純粋とは矛盾色

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ: グノーグレイヴ『触手』

 繁殖用媒体触手――触手の中で排卵と射精を行うための部分であり、繁殖を目標にして活動する触手の中でもデリケートな部分である。その部分は普段は触手の奥へ身を潜めているのだが、他の生物に寄生してペニス化することで繁殖を可能とする。

 椎奈の身体に生えている男性さながらの巨根の触手ペニスが、姉の唯奈の表情をひきつらせていた。

「ふあっ・・あああんっ!先っぽが疼いて仕方ないよっ!」

 ドクンドクンと脈打つ触手ペニスが椎奈を突き動かしているようだ。

「お姉ちゃん・・・ンンッ・・切なくて・・・じれったくて・・・たまらないよ!ンアンッ!たすけてよ・・・」
「椎奈!嘘でしょ・・・いったいどうして・・・」
「お姉ちゃんのナカに出したいよ・・・出せばこの疼きが癒えるから」
「いやよ!椎奈ぁ、いやあぁ!」

 声で拒絶しても、唯奈の身体は触手で身動きを封じられただけじゃない、椎奈のペニスを挿入れやすいように、唯奈の身体を動かして股を開かせて迎え入れる態勢を作り出していた。

「お姉ちゃん、いれちゃうね」

 触手ペニスを握りしめて唯奈のおま〇こに宛がう椎奈。ぐっと腰を入れてゆっくりと突き動かすと、触手ペニスは唯奈の膣内にぬるんと侵入していった。

「ふあっ・・ああっ・・・ああっ・・」

 柔らかく締め付ける唯奈の膣内。男性の逸物以上に太くて大きい触手ペニスに唯奈の視界が白く弾ける。

「ふにゃ・・・すっ、すごい・・・なにこれ・・キモチいい・・・あふっ!ふあっ、ああん・・」

 触手ペニスでも自らの快感として刺激を共有する椎奈の声から熱い喘ぎ声が響きだす。男性の動きを真似るように本能的に腰を上下に扱きたてる。柔らかな腰の動きに生えた固い触手ペニスに唯奈の身体がひくひく震え、本物の逸物以上に快感を受けていく。

「んあっ!んんんっ!や・・ダメェ・・しぃな・・・」
「んあんっ!はっ、はぁぁ・・・きっ、気持ちいい・・・いいのっ!おねえちゃん!」

 ビク!ビク!ビクンッ!

「ああっ!やぁっ・・気持ちいいのが、強くなっていく・・・!」

 椎奈の腰の動きが早まるとともに、唯奈の快楽が加速していく。唯奈の膣の動きに触手ペニスの先端から先走り汁が零れているのを感じながら、心地いい痺れが集まっていくのが椎奈も察した。

「あっ!あっ!先っぽ、むずむずしてる・・・ふあっ。なにかくるっ・・・きちゃうっ!で、でちゃううう!!」
「ええっ!だ、ダメよ!しいなぁ!だ、さないで・・中に出さないで!!」
「おねえちゃん!おねえちゃん!ふああっ!むりぃ!でちゃうのおおお!!」
「ふぎゅいいいいいぅぅぅうぅううぅぅ!!!!」

 ――ドビュドビュッ!ドクドクドクッ!ドビュッ!

 椎奈の触手ペニスから吐き出される触手の粘液。唯奈の子宮の奥まで流れ込んでいくのを感じて身体の奥から熱気が走ってくる。

「あああぅっ・・・キモチいいっ・・・キモチいいよぉ・・・ぁぁぁ・・・」
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」
 
 姉妹の荒々しい吐息が部屋に木霊する。嬉々とした妹の表情 と妹と疑似セックスを体験してしまった姉のさめざめとした表情の対比に、二人の関係が破たんしてしまったことが伺える。
 壊れたものは元には戻らないのに、無理やり戻そうと形を変えて修復しようとする触手は、椎奈の身体を使い再び腰を動かし始めた。

「やあああっ!またぁ!動き出して・・・ひゃぅん!」
「ひぅぅっ!し、いな・・・痛い・・・!やめてぇ!」
「ううん・・・ダメなの・・・キモチいいの・・・もっと欲しくて・・・ふあああ・・・!切なくて、また来ちゃうの!お姉ちゃん!」
「いやああ!しいなぁ!また、出さないでええ!」
「イクッ!イっちゃうううぅっ!!!」

 ――ドビュッ!ドビュッ!ドビュドビュ!!
 
