February 21, 2011

ブラジルで、注目のインストルメンタル・グループが登場しました。
トリオ・ターハゾン。エンヒーキ・ターハゾン(g)、ダニエル・コエーリョ(b)、ハファエル・ゴンサルヴェス(ds)の3人組です。
ディスクユニオンのサイトでの説明によると、2006年に、大学生仲間で結成されたといいますから、まだまだフレッシュな、若々しいトリオですが、レア・フレイリ(fl)、ヴィトール・アルカンタラ(sax)、タチアーナ・パハ(vo)、セウマール(vo)がゲスト・ミュージシャンとして参加しているということからだけでも、彼らが只者ではないことがお分かりになると思います。そして、私好みのサウンドであることも、私の過去のエントリーを読んでくださっている方なら、すぐにおわかりになることでしょうね(笑)。

収録曲はすべて、エンヒーキの自作曲。どれもが、決して派手さはないけれど、哀愁を帯びた美しいメロディで、聴く人の心を、惹きつけます。
オープニングを飾る「Pedra Redonda」から、おそらくクラシックを学んであろう、エンヒーキの、深い味わいのギター、メリハリがあって、細やかなリズムを刻む、ハファエルのドラム、ソロでも、印象深いプレイを聞かせるダニエルのベース。聴いていてゾクゾクするほど。3人の絶妙な息のあった演奏は、とても若手とは思えません。

そんな彼等の素晴らしいトリオでの演奏に続き、温かな響きのレアのフルート・ソロが印象的な「Odaya」、そして、タチアーナ・パハの美声が引き立つ「Conselho」と、対照的な声質で落ち着いた歌声のセウマールが歌う「Sai Pra La」は、どちらもアップテンポの曲で、非常にシコ・ピニェイロの作風に近い作品。
ヴィトール・アルカンタラのサックスをフィーチャーした「Espelhos」と「Da Terra ao Chao」も、各プレイヤーの演奏が印象的な曲です。
そして、ブラジルのいろんな音楽の要素を取り入れながらも、個性的な旋律と演奏の、かなりチャレンジ志向の強い大胆な曲で、最後を締めているのも、彼らの、このアルバムに対する意気込みと自信がうかがわれます。

彼らのmyspaceで、全曲試聴することができます。
新しい魅力的な彼らの音楽に、ぜひ触れてみてください。

trio tarrason


(16:23)

December 29, 2010

2004年に「Voce e Eu」でデビューした、ピアノとヴォーカル担当のジョー・ヂ・ソウザと、ベースとアレンジ担当のトゥッコ・フレイレのデュオによるセカンド・アルバム。

ジャジーなアレンジのボサノヴァやMPB。彼等のオリジナルや、Ze Henrique Martinianoの曲を中心に、ジョビン、シコ・ブアルキ、モアシール・サントスの渋い(すごく渋い選曲!!)曲。
そして、うれしいことに、私の大好きな、ジョイスとレア・フレイレの共作「Samba de Mulher」も収録。これは、このアルバムの中では、けっこう明るめかな(笑)あと、明るいというか、アップテンポの曲は2曲(すなわち計3曲)。とにかく、地味といえば地味ですが、とっても渋く、しっとりとした演奏がずらり並んでいます。
二人がピアニストとベーシストということで、ピアノとベース、そして、ドラムスのトリオ編成が中心ですが、ゲストも超強力。レア・フレイレ(fl), マリオ・マンガ,スワミJr(g),Walmir Gil(tp)などが、ジャジーなサウンドにいっそう磨きをかけています。
私にとって、まさに、ツボ!!のアルバムです。

年末で、忙しい方も多いでしょうが、ちょっと手を休めて、こんなステキなアルバムでゆったりとした時間を過ごされてはいかがでしょうか?

