やれやれ・・・ここまで予定を崩されるとは思わなかった。
 北河理恵という女性は正義感が強い。風紀委員として活躍している時から他の生徒よりも躍起になっているのは、それが彼女の生き甲斐になっていたかもしれない。
 心に染みついた体制は身体にも伝染するのか、身体が”入れ替わった”にも関わらず、乙成武の意識は北河理恵が言っていた通り、”入れ替わり”から三日経過した現在も思い通りに動かすことは出来なかったのだ。

『当然です。先生の意志なんかに私は負けません』

 まるで北河理恵という生徒が身体に宿っているように、私の意志に反して身体が勝手に彼女の習慣をなぞっていく。朝6時に帰宅し、早朝ランニングで目を覚まし、部屋の掃除をした後で朝ごはんを食べて、占いを見てから制服に着替え、友達と供に学校へ向かっていく。
 変わらない日常をなぞるように繰り返される毎日。学校から帰ってきては一時間勉強した後、お風呂にゆっくり入って、制服の皺を伸ばし、翌日の学校の準備を整え、10時には就寝する。
 規則的な生活、純粋無垢な性格。まるで俺の意思は埋まる隙がないほどに組まれた生活リズム。
 俺の意識は北河理恵の生活を盗撮しているに留まるしかなかった。まあ、それはそれで満足であるのだが、面白くはない。せめて、俺の意志が少しでも関与でき、『オナニーしろ』と頭に訴えかけてその通りに身体がオナニーを始めてれればまだ楽しめたものを。意識が齎す関与すら遮断しているせいか、今のこいつは五感を失っているはずである。ただ生活リズムの通りに時間に沿って行動する空っぽの器だ。

「なあ、俺に身体を洗わせてくれよ」
『触らないでください。汚らわしい』

 よほど俺のファーストキスがトラウマなのか、絶対に俺に身体を洗わせてくれない。

「そうは言っても、今は俺がきみの意識なんだよ?仲良くしようじゃないか」
『結構です。私は私で勝手にやりますー』

      主導権は譲らない

 目上のいう事を聞かないのは今時の女子高生か。苦々しい表情を浮かべながら黙々と身体を洗い続ける理恵のギャップが鏡に映し出されている。綺麗に洗うと言ってもスポンジで簡単に擦って終わり程度のものだ。泡が身体に付着すれば汚れが落ちたと思う典型的な初心者だ。

「俺が洗ってやるって。全然綺麗に洗えてないぞ。そんなものじゃ一日の汚れは落ちないんだ。爪の間や指の隙間もちゃんと擦らないと洗ったうちには入らないんだぞ」
『うるさい!そうやって私の胸を揉むつもりでしょう!』
「洗う為じゃないか。胸の谷間にだって汗が溜まるし、腋の匂いだって気にかけないといけなくなるんだよ?実際、いまの君からは――」
『うぇぇ・・・さすが、そういう部分に異常に執着するマニアね。変態がまじめに私に指図しないで、フン』

 お湯を被り、泡を洗い流してすぐに浴室から出ていってしまう。やることはきっちりすると思いきや、思いの外自分のことに対して雑な印象を持つ。スポンジを滑らせるようになぞっただけで胸を洗ってしまった行動を見て、俺はある一つの可能性を思い描いていた。
 それまで俺は何も言わず、ただ好機を待つ。それが何時なのかは分からないが、二週間以内――”入れ替わり”期間が終わる前でなければ俺の負けだ。

『ふぁ・・・・・・そろそろ寝ようかしら』

 何も出来ずに”入れ替わり”が終わるのを指を咥えてみているしかないのか――残念ながら今日もまた一日が終わろうとしている。布団に入る理恵が就寝すれば、俺もまた嫌でも眠らなければならないのだから――

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

「・・・・・・・・・ん?」

 おかしい。俺の意識はまだ眠っていない。時刻はとっくに定時を過ぎている。規則正しく就寝する理恵が夜更かししているという事だ。
 いったい、なにが起こっているのか?自分の意識を少し下に動かしてみる。そこで目にしたのは――

『んふぅ・・・ん・・・ん・・・』

 なんと、このカラダ。自分を慰めているじゃないか。

『はぁ、んっ・・・!んあ、ああ・・・・・・ダメ、なのに・・・・・・あぁっ・・・』

 頭ではそう思っているのに、手が止まってくれない。パジャマの上から胸を揉み、何度も何度も身体をビクつかせる。

『はやく、終わらせないと・・・・・・明日に支障でちゃうからぁ・・・』

 そう言いつつ彼女を覆う布団の一部がもぞもぞと動いていた。パジャマ越しにふっくらとした乳房とやんわりとした肉の感触が合わさるように、胸元と股間からは、細い指先がパジャマ越しに当たってくるのが感じられる。
 何をしているのかなんて言うのは聞くことが野暮だ。そして、それこそ俺が待ち続けた瞬間だ。そう、彼女自身が来る定期的の自慰行為を待ち望んでいたのだ。

