リコーダーの名手、モーリス・シュテーガーが録音したヴィヴァルディの協奏曲集。シュテーガーは、1971年、スイスのビンテルトゥール生まれのリコーダー奏者。ブリュッヘンのリコーダーの弟子であるペドロ・メメルスドルフにリコーダーを習った。指揮者としても活動しており、マルクス・クリードに師事し、2002年にはヘルベルト・フォン・カラヤン賞を受賞している。
RV443はピッコロ協奏曲とされているが、ヴィヴァルディは「ソプラニーノ・リコーダー」を指定しているらしい。ここでは「フラウティーノ」を使っていると書かれているが、多分ソプラニーノ・リコーダーと同じ意味だろう。同じ曲の中で「デスカント(ソプラノ)・リコーダー」も使い分けている。
第1、3楽章では、目(耳)にも止まらぬ早技で、リコーダーの超絶技巧を披露している。あまりに凄いので、サーカスの曲芸を見ているような気分になる。日本人ならみんな小学校の時にリコーダーを習っているので、シュテーガーのテクニックがいかに凄いか想像がつくというものだ。
第2楽章は抒情的で物悲しい音楽だが、音域が高いフラウティーノやデスカント・リコーダーはフルートのような音の深みがなく、音色のカワイさで持っているような気がする。その結果音楽がとても素朴に聴こえた。
RV439「夜」は、ゆったりとした音楽だが、曲の雰囲気に配慮してか、高音域があまり強く出ないトレブル・リコーダーを使っている。ちょっとモヤモヤした音色で、かすれた音が多く含まれているので、柔らかい雰囲気がよく出ていた。
第2,3楽章はテンポが速く、オーケストラがとても鋭い表現でバックをつけている。緊張感は凄く高い一方、静かな部分では伸びやかな雰囲気を作り出している。
第4楽章でリコーダーが伸ばす音に全くヴィブラートがついておらず、音量変化も感じない。とても単調に聴こえるが、リコーダーって音量の変化が難しいのだろうか。それとも意図的なのか?
RV95「ラ・パストレッラ」は、標題通り田舎の陽気なお祭りって感じ。リコーダーの技巧も凄いが、オーケストラも楽しい雰囲気を作り出しており、バグパイプのようなブーブージージーいう音が面白い。
第2楽章は、明るく優しいメロディがのんびりしていい気持ち。よく晴れた日にピクニックに行っている気分だ。丘の上に寝転んで青空を見ているよう。第3楽章、昼食後、一休みしてから陽気なダンスが始まった。「みんな輪になって踊ろう!」って感じ。
RV566は、7つの独奏楽器のための合奏協奏曲となっており、2vn,2bfl,2ob,fg,弦楽という編成で書かれている。リコーダーが2人いるはずだけど、1人しか聴こえて来ない気がした。
短調で緊張感の高い曲で、各ソロ楽器が速いパッセージを思いっきり力を込めてい演奏している。第2楽章は格調高い舞曲で、高貴な女性が静かに踊っている姿を思い浮かべてしまう。第3楽章も哀愁を感じる美しいメロディがよかった。
RV375は、デスカント・リコーダーを使用しており、高音域が澄んだキレイな音がする。細かい音がハッキリ出ていて、鋭いタンギングと指の超絶技巧が冴え渡る。第1、3楽章が、あまり速いテンポの曲ではないにもかかわらず、もの凄く速いタンギングと指の動きが完璧に連動している所が唖然とさせられた。
RV103は、bfl,ob,fg,BCの編成。使ってぃるのはトレブル・リコーダニで、RV375よりちょっとだけ丸い音がし、ファンタジックな音色が魅力的だ。第2楽章の伸びやかなメロディを丸い音のオーボエが美しい陰影で吹いており、哀愁があっていい。
第3楽章のリコーダーとオーボエの掛け合いが面白い。その後ろでファゴットもかなり頑張っているが、何しろ音色が地味なのでよく聴かないと分からなかった。
RV90「ごしきひわ」の編成はfl,ob,vn,fg,BC。ごしきひわ(鳥)の鳴き声を真似た部分が長く、妙技を聴かせるカデンツァのょうに聴こえた。その後もフラッターなどの特殊奏法を使って鳴き声を模しており、多彩な装飾が聴いていて楽しかった。
アントニオ・ヴィヴァルディ
「リコーダー協奏曲集」
①協奏曲卜長調RV.443
②協奏曲卜短調『夜』RV.439
③協奏曲ニ長調『ラ・パストレッラ』RV.95
④協奏曲ニ短調RV.566
⑤協奏曲変ホ長調RV.375
⑥協奏曲卜短調RV.103
⑦協奏曲二長調『ごしきひわ』RV.90
リコーダー:モーリス・シュテーガー(Maurice Steger)
使用楽器:
RV.443:フラウティーノ:(フラジョレット)、(ソプラニーノ・リコーダー、ピッコロ)
デスカント(ソプラノ)・リコーダー(cl)
RV439,566;103:トレブル(アルト)・リコーダー(fl)
RV.95,90:トレブル(アルト)・リコーダー(gl)
RV.375:デスカント(ソプラノ)・リコーダー(bl)
管弦楽:イ・バロッキスティ
指揮:ディエゴ・ファソリス
録音時期:2014年3月~4月
録音場所:ルガーノ、RSI、アウディトリオ・ステリオ・モーロ
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