こちらで、全曲たっぷり聴くことができます。なお、最後の「Two Kites」のみ、デビューアルバムの収録曲です。

um silensio


(23:02)

April 07, 2010

中川昌三(fl)、小畑和彦(g)、安井源之新(perc)。
日本が誇る凄腕ミュージシャン3人のブラジル音楽ユニットFonte(フォンチ)がついに待望のスタジオ録音の新作を届けてくれました。
タイトルは「Conforto」。ポルトガル語がわからなくても、英語の「comfort」と同じ意味じゃないかな・・・って容易に想像できますよね。
まさにタイトルどおりの「心地よい」曲がいっぱい詰まった作品に仕上がっています。

心地よいと一言で言っても、もちろんいろんな心地よさがあります。
ジョビン作「Fotografia」と「Triste」、小畑和彦作「Ivan」と「Nana」はまったりとした癒し系。特に「Ivan」は、曲目どおり、歌詞をつけて、イヴァンにぜひとも歌ってもらいたいメロディアスな曲調で、しびれます。
それらは、まさに典型的な、王道の「心地よい」音楽といえますが、それだけで、終始しないのがFonte流。
「Sete Passos」や「Choro das 11」のように、7拍子とか11拍子の変拍子であったり、「Chorinho para Ele」や「Canivaile」のようにくねくねした不思議なメロディラインだったり、「Vamos ao Rio」のように、アクセントをちょっとずらしてみたり・・・と、なんともひねくれていて、ヘタすると、聴いていて居心地が悪くなりかねない曲を、ちゃんと「心地よく」聴かせてくれるところが、FonteのFonteたるところ!他のミュージシャンにはまねのできないワザです。
ワザといえば、やはり3人のミュージシャンとしての素晴らしさが思う存分発揮されています。
一般的なフルートだけでなく、アルト、バス、ピッコロ、そして、BBフルートまで駆使して、味わい深い豊かな音色で魅了する中川昌三。
フルートの音色の間をくまなく軽やかに飛び跳ねていると思うと、うっとりとさせるソロで、聴き手をしびれさせる小畑和彦。
そのギターの音色とシンクロさせて、あたかもベース奏者がいるように思わせるテクや、一見タンバリンのようなパンデイロという小さな楽器ひとつで、いろんなリズムを作り出す、リズムの魔術師、安井源之新。
この3人が揃ってこそ表現できる、「Conforto」なサウンドに、強力な助っ人、ヴォーカルの石塚まみが参加。「Triste」と、彼女の自作曲「風が待っている」の2曲で、澄んだ歌声を聴かせ、よりやわらかな「Conforto」なアルバムに仕上がっています。

iTunes Storeで、「conforto fonte」で検索すると、少しずつですが、全曲試聴できます。また、彼等のMy Spaceで、5曲試聴できます。

なお、アルバムのライナーノーツに掲載されている1曲ごとの詳しい説明が、安井源之新のブログにも、書かれていますので、ぜひご覧になってください。
Conforto


(16:03)

February 18, 2010

シコ・ピニェイロの新作がいよいよリリースされました。しかも、日本先行発売!!
おととし「Nova」を出しましたが、これは、アンソニー・ウィルソンとの共作で、完全なオリジナル・アルバムとは、言い難かったので、2005年の「Chico Pinheiro」以来の、5年ぶりの作品といっても、いいでしょう。
その、セカンド・アルバム、「Chico Pinheiro」では、デビュー・アルバムでは聴けなかった彼のヴォーカルが4曲も収められ、彼のキュートな歌声にますます惚れてしまった方も多かったと思いますが(もちろん、私もそのひとりです)、今作では、なんと、7曲で、メイン・ヴォーカルをとっています。素朴な味わいはそのまま、しかし、確実にヴォーカリストとしても上手くなって、色気さえも感じられるようになってきました。

