2009年02月28日

Sの男たち しんこう−03

−是非、よろこんで。よろしくお願いします。

ごく簡単なやり取りを続けたが、出張が重なり都合が合わずにいて、初メールから一ヶ月半経ってようやく顔合わせの約束にこぎつけた。

電話をすることはなかったので、メールのやり取りでの一ヶ月半。メールの文章から、相手のことをあれこれと思い描いていた。さっぱりとした、でも僕のことを気遣ってくれる文面。メールで教えてくれた風貌。心の中で想像が膨らんでいく。

桜の季節。ついに対面を果たす日がやってきた。

仕事を終え、地下鉄に飛び乗る。ドキドキしているのは走ったからだけではない。顔を知らぬ人との待ち合わせなんて何年ぶりだろう。期待と緊張のドキドキが多分に混ざっている。B駅に電車が近づくにつれ、なんだか顔が火照ってきた。今までのメールのやり取りを読み返しながら、B駅到着を待った。

改札を出ながら携帯を見ると、約束の時間よりも10分近く早い。待ち合わせ場所が近づいてくると、週明けの夜にしてはたくさんの人待ちふうで混雑していた。

もう来ているだろうか。ちゃんと見つけられるだろうか。電話をかけてみた。

「もしもし。Zです。こんにちは」
「あ、Tです。こんにちは」
はじめて声を聞く。落ち付いた感じの声だ。
「あ、はじめまして。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「僕、もう着いちゃったんですけど。どちらにいらっしゃいますか?」
「俺ももう着いてるから」
「えっと…」
「階段上がったら左の方にいるよ」
「今、階段上がりきるところなんですけど…、あ」
「え?」
「紺のブレザーなんですよね?」
「おう」
「あ、わかりました。見つけました」
「ん、どこだ?」
「すぐ、んー左前の方です」
「おっ」
電話から聞こえる声と、なまの声が重なった。

素敵な感じの人だ。会えてよかったと思った。飯を食いに行こう、そう言って歩きだした彼の後ろに、足取り軽くついた。

なんだろう、このワクワク ドキドキは。

2008年4月某日。僕の人生に彼が登場したことで、この日からの日常はそれまでとは少しずつ変わっていくことになる。

n3103 at 09:00│Comments(0)TrackBack(0) 「Sの男たち」 

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