 何度となく吐き出される触手ペニスの粘液が唯奈の膣を汚していく。人間と違い、何度吐き出しても体力が尽きることのない触手ペニスに、やがて唯奈の身体も快楽に堕ちていく。

「ああっ・・はっ・・はっ・・・ああっ・・・はああああっ・・・」
「もっと、もっと精液欲しい。椎奈のおち〇ぽで私のおま〇こを抉ってほしいの・・・」
「お姉ちゃん。わかったよ」

 やがて姉妹は身体をぶつけながら身体を交えながら淫らな光景を描いていく。触手ペニスを咥えてフェラをする唯奈が攻めになりながら、シックスナインで供に絶頂を迎えあう。部屋の中に女性の独特のにおいが充満し、汗と液にまみれた二人がさらなる快楽を求めあう。

「はぁぁ・・ねえ、お姉ちゃん。もっと気持ちよくしてくれる人がいるんだけど、私と供に行かない?」
「いいわね。行きましょうか」

 椎奈に犯された唯奈のお腹から精液と供に丸い触手の雛が生まれ落ちた。



 

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 死から生還した凱小路大は、その代償として自分の身体を改造されてしまった。逸物は触手に改造され、不気味でおぞましい生物へと変貌してしまったムスコであるが、その触手は今や住民の一人である柊木椎奈と擬態し、大の上に騎乗しながら喘ぎ声を漏らしていた。大の改造された逸物は触手として生命本能を持ち、自由自在に長さや太さを変えられる。抵抗のあった触手もカラダの一部として取り込んでしまえば使いやすくてたまらない。大自身が性的興奮が高まらなくても、逸物自らが椎奈の膣を堪能するように轟き唸るのだから。

「あ・・あん・・あん・・んぅぁ・・」
「うあ・・!使われることがなかった俺の童貞を、俺のムスコが自分から奪いに来るだなんて夢にも思わなかったぞ」

 もともと大の逸物であり、触手であり、少女である。柊木椎奈に擬態し、柊木椎奈として成りすまし、本物と同じ知識を持ち、記憶を持ち、それ以上の能力を持たない。
 大と同じ、オリジナルじゃない偽物の存在だ。

「きもち、いいれすぅ・・・ご主人様ぁ・・」
「俺も、だ・・ハァ・・だ、出すぞ!」
「はひぃ・・・ああぁ!い、いくぅ!イクイク!いっくぅぅぅぅ!!!」

 大に忠実で、大に従僕する椎奈(触手)は、人間だった椎奈と同じ感度で、人間だった椎奈が味わったことのない中出しの快感に酔い痺れていた。下から逸物が突き上げ、本能的に人間の性行為を真似る偽物たち。しかし、その感度も快感も本物であり、身体の奥から満ち溢れる幸福感に口から涎が零れだしていた。

「はぁぁぁ・・・これ、しゅごい・・・きもちいい・・・」

 椎奈が性行為に興味を持つのは当然であり、 これからさらに身体的にも精神的にも熟していくのを感じられる。大にとって成長が楽しみであり、それまでには自分の好む女性へ変貌させていくことを頭の中で思い描いていくことが大の中での一つの楽しみになっている。
 それこそが、大が少女に託された実験の意図でもあるのだから。