『ああっ!?』

 抗えぬ欲求に負けて手がクリ〇リスに触れ、思わず声を上げてしまう。

『あっ・・・あぁ・・・・・・・・・こんなに・・・・・・少し擦るだけでイヤらしい水音がして、恥ずかしい。こんなことをしては、ダメなのに・・・・・・んんぅ!』
「よぉっ」
『ヒッ!?見てたんですか!?』

 俺の声を聞いて驚いている。当然だ。いま俺は北河理恵の秘密を知ってしまったのだ。
 理恵の身体は意識がない。つまり感覚もなく、ただ同じ周期を繰り返す器だ。いかに誤魔化したところで、その身体は感じてなんかいない。
 見えていない視点でいくら胸を揉みしだいたたところで、水音なんて聞こえやしない。感じてなんかいないから、自慰行為は永遠に終わらない。
 しかし身体は馬鹿正直に定期的に自慰行為を始める。俺が見ていたとしても身体を慰め、感じるまで身体を弄り続ける。模倣的に自慰行為をしたところで、精神と身体が繋がらない限り、快感は得られない。

「感じたいだろ?」
『別に、感じたくなんかありません』
「あ?」
『これは周期的に来る性的な処理です。別に感じなくたって乳首は勃ちます。別に気持ちよくなくたって、イけばいいんです』
「・・・なるほどな」

 どおりで彼女は性に対して開拓が弱いはずだ。今まで愛撫していた刺激はすべて俺に流れていたにもかかわらず、全然気持ちよくはなかったのだ。女子高生にしては疎いその刺激にもどかしさを覚える俺がたまらず声をかけたのだ。彼女にとって自慰行為は快楽を得るものではなく、処理するものという認識ではこの先いくら経っても快感は得られないだろう。
 故に――俺が理恵の身体に付け入る隙はこの瞬間しかない。

「俺に任せろ」
『えっ・・・』
「俺がきみの身体を開拓させてやる。そんなもどかしさを味わうのはもう辞めにしろ」
『冗談じゃありません。結構です』
「こういう事は俺の専門職」
『先生・・・保健体育の先生でしたか?』
「いや、国語教師だ」
『そうじゃなくて、反語表現!』
「むしろ、誰かに教わりたくても教われるものじゃない」
『教わる必要があるものとは思えませんが・・・』
「確かに。でも、決して損はない知識だ」
『・・・・・・まあ、そうかもしれませんが・・・』

 彼女の意志が少し揺らいだ。あと少しか――

「北河さん。もう意地を張るのは止めにしないか。いまの俺はきみの意志できみ自身なんだ。精神と身体が一つになれば、きっと今より得られるものがあるはずだ」
『そんなこと言ったって・・・』
「第一、今の北河さんは――腋から匂いが出てるんだよ?」
『う、ウソ・・・』
「本当なんだ。毎日走っているのに、身体を雑に洗うから匂いが発生しているんだよ。今のきみには分からないけど、俺にはずっと分かっていたことだ。きっと、まわりのみんなも気付いていたはずだよ。それなのにきみは誰の言葉も聞かず、自分の意志を貫いて迷惑かけている。風紀委員が風紀を乱していることに気付かない――」
『そんな・・・先生。本当ですか!?わたし・・・なんてことを・・・』

 ショックを隠せない。理恵の声が弱々しくなっていくのに対し、少しずつその傷を埋めるように優しく慰める。

『だから、ほんの少しでもいい。心を開いて。俺を受け入れて。お互い感じる自慰行為を教えてあげる。心も身体も満足する、そんな気持ちいいオナニーを――五感がなければ快感は得られない。身体が満足できない自慰行為は本当に救われるのかい?』
「・・・・・・・・・・・・わかりました」

 理恵の身体が俺を受け入れた。少しずつ、俺は理恵と混ざり合っていくのを感じた。

「ありがとう。理恵さん・・・」

 この時、身体は五感を手に入れ、俺は彼女の身体が持つ北河理恵の主導権を少し手に入れた――。




 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 打ち解けたわけではないが、秘密を共有する俺に対して理恵が語り掛ける。

『それで、どうしたらいいですか、先生?』

 せっかく自慰行為を満足したものでやりたいと考えている理恵に対して、俺は優しく指導してやる。

「きみはいったいなにを思い浮かべてオナニーをするんだい?あっ。オナニーって言うのはね、自慰行為のことだよ?」
『そ、それくらいは知ってます!バカにしないでください!」

