純粋とは矛盾色

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『憑依・乗っ取り』 > 飲み薬『りょうり部』

 莉子がいない部室。
 それはそうだ。俺は今日、莉子を置いて朝早くに学校に訪れたのだ。朝の弱い俺がまさか莉子よりも早く学校行っていることを知ったら、莉子の奴はきっと慌てふためくだろう。

「いったいどうしちゃったの?孝四郎くん?頭になにか悪いものでもできちゃった?」

 とか、言ってきそうだ。そう言ったのなら俺は迷わず、莉子のつくる飯の中に頭に悪いモノが入っていたに違いないと返すだろう。
 
 違うって。
 莉子には悪いけど、俺は朝早く起きて美凪の作る朝食を交わす約束をしていたのだ。

「じゃあ、今から美味しい朝食を作ります」
「おう」
「腕によりをかけて作っちゃいます」
「軽くで良いぞ」

 今のやる気に満ち溢れている美凪に釘を打っておかないと、朝からビーフシチューやら、おせち料理やらを作りそうな気がした。
 朝なんだから簡単に食べられるモノにしてほしいものだ。

「…………残念」

 シュンとしていた。言わなければ、美凪はなにを作ろうとしていたのだろうか。

「それじゃあ、準備しますね」
「おう」

 美凪がゴソゴソと準備に取りかかっていた。
 場所は例の仮眠室。
 朝早くの部活など開いたことのない料理部(仮)。宿直の先生がいるのだろうと思っていたのだが、そこに先生の姿はどこにもなかった。
 先生がサボっているのである。いつか校長先生に告げ口してやろう。

「まぁ、そのおかげでこうして俺たちが朝から部活に励めるんだけどな」

 朝からの新鮮な空気での部活動だ。日差しも入りとても気持ちが良い日である。
 こんないい日に美凪の作るて料理が食えるなんて、最高の一日を予感させてくれる日であった。

「で、いったい何を食べさせてくれるんだろう、美凪は?」

 ちゃぶ台で座っていた俺に美凪が顔を出した。美凪がエプロンをつけて戻ってきたのである。

      
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 ……エプロン以外は何も身に付けていなかった。

「ブーーーー!!!!」

 後ろに倒れ込む俺。「お待たせしました」と、美凪は普段と変わらない声で言った。

「あの……これは、いったい……」
「……。裸エプロン、好き?」

 恥ずかしそうに小声で言う美凪。実際恥ずかしい格好をしているんだから仕方がない。こんなところ、誰かに見られたらどうするんだろうか。

「……。好きだよ」

 ウソも付けない俺も俺だ。

「じゃあ、この格好で料理を作りますから」
「マジか?」

 一回頷いて美凪は料理を作り始めた。
 手際良く材料を包丁で切る音が響き、火にかけて野菜を炒める音が聞こえ始める。
 そんな小気味良い音を聞きながら、後ろから美凪の裸エプロンを見つめる俺。背中は丸見えであり、後ろで蝶々結びで縛ったエプロンの紐が可愛らしい。美凪が横に移動するときに脇から見える乳房の膨らみが、朝から俺のムスコを悶々とさせる。
 と、いうより、朝から美凪の料理をちゃぶ台前で待っているのだ。その姿はまるで新婚したての妻の料理を待つ夫そのものというシチュエーションであった。

「ムフフ……」

 いかん、ヘンな声をあげてしまった。美凪にも聞こえてしまったみたいで、俺の方を振り向いていた。

      
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「孝四郎さん……」

 甘えた声で非難する美凪。お尻を突き出しているせいか、先程まで見えなかった美凪のおま〇こまで俺にはバッチリ見ることが出来た。
 い、イカン……!まったくもってケシカラン――!
 飯を食うと言うはずだったのに、今の俺はもう我慢の限界だ。
 「待て」と言っても聞かないぞ、美凪。俺は忠犬ではなく、狼だ!
 お腹が空いた俺だけど、食欲よりも性欲を満たしてくれ!

「美凪――!」

 わるいな、美凪。
 俺が食べたいのは、美凪の作る手料理ではなく、美凪そのものだ――。


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 美凪を犯した行人は気絶した。孝四郎は意識を失った行人を遮り美凪に近づいた。

「美凪!」

 起き上がることのできないほどの体力を使っていた美凪が、孝四郎の声に気付いて顔を上げた。

「孝四郎さん……っ!来ないでください!!」

 美凪が孝四郎を拒絶する。

「なんで、こんなことになっているのかわからないけど……おねがいします、孝四郎さん……こないで、ください……」

 自分の身を震わせながら、寒気のする身体、真っ青になる表情に美凪は例えいまここに訪ねたのが莉子であったとしても拒絶を示すであろう。
 それほど、美凪に与えた影響は大きかった。

「こんな……汚れたカラダ……さわらないで……わたし…、わたし……!」

 失敗だった、と孝四郎は思った。
 本当は隙を窺って美凪の身体から抜け出そうとして、行人を殴り飛ばす算段だった。
 しかし、孝四郎は美凪の身体から抜け出るのが遅れた。美凪の身体で、自分の欲求に逆らえずに逸物に貫かれる快感を味わいたかったと思ってしまったから。
 中に出すつもりもなかった。ましてや、美凪の身体から弾き飛ばされるほどの快感が襲ってくるとは夢にも思ってなかった。
 おかげで美凪本人が意識を起こしてしまい、現場を目撃してしまった。挙句の果てに絶頂の瞬間を味あわせてしまった。
 座りこむ美凪の秘部から、行人の精液がドロドロと零れ続ける。
 穢されてしまった身体に耐えられず、美凪は孝四郎の前で泣いてしまっていた。

(……俺が……泣かせた……)

      
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 ひどい罪悪感。
 美凪が守ってきた貞操を奪ってしまった。憑依できる『飲み薬』は麻薬だ。
 美凪が大切なモノを失ったと同時に、俺もまた大切なモノを失ったのだ。
 行人も自分のために快感を味わっていたが、一番、快感に飲み込まれてしまっていたのは……孝四郎本人だった。
 美凪のため、――――それは自分のため。
 その結果の代償が美凪の涙であるとわかっていたのにも関わらず。

「俺は……馬鹿だ…」
「ぅぐ……えっぐ……」
「こうやって、実際見てみないと分からないんだ。本人が傷付くかどうか……。本当は、美凪なら少しぐらい耐えれるんじゃないかとか、大目に見てくれるとか考えて、自分の都合のいいように考えちまうんだ。……でも実際、美凪は泣いている。泣かせたことをこの目で見て、ようやく気付くんだ」
「ぅ……ぅぁぁっ……ぐすっ」
「考えが足りないよな……浅はかだよな、俺って……。ぜんぶ、うまくいくことを考えて、間違えたらどうしようとかは考えなくて……、いま、美凪にどう接していいのか分かんねえよ……」
「ぅぅ………」
「ごめん……本当にごめんな……美凪っ!おれっ――!」

 泣いている美凪の顔を隠すように、孝四郎は美凪を抱いた。誰にも美凪の顔を見せないように、身体についた穢れを誰の目にも触れさせないようにいた。
 美凪が抱き返してくることはない。孝四郎がつくった罪を許してほしいと、孝四郎自身も思わない。しかし、少しでも美凪に対して償いが出来ればそれでいいと、美凪に対して出来るだけ優しく抱いてあげた。
 髪の毛から香るにおいも、制服についたシミも、すべてを多い包むように孝四郎は被さった。

