緊張した神経を静めようとする時、いきなり高ぶった神経を静めようとするよりは、さらに神経を緊張させ、それから徐々に鎮静させる方が効果か大きい。アメリカの心理学者アルトシュトラーは、これを「同質の原理」と名づけ、悲しみに打ちひしがれた人に、それに輪をかけた悲しい音楽を聞かせ、それから次第に華やかな音楽に移る方が悲しみを癒すのに効果があることを数々の実験で確かめた。このように音楽は人の心理に微妙な影響を与えるだけに使い方によっては心理トリックのいい道具に使えよう。

例えば工場や事務室などで単調な仕事をしている人にBGMを流しているのは単調さから来る倦怠感と能率の低下を防ぐためだ。産婦人科医や歯科医などの医療機関などもクラシック音楽を流す所が多くなっている。これは不安や痛みを和らげるためのものである。

音楽療法の権威者である心理学者の桜林仁氏の研究によれば重症便秘の被験者に食前と就寝前にモーツァルトの「メヌエット」、ショパンの「マズルカ舞曲」、シュトラウスの「ウィーンの森の物語」を聞かせたところ三日目から便通があったという。一人息子に先立たれてノイローゼになりかけていた知人が息子の好きだった名曲喫茶に通うようになってから立ち直った例もある。

ここに対症曲の例をあげておこう

便秘・・・今あげた曲の他にドボルザークの「ユーモレスク」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」など。

頭痛・・・ガーシュインの「パリのアメリカ人」、ベートーベンの「ロマンス・へ長調」など。

ヒステリー・・・ベートーペンの「田園」、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」など。

ノイローゼ・・・ビゼーの「カルメン組曲」、リストの「ハンガリー狂詩曲」など。

「音楽とその心理効果」

アメリカの心理学者ガリジオとヘンドリックが「反戦歌など思想性の強い歌の歌詞を被験者に朗読して聞かせた場合とメロディーのある歌として聞かせた場合では、どちらが説得力があるか?」という研究をし。メロディーのある歌として聞かせた方が説得力が生まれるとの結論を得た。その理由はメロディーが加わることが聞き手にとって快適な刺激になるからだ。