「さて、椎奈だけでは物足りない。更なる獲物を狩りに行くと・・・ん?」

 大が服を着替えている間に椎奈の携帯電話が鳴り響く。着信を受け取った椎奈が内容を見る。

「お姉ちゃんからだ」
「・・・あね?」

 椎奈の姉である、唯奈―ゆな―からだった。

『お姉ちゃんです。今どこにいるの?はやく帰ってきてください。お姉ちゃん、心配してます』

 絵文字が入っている唯奈の文面に大はどこかしら可愛さを覚えていた。

「お姉さんって可愛い?」
「うん、可愛いよ。皆に優しくて、誰からも愛されてるから。私の自慢のお姉ちゃんだよ」

 椎奈の情報から大はさらに興味が湧いた。やはり次の標的を決めるなら、椎奈の身内を狙うべきという結論に達する。

「椎奈」
「はい、ご主人様」
「お前は俺が生み出した存在だ。わかるな」
「はい、私はご主人様から生まれました」
「俺の言うことは絶対だ」
「はい、ご主人様の言うことは絶対です」
「なら、俺の代わりにお前の姉を仲間にして戻ってこい。どんな方法を使っても構わん。今度は姉妹そろって俺のもとへ戻ってこい。わかったな?」

 大は椎奈に命ずる。人間の言葉で命令し、ゆっくりと意味を理解するように頷いた後――。

「かしこまりました、ご主人様」

 椎奈は大と同じ表情で口元を釣り上げた。


 

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「遅くなっちゃった。早く帰らないと」

 柊木椎奈―ひいらぎしいな―が日直当番を済ます頃には日はすっかり落ちてしまっていた。日直登板は常に二人でやっているものだが、椎奈と一緒の登板だった男子生徒が日直の仕事をサボり、椎奈にすべて押し付けて帰ってしまったことが椎奈の帰りを遅くした要因だ。
 一人で帰る通学路。朝とは違う夜の雰囲気が怖く、椎奈は走って家まで帰宅していた。

「きゃっ」

 突然、暗闇から現れる人影。実際は椎奈が曲がり角で男性にぶつかり、跳ねかえって転んでしまったのだ。夜道に現れた人影は椎奈に物々しい恐怖心を与えていた。

「ご、ごめんなさい。急いでいたから」

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 何も言わない男性に椎奈の方から謝り横を通り抜けようとした。しかし、それを男性は遮った。椎奈はびっくりして男性と顔を合わせた。

「見えるけど見えないものってなーんだ?」

 突然のなぞなぞを言われる椎奈。椎奈は子供心に、なぞなぞを考えて答えを発する。

「うーん・・・、愛かな」
「あーおしい。凄く惜しいな。正解は俺のお〇んぽだよ。さあ、とくと垣間見ろ!」
「きゃああああぁぁ!!!」

 刹那、ズボンをさげて逸物を取り出す男性。椎奈が叫び声をあげて驚く。
 なぜならそれは、公共の場であるにも関わらず、男性の逸物を見せられたことへの恐怖ではなく、むしろ男性であるはずの人物の股間に猥褻物という代物がなかったことへの混乱が椎奈に悲鳴を上げさせた。
 露出していることは間違いないのに、男性は逸物を持っていなかった。お父さんと一緒にお風呂に入っている椎奈にとって、逸物がないその人物が何者なのかわからなかった。
 生暖かい風が吹いた。風が帽子を吹き飛ばす。

「ん゛ん゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!?!?!?!」

 次の瞬間、頭上から口を開けた触手が椎奈を頭から丸呑みし、捕食した椎奈を取り込み始めたのだった。



 
 

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 俺はゆっくりと目を開けた。
 目 を 開 け る という動作をするのが久し振りのような気がするのは、俺がただ寝ぼけていたせいなのだろうか。
 それとも作者の長期休載のせいで、ブログが全然進んでいなかったせいなのか。

 体育会系の人間が全然運動をしていなかったせいで身体がなまったというように、
 文科系の人間が全然描いていなかったせいで筆が進まないというように、俺も動いていなかったから身体がなまったという感じに、身体が全く動かなかった。
 と、いうか、本当に動かなかった。
 両手両足を鎖でつながれ、手術台の上に眠らされている状況に気付かないほど、俺の脳は腐るくらい蕩けているらしい。
 眠っているままなら目覚めたくなかった。このまま永久に氷漬けにされて保存状態のまま眠っていれば、『ある意味』幸せだったのかもしれない。