もちろん、収録曲は、彼の自作がほとんど。ジャジーなメロディは、ますます洗練され、一聴して、すぐに、シコ・ピニェイロとわかる、独特の雰囲気が漂うメロディラインは、美しさが際立っています。
それらの素晴らしい曲を、ヴォーカルだけでなく、かっこいいフレーズで、いっそう魅力的に輝かせているシコのギター。そして、彼を支えているプレイヤーは、ファビオ・トーレス(key)、マルセロ・マリアーノ(e.b)、パウロ・パウレッリ(a.b)、エドゥ・ヒベイロ(ds)ら、おなじみの名手たちに、シコといったら、この人!ともいうべき、歌姫、ルシアーナ・アルヴェス。また、ストリングスのアレンジには、ジルソン・ペランゼッタとオスカー・カストロ・ネヴィス。

そして、特に話題になっているのが、ボブ・ミンツァー(sax,cl)とダイアン・リーヴス(vo)が参加していること。アメリカのジャズ界の大御所ふたりのゲスト出演と、収録曲に、ガーシュウィンの「Our Love Is Here To Stay」とスティービー・ワンダーの「As」が加えられていることは、2年前の「Nova」以来、アメリカでのステージを数多く積んだシコが、ブラジル国内に留まらず、世界で認められるアーティストになりつつあることを、そして、シコもそれを意識していることのあらわれではないかと思われます。

このアルバムで、シコが、日本でも、一部のブラジル音楽ファンだけでなく、多くの音楽愛好家の方に知られて、人気が出るとうれしいですね。・・・とは、いいつつ、どんどん大きくなって、手の届かないところへ行ってしまいそうで(今でも、手が届かないのに!)ちょっぴりさびしい気もしてしまうかおりんでもあるのですが(苦笑)

収録曲について、感想をまだ書いていませんでしたね。もちろんどの曲も素敵ですが、軽快なアコースティックギターに乗せて、シコがチャーミングに歌う「Boca de Siri」、初めてシコとルシアーナがデュエットしている「Recriando a Criacao」(この曲は、シコのギターソロも最高!)、ボブ・ミンツァーのテナー・ソロと、シコらしい、細かくリズムを刻むギターが印象的な「Flor de Fogo」が特に気に入っています。
こちらで、試聴ができます。

There's a Storm Inside


(20:37)

February 10, 2010

2005年にファビオ・トーレス(key,p)、エドゥ・ヒベイロ(ds)と、2008年には、ファビオ、セルソ・ヂ・アルメイダ(ds)と、どちらもトリオ名義でアルバムをリリースしているベーシストのパウロ・パウレッリが、ついに、個人名義で素敵な作品を届けてくれました。
モノトーンのジャケットには、往年の映画スター的な風貌のパウロがギターを抱えて微笑んでいます。どこかノスタルジックな雰囲気ですが、アルバムの中身も、そういったムードを持った曲が多いですね。

彼は、ベースだけでなく、ギターや、キーボード、パーカッション、そのうえ、ヴォイス・パーカッションまでこなす、マルチプレイヤー。
このアルバムでは、彼が一人だけでいろんな楽器を演奏している曲が9曲、ファビオ、エドゥ、セルソといったなじみのメンバーや、トニーニョ・フェハグチ(アコーディオン)、エリオ・アルヴェス(p)、クーカ・テシェイラ(ds)らのサポートによるバンド・ナンバーが7曲、という内容で、サウンド的にも、ほぼ、はっきり2つのカラーに分かれています。

彼一人のほうは、どこかほんわかとした、スムーズ・ジャズ、バンドのほうは、まさに正統派のモダン・ジャズ(例外もありますが)。ひとつのアルバムに2作品が混ざって収録されているような感じです。

そう書くと、統一感がない・・・ともいえるのですが、辛いものを食べた後、甘いものを食べたくなるように、このアルバムを聞き終えると、口の中、ではなく、耳が、ちょうど良いバランスを保った状態になっているのです。
特にウィルソン・テシェイラのテナー・サックスが吼えまくる9曲目の「Change Lelli」の次に、ローズのボヨヨーンとした音で始まる「Baiao Doce」への移行なぞ、このアルバムらしさが一番出ているところではないかと思います。