「…………こうしろうさん」
「……えっ?」
「誰のために……?……わたしのために……泣いてくれているんですか?」

 美凪の顔が目の前にあった。瞳に涙を浮かべた美凪の目が、孝四郎を確かに見つめていた。

「ああ。あたりまえじゃないか」

 孝四郎は力強くうなずいた。

「美凪の泣き顔を見たくはないから。美凪の失ったモノを、俺も供に取り返そう。美凪が悲しんで立ち止まってしまったなら、一緒に立ち止まって傍にいるよ」

 美凪と同じように泣き顔を見せる孝四郎。二人同じ表情で、互いを想い求めていた。
 孝四郎の想いを知り、美凪の中には悲しみ以外の別の感情が込み上げてきた。涙がさらに溢れて零れ、美凪の表情が赤く染まっていた。


「大好きです……孝四郎さん……」


 美凪がポツリとつぶやく。美凪本人から聞く本心。今まで堰き止めていた感情をぶち壊して、美凪の溢れた思いが零れ出した。

「こんな、穢れた私ですが……孝四郎さんは、私を許してくれますか?」

 謙虚な告白。美凪は孝四郎の罪ですら取りこんで汚れキャラになることを受け入れた。
 しかし、それができるのは孝四郎の後ろ盾を信じているからだ。孝四郎が美凪の傍にいてくれるという安心感を、美凪が信じて告白してきてくれたのだ。
 本当はすごく怖いと言うことは、孝四郎が誰よりも知っている。告白とは、そういうものだから。
 今度は孝四郎の番だ。
 目に見えない不安を吹き飛ばすために、美凪の想いに応えよう――


「愛してる、美凪」


 言葉で分かりあえるだけの眼差しで見つめ、美凪に対する迷いもない――
 孝四郎はあやまちを超えて、美凪に本当の優しさを気付かされた。
 『愛』と呼べる強さだ。
 震えながら口づけを重ねる孝四郎と美凪。
 募る想いが愛しく、唇から伝わる温かさに孝四郎の鼓動が高鳴った。




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 顔にかかった精液を綺麗に拭きとる。見た目だけでも普段通りに戻した孝四郎は、あとは残すところ一つになった。

「……孝四郎さん。……美凪とセックスしてください」

 美凪の身体は熱く煮え滾り、おま〇こは既に大洪水状態だった。
 美凪とのセックスをするため、もう一度逸物を奮い立たせる。あれほど精液を出したはずなのに、孝四郎の逸物は美凪に扱かれるとすぐに勃起して硬さを取り戻していた。
 孝四郎に抱きついた美凪は、自分のおま〇こを広げて孝四郎の逸物を飲み込もうと腰をゆっくり降ろしていった。
 孝四郎は美凪と繋がるため、美凪に憑依していまセックスしようとしている。カメラも回っているので、その様子はばっちり録画されるはず。
 しかし、いま美凪と繋がるだけになったにも関わらず、孝四郎にはぽっかりと穴が開いた気持ちがあった。

(……なんだろう、この虚無感は……?)

 美凪の身体は熱くなって興奮しているのに、セックスすれば今でもできる状態なのに、孝四郎はあと一歩を踏み出せずにいた。心に残る空虚感。美凪に憑依した自分への後ろめたさで、罪悪感に苛まれ、はたしてこのまま美凪とセックスして良いのかを考えてしまった。

(いや、ここまできてなにを考えているんだ!今まで散々美凪の身体を堪能させてもらっただろう!?)

 フェラチオまでしておいて、カメラに録画しておいて、今更ここにきて美凪の処女を奪うことに躊躇いを覚えている。
 こうしている内にもカメラの前で抱きついたまま固まっている美凪が録画されている。引き戻すことなんかできない――!

(ゴメン!美凪――!)

 ――孝四郎は美凪に謝り――――セックスを中断した。

「…………やっぱ、違うよな?」

 美凪のためを想って、一歩勇気を踏み出してほしくて美凪に憑依して、セックスするために録画して、準備まで仕込んでいたにも関わらず、その行動全てが自分の為だと孝四郎は気付いた。
 美凪の身体を好き放題したくてたまらなかった。美凪になって自分とセックスしたかった。美凪の気持ちなど関係なく、美凪の処女を奪いたかった。
 全部、孝四郎自身の勝手なわがままだった――。

「俺、美凪の大事なモノを奪うところだった。……気付けて、よかった」

 間一髪、危ないところだった。
 美凪の処女を奪えるのは、美凪の気持ちを、美凪自身に聞いてからじゃないと出来ない。何故なら、それは美凪自身が決めることだからだ。
 美凪が孝四郎を好きだとしても、愛していたとしても、美凪が決めなければ心がなくなってしまうから。

 ――相手のことを考えること。

 孝四郎もまた、美凪のことを思い詰めて、なくしていたものが確かにあった。
 好きだからなにをしても良いということは絶対にない。
 時に暴走してしまう心を抑える力も必要だと、孝四郎は危なく戻ってこれたのだ。

「よいしょ……ここまでだな」

 孝四郎から放れた美凪は身なりを整えると、孝四郎の逸物をしまった。勃起したままズボンに戻されていくムスコには悪いことをしたと思いながらも、無理矢理ズボンの中にいれてファスナーをあげて元通りにさせた。

「この身体も返してくるかな」

 孝四郎の身体を残したまま美凪は教室を後にする。
 自分の身体から放れた場所で美凪を解放することにした孝四郎。少しでもリスクを減らそうとした結果だ。
 扉を開けて廊下を出る。
 すると――、

「よぉ、遠野!」

 扉の前で、孝四郎の知らない男性が立っていたのである。
 目を丸くして驚く美凪。美凪の記憶から目の前に立つ男性が、同じクラスメイトの氷河行人―ひょうがいくと―だと知った。

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「行人くん……どうしてここに?」

 行人は美凪を掴んで隣の資料室へと入り込む。行人はそこに用があったのだが、一学年上の教室でクラスメイトの美凪が先輩と卑猥な行動をしているのを扉の隙間から見ていたのだ。

「知らなかったぜ?おまえがそんなに盛ってるとはな」

 ニヤニヤと、強気な態度で美凪を見つめる行人。頭から足のつま先まで視線を移し、舌舐めづる行人は既に狂気を隠すことはしなかった。

「キャッ!」

 腕を取られて壁際に追い込まれる。その気迫に美凪は思わず悲鳴をあげた。抑揚もない、咄嗟の一言だった。

「黙れよ。誰かに見つかったらヤバいんだろ?」
「行人くん……まさか?」

 美凪に対して行人目を細める。

「このことは黙っといてやるから、俺にもお裾分けしてくれよ?」


 表情を緩ませるも力はぐっと強まっている。否定的な答えを出しても逃がさないと言う意志の表れが自然と零れていた。

(どうしよう、美凪の身体をこんな男に奪われるわけにもいかないし、かといって逃げ場もない……)

 孝四郎は答えるわずかな時間の中で、最適な方法を模索する。
 そして、頭に閃いた一つの案を閃いた。

「わかりました……」
「聞きわけが良いじゃないか」

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 力を緩めたと同時に美凪は行人の腕を振り払った。ニンマリとしている行人に対して、美凪はある条件をつきつけた。


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 美凪に憑依した孝四郎は、カメラの前で自分の身体の前に膝をついた。
 椅子に座って眠っている孝四郎の股ぐらに美凪の身体を入れ、ベルトを緩めてチャックを緩めて逸物を取り出す。
 小さな手で自分の下腹部を弄っている。もぞもぞとズボンの中で動いている様子が妙に卑しかった。

「簡単、簡単」

 座っている孝四郎のズボンから逸物を取り出すのは難しいかと思っていたが、美凪の手ならスルリとズボンとお腹の間に手を差し入れて、逸物を取り出す隙間も十分にあった。
 取り出された逸物は外気にさらされた途端に勃起していた。美凪の手で触られたことで意識が無くても反応したようだった。

「うわぁ。自分のチ〇ポを誰かの目線で見られるとスゴイかも……俺のって、大きいかも……」

 自分の逸物を持て思わず本音が出てしまう。せっかくビデオ撮影しているのに台本の無い台詞を喋ってもらうと困るものだ。アドリブはなしでやってもらいたいと、孝四郎は自分が監督だった時ならそう呟くだろうと思った。

