メガテンシリーズは過去のアトラス作品から元ネタを持ってくることが多いです。
 今作は「真・女神転生」の完全版ともいえる構造になっていますが、他シリーズを踏まえた小ネタやイベントが多いです。作家の他作品を読んでおくと文学解釈の幅が広がるように、アトラスの他作品をプレイしておくと読み解きが深くなります。

【自分が今までにプレイしたアトラス作品】
女神転生、女神転生2
 →原典。特に女神転生2は「東京モノ」「神≠善」の方向性を確定した傑作。
真・女神転生
 →BGMも含め、真・女神転生4の原作と言っていい作品。
真・女神転生2
 →旧文明に蓋をする形で築かれたディストピア、という世界観が継承されている。
真・女神転生3
 →プレスターンバトルやマップ構造に影響を与えた作品。
真・女神転生ストレンジジャーニー
 →デモニカスーツ、フロストエースなど小ネタ引用が多い。
女神異聞録ペルソナ、ペルソナ2罪
 →テーマ性の強さやキャラの立て方、パラレルワールド観はこのあたりから目立ってきた。
女神異聞録デビルサバイバー、デビルサバイバー2
 →デビルサバイバーは震災前かつアニメ調でありながら、災害時の人間心理を描いた良作。
  デビルサバイバー2は真・女神転生3のテーマを分かりやすくした作品。
デビルサマナー・ソウルハッカーズ、葛葉ライドウ対超力兵団、葛葉ライドウ対アバドン王
 →「アバドン王」における恐慌と絶望を知っておくと、某イベントが感慨深くなる。
世界樹の迷宮シリーズ
 →序盤のあるシーンが世界樹1の終盤と似ている。

 では、ここから序盤の自己流解釈の時間です。

【命名】

・主人公の命名
・謎の声いわく「汝の選択はもはや汝のみにあらず」
・炎上する都市でカオスの青年、砂漠でロウの青年、何もない空間で謎の少女と会う

 名乗り=運命選択というのは「真・女神転生」「女神異聞録ペルソナ」、さらにはル=グウィンの名作『ゲド戦記』シリーズやその影響を受けた宮崎駿作品にも見られる傾向ですね。夢に見るのが善の化身ヨナタン(善なたん、あるいはダヴィデの友であるヨナタン)と悪の化身ワルター(悪たー)ということで、ヒロインが「別に不在でもいい」扱いになっているのか。少女はヒロインか? それにしては名乗らないぞ。


【ガントレットの儀〜実地訓練】
今回のメガテンは西洋系ファンタジー?

・舞台となる「東のミカド国」には2つの階級がある
・支配階級のラクジュアリーズと労働階級のカジュアリティーズ
・お互い「カジュアリティーズはラグジュアリーズのため働くのが普通」と思っている
・「サムライ」になれば平民でも貴族階級になれる
・18歳の若者のうち「魔法のガントレット」に選ばれた者だけが「サムライ」になれる
・村人である主人公はサムライになり、親友イサカルは選ばれなかった

 Luxuries/Casualties。女神転生で対立概念になるLaw/Chaosと同じ頭文字なのは偶然じゃないはず。Casualtiesは庶民じゃなく負傷者って意味だからスペル違いかもしれません。

・城壁は「城の中心部を封じるかのように」建造されている
・この国はグレゴリ暦1492年

 コロンブスによる新大陸「発見」と同じ年。異なる世界の存在と、そこへの侵略を予見させる年号ですね。

・サムライは城の最深部で湧きだす「悪魔」を封じるのが主な仕事
・カロン様に賄賂を払えばその場で生き返らせてくれる
・そのぶん死亡頻度も高い
・新悪魔のナパイアかわいい

 お金もしくは3DS通貨で復活。ファミコン版女神転生2の仕様をカスタマイズした便利仕様ではないですか。死んだその場で復活できるし、ゲームコインなんて歩いてればたまるし、死んで覚えるのが全く苦にならないのはありがたいですね。
 そのぶん死亡頻度も上がっており、チュートリアル3戦目で全滅しました。しかしこっちが対策すれば全滅率を大幅に防げる、相変わらず絶妙なバランスです。


【本】
 友達とパンを買いに行ったら森鴎外「舞姫」などの純文学を勧められました。

・この世界ではラグジュアリーズしか本を読まない
・しかも読めるのは神の教えと建国伝説だけ
・日本文字は「魔法の文字」と呼ばれ知識人しか習えない
・パン屋のおじさんいわく「本を読んで初めて心を揺さぶられた」
・「黒きサムライ」が本を配って回った
・みんなで本を読み、語り合う集会を「サバト」と呼ぶ
・サムライ仲間の少女イザボーは「漫画」に夢中

