純粋とは矛盾色

―Necronomicon rule book―

幸せとは何かを探していた。
最高の幸せを追求し、自らの幸せを探求し続けた。 
人と同じことをすれば腹が立ち、人と違うことをすれば角が立つ。
特別になろうと私欲に働けば、抑止を以って常人の行動なのだと気づかされる。
故に、自らを幸せにすることに意味はなく、他人を幸せにすることに意義を見つけ出す。

他人に乗り移る呪い事は自らの存在を薄め、描いた作品を腐らせる。
幾千にして腐敗。誰かに恨まれる人生でも構わない。
キャラを殺し、自分を殺し、最悪の結末で物語が終わろうと、
己の私欲をかけた場所を守り続ける。


私には、正義としての素質があったのだ。


『純粋とは矛盾色 村崎色の手記より抜粋 Necronomicon rule book』 

 芽理沙が起き出した。最初は戸惑いを見せていた芽理沙が、有理沙の顔をみてさらに困惑している様子を窺わせていた。
 姉の有理沙が芽理沙を丸裸にし、さらに女性器を弄っていたのだから。

「・・・おねえちゃん・・・えっ?なにしてるの?」

 信じられない光景に寝ぼけ眼の芽理沙がすぐに覚まし、悲鳴を上げようとした。しかし、それを有理沙が制止する。

「しー。お母さんたちが起きるわよ?」

 もし両親がこの現場を見て、ベッドシーツを濡らした芽理沙をみて咎めないわけがない。たとえ芽理沙に非がなくても、既に有理沙の思惑通りに批難材料を作らされてしまっていたのだ。だから、芽理沙は親を呼べなかった。

「でも・・・、だって・・・。お姉ちゃん、こんな時間になにしてるのよ?」

 小声で、まるで姉にすがるような泣き声で有理沙に問いかける。そんな芽理沙の気持ちを虐めるように、有理沙の指が再び胸を鷲掴んだ。そして小刻みに震わせながら、力に強弱つけて芽理沙の乳房の形を崩していった。

「見てわかるでしょう?芽理沙に愛撫してあげてるんじゃない」
「あ・・・」
「本当に可愛いわ、芽理沙。それにすごく感じやすい」
「いや、お姉ちゃん。恥ずかしいよ」
「お姉ちゃんの言う通りにしなさい。こんな光景、お母さんたちに見られたら困るでしょう?」

 親を引き合いにだして強引に芽理沙の上に覆いかぶさる有理沙。対して親を引き合いに出されて恐縮して有理沙にやられていく芽理沙。片方の乳房を揉みくちゃにされながら、もう片方の乳首を有理沙に舐められる。

「芽理沙の乳首、もうビンビンに勃起してるじゃない」
「ひっ、んぁっ・・・あっ、いやっ・・・!」
「芽理沙って舐められるの好きかしら?指で弄るより舌で舐められる方が反応が良いみたい。姉さんの唾液の匂いが身体に染み出るくらい、ペロペロしてあげるね」
「ひどいよ、お姉ちゃん。どうしてこんなことするの?」
「どうして泣くの?お姉ちゃん、芽理沙のこと好きよ?」
「だったら――」
「それとも、芽理沙は私のこと嫌い?」
「そんなこと、ないけど・・・」
「だったらいいじゃない。私の好きな芽理沙を私が好きにしてなにがいけないの?芽理沙だって気持ちよくなりたいでしょう?」
「いや、怖いよ、お姉ちゃん」
「大丈夫。お姉ちゃんに任せて。きっと芽理沙を気持ちよくしてあげられるから」

 どうしていいのか分からない刺激に戸惑う芽理沙が、その刺激を生み出す有理沙に身を預けていた。有理沙の予定通りの計画に目を細めてせせら笑う。そして、再び芽理沙の乳房に吸い付いた。


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 夜も更けて、両親も芽理沙も寝静まっている時刻、有理沙(宇宙太)は目的の部屋へと向かっていた。
 芽理沙の部屋だ。今日初めて会い、一目惚れした宇宙太が有理沙に成りすまして夜這いをかけに来たのだ。

      ラフなパジャマ

「うふふ。芽理沙ちゃんの無警戒な寝顔を見ちゃった」

 すやすやと、寝息を立てて眠る芽理沙。まさか有理沙が部屋にやってきているとは夢にも思っていないだろう。普段着以上に楽な姿で眠りにつく芽理沙はそう簡単に起きそうもなかった。
 横に寝たままの芽理沙のスカートをそっと捲りあげる有理沙(宇宙太)。シャツの中におさまる白いブラと同じ色のショーツが覗いて見えた。

「白のショーツか。芽理沙ちゃんも男を誘うつもりもないのに、どうしてコスプレなんかしてるのかな?」

 純粋にコスプレを楽しむ姉妹と、男子の思惑の相違が伺える。

「女性は眠るときもこんなに小さな布きれだろ?窮屈なんじゃないか?」

 男性のようにトランクスなどない女性のショーツにそっと指をなぞってみる。 指で触れただけで芽理沙の女性器にショーツが張り付き、形が丸わかりである。
 大事なところに触られても反応を示さない芽理沙。眠りは深く、起きないことを確信した有理沙(宇宙太)はさらに大胆な行為に打って出る。と、いうのも、芽理沙が目を覚ましたととしても、そこにいるのは有理沙であり、宇宙太と芽理沙にばれる心配もないので、元よりイケるところまで行く予定であるのが宇宙太の本音である。嫌われるのは有理沙であり、姉妹の関係に傷がつこうが宇宙太にはまったく関係ないのである。

