ツイッターやフェイスブックを使い始めて4~5年になります。何気なく見ていると、同業者や憧れの職業に就いている諸先輩方の経験に基づく「ありがたいアドバイス」を目にすることがあります。
数年前のこと、同業者の方(達)がこんな意見を交わしていました。
Aさん:「受注する際、値引きには(絶対に)応じないこと」
Bさん:「そうそう、大型案件を受注するときでも、自分を安売りしてはいけません」
Cさん:「引いては、業界の単価を引き下げることにもつながりかねませんしね」
てな流れであったように記憶しています。
どの業界(世界)でも、そうだと思いますが、ある程度、名前が知られた方の発言・意見というものは、意見そのものがどうのこうのというよりも、
「○○さんが言っているから正しい!」
↓
「わたしも同意!」
↓
「みんな(他の人)にも教えてあげよう!」
という妙な図式が成立する場合があります(特にSNS上)。
もちろん、名前が知られている方というのは、経験や実績に基づいて発言・発信されているわけで、タメになるものが多いです。でも、全てが自分に当てはまるかというと、そうじゃありません。
ここ、テストに出ます!じゃなくて、勘違いポイントです。
なぜなら、ここに勘違いした当人がいます。
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数年前の話ですが、懇意にしている取引先(翻訳会社)から打診がありました。過去にも受注したことがある案件です。普段の作業でいうと、1.5~2か月分くらいの仕事です。「うしし...」と思って、作業上の細かい確認をしていると、「少し、ヴォリューム ディスカウント(値引き)してくれないかしら?」との申し出がありました。
ちょうど、SNSなどを見て「勘違い」していた私は最初、この申し出を断固拒否しました。その後、ある程度譲歩して「総額の2%」くらいならということで先方に提案しました(先方は「5%程度」を希望していました)。
で、どうなったかといいますと、翌日には発注予定だったこの案件。急転直下で「他に(値引き後の提示額)で引き受けてくれる翻訳者が見つかった」ということで、するりと私の手から逃げていきました。
そう、約80万円の仕事が目の前から消えてなくなりました...。
この取引先とは、4~5年の付き合いがあり、わりと「強く」出ても私の要望が通ることが多かったこともあり、ここでも「勘違い」して、ゴリ押しして見事に失敗しました。振り返ってみると、このPM(プロジェクトマネージャー)さんとは、これが二度目のやり取りで、彼女のやり方をよく知っていなかったことも失敗につながった原因の1つかもしれません(ちょうど今頃の時期でした)。
というわけで、この年の夏の売り上げは、このときの躓きが大きく影響し散々たるものでした。
以来、この取引先とはなんとなくギクシャクした関係になってしまい、今では年に数回のやり取りになってしまいました。
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失敗をした後、得たことは2つ。
1つ目は、「人の意見に流されないこと」。
前述の諸先輩方の投稿ですが、「翻訳関係者」と一口に言ってもいろんな方がいます。翻訳会社を経営している方から、翻訳会社の会社員として翻訳に従事する人、メーカーの海外事業部などで時々翻訳もする人、子育てがひと段落して空き時間に翻訳をしている人、翻訳スクールで講師として教えている人、副業として翻訳をしている人、そして私のようにフリーランスとして翻訳会社などから仕事を請け負って翻訳で生計を立てている人。多種多様です
いくつか共通点はあるものの、経験や立場、取扱分野、目指す方向、自分の人生の中で翻訳が占める割合など、人それぞれです。ゆえに、私の場合、例え先輩であっても、自分より稼いでいる方でも、スクールで教えている方であろうとも、どんなにその人が良いことを言っていても、あくまでも「参考程度」に留めるようにしています。
そして2つ目は、「翻訳業はサービス業であること」を忘れないこと。
これ、実は私の言葉ではありません。開業して、数年した頃、単価の値上げ交渉に躍起になっていた時期がありました。そこで、どうしたら効率よく、有利に自分の希望する単価に持って行けるか、師事していた先生に相談したことがあります(→今考えると、若気の至り以外の何物でもありませんね)。
先生は、やんわりとこうお返事してくださいました。
「翻訳はサービス業ですからね、多少の値引きには応じられてみたらいかがでしょうか?」
この言葉には当時、ガーーンときました。そうです、私は「翻訳=専門職」つまり、「ある程度お金をもらって当然」という認識(おごり)があったのです(「翻訳=専門職ではない」とは言いませんよ)。
最初に、「人の意見に流されないこと」と書きましたが、この先生のアドバイスには思い当たるフシがあります。駆け出しの頃、ある案件を打診された際、値引きを打診されました。これまた数か月に及ぶ案件でした。当時の私は「そんなものか」と思い、この値引きを受け入れました。で、数か月かけてその案件を納め、しばらく経ったある日、先方から連絡がありました。
担当者の方曰く、「先日は値引きを受け入れてくださいまして、ありがとうございました。今後も引き続き、お仕事をお願いしていきたいと考えております。つきましては、(わずかではありますが)次回から単価を上げさせていただくことになりました」とのこと!
以降、この取引先とは非常に気持ちよくお取り引きさせていただきました。
例えば、近所のパン屋さん。朝早くから営業していて、夕方になると、売れ残ったパンは全品割引になります。賞味期限の関係から致し方ないことでしょう。でも、中には割引をよしとしないパン屋さんもあるでしょう。どちらが賢いやり方か私には分かりません。でも、自営で事業を営んでいくにあたり、自分なりのやり方を確立していくことが大切だと思います。でも、失敗したら?そしたら、違うやり方を試すなりして、やり直せばいいじゃないですか? 最終的には自分自信で決断すること。それが大切だと思います。
SNS上には、今日もいくつも「ありがたいアドバイス」が流れてきます。そのアドバイスを横目に、まずは目の前の仕事に必死に取り組みます。
例えば、近所のパン屋さん。朝早くから営業していて、夕方になると、売れ残ったパンは全品割引になります。賞味期限の関係から致し方ないことでしょう。でも、中には割引をよしとしないパン屋さんもあるでしょう。どちらが賢いやり方か私には分かりません。でも、自営で事業を営んでいくにあたり、自分なりのやり方を確立していくことが大切だと思います。でも、失敗したら?そしたら、違うやり方を試すなりして、やり直せばいいじゃないですか? 最終的には自分自信で決断すること。それが大切だと思います。
SNS上には、今日もいくつも「ありがたいアドバイス」が流れてきます。そのアドバイスを横目に、まずは目の前の仕事に必死に取り組みます。
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