(まぁいいか。後で編集すればいいことだし)

 孝四郎は自分の逸物を弄りはじめる。オナニーの時になれた手つきで扱きながら、普段とは違う方向から攻めてみようと逆手でも扱いてみる。親指と人差し指の間の水かき部に逸物の皮の部分が当たってきて生温かい。
 加えて美凪の手で扱いているので、その小さな手では逸物は片手で収まるのがやっとの大きさだ。両手で挟みこんで扱いて見ると、眠っている孝四郎の身体がピクンっと反応した。

「んっ……気持ち良いですか、孝四郎さん?」

 返答がないと分かっていながら、美凪が孝四郎に問いかけるように言って聞かせる。
 
「……。わかりますよ、孝四郎さんの返事がなくたって。孝四郎さんのオチ〇チ〇を見て気持ち良くなっているのが」

 嬉しそうにさらに美凪の手絵扱くペースをあげる。大きな孝四郎の逸物が美凪の手の中でさらに大きく勃起していく。硬く、長く伸ばす様に、竿から一気に扱くと、亀頭部分が赤く腫れているように盛りあがってきた。

「はぁ……。孝四郎さんのおち〇ち〇、とっても素敵です。硬くて、ビクビクしていて、美味しそうです」

 美凪の声でそう言われると褒められている気がして、孝四郎はさらに興奮してきた。顔を近づけ、逸物のにおいを嗅いで、口をゆっくり開いて逸物を咥えようとしたところで、美凪の身体がピクンと止まった。

「あれ……?これじゃあカメラに映らない……?」

 カメラを挟んで孝四郎を愛撫しているわけだから、当然いま美凪の身体はカメラに対して背を向けていることになる。
 美凪はカメラを移動させ、自分の顔がカメラに映るように孝四郎の横に持ってきた。

      
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 画面を見ながら美凪の顔が映る様にする。バッチリである。

「孝四郎さんのおち〇ち〇……可愛い……。今から私が口でしてあげますね」

 美凪がレンズを見ながらフェラチオをすすめる。逸物を両手でつかんで亀頭部分を美凪の唇にまで持っていく。
 硬く、勃起した逸物からは独特のにおいを発している。しかし、美凪はその匂いにうっとりとした瞳をし、唇を亀頭に近づけていく。
 おいしいものを最後に残していた子供が、ゆっくりと唇に運ぶかのように、美凪の唇がゆっくりと亀頭に触れた。

「チュッ」

 ぷるんと触れた柔らかい美凪の唇と、温かい吐息をかけられ、亀頭が揺れて歓喜するように震えていた。


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 夕方、美凪に言われて私は二年B組の教室を訪ねた。時刻は遅く、もう夕日が教室に差しこんでいる。
 誰もいない教室で、美凪だけが残って私を待っていた。

「先輩……」

 既に悲しそうな顔をしている美凪。きっと昨日のことを悔いて謝るつもりなんだろう。
 先輩として、美凪に明るく振る舞い、謝りやすい空気を作っていく。
 謝ることは誰にでもある。謝る勇気は許す勇気よりもきっと多く必要だと思う。私は謝ることのできる環境を整えてやることが、なによりの優しさではないかと思うんだ。

「んに?どしたの、美凪?」

 私の声に美凪が目を丸くして、小さく笑ったように見えた。

「なんですか、今の?」

 そんなに変な声だったのかな?美凪が見る私の視線が赤く染まっているように見えた。
 夕日のせいだよね、きっと……。

「私に用があるんでしょう?なにかな?」
「…………莉子先輩」

 心が落ち着いたように美凪が静かに喋り出す。

「昨日は、本当にごめんなさい」

 頭を下げて深々とお辞儀をする。45度ぴったりの綺麗なお辞儀だった。

「昨日って、私を突き飛ばしたこと?」
「うん……。わたし、先輩に対してヒドイことしてしまって……どんな顔して会えば良いのか分からなくて……悩んで…………キライに、なってほしくないから……」

 震える声で今にも泣きそうに喋る美凪。顔を伏せて段々と声が小さくなるのを堪えて、必死に伝えようとしているのがわかった。

「もう!そんなことで悩んでたの?ちっちゃいなぁ、美凪!」
「……」
「怪我もないし、私もそれほどか弱くないよ!美凪に突き飛ばされただけで美凪を嫌いになるわけないから、心配しないでよ!私にとって美凪は大事な後輩だし、大切な料理の先生だからね!」
「先輩……」

 私の言葉を聞いて美凪が表情をほころばせた。美凪は謝った。私は許した。その関係が美凪にも伝わったのだと思う。
 許すことができれば、傷つく心もきっと癒すことが出来るよ。

「先輩に、渡したいものがあります」
「え~!なにかななにかな!?」

 美凪が私に贈り物があるらしく、ポケットからある券をくれた。

「なにこれ……?おこめ券!?」
「……おめこ券」

 …………なにそれ?
 私は難しい言葉は分からない。

「先輩だけ特別です。その券を使うと一回だけ私はなんでも言う事を聞いちゃいます」
「んに?そうなの?」
「はい。……なんでも、です」

 顔を赤くして言う美凪。どうしてそこを二回言ったのだろう?
 パンパンと、美凪はスカートを叩いて誇りを落とした。そして、なにを思ったのか、制服のボタンを外してリボンを解いて見せた。

「先輩になら、あげてもいいかな?」
「ナニを!?」

 美凪のブラジャーが見えているよ。白なのに模様が入っている可愛いブラジャーだ。私に見せているってことは、きっとそういうことなんだね!
 ご期待に応えられるか分からないけど、美凪のおめこ券をもらっちゃった!なんでも一回言う事を聞いてくれるのなら、私にだって考えがある。
 美凪は女性らしさを持ち合わせ、加えて料理もうまい。
 お嫁さんにするなら絶対に私より美凪を選ぶ人が多いと思う。
 だから――、

「うん、わかった!じゃあ今度、孝四郎くんとのデートの時に、美凪が私をコーディネートしてよ!」

 ――そしたら、きっと美凪が私を女性らしくしてくれるはず。私だってもう少し着飾りたい。大人の下着が置いてあるランジェリーショップに行きたい年頃だもの。
 私に似合う艶っぽいショーツあればいいなぁ。

「……あれ、それでいいの?」

 美凪が予想を外していたことに驚いていた。
 いったいなにを予想していたのだろう。そんな私を見て悲しそうな顔をしないでほしい。
 おかしいな?昨日の一件はもう許したのに……。

「早く服着て。今日の料理を教えてよ」
「……うん。そうだね」

 美凪が残念そうにしながらも胸を仕舞おうとした。

「今日の料理は――――うぅっ!」

 突然、美凪から小さな悲鳴が聞こえた。

「美凪?」
「んぅぅ……ぃゃぁ。はいってこないでぇ……」

 突然、身体を抱きかかえた。力が抜けたように膝を曲げて床に倒れる美凪が、顔を青ざめながら苦悶の表情を浮かべていた。

「み…ないで……せんぱい……!」
「みなぎ!どうしたの、美凪!?」

 苦しく息を吐く様子を見られたくないと、両手で顔を隠す美凪。
 急な美凪の様子の変化に慌ててふためいてしまう。いったいなにが起こったのか分からない私は、美凪を保健室に連れて行こうとするも、美凪の身体が動く気配がなかった。
 誰かを呼ぼうにも教室には誰もいない。美凪が苦しそうに身体を震わせているのを黙って見ているしかなかった。

「このまま、美凪に何かあったらどうしよう――?」

 そんなことを考えていると――美凪の加えていた力が一気に緩まったのを感じた。震えは一瞬で収まり、美凪を取り巻いていた緊張感が和らいでいった。

      
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 美凪が顔をあげる。
 先程までの苦痛の表情が一転して、不敵な笑みを浮かべていた。
 口元を釣り上げて笑っているみたいだった。
 私は、美凪になにがあったのか聞くために顔を覗きこんでいた。

「美凪……?大丈夫?」

 美凪に声をかけると、美凪は何も言わずに立ちあがって自分の身体を触り始めた。怪我がないのかを見ているのだろうか、それにしても前を開けている格好なので、美凪が顔を下に向けると自分のブラジャーが目に入っていた。

「えへへ……」

 だらしなく笑う美凪。口元が緩んで涎でも垂れてきそうだ。なんだか急に美凪が怖くなって、私は声を張り上げてしまった。

「美凪!?」
「――っ!莉子!?……せんぱい」

 急に我に返って私を見た美凪は、咄嗟に私を呼び捨てで呼んでしまい、少し間をおいて『先輩』と付けていた。美凪は私を呼び捨てで呼ばない。そんな間違えするはずがない――!