決して派手ではないけれど、ジャズの楽しさが詰まった好インストルメンタル・アルバム、こちらで、試聴できます。
また、前回のエントリーでも、紹介しましたが、こちらで、全16曲中10曲のライヴ映像を見られます。

paulo paulelli


(20:49)

February 01, 2010

前回のフィロー・マシャードのエントリーで、彼の新譜の曲のライヴが見られるということでご紹介した、「Instrumental SESC Brasil」のサイト。

この「Instrumental SESC Brasil」というのは、ブラジルのジャズ系ミュージシャンのライヴをたっぷり見せてくれる番組で、驚くのは、そのライヴの映像を、YouTubeや、Vimeoに公開していること。しかも、とびっきりの高画質で、1ミュージシャンにつき、1時間以上のライヴ時間!!なんて、太っ腹なんでしょう。
すごいミュージシャンが目白押しで、日本では見られない貴重なライヴがたっぷり楽しめます。

サイトのHomeのURLは、こちら
トップページの左、ちょっと下のほうに、Todos os Showsという欄があって、そこからそれぞれの番組のライヴ映像が楽しめます。
10件ばかり載ってますが、過去の放送を見たい場合は、その欄の一番下の右、Ver todos をクリックするとでてきます。

私個人的におススメなのは、

Gabriel Grossi
Mauricio Einhornとのハーモニカ奏者2人の共演が見られます。

Hamlet Stamato
サンバジャズの楽しさが詰まっています。

Filo Machado
前回も載せましたが、あまりにも素晴らしいので、もう1回しつこく(笑)ご紹介します。
ライヴならではのFiloらしいパフォーマンスがタップリ楽しめます。彼のオリジナルアルバムでは収録していない、「Baiao do Parao」は特に貴重!
Edu Ribeiroや、サックスのJoao Paulo Barbosaなど、サポート陣もすばらしい。

Paulo Paulelli
新作の曲をたっぷり聴かせてくれています。Fabio Torresも出演。


以下は、上記よりは、画質が劣りますが、それでも他のYouTube映像よりも格段にきれいです。

Ze Paulo Becker
ギター・ファンは必見!「Chovendo na Roseira」や、バーデン・パウエル・メドレーなど、選曲もいいです。

Thiago Espirito Santo
ご存知、若手の注目ベーシスト。リラックスして、心から楽しんで弾いている姿は、とってもキュートです。

Edu Ribeiro
Eduはもちろんのこと、Chico Pinheiro (violao), Paulo Pauleli (contrabaixo), Toninho Ferragutti (acordeon) , Daniel Alcantara (trompete)というラインナップが凄すぎ!!Chicoのソロもたっぷり楽しめて、これは、特におススメです。

ほかにも、素晴らしいライヴ映像がいっぱい。ご自分のお好みの音楽、ミュージシャンを見つけてください。

また、これから先、どんなアーティストが登場するか楽しみです。毎週更新されていくので、ときどきサイトをチェックしてみましょう。


(14:05)

January 06, 2010

この日をどんなに待っていたことか・・・!!

2004年に、「Jazz de Senzala」をリリースして以来、オリジナル・アルバムをずっと出していなかった、フィロー。その間、女性シンガー、Cibele Codonhoとジョビン集を出したり、他のアーティストのアルバムにゲスト出演したりと、一応健在であることは、わかっていたけれど、やっぱり、早く彼の新譜が聴きたい・・・と、ずっと待ち焦がれていました。

