2008年12月25日

Sの男たち きっかけ−07

951f49b4.jpg僕が何を呻いているのか聞き取ってもらえたのだろうか。

彼の六尺を口にくわえたまま、彼のチンポをケツに入れたまま、六尺の中で果てた。恥ずかしい位にアっと言う間だった。窮屈な態勢で声をあげることもできないまま射精を迎える、嬲られている感覚は忘れられそうにない。そう強く感じた。

――シャワー浴びてこいよ。今度は、おまえが出したものはおまえの口で処理させるからな。

その目はSのままだった。

2時間後、二人は何食わぬ顔で店にいた。ただの客とマスターという関係で。しかし、僕の手首や腕、首筋にははっきりと縄の締め跡が残っていて、ポロシャツ姿では隠しようもない。Aさんはその跡に目を落とすたびに、微笑みかけてくる。他の人に気づかれそうで気が気でなく、まったく酒の味など感じなかった。

一度経験してしまえば、である。普通のセックスの最中に僕がちょっとでも物足りなそうな顔をすると、Aさんは、縛られたいんだろうと言って縄を出してくるようになり、僕もまた当然のように縛られるのだ。

それぞれに付き合っている相手がいることは周知の事実の二人。その二人が客とマスターとして、とても仲が良いのもよく知られたことだ。だからこそ燃え、他の何人かのお客さんと一緒によせ鍋をつついた ある冬の日の出来事をきっかけに、二人しか知らない関係は終わった。

秘密を持つのは楽しいことだが、秘密を守るのは辛いことだと学んだ。Aさんとの素敵な時間が幸せであればあるほど、それを誰にも話すことが出来ないのは心から寂しかった。

お互いの立場は分かっていたつもりだ。僕が飲みに行くことは、Aさんの職場に行くことに等しいのだ。その職場をAさんにとって不都合な雰囲気にするのは、してはいけないこと。Aさんを独占したい気持ちとの矛盾は、精神的には限界に近かったのかもしれない。お店では友達でさえ既に疎ましい存在になっていたし、そう思う自分のことも嫌になっていた。

誰にも気付かれずに、始まり、終えられてよかったのだ。好きという気持ちを持ったまま、一生Aさんの味方でいると誓えるまま関係を終えることができたのだから。

現実の世界で最大限に素敵な人間関係を築く努力こそが、その人自身を幸せにする。何億分の一の確率で知り合えた運命に感謝し、一度好きになったら何があっても精神的に寄り添い続けることは、人生の試練であり喜びでもある。<もう少し早く会っていれば…> などと言うのは愚かだとすら、今は思える。

客とマスターとしての良好な関係は現在も続き、彼が刻み込んでくれた僕のMの部分も消えることはない。


<「Sの男たち きっかけ」おわり>

n3103 at 10:33│Comments(0)TrackBack(0) 「Sの男たち」 

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