「どうしたの、美凪?大丈夫なの?」
「先輩……。大丈夫です」

 しかし、見た目も口調も美凪本来のものに戻っていく。
 変に意識してしたのか、私の気のせいだったと思いなおして美凪に笑顔を振りまいた。

「保健室行く?それとも、部室いく?」

 これから一緒に向かう場所を問いかける。美凪は何かに気付いたような表情を浮かべると――。 

「ごめんなさい、莉子先輩!ちょっと急用思い出したから!」
「えっ?」

 ――私を教室に残して全力で駆け足で出て行ってしまった。私は呆気に取られて廊下に出るのを遅れてしまった。その時にはもう美凪の姿は廊下のどこにもなかった。
 でも、どこからか美凪の嬉しそうな笑い声が廊下に響いて聞こえてきていた。



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※この物語は、GG『飲み薬―りょうり部―』の続編となっております。話が前後する場面がありますので、こちらを先にご覧ください。



 うーむ……。あれからなにも進展がない……。

 孝四郎は期待に胸膨らませて早一ヶ月を過ぎようとしていた。
 神原莉子―かんばるりこ―と遠野美凪―とおのみなぎ―の天然コンビは今日も一緒に料理を作っている。
 そんな二人の様子を円卓テーブルで見つめている俺。

「今日はオムライスを作ります」
「楽勝だよ!」
「……あれ?そう?」
「うん!だって、炒めたキチンライスにケチャップをドバーってかけて、玉子焼きを乗せて完成でしょう?」
「うん。正解」

 実に莉子の調理しやすい料理を選んだというわけだ。
 先輩を立てる、実に美凪らしいチョイスであった。

「でも……、言うは容易く、行うは難し」
「おおぅ」
「何故思わせぶりな口調になってる?」

 美凪が一つ溜め息をついた。

「莉子先輩……玉子焼き作れていませんから」
「はぁ~!?」

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 玉子焼きなんか、卵を溶いてじっくり焼いて表面を固めてから一纏めにし、少しずつ卵をフライパンに流して層を作っていき、お皿に盛りつけるだけの簡単な料理じゃねえか!
 莉子はそんなに不器用なのか?

「卵をかき混ぜてはいけません」
「納得……」

 それは卵焼きではない。スクランブルエッグだ。

「だって、プロはオムライスの卵はふんわり作っているよ?私だってあれくらいできるもん!」
「半熟だからだろ?莉子の場合は生で完成とか言いそうだしな」
「火が通れば既に半生だよ。ってことは、言い換えれば半熟なんだよ」
「ダメだって言ってるだろ!」

 半分半分といいながらなぁ!半分だった試しがない!!
 世の中は、五分だ五分だと言いながら、本当は7:3くらいがちょうどいい――

「せめて美凪くらい料理がうまければなぁ」
「……。褒められちゃった。えっへん」
「いいなぁ。美凪~」

 褒めるだけで胸を張るポーズを取った美凪。
 それが、今の美凪にできる唯一の喜びの表現の仕方であることを俺は知っている。


 美凪にとって、莉子との関係を崩すことは絶対にしない性格だ。

『――私にとって莉子先輩と同じくらいに、孝四郎さんは大切ですから……』

 あれ以来、俺に対して美凪の方から言葉をかけてくることはなかった。
 それは莉子のことを案じて、美凪の方が距離を取ったということだ。莉子を傷つけることを美凪はやらない。莉子が俺を好いている限り、美凪は絶対に俺に手を出したりはしないのである。

『居なくなっちゃイヤですよ、孝四郎さん』

 自分の本音を隠して、莉子に付いて俺と会うだけで満足している。
 それは確かに楽かもしれない。莉子を通じて俺に会えるのだから。

 でも、俺はそれで満足できなくなっていた。

 美凪と二人きりで話をしたい時もあった。だが、美凪は二人きりで会うことを躊躇い、休み時間もどこかに行ってしまうことがあった。一年先輩の俺が美凪に会いに来るだけで噂にされる。
 俺も迂闊な行動が出来なくなり、いつしか美凪を苦しめないように料理部だけの時間で会うようになっていた。


 玉子焼きを作る音が聞こえる。今にも箸を滑らせ卵を崩したいと疼いている莉子に、美凪は待つように指示している。
 仲睦ましく料理を作っている二人の料理を待つ俺は、まるで妻の待つ愛妻料理を待つ夫の気分だった。

「じゃ、いってくるよ」
「うん!いってらっしゃい、孝四郎くん!」

 料理を詰めた莉子の弁当箱を持った俺が扉を開けて玄関を出る。
 外には車。愛用のロードスターに颯爽と乗って会社までひた走る。

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 そのつもりだったが、乗ったのは何故か助手席の方だった。運転席には既に誰かが座って待っていてくれたのだ。
 黒い髪の、長髪の綺麗な美人女性だった。

「おはようございます、孝四郎さん」
「み、美凪っ!?なんで!?」
「くすっ、可笑しなこと言いますね?私は孝四郎さんの専属の秘書ですのに」
「専属の……秘書!?」

 なんだ、その素敵ワードの連続に属する立ち位置は!?妄想だと分かっているのに、つい興奮してしまう。
 妄想は暴走へ向かうのみだ。
 美凪が今まで浮かべたことのない笑みで微笑んでいた。

「……孝四郎さん。会社へ向かう前に……私をなぐさめて……」

      
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 マジか……、美凪の顔がすぐ近くに……っ!
 だ、ダメだ!こんな車の中で!?家の目の前で、莉子が見ているかもしれないのに――!!
 破廉恥なことを――!?あーーーーーーーーー!!!

「孝四郎くん……?」
「わあああああああああ!!!?」

 莉子に声を掛けられた瞬間、思わず悲鳴をあげてしまった。莉子までも俺の悲鳴を聞いて小さく叫んでいた。

「きゃふっ!?なに今の悲鳴!?」
「…………孝四郎さん?」
「あ、ああ…、すまん……」
「お料理出来ました」

 気付けば二人の料理は完成してお皿に盛りつけられていた。
 湯気のあがる完成したての料理。ホクホクと温かくふっくらした米粒と、黒いこしょうがたっぷりかかった――――

「急な予定変更で炒飯になりました」
「やっぱりスクランブルエッグじゃねえか!!」

 しかも胡椒が隠すことが出来ないと知ってケチャップかけるの諦めやがった!なんだ、この黒胡椒、米粒が真黒だあああ!火加減までつええええ!!

「莉子、おまえの作る料理はマズイ!」
「ふえええええ……!」

 泣きそうな顔しても許してやらない。いい加減、『愛』に頼らず腕を頼れ!!

「先輩。頑張ってください。私も応援しますから」
「美凪ぃ……ありがとう!」

 そう言って美凪に抱きつく莉子。微笑ましい限りだ。

「…………あれ?」

 でも、俺には違和感。美凪の様子が前と違う……。

「美凪。そこは愛でカバーしなくていいのか?」
「――っ!?」

 ――ドンッ!