 サバトというのは悪魔崇拝の集会ではないですか。つまりこの国では、庶民が知識を持っちゃいけないし、国を称えるお話以外は禁断の知識なのですね。主人公たちや国民に禁断の知識を広め、サバトを呼びかけるのがパン屋っていうのは皮肉なもんです。聖書においてキリストが「パンを私の肉と思いなさい」と言ったのを逆手に取り、背徳表現にしたんでしょう。
 あと文学じゃなく『ベルサイユのばら』を読んで感想を熱く語るイザボーかわいい。メガテンに声優はいらないと思ってましたが、こういう演技を聞くとさすがプロですね。


【キチジョージの森】
 吉祥寺といえば真・女神転生1で物語が動き始める場所です。

・昼間にイサカルと再会し「キチジョージの村へ帰る」と聞かされる
・本の存在を知った夜、キチジョージの方角で火の手が…

 あ、東のミカド国=東京だったのか。そしてまずい、キチジョージは自分とイサカルの故郷。サムライ頭のホープや同期と共にキチジョージの森へ。

・本を読んだ人間は「ラグジュアリーズ批判」を覚えてしまった
・本を読んだ人間の一部が悪魔化

 建国神話によると、この国の人間は地下のケガレビト共を撃退した、神に選ばれし民とのこと。要は穢れを知らない人間だったから、本を読んで私欲・感情の虜になり、負の感情の化身である悪魔になってしまったということか。

・森の奥で黒きサムライに遭遇
・知識を求めるよう促し姿を消す
・彼女の送り込んだリリムにぼっこぼこにされる

 なんでリリムを使役するのかは後ほど明らかになります。それにしても彼女が着ているのは、真・女神転生ストレンジジャーニー(以下SJ)で登場した異界探索服デモニカスーツではありませんか。相変わらずダサカッコ悪いデザインでいらっしゃる。
参照↓
真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)
真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー) [Video Game]


【黒きサムライ討伐令〜スカイ】

・ふたたび見る夢
・懐ネタ「ミノタウロス→メデューサ」

 燃える東京らしき都市でワルターと、石像の首が転がる砂漠でヨナタンと対面。この2人の背景は、それぞれのルートにおける末路かな。石像はおそらくアキュラ像の首なので、東のミカド国の崩壊もしくは偶像破壊が起こると推測できます。

 ミノタウロスに続きメデューサと決戦。ファミコン版「デジタル・デビル・ストーリー女神転生」のボス戦闘順番だよ! メデューサと戦う場所が「スカイ」なのは、同作品で彼女が「天空の街ビエン」を支配していたのとひっかけているんでしょう。そして眼下に広がるのは、空を岩盤に覆われ、地に電光という星がきらめく東京。この構図、他のアトラス作品でも見たことあるわー(ネタバレになるためタイトルは伏せます)

【上野〜不忍池】
 フィールドマップのBGMかっこいい。真1よりも細かく地名が出るし、目立つ建造物も再現されているので東京散策が楽しいですね。

・懐ネタ「ピアレイの首」
・不忍池の悪霊について

 東京の橋はあちこち壊れており、悪魔ケルピーの群れに乗せてもらわないと渡れない模様。条件は「不忍池に現れるピアレイの首」とのこと。首を要求…邪神マンモンが通行料として魔王パズスの首を要求する女神転生2のネタじゃねーか…。

 というわけで上野へ。不忍池に登場する「悪霊の群れ」の解説がなかなか辛口です。
「心霊スポットである不忍池に集まってきた悪霊。発生には諸説あるが、もともとそんな霊など存在せず、それを恐れる人々の心が悪霊を呼び出しているとも考えられる」
 メガテンシリーズは悪魔の解説を通じて人間を皮肉るスタンスなのですが、新種族「軍勢」はかなり辛口な描写が多い印象です。悪魔が出てきて人を襲うのは人間のせい、と。ピアレイも汚れた水じゃなきゃ住めないとのことで、環境ネタをさりげなく匂わせているような。
 水といえば、上野の地下街に「都知事推薦 東京のおいしい塩水」って貼ってありましたね。東京水ネタなんだろうな、たぶん。

 さて、とてつもなく臭いピアレイの首を持ってケルピーのもとへ。女神転生2のマンモンは「これがパズスの首か、こうして見ると哀れよのう…お前らを倒して仇をとってやろう」と約束を破り襲いかかってくるのですが、ケルピーは素直に渡してくれました。ありがたやありがたや。

 ここまでサムライ頭のホープが死ななくてびっくりしました。てっきりストレンジジャーニーのゴア隊長よろしく開始10分で戦死すると思っていましたから。次回は阿修羅会の方々とこんにちは。