「・・・なに、この状況?」

 うーうー唸っても鉄製の鎖が千切れるはずもない。久し振りに身体に力を込めて振り絞った渾身の一撃もむなしく終わり、ジャラジャラとなる鎖の音が俺を嘲笑っているかのようだった。
 あっという間にスタミナ切れ。息を荒く吐き出す俺のなんとも無様な命乞い。そう、命乞いだ。どうして理科系の俺がまな板の上の鯉のように命を狙われているかのような状況に陥らなければならないのだろうか、喧嘩は男性は愚か女性にだって負ける。口喧嘩でさえ俺は同僚の女性にだって勝てなかった。それでも命を狙われるようなことをした覚えはない。何時如何なる時でも、俺は自分のためだけに権力を欲していただけの人間だ。自分のことで精いっぱいなのに、他人のことに構ってなどいられるか。
 それなのに、どうして俺がこんな目に合わなければならないんだ。

「俺が一体、なにをしたんだああああ!?!?!?」

 大声を叫んだところで、誰かがやって来るわけじゃない。しかし、誰でもいいから俺の存在に気付いてほしかった。
 俺はここに居る。
 助けてくれ。
 状況を教えてくれ。
 俺は目を覚ましたぞ!

「『見えるけど見えないものってなーんだ?』」

 どこからともなく聞こえる明るい声。部屋全体に聞こえる謎の人物の声は、反響して大きな声で俺の耳に入ってきた。

「見えるけど見えないものってなんだ!!!!!!!」
「いきなりでかい声あげるな。うるせえよ」
「(見えるけど見えないものってなんだ)」
「こいつ直接脳内に・・・!」

 見えない人物に身体を寄生されているようで気味が悪い。答えがそのものになっていて答えるべきかどうしようか口ごもってしまう。見えてほしい。とにかく俺を見つけてどこかにいるのなら、俺の前にやってきてほしい。
 見えるけど見えないもの、それは信じている、きみの声!

「やあやあ、起きたみたいだね」

 本当にやってきた。
 誰かが俺を見つけてくれた。
 敵なのか味方なのかわからないけれど、俺を見つけてくれた相手を俺は何といえばいい。
 救ってくれる相手を俺は何と呼べばいい。
 ――――。

「あなたは神様ですか?」
「ちがうよ。宇宙人だよ」
「hahaha。神様、ウィットなジョークがお上手ですね」

 前言撤回。こんな危機的状況におびえる俺に余裕ぶっかます相手に俺は命乞いなどしてやらない。

「そうかな?鎖で身動きの取れない状況で眠らされていたら、普通解剖されると思うでしょ?誘拐されて身代金云々なんて話より、人間の身体を調べさせてもらうための実験材料にされたと考えた方がよほど状況が呑み込めるんじゃない?」
「・・・・・・た、確かにそうだけど」
「それとも、外の景色が分からないからそんなことを言っているのかな?ここはUFOの中でちょうどさっき地球から旅立ったところの宇宙空間と説明すれば、ボクが宇宙人だと認めてくれるかな?」
「・・・・・・・・・」

 宇宙人、いや、少女の話を聞いている限り、冗談が冗談で済まない気がしてくる。
 確かに今の俺には情報が少ない。だが、少女の話を鵜呑みにすればするほど、現実離れも甚だしい。どれが本物でどれがウソで、どの情報を取り込んで、どの情報を捨てればいいのかわからない。
 ああ、本当に前言を撤回しよう。この少女を神様と思い、すべてを信じることは止めにしよう。なぜなら、俺は科学者で科学こそ真理に近づく強力な武器だからだ。

「おまえが宇宙人でもなんでもいい」
「なんでもよくないよー。重要なことなんだよー」
「うるさい。俺のいうことだけを素直に答えろ」
「うんうん。こんな状況になっても強気に責める君に僕は敬意を表すよ」
「よし」

