August 07, 2016
夏を知らない君へ(1)♪
(妄想ショートショート)
人生で不思議なことはだいたい中学時代に起こっているものだ。
なぜだかわからないが、たぶん、それまでの自分だけへの興味から、徐々に外界の世界へ、他人へ興味が移って来る年頃であるのと、根本的知識不足。物知りの反対。それらが合わさって不思議な体験として記憶されるのだと思う。
わたしが初めてUFOを見たのも、幽霊を見たのも、ヒバゴン(岡山県と兵庫県に住むと言う類人猿)を見たのも、ツチノコの脱け殻を見たのも中学生の時だった。
でもこれらは、後でわたしが大人になって、色々考えてみると、勘違いや誤認だった可能性が高い。もちろん、当時は「見た見た!」と家族や友人に真剣に話していたのだが。
しかし、本当に不思議な体験をした時は家族にも友人にも話さないものだ。そして、そういう体験は大人になってもどうしても説明が付かない。
わたしにもそう言う体験がある。
わたしは中学校のときは東岡山の北の方に住んでいた。
実家は町から外れた村の中にあり、農場を営んでいた。
中学校から家までは約2kmで、田んぼや山道を通って通っていた。特に家までの最後の半kmは民家も少なく、沼などがあり、女の子にはちょっと怖かった。
中学2年生のある夏の夕方だった。
もうすぐ夏休みを控えたある日の夕方、その日も強化合宿を控え、テニス部の練習があった。やや日が暮れた校舎の端でわたしは顔や手や脚を水道で洗っていた。中学校にシャワーなどないからだ。
ややひと気の少ない山道を通らねばならなかったので、本当に遅くなるときは父に電話して迎えに来てもらうのだが、7時頃だったのでまだ夕陽が見えていた。
その日はやや雲があり、夕陽はいつもより弱かった。前の日と同じ時間帯なのにやや暗い。
その時、水道の水しぶきが飛ぶ辺りに、見たことのないキノコが生えているのに気が付いた。
「あれっ?こんなんきのうあったっけ?。。。それにしても、あー、ちょっと遅なった。いまから山道かあ。。。変なものが出て来なけりゃいいんじゃけど。」そう言う時の勘は当たるものだ。
「ドスン!」
ちょうどそのとき、手荒い場の左手前方10mくらいの校庭の端のポプラ並木の何処かから音がした。結構大きな音だったので人が落ちたような感じだった。
「ねぇ美咲、今の音なんじゃろ?」
わたしは近くに同じテニス部の美咲がいるものだと思って話しかけたが、もう人の気配はなかった。そうそう、美咲は一番仲のいい部員で家の方角も同じでいつも一緒に帰っていた。
「あれっ、美咲、うちをおいて帰ったんじゃろか。。。」
そんなはずないのになあと思いながら、もう一度さっきの方向を目を凝らして見てみると、地面に何やら黒いものが転がっていた。そして少し動いた。
「ギヤ〜!!」
と叫びたかったのだが、本当に怖い時には声が出ないものだ。
それに、あまりにも近過ぎる。
逃げると言うより、腰が抜けていた。
「あ痛たたたた。。。」
し、しゃべった。。。どうやら人で、男の子のようだった。しかし、こんな時間に、あんなところに何やってたんだろう。
ほどなく、向こうもこちらに気付いた。
「あ、君。。。ごめん、驚かして。。。でも、あ痛たたたた。。。」
普通の女の子なら「キャ〜!だれか〜!」と言って教員室の方に走り出していると思うが、わたしは咄嗟にテニスラケットを握り締め、防御態勢に移っていた。向こうが素手なら、わたしが降り出したラケットが脳天に当たれば向こうもタダでは済まないと思ったからだ。
「あー、服破れちゃった。。。サンプルとウェラブルは大丈夫だよな。。。え、なに?そんなに怖い顔して。」
よーく見ると、中学生くらいの男子のようだった。不審者ではあったが、取り敢えず危険人物ではないらしい。
「。。。あんた、何処のクラス?そんなところで何しとるん?」
「え?。。。ああ、女の子だったんだ。ごめん、実はサンプル採集をしていたのさ。木の上に珍しい寄生植物があったんで。。。そしたらこの通りだよ。」
「サンプル?。。。キセイ?。。。なんで?食べるん?」
「調査のため。。。いや、夏休みの宿題さ。僕の故郷ではこういうの見たことなかったから。」
「故郷?」
「う、うん。。。あ、それより、じゃましてごめん。僕、もう帰るから。」「あ、けっこう暗くなってきたなあ。。。君、ひとりで大丈夫?」
「うん。」
わたしは早くこの場から立ち去りたかったので、「送って行く」とでも言いだしそうだったその男子のお誘いを否定した。
「じゃあ。」
彼はそう言うと、わたしの後ろを通って校舎の方に歩いて行った。
わたしは数歩歩きだし、「あ、そっちは校門じゃないけど。」と言おうと思ってもう一度振り返った時にはその子の姿は見えなかった。
その瞬間、急に怖くなった。
ワルじゃないとは話し方で分かっていたが、もしかしたら幽霊だったのかも知れない。
東岡山にも都市伝説ならぬ田舎伝説、怪奇物語がたくさんあるからだ。