 こんなところで頬を膨れる純粋さを見せるのも一興である。赤面した状態で間を取った彼女が渋々言葉を滑らせた。

『・・・好きな人のことを思い浮かべて・・・オナニーします』
「ほぉ・・・好きな人とは?」 
『・・・・・・田上・・・浩平くん・・・』

 その名前を聞いて俺は思わず面喰った。

「へぇ。それは意外でした。同じ委員会でも同じ学園でもない生徒を好きになるなんて・・・彼と何かありました?」

 突然彼女は無口になる。それは俺の言葉にそっぽ向いたのではなく、単に言いたくないだけのようだ。
 まあ、いい。後で記憶を読み取り、その時の情景を思い出すとしよう。

「彼に触られて、普段どんな気持ちになりますか?」
『・・・よくわからない。彼に愛撫されて・・・こんな感じにされたいとか、想像しながら弄ると・・・気付いたら気持ちよくなっているから』

 質問の答えと行動を合わせて乳房を愛撫し始める理恵。俺を少し受け入れたことで、質問に答えてくれるようになっていた。
 良い傾向だ。その方が後のことが行動し易くなる。

「やっ!ああ!さ、さっきと全然っ、違うっ!んっ!ふあぁっ!か、身体に電気のようなものが走ったみたい・・・・・・」
「そうだね。俺と混じったことで、精神的快感が身体に流れ始めたんだよ」
「そうなんだ・・・うん・・・こんなに、違うんだ・・・」

 身体だけじゃなく、意識も妄想に流れるだけで何十倍もの刺激が身体を駆け巡っていく。乳首が勃起し、クリ〇リスが隆起し、身体の疼きが強くなってくるのを二人は感じた。

「そして、この後は・・・?」
『んっ!んんぅっ!・・・・・・ッ!・・・・・・ふあぁ・・・・・・!そのあとはぁぁ・・・・・・ショーツのなかぁ・・・・・・手を入れますぅぅ・・・・・・!田上君の手がぁぁ・・・・・・わたひの、なかぁ・・・・・・ぐちゅぐちゅって、掻き混ぜてぇぇぇ・・・・・・おかひくなっちゃうのぉぉぉ!」

 衝動的に胸を強く揉み、ショーツの中に手を這わせてしまう。細い指に絡みつく愛液を塗しながら、狭い膣の中を掻き回しながら刺激していく。

『ああぁ!こ、こんな・・・・・・はしたないこと・・・・・・気持ちよくなりたいなんて、思ってはいけないのに・・・・・・』

      イケないことだってわかっているのに(でも、やっちゃう)

 身体の奥から湧き上がる欲求が、さらに刺激を求める。あともう少しでイクところまで来ていた。

「北河さん。それじゃあ今までと同じですよ。普段の今までと同じ刺激。同じ快感なんですよ」
『ひぅっ!・・・ぅっ・・・ぅぅっ・・・・・・」
「今乱れているのは身体がしばらく精神(俺)と放れていたせい。その反動が刺激を求めているに過ぎません。それはきっと慣れてしまう。果たして今までと同じで満足できますか?」
『はぁ・・・はぁ・・・』

 悪魔の囁きのように俺は理恵に囁き掛ける。すると、徐々に彼女の息が上がっていくのを感じていた。

「どうです?この先の快感を味わいたいですよね?」
『ハァ・・・ハァ・・・・・・。はひ・・・味わひたいれす・・・』

 北河理恵の身体の持つ鉄壁の風紀は瓦解した。今は一人の女子生徒として、初心な身体に快楽を与えるだけの簡単な仕事である。今の彼女は俺のさじ加減で何色にも染まる状態だ。

「でしたら、俺の知識を少しあなたに与えます。それは女子高生に対しての性的欲求です。自分という立場の優越感です。まわりの男性たちからどういう目で見られているかを知ることで、あなたは自然と自分だけじゃなく周りの友達、クラスメイト、他クラスの生徒。全生徒を欲求の対象に見ることができるようになります」
『・・・女子高生・・・友達・・・クラスメイト・・・全生徒・・・・・・。私の、欲求・・・・・・』
「それを踏まえて、記憶を呼び戻してみて下さい。そうすると、今まで感じたことのなかった快感が頭の中から溢れだしてきますよ」