そして、2010年のお正月、ついに、ニューアルバム「Ubida」をわれわれのもとに届けてくれました。
さっそく聴いてみると・・・
オープニングの「Jangada de Joao」。セザル・カマルゴ・マリアーノの軽快なエレピに乗せて、気持ちよさそうに歌うフィロー。お得意のスキャットも絶好調!続く「 L'habitant du Ciel」は、ピアノとリズムセクション、そして彼のギターという編成で、これは完全にジャズ!!ここでも、スキャットはますます磨きがかかり、スィング感がとっても心地よい。
続けて聴いていくと、歌詞がなくて、スキャットのみの曲が圧倒的に多く、楽器編成も少なめで、ボサノヴァ〜ジャズのテイストが強く出ています。また、前作に比べると、アクの強さが控えめになり、より多くのリスナーに好まれそうな雰囲気に。
というと、なんとなく従来からのフィローファンにとっては、ちょっとさびしい感じがするかもしれませんが、大丈夫。11曲目の「O Boi」と12曲目の「Lazzo e Bafafe」では、かなり暴れまくる(笑)フィローもちゃんと楽しめます。特に「Lazzo e Bafafe」は、ライヴ音源ではないかと思われるほどメンバー一体となってのノリノリ感。このアルバムの中で、最高のパフォーマンスだと思います。
ガブリエル・グロッシ(harmonica)、テコ・カルドーゾ(sax,fl)、ホメロ・ルバンボ(g)、ダニエル・アルカンタラ(trumpet)らゲストも強力。
ブラジル音楽ファンにとって、きっと、最高のお年玉となるアルバムです。
彼のmyspaceで2曲、試聴できます。
また、こちらのサイトでは、フィローのYouTube映像を、まとめて見ることができ、しかも、そのうち新譜の収録曲が4曲もありますので、ぜひ、目でも彼のパフォーマンスを楽しんでください。

ubida


(16:57)

December 17, 2009

あっという間に、12月も折り返し点を過ぎました。先生も走るほど(笑)あわただしい師走、いつも暇なわたくしかおりんも、どたばたしていて、気が付いたらもうすぐクリスマス・・・

そこで、今回は、特別!とっておきのボサノヴァ・クリスマスアルバムを2枚、ご紹介します。

まず、布施尚美と伊藤ゴローによるユニット、naomi&goroの「Presente De Natal」。
「Sleigh Ride」や「Winter Wonderland」など、有名なクリスマスソングのほか、ブラジルのクリスマスソング「Presente De Natal」と「Borboleta」、ふたりのオリジナル曲「Santa On Surfboard」、「Winter Song」というラインナップで、使用楽器は、ほとんどの曲が伊藤ゴローのギターのみというシンプルな編成。布施尚美の素朴な歌い方ととてもよく合っています。
華やかさはないですが、どの曲も、温かみがあって、ほっこりできます。暖炉の前で(といっても、なかなかそういうシチュエーションに出会えませんが・・・)聴いてみたくなるアルバムです。
タイトルの意味は、ポルトガル語で、クリスマス・プレゼント。こういうクリスマス・プレゼントもらえたら、とってもうれしいですよね・・・
こちらで2曲試聴できます。
iTunesを使用している方は、iTunes Storeで、全曲、少しずつですが、試聴できます。
presente de natal


そして、もう一枚・・・
「A Brasilian Christmas」というオムニバス・アルバム。
Oscar Castro-Neves、Toninho Horta、Dori Caymmi、Ivan Lins、Joao Bosco、Joyce、 Gilson Peranzzetta・・・という超ビッグなメンバーによるクリスマス・ソング集。ウキウキしてくるJoyceの「Santa Claus Is Coming to Town 」、センスのよい伴奏に合わせて気持ちよさそうにJoao Boscoが歌う「I'll Be Home for Christmas」、そして、Ivan Linsの「White Christmas」は、泣けちゃうほど美しいです。ブラジルでは、クリスマスは真夏なんですが、ボサノヴァにアレンジしてあっても、やっぱり、聴いていると、雪景色が目に浮かんでくるから不思議な感じがします。
1996年のリリースですから、入手は難しいかもしれませんが、どこかで見つけたら、ぜひゲットしてください。
こちらで試聴できます。

A Brasilian Christmas


(17:34)