「へへ・・・。 よっと」

 有理沙(宇宙太)は芽理沙の身体を無理やり抱き起こし、上半身を起こしたのだ。壁に寄りかかる芽理沙は首をコクリコクリと項垂れながら、それでもまだ眠りについていた。

      お、起きない
 
  スカートを脱がしやすくし、お尻を浮かせるとそのまま両足を滑らせて落としていく。先程までスカートで隠れていたショーツが今度はばっちり丸見えになったのだ。リボンの飾りのついた女の子らしいショーツが初々しい。下着姿をそそられる有理沙(宇宙太)は、シャツを捲りあげて形の同じブラをも露出させていった。ブラを外せば下着の中から張りのある芽理沙の胸が形を崩すことなく溢れ出るように姿を現した。
  有理沙よりも若くて張りがある、モデルのような芽理沙の胸も魅力的だ。有理沙(宇宙太)は眠っている芽理沙の前で小さくうめき声をあげてしまった。

「綺麗だ、芽理沙ちゃんの胸・・・しかも、それが俺の目の前にある・・・」

 震える有理沙の手で、芽理沙の胸に触れる。遠慮がちに触った胸も、触れる度にどんどんと興奮を高め、躊躇いを減らし、力加減を強めて触れていく。

 ――むにゅむにゅ。ムニュンっ。

「・・・ん。んんぅ・・・」

 有理沙の指に触れられるごとに、芽理沙が声をあげていた。起きたか分からない小さな声だ。身体は眠っていても意識は起き出したのかもしれない。しかし、その時には宇宙太の理性は止められないところまで来ていた。
 明かりの消えた部屋の中で分かるほどの透き通った白い柔肉。その頂上には淡い桃色の突起物が芽理沙の呼吸に合わせて揺れていた。
 規則正しく揺れている。まだ、眠っているに違いない。

「へへ。いつまで眠っているのかな?芽理沙ちゃんは?」

 しかし、有理沙(宇宙太)は眠りを起こそうとしているようなイヤらしい手つきで芽理沙の胸を触り始める。乳房の形をなぞるように指を這わせてみせれば、少なからず違和感を覚えるはず。その証拠に有理沙の指で触れられるごとに芽理沙の身体がビクンと震えてきたのだ。
 起きたところで被害が最小限の宇宙太が行動を激しくするのは当然のこと。芽理沙を起こしてその反応を見たいという欲求が有理沙(宇宙太)の中で湧き上がってきたのだった。
 指先を乳房に食い込ませて、乳首を指で摘まんでみる。

「ふぁぁ、ぁっ・・・んんっ・・・」

 一際大きなお声を荒げた芽理沙だが、まだ眠気の方が勝っているようだ。乳房から手を離せば、また元通りに寝息を立て始める芽理沙だった。

      いじいじ

「ふぅん。あれだけ弄っても眠りにつくんだ。相当芽理沙ちゃんは眠りが深いんだね」

 ぼそりとつぶやきながらショーツを捲りあげる有理沙(宇宙太)。男性を知らない、穢れのない女性器を覗かせながら、有理沙(宇宙太)は目を細めた。

「でも、本当は気持ちよくなっちゃってるんでしょう?乳首も勃起しているし、心なし高揚しているようにみえるんだけどな。身体はもう完全に起きているに違いないよね?」

 そう言いながら有理沙(宇宙太)は芽理沙のショーツを脱がしていき、露わになったおま〇こを両手でおもいきり広げてみたのだった。



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 自作の入れ替わり装置を使い、コスプレイヤーの穂村有理沙の身体を手に入れた角田宇宙太。コスプレが趣味というだけあり、部屋にある全身が映る姿見を前にしてパジャマを脱ぎ捨てる。
 そこには、部屋の明かりに栄えるほどの白く透き通った肌を持つ女性の裸体が映し出されていた。

「これが俺の今の姿か。今までとは全然違う。いいねえ」

 ぽつりと漏らす宇宙太の独り言も有理沙の声で吐き出される。さりげなく差し向けた手のひらを左胸へと持って行き、ゆっくりと揉んで解すように力を加えていくと、膨らんだ乳肉がかたちを変えて揺蕩う様子を鏡に映し出す。

「くひひ。カメラ小僧が望むポーズを取り放題ってか。それどころか俺はいつでもこの胸を揉み放題できるとか最高だなぁ」

 普段の有理沙の声でありながら、発言する言葉が普段の有理沙では絶対言わないので、不思議と声色が違って聞こえる。今ここに芽理沙がいれば有理沙の異変に気付けたかもしれない。
 しかし、彼女のいない時間帯を狙い有理沙(宇宙太)はオナニーを始める。有理沙の身体を使い存分に狂いイクために。
 無造作に有理沙の股間に手をあてがい、指先にそっと力を入れた。濡れていない女体の襞に触れて興奮を覚える有理沙(宇宙太)。

「んっ?・・・ううん?なんかヘンな感じ」

 今まで触れたことすら無い部分。男性の身体にはなかった肉襞に手のひらを前後させていると、感じるという部分よりも先に、刺激に反応してくすぐったさを覚えてしまう。

(そうか。彼女は初心だったのか)

 信じられないくらいに、有理沙は馬鹿正直にコスプレを楽しんでいる。誰かのためではなく、自分のためにコスプレを赴く。写真に撮られることは二の次で、自分が誰かに成りきることを楽しんでいる有理沙にとって、快感という反応は恐ろしいほどに鈍かったのだ。
 それが、宇宙太が出した結論である。

