2013年07月11日

地球のどこかに

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小さいころに見たアニメで今でも心に残っている物のひとつ。アメディオとかいう名の猿を連れた子供が、母親に会うためにすごい距離を移動するやつ。何に心を惹かれたのか今思い起こしてみると、それは、日本では見られないような風景、行く先々で出会う人々が食ってるもの、そして子供ながらに哀愁を感じた音楽だ。毎回の放送を見ながら、彼が降り立ったあの港を自分も見る事などがあるのだろうかと思っていた。

『春光乍洩』 何度も見返した映画だ。最初は同性愛シーン目当てで映画館に見に行ったものの、そこに登場する街の様子、そして音楽に無性に惹かれ、見るたびに心がどうしようもなくざわつく。ラスト近くで登場する世界最南端の灯台にもまた、絶望的な状況でも一人戦う芯の強さの様なものを感じ、心を締めつけられた。彼らが二人の関係をやり直す旅として選んだこの場所を自分もいつか訪れる事はあるのだろうかと思っていた。

ヲカマ心をくすぐる作曲家のなかでも独特の雰囲気もつ者。彼の数多くある名曲の中でも『神秘とフーガ』を初めて聞いた時の衝撃は忘れられない。手も心も震え、血液の温度が一気にあがり、沸騰して、頭の先から蒸発していくような衝撃を受けた。アコーディオンの音色は、小学校の頃の合奏部の甘酸っぱい思い出とリンクして、セピア色の世界に自分を引き込む。この音楽が息づく街の空気をいつか吸えるのだろうかと思っていた。

『母を訪ねて三千里』『春光乍洩(邦題 ブエノスアイレス)』『ピアソラ』を巡る旅。マルコが歩いた街を歩いて、トニーレオンが働いていたタンゴバー(だけでなく街中いたるところ)でピアソラの音楽を耳にしタンゴを目にし、やはり彼が働いていた中華料理屋で飯を食い、マゼラン海峡を渡り世界の果ての灯台を見た。

二週間の旅を終え帰りの飛行機に乗った。すると、それまでずっと、40年近く、心の中でもやもやしていた物がスッと晴れ渡った。

ブエノスアイレスは、地球の裏側に、ちゃんと、本当に、存在していたのだ。


n3103 at 02:00│Comments(0)TrackBack(0) 写真 

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