 美凪が動揺して、莉子を突き飛ばした。

「うわあっ!」

 小さな身体で床は畳みのせいもあって、莉子は怪我もなくただ突き飛ばされて転んだだけであった。しかし、その様子を見た美凪が激しく慌てていた。

「せんぱい……わたし……っ!」

 今にも泣きそうな顔で、美凪は状況を見つめていた。
 思わずやってしまった本性。
 言葉をかけ忘れてしまった美凪の何気ない気苦労が垣間見えてしまったのだ。
 無理をしていた。
 美凪は苦しんでいた。

「ごめん、なさい……今日はこれで、失礼しますっ」

 一礼だけした美凪が仮眠室を飛び出していった。エプロン姿のまま走り去ってえ消えてしまった美凪を、俺も莉子も追いかけることが出来なかった。

「みなぎぃ!!」

 莉子にとってなにが起こったのか分からないまま美凪が遠くへ行ってしまったことを悲しんだ。莉子のことだから後々連絡を入れることだろう。
 しかし、俺は消えていった美凪の影をじっと見つめるしかなかった。
 俺が美凪になにかできることがあるだろうか。
 今はその解決方法を求めていた。




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 イかされた美凪は余計な力がなくなっていた。両足を持ち上げると、莉子の力でも美凪は簡単に持ちあがった。そのまま足を開かせて美凪の濡れた股間に身体を潜り込ませると、莉子の身体で裸になって、既に濡れた股間を宛がわせた。貝合わせである。

「ふあ――っ!」

 くちゅりと濡れた音と柔らかい襞の感触が美凪にも伝わったのか。大事な場所と大事な場所が触れた瞬間、美凪が再び身体を強張らせた。

「大丈夫、美凪?」
「うっ……うん……」
「私のアソコも濡れてるの、伝わる?」
「はい……りこの、温かさが……分かります…んっ…」

      
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 秘部と秘部が当たることに恥ずかしさを覚えているのか、美凪が今まで以上に顔を隠す。しかし、上から見ている俺は、隠そうとしているものの、美凪の表情がよく見えていた。
 頬を赤く染めて、気持ち良いのを隠せずに感じている。女の表情である。
 グッと腰を押し付けクリ〇リスとクリ〇リスをぶつけさせると、ビリビリとした心地良い痺れが身体を走り抜けた。美凪もクリ〇リスを弄られて激しく感じていた。

「あぁっ…りこ!お豆さん、いじらないでえ……弱いのぅ。また、感じちゃうのぉ」 
「美凪。お豆じゃなくて、クリ〇リスだよ」
「えっ……クリちゃん……?」
「気持ち良いんだよね?だったら、もっと気持ち良くしてあげるよ」

 腰をぶつけさせるのではなく、上下に動かし腰を擦りつけるように揺らす。皮の剥けた美凪のクリ〇リスが莉子の肉襞に擦られて固くなっていくのを感じた。

「あっ…あぁ……りこのおま〇こが、わたしのクリ〇リスを擦って、ヌルヌルにされていきます。きもち良いです……」

 美凪のクリ〇リスが愛液に濡れてビショビショになっていく。おま〇こも愛液が噴き出してヌルヌルになっていた。莉子のおま〇こも美凪のと合わせてキスするようにくっつけさせると、身体を抱きしめて激しく腰を擦り合わせた。
 くちゅくちゅくちゅ……と腰の辺りで濡れた音がくぐもって聞こえる。美凪と莉子の腰がお互いの愛液でびしょ濡れになり、温かい水液を塗りつけていった。
 正面にある美凪の顔にキスをする。美凪も目を閉じて莉子を迎え入れていた。

「ん…ちゅく……はっ…んぅ……ちゅぶ、ちゅっ……ちゅるる……」
「れろ、ちゅくちゅく……ぢゅっ…ぢゅるるる……ぺろぺろ……」

 舌と舌が絡み合う。
 両手で美凪の頭をしっかりと掴んでディープキスをする。美凪がキスをやめようとしても無理矢理頭を引きつけて、唇を離さないようにして口の中を吸いこんでいた。
 莉子の舌使いに美凪が再び痙攣を起こし、呼吸をするのが苦しそうにして身悶えていた。
 開いた両手は美凪の胸を弄る。乳首さらに勃たせるように、下から肉を持ち上げて乳房のカタチを大事そうになぞりながら、乳首まで触ったら手のひらで円を描いて揉みまくる。
 確かに感じる美凪の乳房の柔らかさに、揉んでいながら感じてしまう心地良さを覚えていた。

「ぁぁぁっ!はあっ……ぁっ……んんんんっ……んっ……んぅぅぅ~」

 美凪は声が漏れるのを必死に我慢しても、あまりの気持ちよさに声を漏れてしまっていた。
 莉子と――女の子とエッチすることがこんなにも気持ち良いことをしってしまったのだ。

「はぁぁ……やっ、だめ……そんなぁ…あふぅぅ、はぁ、はぁ……」
「んふふっ……んっ……はむっ……ふんんっ……」

 上と下の口でキスをする二人の女の子。どちらも犯し、ヌレヌレになった美凪が再びイきそうになる。
 ビクビクと身体を震わせていた。

「(これ以上やったらさすがにマズイよな……)」

 そう思って身体を放そうとした時、美凪の方から莉子の頭を掴んで抱き寄せてきた。
 目を見開いて驚いた俺を抱きしめた状態で、美凪は激しく痙攣した。

「んううう~~~!!んっ……んぅぅぅ……」

 ビクン、ビクンと大きく震える。目をつぶった表情が一瞬和らいでベッドへ沈んでいく。

「んっ……んふっ……ふぅっ……ふぅっ……」
(イッたんだ……美凪……)

 莉子が唇を解放した。途端に美凪の声が大きく部屋中に響いた。

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ……はっ…………」

 一回目よりもさらに大きく口で息をする。美凪の身体の力は抜け、ベッドでぐったりしている。
 このまま眠ってしまってもおかしくなさそうな表情で、ぼんやりとしながら莉子を見つめていた。

「い、きました……せんぱい……?」

 自分がイってしまったのに、莉子がイケなかったら申し訳が立たなさそうな声で聞いてくる。

「イったよ、美凪……すごいきもちよかった」

 莉子の身体も十分堪能した。それでも美凪よりも開発が遅い分、快感が小さいのかもしれない。小波が身体を何度も突き抜けては抜けていく。そんな波に流されて莉子の身体もイっていた。

「よかったぁ……」

 美凪がほっとする表情のまま目を閉じた。まるで夢見がちの少女のような優しい笑顔で眠りにつく。
 美凪の中の心の整理がついたのだろう。次に目を覚ました時には、また新たな気持ちで恋が始まる。
 莉子に後押ししてもらった快感が消えるまで、余韻の残る美凪の身体を残して――、

「さて、それじゃあ俺は莉子の身体を返しに行くとしますか」

 俺は莉子の制服に着替えると、部室を後にして自分の身体へと戻っていった。



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 お昼休み――
 俺は莉子の姿で美凪のいる下の階まで足を運んだ。一年したというだけでまるで雰囲気がガラッと変わってしまう。リボンの色から学生が違うことは一目で分かってしまうため、チラリと見られる度に視線が刺さって居づらい空気を漂わせる。
 しかし、今はそれを払いのけて美凪の教室まで行くのだ。この為に『飲み薬』で莉子に憑依したのだから。
 美凪の教室はB組。教室を覗くと一人でもの静かに机に座っている美凪の姿を見つけた。
 美凪も莉子を見つけて、暗かった表情をパッと明るくさせてトテトテと莉子の元へとやってきた。