「そうか。俺が彼女のカラダを開拓できるわけか。くひひ。 腕が鳴るぜ。こんなイイ身体を自分好みにできるなんてよぉ~!」

 女子高生の身体としては似つかわしくないムッチリした乳と尻をした有理沙の肉体だが、残念なことに反応は鈍かった。せっかくイイ趣味を持っているというのに、それすら利用しない有理沙の精神には感服するが、いまこのカラダを操っているのは、入れ替わり装置を作り有理沙の身体に乗り移った変態のおじさんだという事実。有理沙の身体を徹底的に開発し始めた。
 自慰行為を知らない真面目な有理沙の変わりに、オナニーを身体に教え込む様に胸を触り始める。乱暴に鷲掴んだ左胸の奥底から妙に熱いモノが込み上げてくる。それを感じた瞬間、有理沙(宇宙太)は不敵に笑った。
 たとえ快感を知らなくても、下地まで育てた有理沙の身体は最高のモノだ。持て余した肉体を鍛え直せばすぐに反応を示すのは当然のことだ。指を軽く乳肉に食い込ませただけで反応を見せるのだから素質はあったのだろう。

「よし、今度は両手で・・・ふほおおおぉ~!ますます胸の奥から熱いモノが込み上げてくるぜ。へへ・・・たまんねえ」

 自分の両手で両胸を揉みし抱く有理沙。まるで背後から男性に揉みくちゃにされているみたいだが、乳を揉んでいる手は有理沙の小さな手なのだから恐怖感はない。それどころか、鏡に映っている有理沙が自分で両胸を揉んでいる姿を見せつけているのだから、客観的に観ても有理沙がオナニーしているようにしか見えない。真面目な有理沙は絶対にしなかった行為だろう。

「はぁぁ~。張りがあってピチピチしていて、瑞々しいおっぱいだよな。そして、この弾力。ぎっしりと中身が詰まっている感あるし、指を食い込ませてもすぐに形を元に戻そうとしやがる。これで発育中っていうのが信じられねえ。これからもっと大きくしてやるとするか。この俺がな!」

 ぐい~!ぐいぐい~!コリコリッ!

 音でも分かるくらい乳房を弄る有理沙(宇宙太)。有理沙の乳首を普段以上に勃起しているように見えた。普段奥手の真面目な女子高生が自分の乳房を弄り悶えているのだから、身体の奥から凄い快感が押し寄せているのだ。

「ああぁぁ~。胸だけでこんなに感じるのかよ。俺の仕込みよりももともとのカラダに素質があったんだろうよ。くひゅっ、本人も想像できない姿だろうよ。一度発火したら燃え尽きるまでこの疼きは静まりそうもねえな」

 揉めば揉むほど感度は高まり、おまけに乳房はますます張りを帯びてくる。ぎっしりと中身がつまってきて、母乳でも噴きだすのではないかと思うほどだ。両手で円を描くように揉んで、寄せてはあげてと乳房を責めながら、乳房を直に触る心地よさを堪能していった。

「はあぁぁ~ん!手のひらがあったかい。胸だけで感じちゃうぅっ!私ってとんでもない変態なのぉ!もっと激しく揉んでぇ!気持ちよくしてほしいのぉ~!」

 有理沙の本能がまるで言ってほしいというように口ずさむ。今までとは違う甘く吐息のかかった声で発した台詞に、右手が再び襞へと触れに下りていった。
 先程触れた肉襞。有理沙の指先でもう一度触れてみると、くちゅりと、水気を帯びている感触があった。

「うっ、・・・濡れてる」

 襞を擦るように上下に指を滑らせる。 その度に身体の芯からわき起こる体験したことのない快感が有理沙の身体に蓄積していった。
 これが有理沙の快感だということを知り、興奮を抑えきれなくなってきた。両手で襞を弄り始める有理沙(宇宙太)。その部分はぐっしょりと湿っていた。

「へへ。ぐちょぐちょじゃないか。イヤらしい女だ」

 上から目線で有理沙をいじめる宇宙太。しかし、その表情は宇宙太の萌えるツボを刺激しているように見えた。

「ああ。有理沙ぁ、おま〇こぐちょぐちょの淫乱女なのぉ。角田さんの好きに弄って、私を気持ちよくしてぇ!」 
 
      股間、弄ってます

 股の部分が濡れていたため張り付いていて、指でぺりっと引きはがすと、糸を引いているのが見えた。割れ目に沿ってなぞると、温かくねっとりとした液が指の肉に纏わりついた。
  両手の指を小刻みに動かしながら、チクチクと有理沙の大事な部分を刺激していった。入るか入らないかの微妙なところを刺激しながら、濡れていることを確認し、少しずつ指先を割れ目の中へ挿入していく。

「くふぅぅっ!」

 思わず声が出てしまう有理沙(宇宙太)。初めて味わう未知の快感。有理沙ですら味わったことのない刺激に、身体が震えていた。
 ゆっくりと指を出し入れしながら、女性のしての快感を貪る。例え指先だとしても、身体の中に異物が挿入してくる感触は初めてである。

「こんな感じなんだ、入れられるって・・・」

 身体の中に指が入っているという違和感が快感に変わり、その興奮に有理沙の身体が絶頂に達しようとしていた。決して奥まで挿入は難しいカラダだが、開発していけばバイブ並みの大きさの逸物を呑み込むくらい、時間はそうかからないだろう。
 技量と器がいい。至高の快感だ。