 何でも答えてくれるというのなら好都合。少女に一から質問していくとしよう。

「まず、俺に何をした?」
「ボクから何かしたわけじゃないよ。やったのはきみ自身じゃないか?」
「質問を質問で返すな」
「覚えてないんだね。まあ、覚えてないよねー。一ヶ月近く更新してなかったもんね。うんうん、本当に悪かったと思ってるけど、更新している時間が作れなくて」
「言い訳するな!しかも何の言い訳だよ!」
「ボク思うんだ。1日が27時間あってもいいと思うんだ。そうすれば、3時間も多く眠れるんだよ」
「時間をもっと有効に遣えよ!」
「有効に使ってるから時間がいくらあっても足りないって言ってるんだよ。それとも、きみにとって時間が余り過ぎて24時間も要らないっていうのかな?それならもっと時間を有効に遣えばいいと思うよ?」
「ほっとけよ!」
「パソコンを捨てて、外に出よう!ニートくん!」
「俺は科学者だ!」
「でもボクはパソコンをやっていたい。はい、論破」 
「戻って来るな!おまえこそニートの考えじゃないか!」
「わからないかな、外とパソコンの往復はいわば地球と宇宙の比喩さ。つまり、ボクは宇宙人なのさ」
「規模がでかいわ。わかるか、そんな比喩!」
「でかいかな?」
「でかいわ。なんだよ、宇宙人って。・・・さ、SF―サイエンス・フィクション―かよ」
「だって、きみ、この一ヶ月死んでたんだよ?」
「うん、規模は小さくなったけどよ、まだ現実離れしてるな。だったらここにいる俺はなんだよ?SD―サスペンス・ドラマ―かよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・え?なんだよ、その憐みの表情は?そんな目で俺を見るなよ、さっきまでとは嘘のように静まり返ってるんだけど?・・・これも嘘なんだろ?そういって俺をまたからかってるんだろ?ほらっ、そうなんだろ?笑えよ。・・・な?」
「・・・きみは、死んでいたんだ」
「ウソだああああああああああああああああああああ!!!!」

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 俺の頭は少女の言葉を聞いてはいなかった。流れてくる会話の音を右から左へ通しているだけだ。それでも、無意識に受け取ってしまう言葉の意味に、俺は自分が何者であったのかを思い出していた。

 凱小路大―がいこうじだい―は、とある薬品を扱っている最中、事故に巻き込まれて死亡したらしい。それは無残なまでのバラバラ死体だったらしく、肉片の塊、頭脳の味噌、脊髄の粉砕、文字通り、完膚なきまで粉々になっていたらしい。

「あの現状を目の当たりにしてきみが生きていると思った人はまずいない。それくらいにきみは美しく死亡していたんだよ。プレスで潰れるより、火葬で焼かれるより、薬品の事故って本当に恐ろしいねwww」
「笑うなよ・・・」

 そこで笑っちゃダメだろ?不謹慎じゃないか。さてはお前、人間じゃないな、宇宙人じゃないのか?
 口が動かせないので心で喋っていた。

「きみは今こう思ったに違いない」

 俺の心を読んだのか、少女とテレパシーを通じて会話をするだなんて、ここはSFの世界だったんだとよくわかった。

「――じゃあなんで俺は生きてるんだと」
「・・・・・・」

 まあ、間違いじゃないしな。それもいずれ俺の口から出る言葉だっただろうな。やっぱりこの世界は現実だ。テレパシーなど存在しない、ノンフィクションの世界だ。

「それはね、ボクの能力のおかげなんだよ」
「・・・・・・」

 ああ、もうなんでもいいや。能力系か・・・。ライトノベルもびっくりの、中二病―おはなばたけ―の世界だったんだ・・・。

「きみの存在を再構築して生み出した偽物。でも、きみという存在は凱小路大とまったく同じに出来ている。それ以上でもそれ以下でもないし、思想行動原理も本物とまったく同じだ。ここまで完成度が高ければ本物と名乗っても問題ない。むしろ、もう本物はこの世にいないのだから、きみが本物を名乗ってしまっても問題ないと思うんだけど、どうだろう?」

 つまり、なんだ。この状況は――最終確認なのだろうか。
 凱小路大のオリジナルは既に死亡しており、少女がオリジナルを真似て本物そっくりに作りだした。それが俺だ。
 この鎖が外れれば、俺はオリジナルの空いた席に座ることができる。本物そっくりに生み出したのなら、それは偽物でも本物と変わらない。区別は偽物と本物でしかなく、他人にとって曖昧でしかない。ならば、別に俺が本物を名乗ったところで、違和感は薄れていくに違いない。本人の残した功績を観測できるのが『凱小路大』であることに変わりはないのだから。