「莉子先輩!わざわざ教室まで足を運んでくれたんですか?」

 今まで美凪の方が莉子を訪ねていたのを思い出す。遂に自分の元に莉子が来てくれたのだと、本当に嬉しそうな笑顔で俺を見ていた。しかし、俺は笑うわけにはいかない。キッと強く眼を飛ばすと、美凪と真剣に向き合った。

「うん。今日は一つ言わなくちゃいけないことがあって来たの」
「私にですか…………。ポッ」

 何故俺を見て赤い顔をする?スカートを叩いて身なりを整えるので、まるで俺がこれから美凪に告白するような雰囲気を作っていた。
 勘弁してほしい。
 
「いったいなんの御用ですか?」
「美凪。私ね、料理もっと美味しく作りたいの。だから、ダメなところはダメってちゃんと言ってほしいんだよ」

 しばらく俺の言葉を理解するように噛み砕く時間を取る。そして美凪はニコッと笑った。

「……はい、わかりました。それじゃあ『 い つ も 通 り 』に教えます。今日の部活はハンバーグにします」
「はんばーぐ!?」

 それは莉子の大好きな料理の一つ。さすがに美凪も知っていたようだ。
 って、それで流されてはダメだと、俺は顔を横に振って意識をしっかり持った。 

「それじゃあダメなの!私、自分の味覚のなさが分かったの!」
「そんなことありません。先輩が作ったお弁当は愛が籠っていて、とっても美味しいです」

 愛があれば美凪にとって莉子の料理は何でもおいしくなる。それは十分に伝わる。しかし、――愛だけで料理が食えるかあぁ(男性代表)!!

「美凪にとってはそうかもしれない。でも、俺――じゃなかった。孝四郎くんに食べて貰うお弁当だから、孝四郎くんが喜ぶお弁当を作りたいの」
「莉子せんぱい……」

 莉子が作る料理が『誰』のために作っているのかを美凪に教える。美凪は顔を俯き、今にも泣き出しそうな表情を浮かべて黙り込んでしまった。
 わかっていたことだ。酷なことを言うことになることを。
 美凪の気持ちを部活で知った俺には痛いほど分かる。
 でも、莉子のためを考えるなら優しいだけじゃなく、怒るときは怒ってあげた方が本当の優しさになる時がある。
 それを分かってほしい、美凪。
 やり直しは十分に聞く。きみはまだまだ十分に若いのだ。

「分かってくれたかな?」
「…………はい」

 美凪が小さくうなずいた。それで会話は終わりだ。
 俺は美凪を悲しませただけじゃ可哀想だと、臨機応変に休み時間が終わるまで会話を繋ぐことにする。これからの美凪に対して、少しでも前向きになれる様な会話を引き出してやるつもりだ。

「あの……、美凪は、誰か男性に作りたい人、いないの?」
「…………わたし……?」
「そう」
「いない」

 冷たい声で発する。笑顔が沈んでしまうのが、はわわ。ヤバイ、泣いちゃう!!

「兄弟いないの?……美凪は一人っ子なの?」
「…………。お兄さんがいる」
「そうなんだ。だったら――」
「――――とおの……しき……」

 …………。聞いていないけど、人物らしき名前を口走った。それが美凪の兄の名前だろうか?

「普段眼鏡をかけていないけど、眼鏡を外すとイケメンになる」

 ……それって、普通にイケメンって言ってるのと同じだ。なんで眼鏡を付けているかのように話すの?

「『お兄さん眼鏡をつけてるでしょっ?』て、よく聞かれるから。そう答えるのが自然になっちゃった」
「へぇ。近所の人に?」
「知らない人――」

 …………。なんで知らない人が聞いてくるんだよ!?美凪の兄さん、ストーカー被害にあってるじゃねえかよ!?つぅか、俺が知らないだけで実は有名人なんじゃないのか、その『遠野シキ』って人物は――!?

「――男性」

 嗚呼――、世の中はホモとレズで動いているんだと再確認したわ。
 ガラガラ――と、
 突如、扉が開き、美凪を呼ぶ見知らぬ男性が入ってくる。

「きみが美凪ちゃん?お兄さん、眼鏡かけてるでしょ?」
「普段眼鏡をかけていないけど、眼鏡を外すとイケメンになる」
「なんだ。人違いか」

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 そう言って扉を閉めて学校から出ていく。まるでコントのような一シーンが目の前で繰り広げられていた。

「今の誰!!?」
「知らない人。男性」
「違う!不法侵入だろうが!!?」

 天然にも程がある。学校の先生たちよ、何故いま見知らぬ男性が現れたのに捕まえようとしなかった!?
 学校側にも責任あるだろう!ここは天然学校かよ!?

「私もよく、『駅前でシャボン玉吹いてない?』って訪ねられる。……知らない男性に」
「あっぶねええ!!」

 美凪。おまえも狙われていることを自覚した方が良い!世の中はホモとレズとロリで回る――

「だから私、きっぱり言うの。『駅前では吹いてない』って」
「シャボン玉吹いてるのも否定しようよ!!」

 一度も見たことないんだけど!どうして『きっぱり』と、軽くウソをつくの?

「一回断ったら男性が凄く悲しがったから。次からはニュアンスだけ残してあげているの」

 なるほど。駅前では吹いていないとだけ言って、真実を濁して喜ばせているわけだ。
 男性を生かすも殺すもしていないところが、子供ながらに末恐ろしい。
 男性も男性で――
 気持ち悪い。

「でもそろそろ大人の対応として、警察に届け出た方が良いよね?」
「やめてください!!!」

 そんなことしたら、【警察が、『帰宅中の女子〇学生に、駅前でシャボン玉を吹いていない?』と問いかける事案が発生】という事例がこの街から流れるうぅ!?恥ずかしすぎて死んでしまう。全国の皆さんにごめんなさいしないといけなくなるから!!
 って、いうか――

 結局美凪のペースに持っていかれていたことに気付く。話を元に戻さなくては――!

「…………。お兄さんはいつも忙しくて、妹の私に構ってくれたことは一度もなかった」

 と、美凪の方から話を切りだす。過去の兄妹の話を俺に聞かせてくれた。

「年の離れていたこともあって、私の記憶のお兄さんは、いつも勉強していたイメージがあった。毎日塾に行って、開いている時間に珠算を習いに足を運んで、それでも時間に空きがあったらスイミングに行かされて……私と遊んでいる暇はなかった。だから私は逆にお兄さんを尊敬してたけど、それを伝えることもできなかった。結局、お兄さんは私の家にいる時間に家にいなかった」

 血の通った兄妹同士でしか会話できないこともあるのに、会話をする相手がいない。
 美凪の家は三人家族。母と兄と美凪だと言う。エリートの母親とその母に躾けられた兄が毎日家に帰るのが遅いのなら、今まで美凪は家でどんな生活をしていたのかを察することが容易だった。
 『愛』に対して執着する理由がそこにある。美凪は生まれてからずっと、『愛』を欲していたのだ。

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「毎日私はさみしくて、お兄さんへの尊敬を忘れて、ぽっかり空いた穴を誰かに埋めて貰うことを望んだの」

 人づきあいが特別うまいとも言えない。話しかけることの苦手な美凪にとって、環境の変化を望む意外に状況が変わることがないと諦めかけていた。

「でも、初めての部活がそれを変えてくれた。私が唯一得意だと思えるお料理に、たった一人だけ先輩がいてくれたの」
「……それが、莉子?」

 美凪が頷く。部活とも言えない、料理同好会だ。しかし、美凪が必要とされている状況を莉子がつくりだしたのだろう。家庭科室も使えない料理部で、美凪が頑張って見つけた場所が、あの仮眠室だ。