「くううぅぅ・・・いい。たまらん!」

 息を荒げて細く微かな喘ぎ声をあげながらオナニーする有理沙が鏡に映っているのを細目で見つめる。激しく指を自分の秘部へ出し入れを繰り返すと、溢れ出る熱い愛液が指を伝って床に零れ落ちていた。
 有理沙の細い指が、初々しい自らのおま〇こを荒々しく辱めていたのだった。
 
「い、イク・・・イきそうだ・・・」

 女性として初めてイクという快感を悟る。指の動きに合わせて、ピチャピチャという水音がイヤらしく溢れ出てくる。全身に鳥肌が立つ感覚に陥り、股間やお腹が熱く滾ってきたのだった。

「――――イクぅぅぅっ!!!」 

 有理沙(宇宙太)は鼻にかかった声をあげた。入れた指で肉壁の中を激しく掻き回し、大きな快感の波を引き起こしたのだった。

「あっ、あっ、あっ、ああああんっ!!!!」

 全身の筋肉が引きつり、ぐったりと動かなくなった有理沙は、そのあと不規則に痙攣を繰り返した。
 初めて女として絶頂を味わった宇宙太。頭の中は真っ白で、ただ快感の余韻に浸っていた。

「はぁ・・・はぁ・・・女のカラダって、すごい・・・」

 一回イった有理沙の身体はしばらく動くことができなかった。

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「う、う~ん」

 有理沙が目を覚ます。しかし、既に有理沙が発した声は野太い声に変わっていた。聞き間違いではない、もう一度声を発しようという気持ちさえなくすほど絶句する。
 意識を失う前の状況が物語る。視界に入るもの意識を失う前と同じ機械の内部。そして、そこに立つ一人の――女性。

「うふふふ、目が覚めた?」
「え?」
 
      自分の姿を目撃。入れ替わりの代名詞っすなぁ

 有理沙の目の前に立つ、もう一人の有理沙。寸分違わない身長と体型。割れた腹筋とふくよかな乳房は、昨日まで鏡に映っていた自分の姿。
 そんな自分の姿が、有理沙自身のことを見下ろしている。

「わたし・・・ちがう。貴方は――」
「そう。俺は宇宙太だよ。俺たちは姿が入れ替わったんだよ」

 手鏡を持って有理沙に今の自分の姿を見せつける。そこには先程まで有理沙に喋りかけていた主催者である角田宇宙太が両手両足を拘束されていたのである。しかし、実際に機械に拘束さているのは有理沙だ。機械から解除され自由でいる有理沙の姿が目の前にいるにも関わらず、精神だけは未だに機械に縛られているのである。
 つまりこれは、宇宙太の言う通り、有理沙と宇宙太の二人は姿だけが入れ替わっていたのだ。 

 両手が動けば顔に手を持って行き、無精髭でもなぞっているところだろう。しかし、有理沙にはそれも出来ない。ただ鏡に映る蒼ざめた男性の姿が今の自分であることを受け入れるしかないのだった。

「あははは、アハハハハハ!!!」

 有理沙の声で高らかに笑い、機械の中で反響する。身体を揺らし有理沙の身体でその場で高々とジャンプした。

「これがコスプレイヤー穂村有理沙の身体か。軽い、かる~い!鍛えてるだけあって跳躍力が半端ないな。どこまでも飛んでいけそうな気分だ!」

 機械内で上下に跳ねる有理沙。着地すると遅れて乳房が揺れている。そんな大きな乳房に関心を持ちながら自分の身体を舐めるように見つめる有理沙の姿を見つめることが、有理沙には出来ずに目を背けることしかできなかった。 

「今の女子高生って、おっぱい大きいな。栄養取り過ぎて恵まれてるからしょうがないよな。こんな色気を出しながら露出の多い衣装を着て被写体になってくれるんだから男たちには君も立派なオカズだよ」
「最低よ、あなた・・・」
「きみにとっての最低評価とかどうでもいいよ。今のきみこそ最も需要のない醜い肉男なんだからね」

 有理沙にとって自分でも美しいと称賛していた肉体美を奪われてしまった。しかも、今の姿は誰も近づかない酷い醜悪体と成り果ててしまった。その姿は下種豚以外の何物でもなく、表に出ることすら許されないほど落ちぶれた姿だった。
 対して輝かしい未来を手に入れたかのように眩しく照らす宇宙太。その先で待っているのは、コスプレを趣味にした、女子高生ライフである。
 
「ふふふ。これから俺はきみとして生きていく。俺・・・私は穂村有理沙よ」

 既に有理沙として生きていくことを決意した宇宙太は、機械の裏に忍ばせていたショルダーバッグから、有理沙の着替えの服を取り出したのだ。ショルダーバッグは元々有理沙の所持品だったのだ。
 ブラ、ショーツと次々有理沙の所持品で着替えを始めていく。ショーツに足を通すと、ゆっくりと引き上げていった。

「ふふっ、まだ暖かいね。この温もりも、もう俺のもの」

 そう言いながら有理沙(宇宙太)は穿いたショーツの股間やお尻を撫で回し、にやりと笑った。

「もういやぁ」

 有理沙の目の前で起こっている光景に現実が霞む。有理沙(宇宙太)は気にすることなく、ワンピースを頭から被り、ボレロを纏っていった。絶対領域を見せながら黒のハイソックスの伸びた先にあるハイヒールを履くと、会場に来る前の私服姿の有理沙が目の前に立っていた。

「へぇ。普段のきみもやっぱり女の子なんだね。思った以上に落ち着きのある服装でびっくりだよ」
「返して!わたしの身体返してよ!」
「駄目だね。この身体はもう俺のものだ。『粉薬』もないのに、今更どうにもできないよ」