November 29, 2009

マリア・ヒタにも楽曲を提供している若手サンビスタ、エドゥ・クリエゲルのセカンド・アルバム。
日頃、ジャズ系やボサノヴァを聴くことが多い私ですが、たまにはこういうのもいいですね。彼の創りだすメロディは、かなり昔のサンバを掘り出してカバーしているのかと錯覚するような曲調のものから、とてもポップで、日本語の歌詞を付けて、J-POPのアーティストが歌っても良さげな感じのものまで、とてもバラエティに富んでいます。
なんといっても、彼のちょっとハスキーがかった素朴な歌声が魅力的。7弦ギターも達者です。
ジョアン・ドナートがゲスト参加している6曲目の「Sobre as Maos」は、ゼ・パウロ・ベッケルとの共作ですが、ドナートを最初から意識して作ったようなほんわかとしたムード(曲の最後に小さく聴こえる声は、おそらくドナート?)、続く「A Mais Bonita de Copacabana」は、ハーモニカのヒルド・オラが参加し、ギターとのシンプルな編成の愛らしい雰囲気の佳曲。哀愁に満ちた美しいオープニング曲「Correnteza」、思わず踊りだしたくなるような、陽気な「Clareia」、「Serpentina」など、どれもステキで、ハズレのない曲が揃っています。
こちらで、全曲試聴できます。
correnteza

(15:22)

October 20, 2009

2009年もまだ2ヵ月半ありますが、今年最高傑作!!と断言できるアルバムが登場しました。キーボード奏者、ファビオ・トーレスの作品、「Pra Esquecer Das Coisas Uteis」です。
ファビオ・トーレスといえば、2005年(録音は2003年)にベースのパウロ・パウレッリ、ドラムスのエドゥ・ヒベイロと、安井源之新プロデュースのアルバム「Corrente」、昨年には、ドラムスがセルソ・デ・アルメイダに代わって、「Celso de Almeida,Fabio Torres,Paulo Paulelli」をリリースしていますが、彼のソロ名義は今作がはじめて。
全15曲中、9曲(うち1曲はスキャット)がヴォーカル付きで、トリオ編成で全曲インストルメンタルの前2作とはずいぶん違った雰囲気に仕上がっています。
すべて、彼自身のオリジナル作品で、そのうち、2曲がジアナ・ヴィスカルヂとの共作。その2曲は、もちろん、ジアナがヴォーカルをとっています。そのほかのヴォーカル陣は、シコ・ピニェイロのアルバムでおなじみのルシアーナ・アルヴェスと、タチアーナ・パハをはじめ、サンバ系のファビアーナ・コッツァ、ヘナート・ブラスと、魅力的な人たちばかり。

演奏陣も、前2作でトリオを組んだ、パウロ、エドウ、セルソのほか、シコ・ピニェイロ(g)、Zeli(b)、フィロー・マシャードの息子、セルジーニョ(ds)、そして、管楽器に、テコ・カルドーゾ、ヴィニシウス・ドリン、ダニエル・アルカンタラ・・・そうそうたるメンバーが勢ぞろい、ジャズテイストの歯切れのよい演奏で、ファビオを盛りたてます。

普通に考えたら、ヴィニシウス・ドリンのサックスとファビオのエレピに、ルシアーナの色っぽい歌声が魅力的な「Lefitima Defesa」をオープニングに持って行くのが無難だと思うのですが、ファビアーナのヴォーカルによる、渋ーい「Lilya」を1曲目に持っていくところが、ファビオのこのアルバムへの思いが凝縮されているように感じます。全体的にシコ・ピニェイロにも通じる、哀愁を帯びた美しい旋律が印象的で、ファビオの流麗なピアノとヴォーカル陣の丁寧で情感あふれる歌唱で、しっとりと聴かせてくれています。