「――私があの部屋を莉子先輩に見せた時は驚いていました。きっと思っていたのと大分違っていたんだと思います。でも、先輩はイヤな顔しないで、むしろ喜んでくれて――」


『まるでアパートの一室みたいだね!新婚さんみたいな気分で料理を作れるんだね!』

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 ――ああ、あいつのことならきっと言ってくれるだろうな。
 無邪気に、未来に対して不安がない澄んだ笑顔で美凪を褒めてくれたに違いない。

「――莉子先輩の笑顔が私の心を明るくしてくれて、元気な姿に救われて、私も笑うようになっていったの。先輩は私の大事なひと……」

 料理部があるのは、二人の心が通い合った結果だ。放課後に莉子と一緒に料理を作るだけでも、美凪は幸福だったに違いない。
 味や見た目なんか関係ない。莉子に対する感謝の想いで溢れて、心を埋めるほどの温かい料理―きもち―を莉子は作ってくれていたのだから。
 これが愛だ。これが魔法だ。美凪をカバーする莉子の料理だ。

「わたし、莉子先輩のこと……好きです」

 美凪は自分の気持ちを言葉にした。そして、それじゃあ伝わらないと、少しだけ時間をおいて考えた後に言いなおした。


「…………。好きじゃなくて、……大好き。英語でラブ。スペルはlove。素敵な響き……ポッ」


 美凪は顔を真っ赤にして涙を流して告白した。
 好き(like)じゃ伝わらない、大好き(love)と伝えて気持ちは完成した。





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 莉子の身体に憑依している。自分の身体を見下ろすアングルは、普段莉子の見ている視点だ。
 小さな身体を舐める様に見降ろし、足のつま先まで全部を見渡す。
 身長が縮み、体重が軽い。自分の小さな手を顔の前に持っていくと、驚くほどに細い莉子の指先。しかし、白い手は割れていることもなく、綺麗に整えられている爪に愛らしさを覚える。

「……ぷっ、色気がないの」

 ゴテゴテに盛ったネイルアートにも興味を持たないのだろう、その方が莉子らしくていいと思っている。
 俺は身体を起こしてベッドから立ち上がった。
 莉子の体重は俺の体重の半分しかない。普段感じるはずのだるさは微塵もなく、幽体だった時と変わらない軽さで動き回れる莉子に、恐ろしいほどの身軽さを感じていた。

「ふっ、はっ。……ジャンプがこんなに軽いなんて、知らなかった!うひゃあ~!」

 トランポリンで跳ねているような軽さで、何度もジャンプを繰り返す。その鏡に映る莉子のはしゃぎ様は本当に子供であった。

「はぁ~……莉子だ…。おれ、莉子になっちまった」

 普段と口調が違うだけで大分印象が変わる。しかし、莉子は莉子であるせいか、さすがに俺口調は似合わなかった。
 鏡に映る莉子を見つめて、ウインクを投げてみる。鏡では莉子がウインクをしているのだ。俺の思い通りに表情がコロコロ変わる。表情が動くと言うことは、表現だって俺の思い通りに動いてくれる。

「あー、あー。私は、神原莉子」

 声を漏らすと莉子の綺麗な口元が動き、円やかな声が漏れる。喉が震え、俺の普段の男の声とは違い、甲高く、澄んだ声が、部屋中響いた。
 これまで莉子がみせたことのない笑みを浮かべていた。鏡の中から見詰め返してくる莉子の顔が、さらに歪んで、口元が横につり上がっていく。

「やったぁ!莉子の身体が完全に俺のモノになったぞ!」

 憑依が成功したことに笑いが止まらない。深夜ということで声を張り上げることはできなかったものの、莉子の身体で再びベッドに戻ると、シーツの温かさの残る場所でゆっくりと莉子の着ているタートルネックとズボンを下ろし始めた。
 莉子の身体が外気に曝される。深夜の空気は出しただけで肌寒く、ベッドの上でも寒く感じる。しかし、それに負けない莉子の白い肌が火照り、熱くなったようにほんのりピンク色に染まっていた。

      
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「はぁ…、莉子のカラダ、やっぱり真っ平だな」

 莉子の身体で唯一不満を述べるとしたら、それだけだ。年相応にして平らな身体がなんとかできないものだろうか。
 ズボンを下ろして、ショーツの中に目を通して見てみるも、アンダーヘアーの一本も生えていない状態だ。触るには綺麗過ぎて逆に抵抗がある、という贅沢な不満である。

「仕方ねえ。俺が少し、莉子の身体を触ってやるとするか」

 上半身を裸になり、先程服の中で触った乳房を今度と直接触り始める。一度触っているだけに小盛りに膨らんでいる乳房の弾力に、男性とは違う感じ方を思えた。

「まだあまり感じてこないな。まだまだ子供かよ?」

 内側からじわっとくすぐられる程度に感じているようなのだが、それ以上になかなか発展しない。試しに乳首を摘んでみるも、ピリッとした痛みしか感じなかった。

「いたたっ!まだダメか……。もう少し乳房の方を攻めるか」

 再び乳房を揉み始める。さらに莉子の手で莉子の乳房を触っているんだという興奮と、莉子に憑依しているという意識が快感を高めていった。
 俺が莉子に憑依しているのだ。俺が望むとおりにオナニーをしてくれるのだから、考えただけでも興奮してしまう。タンスの中から水着や運動着を取り出しても良いのだ。声を喘ぎ、莉子になりきって俺に犯されることを妄想してオナニーしたって十分に感じることが出来るだろう。
 莉子の身体を支配しての、一挙手一投足が新鮮なものに感じる。男性の時にしていたオナニーと、女性に憑依したオナニーでは快感が違いすぎる。
 目を閉じて莉子の快感のみを味わうように指先に集中して触る。すると、次第に莉子の乳房が感じ始めたのだ。

「んあっ!……よし、このままイケば……っ!」

 莉子もまた興奮してきて、呼吸が速くなっていく。莉子もまた年相応に感じるはずだと、さらに揉み続ける。
 莉子の胸を見つめながら、触り放題の乳房を惜しげもなく触りまくる。両手で身体の肉を寄せ集める様にして胸に持っていき、丁寧に弄っていく。
 ピリピリとした柔らかい痺れが、擦っていくごとに強くなっていく。身体がだんだんと蒸気し、反応がさらに敏感になっていった。

「おっ!…莉子のやつ、まだ、イケそうだぞ……おっぱいだけでこんなに感じるのか。羨ましいなぁ、んんっ!」

 ぎゅっと力強く揉み、胸元からはちくっとした痛みが感じられた。莉子の身体であっても俺が触っているせいか、いつもより強めに力が加わっているからか、ジンジンと痛みが広がっていく。
 宣言通り、俺が莉子の性的開発を進めていく。最初に触った時とは比べ物にならないほどに莉子の身体は感じやすくなっていた。
 乳首が勃起してピンと上を向いている。そして、乳首を優しく指で摘んで、揉みほぐすかのようにいじっていくと。乳房とはまた違う、鋭く刺さるむず痒い敏感が駆け抜ける。

「んふ……あっ、ああっ……!」

 莉子の声で喘いでみると、甘く震える吐息が心地良さを表しているようだった。全身を駆け抜けた快感が下半身を揺らし、ハッキリと濡れているのが分かるほどに感じてきていた。

「はぁ……、ごめんな、莉子。俺、脱ぐよ――!」

 俺は一旦胸を揉んでいた手を離し、ズボンと、その下に穿いていたスパッツを脱いだ。防寒対策のためか、その下にようやくショーツが顔を覗かせる。ここまで着こんでいたのが裏目に成り、ショーツの裏側は湿って濡れていたのである。
 ショーツを片足だけ抜くと、股間に手をやってみる。アンダーヘアーがないだけに平らな丘になっている莉子のアソコは、愛液で既にヌルヌルになっていた。
 莉子の愛液だ。そのまま、溝の上を優しくなぞっていく。

