Nordic Concertos
Martin Frost
Bis
2015-02-10


クラリネットの貴公子・・・というベタな表現がビッタリ嵌ってしまうイケメン・クラリネット奏者、マルティン・フレストのベスト盤。古典派のクルーセルから現代作曲家のまで、北欧のクラリネット協奏曲を集めている。

Anders Hillborg
1曲目はアンデシュ・ヒルボルイ。1954年スウェーデン、ストックホルム生まれの作曲家で、この曲で指揮を執っているエサ=ペッカ・サロネンと多くの共同作業を行っている。
 
1995年にヘルシンキ音楽祭で、サロネン指揮スウェーデン放送響によって「lskade kommafran det vilda:愛は野生から来る(?)」が初演され、1999年には「ドリーミング・リバー」が王立ストックホルム響に、2006年には「イレヴン・ゲイツ」がロサンジェルス・フィルによって初演されている。
 
1999年から2002年に書かれたクラリネット協奏曲には「孔雀物語」と言う副題がついていて、なんだか時代劇のテーマ音楽を思い浮かべそうだが、曲は純粋に鳥としての孔雀を連想させるものになっている。
 
長く伸ばしたクラリネットの音で始まり、オーケストラは研ぎ澄まされた弦の高音が次第に高揚して大爆発に至る。クラリネットは高音で絶叫し、曲の中でも高音域のキャラキャラした音がよく出てくる。これは孔雀の鳴き声か?
 
オーケストラは静かに不気味な高音域を発し、シンセサイザーを聴いているようだ。その上でクラリネットが自由なフレーズを吹く。時々伝統的和声のフレーズが聴こえて来るが、殆ど無調的。オーケストラのフレーズはとても繊細だ。
 
神秘的なシーンだけではなく、途中ブンチャ、ブンチャとリズムと取り始めたり、物悲しいメロディが出てきたり、種々雑多な要素も出てくる。盛り上がる所は、ハッキリしたリズムを打ち出して、不気味なカーニバルのように大騒ぎをするパターンが多かった。結構長い曲で、30分近くあった。

Vagn Holmboe
2曲目はホルンボーの協奏曲第3番。ヴァウン・ホルムボーは、1909年、デンマークのホーセンス生まれの作曲家。交響曲を13曲、室内交響曲を3曲、弦楽交響曲を4曲、多くの協奏曲、20曲の弦楽四重奏曲、オペラ、合唱曲など、200曲を超える作品を残している。
 
「クラリネット協奏曲」がいつ頃作曲された曲かは分からないが、こんなにたくさんの曲を書いていて作品21なの
だから、きっと若い時の作品なのだろう。私はホルンボーって現代作曲家だと思っていたので、第1楽章冒頭がオーケストラの伝統的なフレーズで始まったので、思わず生まれた年を確認してしまった。
 
クラリネットのカデンツァは神秘的で、現代的な所を感じるが、オーケストラと一緒に走り出した後は、伝統的な調性の音楽になった。メロディは自由で取り留めがないが、基本的には伝統的和声の人に思えた。
 
フィンジ辺りと共通する所があって、全体的に抒情的で親しみ易い。不協和音が入っているが、音楽に前衛的な所は全くなく、金管楽器のファンファーレが優しくて、古き良き時代への憧れを感じる音楽だった。
 
第2楽章はテンポが速くなって爽やかさが増す。この曲を聴いていて思ったのだが、フレストはフィンジやスタンフォードなど、イギリスの作曲家のクラリネット曲は録音しないんだろうか。古今東西のクラリネット曲を録音しているフレストなので、レパートリーも尽きて来た頃だろう。是非して欲しい。
 
後半は後日。              

「マルティン・フレスト(クラリネット):北欧のクラリネット協奏曲」
①アンデシュ・ヒルボルイ;Anders Hillborg
「クラリネット協奏曲“孔雀物語:Peacock Tales"」
管弦楽:スウェーデン放送交響楽団
指揮:エサ=ペッカ・サロネン
収録:2001年12月スウェーデン、ストックホルム、ベルワルド・ホール
②ヴァウン・ホルムボー(Vagn Holmboe,1909~1996) 
「協奏曲第3番作品21」
管弦楽:アールボルク交響楽団
指揮:オーウェイン・アーウェル・ヒューズ(指揮)
収録:1998年1月,デンマーク、オールボー、オールボー・ホール
マルティン・フレスト(クラリネット)