人生で不思議なことはだいたい中学時代に起こっているものだ。
なぜだかわからないが、たぶん、それまでの自分だけへの興味から、徐々に外界の世界へ、他人へ興味が移って来る年頃であるのと、根本的知識不足。物知りの反対。それらが合わさって不思議な体験として記憶されるのだと思う。
わたしが初めてUFOを見たのも、幽霊を見たのも、ヒバゴン(岡山県と兵庫県に住むと言う類人猿)を見たのも、ツチノコの脱け殻を見たのも中学生の時だった。
でもこれらは、後でわたしが大人になって、色々考えてみると、勘違いや誤認だった可能性が高い。もちろん、当時は「見た見た!」と家族や友人に真剣に話していたのだが。
しかし、本当に不思議な体験をした時は家族にも友人にも話さないものだ。そして、そういう体験は大人になってもどうしても説明が付かない。
わたしにもそう言う体験がある。
わたしは中学校のときは東岡山の北の方に住んでいた。
実家は町から外れた村の中にあり、農場を営んでいた。
中学校から家までは約2kmで、田んぼや山道を通って通っていた。特に家までの最後の半kmは民家も少なく、沼などがあり、女の子にはちょっと怖かった。
中学2年生のある夏の夕方だった。
もうすぐ夏休みを控えたある日の夕方、その日も強化合宿を控え、テニス部の練習があった。やや日が暮れた校舎の端でわたしは顔や手や脚を水道で洗っていた。中学校にシャワーなどないからだ。
ややひと気の少ない山道を通らねばならなかったので、本当に遅くなるときは父に電話して迎えに来てもらうのだが、7時頃だったのでまだ夕陽が見えていた。
その日はやや雲があり、夕陽はいつもより弱かった。前の日と同じ時間帯なのにやや暗い。
その時、水道の水しぶきが飛ぶ辺りに、見たことのないキノコが生えているのに気が付いた。
「あれっ?こんなんきのうあったっけ?。。。それにしても、あー、ちょっと遅なった。いまから山道かあ。。。変なものが出て来なけりゃいいんじゃけど。」そう言う時の勘は当たるものだ。
「ドスン!」
ちょうどそのとき、手荒い場の左手前方10mくらいの校庭の端のポプラ並木の何処かから音がした。結構大きな音だったので人が落ちたような感じだった。
「ねぇ美咲、今の音なんじゃろ?」
わたしは近くに同じテニス部の美咲がいるものだと思って話しかけたが、もう人の気配はなかった。そうそう、美咲は一番仲のいい部員で家の方角も同じでいつも一緒に帰っていた。
「あれっ、美咲、うちをおいて帰ったんじゃろか。。。」
そんなはずないのになあと思いながら、もう一度さっきの方向を目を凝らして見てみると、地面に何やら黒いものが転がっていた。そして少し動いた。
「ギヤ〜!!」
と叫びたかったのだが、本当に怖い時には声が出ないものだ。
それに、あまりにも近過ぎる。
逃げると言うより、腰が抜けていた。
「あ痛たたたた。。。」
し、しゃべった。。。どうやら人で、男の子のようだった。しかし、こんな時間に、あんなところに何やってたんだろう。
ほどなく、向こうもこちらに気付いた。
「あ、君。。。ごめん、驚かして。。。でも、あ痛たたたた。。。」
普通の女の子なら「キャ〜!だれか〜!」と言って教員室の方に走り出していると思うが、わたしは咄嗟にテニスラケットを握り締め、防御態勢に移っていた。向こうが素手なら、わたしが降り出したラケットが脳天に当たれば向こうもタダでは済まないと思ったからだ。
「あー、服破れちゃった。。。サンプルとウェラブルは大丈夫だよな。。。え、なに?そんなに怖い顔して。」
よーく見ると、中学生くらいの男子のようだった。不審者ではあったが、取り敢えず危険人物ではないらしい。
「。。。あんた、何処のクラス?そんなところで何しとるん?」
「え?。。。ああ、女の子だったんだ。ごめん、実はサンプル採集をしていたのさ。木の上に珍しい寄生植物があったんで。。。そしたらこの通りだよ。」
「サンプル?。。。キセイ?。。。なんで?食べるん?」
「調査のため。。。いや、夏休みの宿題さ。僕の故郷ではこういうの見たことなかったから。」
「故郷?」
「う、うん。。。あ、それより、じゃましてごめん。僕、もう帰るから。」「あ、けっこう暗くなってきたなあ。。。君、ひとりで大丈夫?」
「うん。」
わたしは早くこの場から立ち去りたかったので、「送って行く」とでも言いだしそうだったその男子のお誘いを否定した。
「じゃあ。」
彼はそう言うと、わたしの後ろを通って校舎の方に歩いて行った。
わたしは数歩歩きだし、「あ、そっちは校門じゃないけど。」と言おうと思ってもう一度振り返った時にはその子の姿は見えなかった。
その瞬間、急に怖くなった。
ワルじゃないとは話し方で分かっていたが、もしかしたら幽霊だったのかも知れない。
東岡山にも都市伝説ならぬ田舎伝説、怪奇物語がたくさんあるからだ。
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