2008年11月

2008年11月30日

年下の男−03

tpe1テラ「タチネコをどう判断するか知ってる?」昔のそんな会話をふと思い出した。ハッテン場で出会った人のタチネコは、初めに相手のどこを触るかで判断できるのだ、とそいつは二丁目のとあるバーのカウンターで言いきった。

タチは相手の乳首を最初に触り、ネコは相手のチンポに最初に手を伸ばす。そいつの持論だ。ましてや相手の手を自分のチンポに持ってくる奴なんか、百タチしかいねぇだろう、と熱弁を続けた。触らせたら、その肩を寄せ、相手の頭を股間に持ってきてしゃぶらせる。タチが自分の乳首を相手に触らせることなんてあり得ねぇんだ。その場にいた全員が、それは当たっているかもな、とうなずいた。もちろん全員がボトルを一本近く空けていた朝方だったので、まともな思考力が残っているとは思えないが。

<おまえここ感じるんだろ><はやく兄貴のここ欲しい>そうやって乳首とチンポの触りあいから始まることは、確かに経験済みだ。僕が相手の乳首をいきなり触ることは、まずない。

さらに舌を絡ませ、ソファに座ったまま上半身を向き合い抱きあう。僕はバスタオルの上から彼のチンポを撫でる。彼もまたパンツの上から僕の中心を握る。判定法を使うとどっちもネコだ。しかし、彼の眼はタチの好奇心でいっぱいの眼にも思える。

一年分の思いを込めて再び彼の口に吸いつく。上手いか下手か、優しいか乱暴か。そんなことを考える隙間は、僕の思考にはもう残っていない。ただやり遂げるのみだ。時々歯と歯がぶつかり鈍い音が脳に響く。こんな荒いキスは久しぶり。隣のベッドになだれ込んだときには二人とも何も身につけていなかった。

彼は僕のモノを見たことも触ったこともある。しかし僕が彼のチンポを目にするのはこれが初めてだった。遊び焼けしていない竿、雁の程よく張ったピンク色の亀頭。これを味わうのはまだ先に取っておこう。実は、お互いのポジションもまだよく分かっていない。

年上だし、とりあえず僕が彼の上に覆いかぶさり抱きしめた。
「一號?零號?(タチ?ネコ?)」
「都可以(どっちも)」
「真的嗎?(本当?)」
「你呢?(君は?)」
「#$…*……」
よく聞き取れなかった。答えを聞く前に僕が舌を入れたから。彼は、本当に分かったのという目をしたが、この際もうどっちでもいい。入るものは入るし、入らないものは入らないのだ。

上になったまま体を舐め降りていく。耳たぶをかじり、顎を舐める。首筋で髭をこすり、肩を噛む。初めて見る表情に僕もさらに欲情する。左手で肩を抱いたまま、右手で乳首を抓る。洩らす声がもっと聞きたくて、さらに抓る。左の乳首を口に含んでみた。顎とは違ってちょっと苦い味がした。灰っぽい味。誰かに似ている。誰だっけ。誰でもいい。今後この味は、彼の乳首の味だ。体毛の薄い体は舌に優しい。腹や脇腹を何度も往復する。
「痒痒吗(くすぐったい?)」
「痒(うん)」
「笑着表情也可爱(でも笑ってる顔かわいいよ)」
脇の下に顔を埋めた。毛ごと軽く噛むと何やら呻くのだが、聞き取れない。言葉なのか、言葉にならない何かなのか。やはりもうどうでもいい。

n3103 at 07:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 「年下の男」 

2008年11月29日

年下の男−02

tpe2ほんろう去年の8月。自身、もう何度目かになるこの空港に降り立った。時間は間もなく22時。ホテルに着くのは日が変わる前であって欲しい、そう思いながら入国審査を済ませバスに乗り込んだ。乗客は15人程度。ほとんどが地元の人のようだった。

高速に乗ってすぐ車内灯が消された。通路を挟んで向こうの座席に座る人の顔が、携帯の画面に照らされて青白く光っている。外国特有の着信音が前から後ろからしきりに鳴り響く。「喂?(もしもし?)」と答える人の声を聞いて、ここはソウルでもバンコクでもマニラでもハノイでもなく、台湾だと実感してようやく落ち着いた。と同時に、日本にいる時には決して意識することのない、体のどこか奥の方に熱く血が巡っていくのを感じた。

どんな週末になるのか。車窓を過ぎていく大きな広告群の奥に広がる夜空を眺めながら、自分も携帯の電源を入れた。

鉄道の駅にバスが着いた。終着のバス停でもある。途中で意外とたくさんの人が降りたので、ここまで来たのは自分ともう二組だけ。

駅周辺が整備される前、このバス停は駅の南西のはずれにあった。街灯もないただの道端で、終点だと言われてバスを降ろされた当時の心細さを思い出させるものは、何も残っていないようだ。バス専用のターミナルが設けられ、バス以外の車両は公認のタクシーも含めて進入が禁止され、当然タクシーの客引きの人の姿もなくなっていた。バスを降りれば30歩も歩かぬうちに駅構内に入ることができる。

