片隅で思っている。理想は40歳の渋くて格好いいオジサマでありながら、年下のイケメンだって女心をくすぐられる。

「ほらっ、見えるかしら?先生のヌレヌレおま〇こ。大人の・・・生ま〇こ・・・」

 さくらの口から飛び交う隠語に顔を赤くする。勿論、浩平がそう言わせているのだが。盛り上がった肉が密集しているが、指先に伝わる柔らかさと弾力がさくらの盛りマンの感触を知らせてくれる。

「んふぅ・・・甘い声が出ちゃう・・・。それにもう、濡れてきてる・・・」

 男性にはない感覚にやられてしまっている浩平が興奮すればするほど、さくらの身体は濡れてきた。性欲真っ盛りの高校生にとってこのシチュエーションはたまらなく、既に浩平はさくらの身体を使ってセックスしたいという欲求に逆らうことが出来なかった。

「セックス・・・しましょう。先生と・・・」

 淫乱女教師のように甘く囁くさくらの手が、浩平のズボンを下ろして逸物を取り出した。
 勃起状態で勢いよくそそり立った浩平の逸物。さくらの視点から見る自分の逸物の大きさに小さく喉を鳴らした。
 浩平の上に跨ったさくらは自分の股間を浩平の逸物に擦りつけ、愛液を塗しながら先端を少しずつ濡らしていった。

「あふん・・・あ、はあぁん・・・田上君のおち〇ち〇に擦られてるぅ・・・」

 初めて味わう、女性の身体を通しての自分の逸物の感触。意識がなくても熱くて硬い逸物が先生のお肉に食い込んでいく。

「ただ、擦り付けているだけなのに、これ、気持ちいい・・・・・・!」

      First Love

 起きることがなく眠っているだけなのを知っている状況を利用して、さくらが浩平の逸物を取り出しておま〇こを擦りつけている逆レイプ。
 浩平が興奮しないわけもなく、腰が止まらなくなる。

「ふあ・・・はあぁぁっ!熱いのが擦れて・・・あっ、あっ」

 股間の奥から熱いものが湧き上がってきて、クチュクチュとイヤらしい音も立ち上る。愛液が溢れて逸物に絡んでいる証拠だ。粘つく体液が糸を引いて、浸み込んでいるのがわかる。さくらの身体が濡れすぎるのが問題だった。

「んひい!き、気持ち・・・いい・・・」

 先端だけで気持ちよくなっているのに、これが膣内に入ったらどうなってしまうのだろうと、考えるだけでもっと強い快感を求めてしまう。
 イク――。
 強い刺激を呼び込むように、性器同士を押し付け合わせて腰を落としていくと、浩平の逸物がさくらの膣内に飲み込まれていった。

「ひゃあああぁ!!あ、あ・・・た、田上君のおち〇ち〇、硬くて、逞しいおち〇ち〇が私の膣内にぃ~!」

 硬くて大きい棒が膣内に侵入してくる違和感と恐怖感と満足感が身体をガクガクと震わせる。今まで感じたことのない快感が押し寄せてきて、愛液の分泌が止まらない。
 さくらの身体は一度もつっかえることなく、根元まで浩平の逸物を飲み込んでいった。亀頭の先よりも根元まで入った方が膣全体を感じやすく、竿全体にねっとり絡みつく愛液に浩平の身体が小さく唸った声がかすかに聞こえた。

「先生の膣、ガバガバで気持ちいいでしょう?この感覚、癖になりそう」

 嬉々としてさくらは腰を振りながら浩平の逸物を熱い膣ま〇こで扱きあげる。甘い吐息混じりの声で
リズミカルに浩平の上で腰を振る。

「ハァ・・・ハァ・・・これ、いい・・・くはぁっ、はぁ、はぐっ、ああっ」

 既に蜜液で濡れている膣粘膜が竿肌を擦り、卑猥な水音が結合部から漏れ聞こえてきた。

「はひっ、んくっ、ああああ!はぁ、はぐううっ!!」

 膣奥を乱暴に突くように、腰を激しく振りながら、時々膣内で逸物を転がすように腰を前後に振りまわす。膣内で感じる快感に抑えきれない嬌声を漏らす。膣壁は怒張に媚びるかのように大きく波打ち、滲み出る蜜汁も一気に増してきた。
 肉壁をカリ首で抉るように擦り、愛液を卑猥に捲れる膣口からかき出す。さくらの膣が今もに絶頂しそうなくらいヒクヒクと脈動していた。
 子宮口も物欲しげに轟き、早く注いでほしいと浩平の竿に絡みつき収縮してきた。

「んふぅん。わかるわぁ・・・田上君のおちん〇ち〇が蕩けてしまいそうなのが。出そうなのね?出していいのよ。思い切り中にぶちまけて、そのままイっていいのよ。先生の膣内で、いっぱい精液吐き出させて!」

 さくらが宣言するや否や、射精の近づきを知らせるように寝ているはずの浩平の逸物が脈打ち、子宮めがけて盛大に精液を迸る。

「んきゃあああぁぁ!あぁ、熱いぃっ・・・熱いのぉ・・・ドクドク奥に来るぅ・・・はへぇ・・・はぁ、はあぁぁん!」

 熱液が奥に打ち付ける度に、さくらはビクビクと激しく背筋を震わせた。

「おおおおっ、奥っ、グイグイくりゅ・・・これぇ・・・も、もう、イッ、イグッ・・・くぅっ!イグぅぅぅ!
!んくっ、はぐうぅぅ!!」

 射精の心地よい快感に浸りながら、さくらの身体も絶頂を迎えた。女性の快感に涙が込み上げてくる。こんなにセックスが気持ちいいものだということを浩平は初めて知ったのだった。

「は、はは・・・まだ出てるぅ。わらひの中にいっぱい・・・ふあっ、あはぁ・・・こんなに相手のことを愛おしく感じたことはないわ。もっと、もっと田上君を感じていたい・・・身体の奥まで、子宮の奥まで、田上君で満たされたいの。だから・・・ん、はぁ、はぁ、くふぁぁああ!」

 再びさくらは射精直後の逸物を、白濁液と蜜液でドロドロに蕩け切った膣内で激しく扱き始める。浩平の身体が無意識に腰が浮き、不意打ちの刺激を受けて「ううっ」と、聞こえるくらいの声をはりあげた。

「もう、おま〇この疼きも、気持ちも、抑えられない。もっと、もっとぉっ♪先生に精液注いで頂戴!くふっ、はぁ、んんんぅ!」

 濡れ蕩ける膣壁に逸物が熱くしゃぶられ、痺れる快感が再びすぐに絶頂の波を掻き立てる。熱い息を切らしながら、形良い尻房を浩平の腰に押し付け、肉槍の先端が綻び子宮口に咥えこまれる。

「あはぁああ!!また出した!さっきよりもたくさん入ってきてる。お腹に熱いの、溜まってくるぅううぅぅ!!」

 浩平が再度絶頂した精液に、さくらのうっとりと跳ねあがる声が漏れる。全身が痺れるような快感に浸りながら、吐き出される大量の精液を受け止めていく。精の交わる匂いが漂う中で、未だ物足りない性欲を求めてさくらは一度時間を確認した。

「うふ。まだ、先生の膣内で、おち〇ち〇大きいままね。んふっ、はぁはぁ・・・このまま、もっと愛してあげる」

 さくらは授業が終わるまで、浩平の身体と長々と交わり、何度も子宮へ精液を注ぎ込んだ――。続きを読む

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