インストルメンタルの6曲も、佳曲ぞろい。ファビオのピアノソロ「Noturno」や、リズムセクション抜きで演奏される「Inefavel」のような、クラシック調のしっとりとした曲や、ヴィニシウス・ドリンのサックスとシコ・ピニェイロのギターが大活躍の、これぞ、ブラジリアンジャズの真髄といいたくなるような「Livia」(私は、インストの中ではこの曲が一番好き)など、個性的で、すべて同じ人が書いたとは思えないくらいです。なお、「Livia」と「Samba de Almeida」は、前作でも録音されていますが、前のトリオ編成と、今回の管楽器が加わった演奏とでは、ずいぶん違う印象があります。聴き比べるのも面白いでしょう。

こちらで、全曲試聴できますので、ぜひ聴いてみてください。ただし、曲目が一部違っています。(4曲目の曲目は「Sol do Inverno」、6曲目の曲目は「Inefavel」が正しい。)
fabio


(14:59)

September 26, 2009

今回は、秋の夜長に聴きたい、インストルメンタル・アルバムをご紹介しましょう。
ピアニスト、ヒカルド・レオンの「Cinematecla」です。
ポルトガル語がわからなくても(もちろん、私もわかりませんが)、このタイトルを見ると、想像できるんじゃないでしょうか?そうです。映画音楽をカバーしたアルバムです。しかも、ブラジルだけでなく有名な、世界の映画音楽も取り上げているので、ブラジル音楽はあまりご存知でない方でも、聴きやすいと思います。
たとえば、「ニュー・シネマ・パラダイス」の愛のテーマや、ジャズのスタンダードとしても有名な「My Favorite Things」、「華麗なる賭け」のテーマ曲「The windmills of your mind」(邦題は風のささやき)など。
そして、ブラジル国内の曲としては、「Bye Bye Brasil」、「Eu te Amo」、「Luz do Sol」など。
これら、まさに珠玉の名曲といえる曲を、ジャジーなアレンジで、ヒカルドは、ピアノやエレピで、優雅に奏でています。
サックスのニヴァルド・オルネラス、ギターのヒカルド・シルヴェイラ、ホベルト・メネスカル、ピアノのヴァギネル・チゾら、ゲストも強力。
美しい曲に美しい演奏・・・静かな場所で、じっくり聴いてほしい作品です。
こちらのページの曲目のリストのあとにある、[Clique aqui para ouvir]をクリックすると、全曲まるごと聴けてしまいます。
ぜひお楽しみください。
Cinematecla

(16:59)

September 17, 2009

最近、実力のある新人アーティストが次々と登場しているブラジル音楽界。
またまたスゴイ人が現れました。
ディアゴ・ポッサス・・・というシンガーソングライターです。
まず、声がイイ!マイケル・フランクスほどではないけど、ソフトで温かみのある歌声。
そして、親しみやすいメロディ。あえて、わかりやすいようにジャンルでいえば、AOR寄りのMPBという感じかな?
彼の自作では、ボサノヴァ調の「Carioquinha」、レゲエのリズムにブラジルのサウダーヂ感を絡めた「Pedacinho de Vida 」、サンバテイストの「Chumbo Quente」や「Nada que te diz Respeito」、サンバを基調にしながらも、しっかり消化して、完璧なAORナンバーになっている「A Vizinha de frente 」・・・とそれぞれ、完成度の高い楽曲がずらり。
また、カバー曲では、スタンダードナンバー「Moonlight Seranade」やバーデン・パウエルの「O Astronauta」が愛らしいボサノヴァに、カエターノとガルの「ドミンゴ」でおなじみの「Maria Joana」がアダルトな雰囲気に、そしてジルベルト・ジルの「Linha e o Linho」が都会的でクールに・・・と、どの曲もはずれなしです。
そんな彼の魅力をきっちりと引き出しているのが、バックの達者なミュージシャンたち。
私イチオシのギタリスト、シコ・ピニェイロをはじめ、ベースのゼカ・アスンサォン、シザォン・マシャードとチアゴ・アルヴェス、ドラムスのクーカ・ティシェイラなど、ジャズ系のプレイヤーがしっかりと脇を固めています。
彼のMySpaceで、5曲試聴できます。
diogo pocas

(14:38)