「つまり、俺が宇宙人そのものだったのか・・・」
「そう、きみもボクと同じ宇宙人なんだよ」

 そういって少女はゲラゲラと嗤った。俺を生み出した少女の表情が崩れ、中から異星人の姿が見え隠れする。
 俺も少女のことを笑えない。
 俺が笑えるのは、俺のことを貶していた同僚の『人間』たちだ。
 
「――じゃあ実験を始めよう」 

 鎖を外すと同時に少女がそう漏らした。実験という言葉に科学者として反応してしまう。

「実験だと?」
「ボクがただ無作為に蘇らす人物を選んだと思ってるの?毎日人がどれだけ死ぬと思ってるの?全員に同じ気持ちで弔うと思ってるの?」
「・・・残酷なこと言うな」
「その中できみを選んだのは、きみが扱った研究にボクの会社の薬品を使っていたことが原因だからなんだよ。きみの死因関係にうちの会社が関わっているなんて思われたくもないからね。こんなことでまさかきみと縁を持つだなんて夢にも思わなかったくらい、ボクにとってもいい迷惑なんだよ」
「なんか・・・ごめん」
「だからね、きみは簡単に死んでもらっちゃ困るんだよ。もっと苦労して苦痛と苦汁を味わいながら生涯を全うしてもらいたいんだよ」
「・・・もう、その発言で死にそうなんだけど」
「きみはまだ社会人になってなかったっけ?豆腐メンタルなのかな?新社会人よりも甘い杏仁豆腐みたいな精神でこれからやっていけるのかな?」
「俺が悪いんじゃない、社会が悪いんだ・・・」
「言い訳するな!」
「ひぃ、ごめんなさい!」

 少女に叱咤される俺っていったい・・・。
 っていうか、俺が蘇ったのは俺のためじゃなく、少女の勤める会社のためなのかよ。それだけ俺の存在意義って弱くちっぽけなものだったんだ。死んでも蘇らせてくれるだなんてアフターケア万全だな、ハハハ・・・。

「だからね、きみにはちょっとした、ボクからのお願いを聞いてほしいんだ」
「・・・お願い?」

 急に子供っぽく笑い、少女の愛くるしさを全開に引き出す。

「きみを蘇らせたのは確かに会社の意向なんだけど、ここから先はボクの今後の活動として、きみに一役買ってほしいんだ。もちろん、それ相応の報酬を用意してある」
「報酬・・・?」
「うん、報酬。苦労したらそれ相応の対価を払うものだよ」

 少女が俺に労働に支払われる報酬をくれるようだ。まるでバイト感覚なんだが、俺で大丈夫だろうか。
 寝耳に水とはまさにこのことだ。事態は急展開で、予測不可能な状況についていける自信はない。

「ちょ、ちょっと待ってよ。考える時間くらいあってもいいよな――?」
「あーっていうか・・・」

 少女が被せるように俺の言葉を遮った。

「実際、それだけの改造は完了しちゃってるんだよね!」

 少女の嬉々とした言葉が俺を逆に冷めさせる。
 改造・・・その不穏な響きに寒気を覚える。

 ニュルニュル――

 この時、俺の股間あたりに覚えた何とも言えない不吉な滑り音が聞こえる。視線をゆっくり落としてなにがあったのかを確認する。
 そう、ゆっくりだ。普段は時間に追われる毎日だった俺がこの時ばかりゆっくりと行動したのは、俺自身が自らの身体に起こった異変に対する恐怖からきたものだったと自覚していた。
 俺は知っていたんだ。俺は勝手に改造されたのだ。
 信じたくない、認めたくない。
 俺の身体から、まさか・・・
 いや、言うな。見るな。貶すな。嗤うな。晒すな。曝すな!
 宇宙人の、異星人としての・・・

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「うわあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 侵略が始まっていたのだから。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 見えるけど見えないものってなんだ?