 どうにもできない。この言葉を聞いた瞬間に有理沙の感情は堰を切ったように激しく押し上げた。散々勝手なことをして、手足を拘束され、姿を奪われ、人生を奪われようとしているにも関わらず、それがどうしようもないと一括りにしようとしている男に怒りが爆発した。

「だったら・・・殺してやる!こんな機械ごと、壊してやる!うわあああ!!!」

 ギシギシと機械が鳴るも、太い腕に食い込んでビクともしない。叫ぶ度に涙が溢れ、嗚咽と供に溢れる涎と供に、唇から血が流れてくる。あまりの悔しさで唇を噛みきってしまったことに気付かなかった。

      勝者の余裕


「は?状況分かってる?いま、この場に誰か呼んだら、警察に連れていかれるのは俺じゃなくてきみの方なんだけど」
「――――っ!?」
「ただのコスプレイヤーと全裸露出の主催者。この状況を見てどっちがまともに見えると思ってるの?ま、私はそれでも構わないんだけどね。そうした方が、芽理沙ちゃんは飛んできてくれるかしらね?その胸に甘えさせてくれるかしらね、ぐへへへ!!!」
「う・・・ううぅっっっ!!!」

 叫びたい気持ちが募りながら、声を押し殺すしか出来ない宇宙太(有理沙)。ここで誰か呼ばれたら、警察に突き出されたらそれこそ、宇宙太の思う壺だ。誰が芽理沙を助けてあげられるだろう。感情を殺してでも、涙だけは止めることができなかった。

「心配いらないさ。俺がきみの代わりに家に帰るんだから。誰も心配する必要ない。平穏な日常が戻ってくるのさ。きみと俺が入れ替わったままね」

 日常と非日常を垣間見たまま、有理沙(宇宙太)は機械の外に出ようとしていた。ちらっと見えた外の景色は、本日のイベントを終了し、片付けている業者達が作業をしている姿だった。そして、宇宙太(有理沙)の姿は誰の目にも映ることはなかった。

「それじゃあね、安心しなよ。きみはこのままひっそりと俺の自宅へと返される。きみの知らない地域だと思うけど、そこで新しい人生をやり直すんだね。それじゃあ、この姿をくれてありがとう」
「待ちなさい!まってぇ――――!!!」

 有理沙(宇宙太)が外に出て別れを惜しむように手を振った。宇宙太(有理沙)を閉じ込めたままの機械は再び重い扉を締められ、しばらくして内部の明かりが消灯されたのだった。
 暗闇の中で宇宙太(有理沙)は誰にも聞こえることもなく泣き喚き続けた。



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 穂村有理沙―ほむらありさ―と芽理沙―めりさ―姉妹はイベント会場でコスプレ衣装を見せつけていた。会場にやってきたカメラ小僧たちは、彼女たちめがけて眩いほどのフラッシュを浴びせさせていた。

「うおおおおおお!!」
「ほむほむ姉妹ぃぃぃ!!」
「二光年に一度のコスプレアイドル姉妹爆誕や!!」
「可愛いね~」

 パシャパシャパシャ――――

      鍛えられた筋肉ぅ~

「なんか、凄い脚光を浴びてるみたいだけど・・・」
「そういう風に煽っといたのよ」
「ええ~お姉ちゃんのしわざなの!?」

 コスプレイベント初登場となる妹の芽理沙はカメラ小僧の発する熱視線に立っているだけでたじろいでしまう。姉の有理沙は妹の様子を見ながら楽しく撮影されていた。

「『大丈夫よ、誰もいないから』って言って無理やり参加させたくせに、私は衣装制作担当なのに~!」
「あんたも少しはたるんだお腹を引き締めなさいよ。私みたいに腹筋を割れとまではいわないから」
「お姉ちゃんは毎日鍛えてるからだよ!私は時間ないんだもん」
「みんな1日24時間平等に与えられているの!空いている時間があったら少しは筋トレするぅ!」
「ひぃぃん!お姉ちゃんのバカぁ!!!」
「お、姉妹喧嘩かな?」
「可愛いね~」

 パシャパシャパシャ――――

 いちゃつくコスプレ姉妹がネットに挙げられるまで時間はかからなかった。
 しかし、芽理沙がコスプレに参加したことで、後に姉妹の絆を揺るがす大きな事件を引き起こすことになるとは、この時の有理沙は夢にも思っていなかった。


 
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 霞は戸惑いながらもこういうときにどう対応していいのかわからずにいた。

「気持ちは嬉しいけど、芽衣・・・私たちは――」
「好きよ、霞ちゃん」
「私も好き・・・だけど、それは――」

 友達としてという感覚で言おうとして、それ以上言葉に出なかった。貢の口で霞の唇をふさがれたのだ。ベッドで捻る霞を男の力でねじ伏せながら、制服を脱がしていった。

「芽衣・・・」

 ぷるんと、空気を震わせてまろび出る乳房。貢(芽衣)の両手にのしかかる弾力を味わう。

「ムニュリと大福みたいに柔らかい。霞ちゃんのおっぱい。やっぱり外に出て歩いた方が・・・スタイルよくなるよね。私なんか、横にしか肉がつかないのに・・・」

 ――もにゅもにゅ、と、揉みし抱きながらつぶやいている。嫌味だろうかと、霞は芽衣に苦笑していた。

      ベッドと少女

「んっ、ぁン!もぅ、いい加減にしなさいよ。誰かきちゃうでしょ」
「ごめんね、霞ちゃん。もう少し甘えさせて」
「だからぁ、ひゃぅっ!」

 下乳から救い上げるように乳房を鷲掴み、左右に引っ張る。

「ぁぁっ!んっ・・・いたぃ・・・おっぱい、とれちゃぅ・・・はぁあんっ!」

 霞の乳房を揉みながら感じてきているように声が高くなる。貢(芽衣)が手を放すと霞の乳房はすぐに元の綺麗な釣鐘型に戻った。しかし、盛り上がった乳房の中央の突起物は着々と存在感を見せつけていた。