 俺の意識の必要な部分を彼女に分け与え、性的欲求を最大限まで高めていく。すると、その効果は一目瞭然だった。彼女の手の動きがみるみる変わっていった。

『あぁぁ!・・・・・・き、気持ち良いの!指が、止められないのぉ・・・・・・!』

 痛いほどに敏感な乳首への愛撫。シーツに大きなシミが出来てしまうほどの愛液の量。
 そして、淫らな自分の声。それを身体(理恵自身)が引き出しているのである。

『あっ!あはぁ!!・・・・・・も、もっと・・・・・・もっとぉ!!快感を・・・・・・ふああぁぁっ!』
「こんなにも乱れてしまうなんて・・・・・・でも、もうなにも考えずに、快感だけを得るために・・・・・・」
『あっ・・・あっ・・・ごめんなさい・・・裕香ぁ・・・わたし、あなたのプロポーションに欲情してる。あなたみたいな巨乳になりたいのぉぉ!!』

 欲求のままに、指を二本に増やす理恵。すると、強烈な刺激が身体を駆け巡った。漏れる自分の喘ぎ声。そんな淫らな声を誰かに聞かれたらという想像すら自分を昂ぶらせ、膣を掻き回す指が激しくなる。イヤらしい音が耳に届き、自分とは思えないイヤらしい声が脳内で鳴り響く。

『も、もう止められないの!お、おかしくなりそうなほどに身体が昂ぶって・・・!あっ、あぁ!も、もうダメぇっ!んあっ、はぁぁっ!んっ!はぁっ!ダメぇ!もうダメぇ!!あああああぁぁぁ―――――ッ!!!!』

 ベッドの上で跳ねあがると、痙攣した様に下半身が震えだす。

『あ、ああ・・・!こ、これって・・・・・・んっ、あぁ、ああぁっ!』

 驚くほどに広がった愛液。シーツ一面に潮を噴き、まるでおねしょをしたみたいに濡らしてしまっている。気持ちいいほどに達した絶頂。今までの記憶から味わったことのない刺激。そのはしたない光景を見た理恵の手が少しずつ、動いていく。

『はぁはぁ・・・・・・ど、どうして・・・・・・指が、止められないの・・・・・・んあぁ!』

 膣を掻き回す指が止まるどころかさらに激しく動き出す。

「んふぅ。それはね、まだ俺が満足できないからですよ」
『ハァ・・・ハァ・・・あ、あなた・・・!』
「あなたの快感はまだそんなものじゃない。そんな快感じゃ俺を満たせない。一刻も早く私の満足いく絶頂を出して下さいよ。それまで俺はきみに付き合いますよ?」

 俺の精神が次第に理恵の身体を縛っていく。主導権を握り、使い、動かしていく。

『イヤだ!もうムリぃ!また、イっちゃうなんて、怖いよぉぉ!!』
「泣いたってダメダメぇ。その涙も快感に溺れて悦びに濡れるようになりますよ」
『私の身体をぉぉ・・・動かさないでえぇぇ!!あんん!!わ、私・・・・・・まだ欲しい、なんて・・・・・・ぁぁ・・・!』

 イったばかりの理恵の手が胸を直接揉みし抱き、おま〇こに指を掻き乱す。三本に増やした指で膣から愛液を掻きだしながら、乳房と乳首をぐにゅぐにゅに揉みし抱く。

「うふん。自分が、こんなにはしたないなんてぇ・・・・・・はぁんぅ!」
『あああぁぁっ!!ぃゃぁ・・・・・・言わないでぇ・・・』
「自分が自分じゃないみたい・・・。もう一度、あの強烈な快楽を味わいたいと思っている自分がいる。イきたい・・・・・・イかせてぇ・・・・・・あ、んっ・・・ま、またっ!んあ、ああ!くるぅぅぅ!!!ああああ!!す、すごいのぉぉぉ!!!!んああああぁぁぁぁ――――っ!!!!」

 はしたない声を張り上げながら、絶頂に身体を震わせる俺。今まで味わったことのない幸せを感じるような絶頂感に、ご満悦の笑みを浮かべていた。

「はぁーはぁー・・・・・・んあぁぁぁ・・・・・あはぁっ・・・・・・♪」

 身体(理恵)の声は聞こえなくなった。身体の主導権を握ったままの俺はこの身体を自由に使いこなすように理恵の身体からすべての情報を奪っていった。

「ふぅん・・・。私、北河理恵18歳。風紀委員をやっています。身長167㎝。体重52kg。スリーサイズは上から77-57-80のCカップよ。・・・・・・ふふふ、なんでも自分のことのように思い出せるな。これなら俺が彼女に成りすますことも容易だろうな」

 俺はまじまじと自分のモノとなった理恵の顔を眺める。彼女の足、彼女の歩幅で自然と姿見の前まで歩き、じっと理恵の顔を眺めると、次第にそれが実感に変わって口元を釣り上げた。

「えへっ。毛嫌いする男に身体も心も奪われちゃった!でもいまの私、超幸せ!!」

 そう言って俺は鏡に向かってウインクした。鏡に映る理恵は俺を代弁しとても嬉しそうだった。