 少女が俺に発した第一声を思い出していた。
 鎖を外されて、外に出歩く俺はもう、俺個人の身体ではなくなっていた。
 この身は既に少女のモノであり、少女に改造された従僕そのもの。
 俺の身体に備え付けられた触手は俺を襲うことはないらしく、俺が自由自在に動かすことが出来るらしい。生き物であり、化け物である触手を見るには、『目薬』をつければ誰でも見ることが出来るらしい。でも、逆にいえば誰も視ることが出来ないらしい。
 それはそうだ、こんな非現実的なものが備わっているだなんて誰が信じようか。当事者じゃなければ俺だって信じたくない。
 ――俺が化け物だなんて・・・

 「俺はなんだ・・・なんなんだよ・・・」

 泣きたくても涙が出なかった。
 日常が壊れてしまったからか、精神が壊れてしまったからか、身体が壊れてしまったからか、現実が壊れてしまったからか。
 おかしくて、可笑しくて、犯しくて、侵しくて、をかしくて・・・

「ハハハ・・・アハハハハ・・・!!あーーーハッハッハッハ!!!」 

 俺は笑った。 心の底から笑った。
 俺のためじゃなく誰かのために使われる存在というだけで、俺の存在を全否定されているのだから、心など持つ必要がない。
 言われたことをこなす、忠誠を誓う従僕こそ理想であり、『人間』を調べ上げる任務を忠実にこなす機械―鋼のメンタル―を築きあげる。


 さあ、始めようか。俺を貶した相手に対する、復讐の物語を。


 後ろを振り返るな、前を向いて目的をもって進もう。
 そうしないと・・・

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 大惨事が待っているぞ。 

「い、いやああああ!!!」

 外に散歩に出ていたはずの私が、どうしてこんな場所に来たのかも覚えていない。
 そもそもここは何処?異世界?壁が蠢き何かが動いているようすは、化け物のお腹の中にいる様で温かく、湿って、気持ちが悪かった。

「た、たすけて――ぐがあ!!?」

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 逃げようとした瞬間、私の腕を放さないようにとぐろを巻いた枝。それは腸のように太くて、ナメクジのようにじめっとしていて、出来ることなら今すぐにでも振り落としたいくらいの気持ち悪さなのに、決して私の腕を話そうとしない。そして気付けばもう片方の腕にも枝が巻き付き、私は身動きが取れなくなっていた。
 目を疑いたくなる現実だった。

「なに、これ?本当に分からないよ!!誰か助けて!!誰かいないのお!!?」

 恐怖だけが私を狂わせ、正常な思考が完全にストップしていた。
 必死に助かりたい一心で叫ぶ私を見て、笑い声が聞こえてきた。

「だ、誰かいるの!!?たすけてぇ!!ここから出して――!!」
「誰も来ないよ。ここは俺が作り出した空間なんだから」

 私に喋りかけてきたのは、まだ小学生にも見える少年だった。でも、そう曖昧な編じなのは、少年の雰囲気は可愛い小学生とはかけ離れたもので、そして、何より、少年の目には怪しい光が見え隠れしていたからだ。
 少年の登場、それは私にとってなんの助けにもなっていなかった。むしろ恐怖をさらに募らせただけだった。

「ほらっ、みてよこいつら。こんなに可愛くなついてくるんだ。『触手』って聞いたことないかな?そういう種なんだ」
「しょくしゅ……職種?色種?」
「ぷっ!アハハハハ!!姉さん、面白いね。それとも、本当に知らないのかな?」

 少年の笑い、私を馬鹿にしているのだけは分かるけど、実際知らないのだから許してほしい。しょくしゅって何よ?そんなの見たことも聞いたこともあるわけないでしょう。

「色種か……うん、あながち間違ってないよ。だって姉さんを選んだのは僕じゃない。この子たちなんだから」
「えっ?」
「僕はこの子たちと関係を結んでいる。僕が操り、この子たちが犯す。それが楽しくて仕方がない。だからお姉さんには犠牲になってもらうよ」
「ちょっと、なにをするの!!?きゃああああああああ!!!」
「――いけえ、触手たち。お姉さんをたらふく召し上がれえええ!!!」
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