「霞ちゃんの乳首、勃起してきた」
「芽衣のせいでしょう・・・ひゃぅんっ!ち、乳首、吸わないでぇ・・・ぁっ、はぁあああんっ!」
 
 貢の顔が近づくと、霞の乳首をパクリと咥えた。口を窄めてチュウチュウ吸い始めると、霞の身体にビリビリと電気が流れて響いた。

「ちゅぅ、ちゅぱ・・れろ、ペロペロ・・・はぁん・・・おいひい。乳首もっと硬くなってきてるみたい」
「だめだってぇ!いい加減に、してぇ・・芽衣。 んんっ、あぁんっ!はぁっ・・・」
「はぁ、はぁ。霞のおっぱい、手のひらに吸い付いてくる。白い乳肉が食い込んできて、イヤらしい」
「バカなこと言ってないで、もぉ、やめなさいってぇ」

 乳首は赤く腫れあがり、ツンと上を向いている。貢(芽衣)に舐められた乳首がイヤらしく照らされていた。霞もなんだかんだ言って貢(芽衣)の行動を本気で嫌がっているわけではなさそうだ。形だけの抵抗をみせているが、身体の方はすっかり火照っているのである。

「女の子同士なんだし、そんなに恥ずかしがらないで」
「今の芽衣は男性じゃない!」
「あっ。そうだった」

 テヘペロと舌を出す芽衣。貢の顔で可愛く惚けて見せても可愛くない。

「だったら、私に任せて身体を預けて」
「それは怖いっ!・・・きゃああっ!」

 スカートを脱がされ、ショーツの中に腕を潜り込ませる。霞の太腿がキュッと締まり手首を挟む。そんな状態だが、貢(芽衣)の手は霞の秘部をくすぐり、弄り始めた。

「ほらぁ。私の手におま〇こからお汁が零れてきてるのがわかるよ。おま〇こ、こんなにぐちょぐちょになって、霞ちゃん、感じてるんだ」
「やぁっ、お、おま〇こ弄らないでぇ!はぁ、はぁ、んんぅ・・・はぁあああんっ!」

 恥丘に沿って貢の指が沿い、左右に割り開くようにおま〇こを広げてみせる。トロリと熱い愛液が垂れ落ちる。

 ――じゅくじゅくっ、ぬぷぅ・・じゅぶじゅぶ。

 水飴のように熱く蕩けた愛液を指先で塗り込みながら恥丘を撫で、小さなおま〇この入口に指を差し込んでいく。

「ヒッ!」

 太い指が身体の中に入った感覚に寒気を覚えた霞。途端に身体が熱くなり、さらに愛液が溢れてくる。

 ――じゅぷ、じゅぷ、ぐちゅ、ぐちゅ!

「はぁっ、はぁっ、霞ちゃんのおま〇こ、キツいくらい締め付けてきてる。・・・ン、あんっ、気持ちよさそう!」
「あぁあん!お、おま〇こ・・・熱くなってる・・・ふぁあっ・・・だめ、ダメなのに・・・」
 
 パンツをはしたなくシミで汚してしまった背徳感と愛液の熱に疼く。霞が恍惚とした様子の間にショーツを脱がすと、貢(芽衣)も手早く下着を脱いだ。

「第二関節まで濡れるね。 これならきっと入るよね?私だって、もう山寺のコレを抑えられそうにないの」

 貢の勃起した逸物を見せつけられながら、霞は片脚を持ち上げられる。そして、拡げられた股ぐらに合わせるように、貢(芽衣)の身体を滑らしていった。

「本当に挿入れるの・・・?女の子同士なのにっ・・・!」
「私が気持ちよくしてあげる、霞ちゃん」 
「ひゃあん!!!」

 挿入した瞬間、霞の膝が震えた。初めて味わう感覚に恐怖を抱きながら、初めて味わう快感に喘いだ。

「なにこれぇ!おち〇ぽからジンジン熱いものが込み上げてきて、おま〇こが締め付けて、変になっちゃいそうだよぉぉ!」

 霞の膣の脈動に震える貢(芽衣)が、感情を高ぶらせて腰を激しく突き動かす。お尻が腰に当たるたびに空気の破裂する音がくぐもって漏れる。

「や、やめて、芽衣・・・。おかしくなっちゃうからぁ」
「駄目だよ、こんなの、とまらないよ・・・。きもち、いいんだよもん!」
「お、お、お、お・・・」

 ――パン、パン、パン、パン

「霞ちゃんも気持ちいいんだよね!おま〇こズボズボされる度に、愛液が亀頭の先を満たしてくれるのがわかるよ!」
「お、おま〇こズボズボされて、アクメ、きちゃうよぉぉっ!!」 
「ちゅぱっ・・ぬちゅっ、んんぅ・・・んっ・・・ちゅっ・・・」
「じゅぷぅっ、ずちゅ、ずちゅっ、んんっす・・・ちゅぱぁっ・・・はぁ、はぁ・・・」

 顔だけを回して二人でキスを交わし、むしゃぶりつくように潤んだ唇を合わせて、ぴちゃぴちゃと艶やかな水音を響かせながら快感を弾け合う。
 膣内で膨張する逸物。芽衣自身、どうにもならない衝動が駆け巡り、亀頭の先から何かが込み上げてくるのがわかった。

「イイよ。一緒にいこうよ、霞ちゃん!はぁ、はぁっ・・・ほらっ、霞ちゃん!私のおち〇ぽで気持ちよくなってよ!」
「ふあっ、あ、あ、あぁ・・・あぁあああああっっっ!!!」

      寝ていても勃っています

  ――プシャアアアアアぁぁぁぁぁーーーっっっ!!!