「んっ……くぅ…、…はっ……んあっ」

 ちゅびくちゅ……

 襞を指でひっかいて弄るだけでもこそばゆい。試しに指を一本入れてみようと、中指を立てて莉子のぐっしょりと濡れた膣の中へ入れてみようとした。しかし、処女である莉子のアソコは狭く、一本でもきつかった。

「なんだこれ……全然入らないぞ……うっ、んくっ……」

 中を広げる様にぐぐっと中指を奥へと無理やり入れていく。莉子の小さい指でも二本は入らないのだ。男性の性器なんて当然挿入できるものじゃなかった。しかし、膣内に異物が入っている感覚はあり、中指を出し入れすると、膣内がほぐれて妙に気持ち良かった。

「あぁ……莉子の身体も感じるんだな。じゃあ、おっぱいとおま〇こ両方を責めてやるよ」

 中指を挿入したまま、もう片方の手を胸に宛がいそのまま弄る。乳房の火照った感覚が未だ冷めず、盛りあがっていたところに再び触りはじめたので、安心感があった。
 中指が激しく動いておま〇こからくちゅくちゅという湿った水気の音が広がっていく。莉子の部屋で莉子の身体でオナニーをしていることに、だんだんと快感が上り詰めていった。

「あ、な、なに、これっ?……もしかして……まちがい…ない!……あっ…イ、イクッ………くうぅ!」

 小刻みに震えて、身体から一気に力が抜けていく。
 莉子の身体で絶頂を迎えたのだと、俺は察した。ベッドに身体を預けて息を荒く吐く。余韻の残る莉子の股間が激しく濡れて疼いていた。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 ベッドから身体を起こす。一度イッタ後の身体はどこか呆然としており、火照った身体は未だ眠りにつくことはなさそうだ。
 誰もまだ起きる時刻ではない。誰にも気付かれることなくオナニーをする時間があることを確認すると、莉子の表情で再びニヤリと笑った。

「まだ大丈夫だよな。――よし、じゃあもう一回いってみるとするか!」

 莉子の身体を今度は生まれたままの姿にして、オレは再び莉子の温かく滑らかな肌を触り始めたのだった。



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 だいたいのことは分かった。
 俺はこれから復讐をするわけだが、標的をどっちにするかと聞かれれば――50:50が望ましいところだが、――70:30で美凪を仕返ししたい。
 莉子を部長にして影で動かしているみたいで癪に触ったことと、美凪の莉子に対する異常なまでの甘さに男子なりに我慢が出来なかった。
 理解できても納得できないこともある。あのまま莉子が美凪のいいなりに進んでしまったら、料理本来の味や香りが作れないで莉子自身を苦しめてしまうことだろう。それは決してよろしくない。莉子を変えるために美凪を変えるしか方法がないのである。

「……莉子は俺の幼馴染だしな」

 莉子に対して甘いのは俺も一緒である。

「しかし、問題は仕返しの方法だな」

 俺が言うのではなく、もっと効果的な方法で美凪に叱りたい。
 もちろん、手を上げることはしたくない。俺が手を出したら逆に俺の立場が危うくなる。こういう時の女子の連絡網は恐ろしいほど早いのはどこも一緒である。

「……莉子に言ってもらう、か?」

 でも、莉子だけじゃなく、他人に言ってもらうと美凪に対して謙遜してしまう。莉子だって部長の手前、言えてせいぜい――

『美凪。私ね、料理もっと美味しく作りたいの。だから、ダメなところはダメってちゃんと言ってほしいんだよ。おねがいね♪』

 ――なんて、強さなくして優しさ100%の文章で終わってしまう。
 加えて美凪と莉子の天然だ。反応からすれば――

『……はい、わかりました。それじゃあ『 い つ も 通 り 』に教えます』
『ありがとう!じゃあ、今日の献立は何にするつもりなの?』
『今日はパエリア。お米がいっぱい手に入ったから――――』
「やったぁ!』

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 ・・・・・・・・・
 ――と、有耶無耶にされてなにも変わらず終了するのが関の山だろう。
 俺が言わなくちゃダメなんだ。莉子と同じくらい美凪と親密になって、男らしく頑ッと言わなければならない時がある。

「長期戦だなぁ……」

 俺は溜め息をつく。
 時刻は深夜。もう既に皆が寝静まっている。俺は絶対に生肉に当たったと思う腹痛に襲われていた。
 お腹の痛さで目が覚めて、トイレに駆け込み引き籠るの繰り返し。
 生きた心地がしなかった。明日の学校は休もうかと思うほどである。
 三度目のトイレから出た俺はは、未だに口の中に残る感覚に気持ち悪さを覚えて水を飲みに行く。蛇口を捻って水でうがいをする。顔を水の出ている水道に持っていき、顔を横にして口を大きく開ける。

「はひ?」

 俺の視線があるものに向けられた。
 視界が90度変わっているものの、真横に立っているお薬の瓶を見つける。『飲み薬』であった。
 ラベルには何も書いていない。なにに対して効果的か分からないものの、薬であるなら今は栄養剤でもビタミン剤でも補充したいくらいだ。
 俺はナイスタイミングと、『飲み薬』を手にとってグビグビと飲み始めた。甘いミルクシェークのような味がした。お子様向けの味に、ひょっとしたら莉子のものだったのかと思ってしまった。
 ただ一つ言うと、莉子の作ったツミレよりは上手かった。あれがミートボールだったなんて俺は認めない!!!

「ぷはぁっ!うめぇぇぇ~~………」

 飲んだ瞬間、意識が朦朧とする。何故だか身体が軽くなる。肉体を感じられなくなった俺は、まるで天にも昇る気持ちになっていた。
 しかし、次の瞬間俺は目を疑う光景を見る。真下を見ると、俺の身体が水道の隣で横たわっていたのである。

「(おいいぃぃ!!マジかあああぁ!?)」

 慌てて俺は身体に戻る。身体に戻るっていうことは、今の俺は幽体になっているということだ。宙を泳ぐように手を掻きながら、足で蛙のように跳ねながらバランスを取っていく。俺の身体に辿り着き、俺は幽体と身体を重ね合わせると、ガシリと歯車がかみ合った音がして一つになった。

「うおおぉぉ!!あぶねええぇ!」

 ガバッと起き上がった俺は、今までのことがまるで夢だったような心地だった。やはり幽体より重い生身の身体。『飲み薬』を飲んだことで幽体になれたことに驚き、俺はもう一度『飲み薬』に目線を送っていた。

「いったい誰だよ、こんなもん買った奴は?」

 俺が知らずに飲んでしまったとはいえ、幽体になって自分の身体を見降ろしていた記憶は今でも鮮明に思い出す。自分を見ているもう一人の自分。そして、幽体が俺の身体に吸い込まれて元に戻る感覚も蘇ってくる。
 それはまるで、俺が別の誰かを起こすような感覚だった。
 夢から目覚めるというより、もっと別の言い方をできる。幽体離脱をした俺は、自分自身に憑依した、と思ったのだ。
 憑依、乗り移り。コレを飲めばひょっとしたらまた俺は幽体離脱が出来るのではないかとふと考えた。幽体とは俺の魂そのものだ。

「例えば、別の誰かに俺の幽体が重なったら、その人に憑依できるのではないか……」

 それこそ例えば……莉子だとか、だ。

「…………試してみる価値はあるな」

 俺は恐ろしい考えを実行に移すことにした。長期戦と考えていた俺の復讐が超短期戦に持ち込める可能性が生まれてきたのだ。一種の賭けだ。しかし、成功すれば十分おつりが返ってくる計算だ。

 莉子に憑依する――。

 俺は今再び『飲み薬』に口を付ける。すると、さっきの感覚と同じ、飲んだ瞬間に意識が朦朧としてくる。身体が軽くなり、幽体が身体から抜け出し、床に転がる俺の姿を確認したのだった。



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