よく言えば都会的、そうでなければ無機質なこのターミナルを離れ、僕はホテルを目指して歩き始めた。

バスを降りてからきっかり30分後。チェックインを済ませ、西門町の一角に立った。後にG誌に特集されることになるゲイバーが集まる紅楼広場とよばれるエリアだ。

デパートや店が立ち並ぶ周辺の通りに比べ、路地を一つ隔てたこの広場は、猥雑に暗い。話し声や笑い声が、広場を取り囲む建物の壁に楽しげに反射している。広場の入り口は車一台が通れるほどの幅だ。奥は案外深いようで、突き当りまで看板が続いていた。

広場の暗さに戸惑った僕がほんの少しの間立ち止まっているうちにも、タンクトップを着た、短パンの、タトゥーが目立つ、胸板の厚い、坊主の、そんな男たちが行き交っていた。まさに、台湾のゲイタウンである。

今まだシャワーを浴びている彼に会ったのは、この街だ。

そんなことを思い出していると、シャワーの音が止まり、腰にタオルを巻いた彼がほどなく出てきた。目を合わせたまま僕の隣に腰をおろす。僕はビールの残りを一気に口に入れると、そのまま彼の肩に手をまわし、顔を近づける。生まれて初めてのキスのようにぎこちなく。

鼻がぶつかり、唇が重なった。見知らぬ歯磨き粉の味とともに、煙草の香りが残っている彼の舌に僕は反応し、パンツの中身は熱く完全に固くなった。

n3103 at 14:54|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 「年下の男」 

2008年11月28日

年下の男−01

tpe1aテレビを見ている。いや、眺めている。ヴァラエティ番組だ。眺めていると言いなおしたのは、その全てを理解するほどの語学力は持ち合わせていないからだ。古い型のテレビ画面はさっきからずっと紫がかっている。テレビがいけないのか、アンテナがいけないのかは分からないが、ここはお前の国ではないのだ、と主張するような紫にも感じる。

ソファから少し腰を浮かせ、小さなテーブルの上のビールに手を伸ばす。

9月初旬の夜とはいえ、外の気温は昼間とそう変わらない。エアコンは音ばかり大きくて、効いているのかいないのか。昼間の空気がまだ居座っているようだ。シャワーを浴びた後はパンツを穿いただけのままだ。Tシャツは着ていない。

ふた口飲んで姿勢を元に戻すと、自分の汗で濡れていたソファの妙な冷たさを背中に感じた。脂汗なのか、緊張の汗なのか、興奮の汗なのか、なんなのか。健全な汗でないことだけは確かだ。

10畳ほどの部屋のあちこちに目を遣る。

靴棚には剥き出しのまま、革靴やスニーカーが無造作に置いてある。(後でちょっと匂いを嗅いでみよう。)タンスの中にはかなり多くのラフなシャツに混ざって、さっき僕が脱いだシャツもかかっている。明日の朝に渡そうと思っているプレゼントのポロシャツがかけられるであろうタンスでもある。ワンドア式の小さな冷蔵庫の容積はコーラとアイスと霜でほとんどが占められている。冷蔵庫の上には紫のテレビ。もちろん本体の色が紫なのではない。冷蔵庫の脇には箱買いのコーラが積み重ねられている。そして灰色の事務机とパソコン。僕が今座っているソファとは反対側の壁に並んでいるものたちだ。

ソファの右側にベッド。真っ白なシーツではないが、タオルケットと共にきちんと皺なく整えられている。何を思いながら皺を伸ばしたのか。あるいは日ごろからの習慣か。枕に染みついている若い匂いは、当然、既に記憶に残した。

左側には本棚。普通の本に交じって、日本が誇る(?)G誌が一冊、一番下の段に並んでいるのが見える。昨年末頃に発行されたその号には、この部屋の主の写真が載っている。もちろん僕たちが知り合ったのは、もっと前のことだが。

こうやってもう何度も見まわしている。初めて見るものばかりなのに、僕が彼を知る前からここにあったはずのこれらのものが懐かしく感じ、そんな自分に苦笑いする。そしてまた、字幕を頼りにテレビの画面を眺めだす。

タレントたちの笑い声は先程からは自分には届いていない。僕の耳は、この部屋の主が入っている浴室に専ら傾いているからだ。時おり聞こえてくる鼻歌。ご機嫌なようなメロディに安心する。そしてまたビールに手を伸ばす。

このビールの旨さは格別だ。これを飲むまでに13カ月もかかったのだから。

n3103 at 13:06|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 「年下の男」