 霞の膣内から熱い愛液が噴きだし、ベッドシーツを濡らして水溜りを作っていく。 ビクンっ、ビクンっ、と断続的に身体を痙攣させながら、霞は絶頂にいった身体の火照りが生む幸福感に包まれていた。

「はぁ、はぁ・・・霞ちゃん、大好きだよ・・・」

 感情を爆発させた芽衣の勢いも冷めることなく、さらに逸物を膣の中で立ち上がらせるのだった。

「何度でも、いきたいよ・・・。霞ちゃんとなら、できるから・・・」
「もぅ。ちょっとは休ませてよ・・・」
 
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「じゃあ、芽衣の身体と山寺さんの身体が入れ替わっているってこと?」
「そうなの。だから、いまの私はこうして霞ちゃんの家に来ることができたの!」

 事情を聞いて霞は状況を把握しながら、素直に喜んでいいのかわからない表情を浮かべていた。
 目の前にいるのは山寺貢ではないのは間違いない。女性らしい仕草と間延びした喋り方は間違いなく芽衣そのものだ。『入れ替わった』という話も分からなくない。
 しかし、それで本当に歩けるようになったと言えるのだろうか。
 貢の足を使って歩いてやってきた芽衣には悪いけど、それは本当に芽衣が歩けるようになったとは言えないのではないだろうか。
 霞が望んでいたのは芽衣が貢の身体に頼って会いに来るのではなく、芽衣が芽衣自身の身体で会いにきてほしいと想う気持ち。
 まるで今の状況は、芽衣の心理を逆手に取った貢の身体交換にまんまと騙されたようにも思えてならない。

「それって大丈夫なの?大丈夫って言うのは、芽衣の身体目当てだったんじゃないの?」
「山寺なら心配ありません。ちゃんと躾けてありますから」

 疑いもなく屈託のない笑みで貢を信じている芽衣。そんな円らな瞳で言われるとさすがに霞も抵抗がある。

「犬じゃなくて狼かもよ」
「ケダモノ?」
「男はみんなね」

 断言する霞に少し悩んだように俯く貢(芽衣)。思う節があることを呑気に談笑している暇はない。一刻も芽衣を帰すことが本人のためになると霞は思っていた。

「早く帰った方がいいわよ。 私のことは大丈夫だから」

 霞が振りむくと、貢(芽衣)の顔が目の前にあった。そのまま体当たりを受けた霞はともにベッドに倒れ込んだ。

      親友も雌猫だった。

「芽衣・・・?」
「いやっ!」

 霞の提案を拒絶する。押し倒された芽衣に圧倒された霞は顔を赤く高揚させていた。

「帰りたくない。せっかくお外に出て霞ちゃんに会いに来たのに、そんな早く帰さないでよ!」

 外に出たことで、今まで溜まっていた憂さが爆発した。感情を制御できない貢(芽衣)が霞の唇を奪ったのだ。

「好きなの、霞ちゃんのことが――」

 一人になりたくないというはっきりと意志を伝える。
 少しの時間だけでいい。魔法の時間が切れるまで過ごしたい。
 二人で――。

 
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 帰宅した霞は、そのまま自分の部屋のベッドで泣いていた。新学期から芽衣と一緒に登校できると思っていた霞が、裏切られた気分になってしまい、つい口走ってしまった強い非難。

「どうして、あんなこと言っちゃったんだろう・・・」

 現状は変わらない。今まで通り一人で学校に登校してクラスメイトと学園生活を楽しめばいいだけの話なのだ。そこに芽衣が加わる。そうすればもっと楽しくなると、淡い期待を持ってしまったことが間違いだった。
 芽衣の努力不足・・・?それとも、霞の一方的なワガママ・・・?
 いずれにしても、霞が発した言葉で芽衣は傷ついた。一体これからどんな顔して会うことができるのだろうか。
 親友だけど、芽衣に一歩線引きをして諦めたほうが良かったのかもしれない。
 お互い気苦労せずに、干渉しなければ誰も傷つかない・・・?

 だって、仕方ないよ。普通の子じゃないんだから――

「・・・本当に、それでいいの、芽衣・・・」

 諦め半分の心境のなか、突然母親に呼ばれる声が聞こえる。

「お客さんよ」
「私に?」

 涙を拭いて部屋を出ると、玄関に待っていたのは芽衣のもとで働く使用人の貢だった。霞も何度も顔を合わせたことがあるが、こうして貢が霞の家を訪ねてくるのは初めてだった。

「どうしたんですか?まさか、芽衣になにかあったんですか?」

 芽衣のことを心配する霞が貢に詰め寄る。しかし、貢は急に大粒の涙を零してポロポロと泣き始めたのだ。

「ええっ!どうしたんですか?いったい、何があったんですか?」
「――霞ちゃん」
「えっ・・・?」 

 いま、貢はなんて言った?普段は「有坂さん」と、苗字で呼ぶはずの貢が、慣れ親しく霞のことをちゃん付けで話す。そんな風に言う人物は一人しかいない。幼馴染でずっと一緒にやってきた、ただ一人の親友の姿を思い浮かべる。

      男が簡単に泣くんじゃありません!

