2008年11月29日

年下の男−02

tpe2ほんろう去年の8月。自身、もう何度目かになるこの空港に降り立った。時間は間もなく22時。ホテルに着くのは日が変わる前であって欲しい、そう思いながら入国審査を済ませバスに乗り込んだ。乗客は15人程度。ほとんどが地元の人のようだった。

高速に乗ってすぐ車内灯が消された。通路を挟んで向こうの座席に座る人の顔が、携帯の画面に照らされて青白く光っている。外国特有の着信音が前から後ろからしきりに鳴り響く。「喂?(もしもし?)」と答える人の声を聞いて、ここはソウルでもバンコクでもマニラでもハノイでもなく、台湾だと実感してようやく落ち着いた。と同時に、日本にいる時には決して意識することのない、体のどこか奥の方に熱く血が巡っていくのを感じた。

どんな週末になるのか。車窓を過ぎていく大きな広告群の奥に広がる夜空を眺めながら、自分も携帯の電源を入れた。

鉄道の駅にバスが着いた。終着のバス停でもある。途中で意外とたくさんの人が降りたので、ここまで来たのは自分ともう二組だけ。

駅周辺が整備される前、このバス停は駅の南西のはずれにあった。街灯もないただの道端で、終点だと言われてバスを降ろされた当時の心細さを思い出させるものは、何も残っていないようだ。バス専用のターミナルが設けられ、バス以外の車両は公認のタクシーも含めて進入が禁止され、当然タクシーの客引きの人の姿もなくなっていた。バスを降りれば30歩も歩かぬうちに駅構内に入ることができる。

よく言えば都会的、そうでなければ無機質なこのターミナルを離れ、僕はホテルを目指して歩き始めた。

バスを降りてからきっかり30分後。チェックインを済ませ、西門町の一角に立った。後にG誌に特集されることになるゲイバーが集まる紅楼広場とよばれるエリアだ。

デパートや店が立ち並ぶ周辺の通りに比べ、路地を一つ隔てたこの広場は、猥雑に暗い。話し声や笑い声が、広場を取り囲む建物の壁に楽しげに反射している。広場の入り口は車一台が通れるほどの幅だ。奥は案外深いようで、突き当りまで看板が続いていた。

広場の暗さに戸惑った僕がほんの少しの間立ち止まっているうちにも、タンクトップを着た、短パンの、タトゥーが目立つ、胸板の厚い、坊主の、そんな男たちが行き交っていた。まさに、台湾のゲイタウンである。

今まだシャワーを浴びている彼に会ったのは、この街だ。

そんなことを思い出していると、シャワーの音が止まり、腰にタオルを巻いた彼がほどなく出てきた。目を合わせたまま僕の隣に腰をおろす。僕はビールの残りを一気に口に入れると、そのまま彼の肩に手をまわし、顔を近づける。生まれて初めてのキスのようにぎこちなく。

鼻がぶつかり、唇が重なった。見知らぬ歯磨き粉の味とともに、煙草の香りが残っている彼の舌に僕は反応し、パンツの中身は熱く完全に固くなった。

n3103 at 14:54│Comments(0)TrackBack(0) 「年下の男」 

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