「芽衣・・・なの?」
「うん。そうだよ」

 何故霞がそう口走ったのか分からない。姿が貢でありながら、芽衣の面影を見てしまった霞に貢は両手を広げて待っていた。
 いや、貢の両足は震えていて、少しずつバランスを前のめりに崩れかけていた。霞は慌てながら――しかし、飛び込む様に、貢の身体を強く抱きしめた。

 
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 有坂霞は学校が終わると、一目散にある場所を向かっていた。
 御近所付き合いのある有坂家の中では最も裕福で、豪邸に住む霞の親友、同級生の佐倉芽衣の家である。

「芽衣!」

 赤い絨毯の敷かれた廊下を通り、芽衣のいる部屋までやってくる。芽衣もまた霞がやってくるのが分かると、ぱあっと顔を明るくして窓からドアまで車いすを押して移動してきた。

「学校終わったんだね」
「うん。今日は始業式だからね」

 夏服とはいえ暑さが残る外での全力疾走でやってきた霞。汗の玉が流れて制服が透けて見える。芽衣にとって、走るという爽快感は味わったことがない。夏は外なんか出ずにクーラーの利いた部屋で快適に過ごすことが芽衣にとって最善の策になっていた。

「どう、具合の方は?」
「うん。別に悪くないよ」
「そう」

 車いす生活の芽衣。それは最近事故にあったわけでも、先天性の病を持って生まれたわけでもない。随分前の事件以降、芽衣は自分の足で立つことができなくなってしまっていたのだ。医者曰く、怪我は完治しているので、いつでも自分の足で立てると、言われているらしいが、芽衣は車いす生活に慣れてしまい、車いすで生活するようになっていた。
 ただし、車いすでの生活は、芽衣の日常生活を妨げ、健全な人から距離を置くようになった。極度の口下手と人付き合いが苦手な芽衣にとって、車いすという道具は格好の便利道具だったのだ。
 男子は見た目で遠ざけ、芽衣に近づいてくる女性は、心配してくれて、気を使ってくれるような人ばかりだ。お嬢様育ちの芽衣にとって、怒られ慣れていないことですぐ泣くとからかわれたこともあった。そんな傷つけられた経験が芽衣から車いす生活に拍車をかけたのだ。
 つまり、学校に行きたくないという引き籠りの生活だ。
 一学期丸々学校を休んだ芽衣をクラスは誰も気にしなくなった。しかし、霞だけは違ったのだ。今日はそのために芽衣の家を訪れたのだ。

「ねえ、学校行こうよ。 みんな待ってるんだよ」

 誰 も 芽 衣 を い じ め て な ど い な い 。
 芽衣が学校に来ることで、車いす生活を終わらせることが出来るのだ。
 芽衣が元通りの生活に戻れると信じているのだ。

「だめ、なんだよ」
「芽衣・・・」
「怖いの、外は。私は外に出ちゃいけない人間なんだよ」
「そんなことない。だって、前まで私と一緒に学校行ってたじゃん!これからも一緒に学校行こうって約束していたのに、どうしてそんなに弱くなっちゃったの?」
「もう、いっぱいいっぱいだよ。私、立てないし。私の傍にいたら霞ちゃんに迷惑かけるから」
「立てるよ!芽衣が立とうとしていないだけだよ!」
「何度も見せたじゃない。 私の足は私の思うように動かないんだよ。後遺症は残ってるんだよ」
「意気地なし!言い訳ばっかりして、自分の足で立とうと努力なんかしてないくせに!」
「私が霞ちゃんくらい強かったらよかったのにね・・・」

 いじめの件も、事故も、芽衣は自分がすべて悪いと思い込んでいる。
 時期が悪かったのだ。心が弱まった時に全ての災厄が降り注いだために、芽衣はひきこもりになってしまったのだ。それを芽衣自身、甘んじて受け入れている。
 だからこそ、霞にとって聞きたくないのだ。そんな弱音を。後ろ向きな発言を。
 前を向いて、一緒に歩きたいと思っているから。その理想のギャップが霞を苦しめる。

      お嬢様、ラフすぎる格好ですぞ

「芽衣のバカ!もう知らない!」
「か、霞ちゃん――っ!」

 霞が部屋から消えていく。再び暑い外を走って庭を飛び出していく様子を、芽衣は窓から眺めることしかできなかった。
 二人の間に亀裂が入った。立ち直すことも難しいほどに深い溝が芽衣をさらに孤立させる。
 一人で生きたいと望みながら、霞にだけは嫌われたくないという矛盾。
 芽衣は自分の住みやすい空間から飛びだすように、車いすに捕まりながら、自分の足で立ち上がろうと必死に力を加えてみた。

「―――――――っ!!」

 プルプルと両足が震える。力を抜けばその震えが止まり、芽衣も車いすに深く沈み込んでしまう。

「・・・でき、ないんだよ」

 完治していても自分の足がもう立てないことは自分はよく知っている。
 自分の体重を支えられないほど両足の筋肉は衰えてしまっていたのだ。華奢で細い芽衣の体重だからこそ、筋肉もなかったのだ。
 思っている以上に人が立つってことは簡単じゃない。 誰もが当たり前のように出来ていることを、芽衣には出来ないという劣等感が、自分の弱さを浮き彫りにさせる。

「ごめんね、霞ちゃん・・・。私は弱いにんげん、なんだよ」

 誰もいない部屋の中で、芽衣はめそめそと泣き始めた。


 
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